薬剤師のスキルアップ 更新日:2025.04.25公開日:2025.04.17 薬剤師のスキルアップ

栄養サポートチーム加算とは?算定要件や施設基準を分かりやすく解説

文:篠原奨規(薬剤師)

栄養サポートチーム加算は、栄養管理を必要とする患者さんの生活の質向上や疾患の治癒促進、合併症予防などを目的とした、多職種による高度な栄養管理を評価する加算です。本記事では、栄養サポートチーム加算の点数や算定要件、施設基準について解説します。また、栄養サポートチーム加算の施設基準における「所定の研修」についても詳しく見ていきましょう。

1.栄養サポートチーム加算とは?

栄養サポートチーム加算とは、栄養障害があるケースなど、栄養管理を必要とする患者さんに対して、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などの多職種からなるチームが診療することを評価する加算です。
 
多職種から構成される栄養サポートチームが高度な栄養管理を行い、患者さんの生活の質(QOL)の向上や、疾患の治癒促進、感染症などの合併症予防などに貢献することを目的としています。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
特に高齢者は、食欲や口腔機能の低下によって低栄養となる方が少なくありません。厚生労働省の「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要(図4-1)」によると、65歳以上の17.6%が低栄養傾向(BMI:20kg/m2以下)であったことが報告されています。
 
低栄養が続くと、免疫力の低下や筋力の衰え、傷の治りが遅くなるなど、健康を維持する上で問題となるため、医療において栄養管理の重要性がますます注目されています。
 
参照:高齢者の低栄養|健康長寿ネット

2.栄養サポートチーム加算の点数

栄養サポートチーム加算は、施設基準や医療機関の所在地によって、算定できる点数が異なります。施設基準に適合し、地方厚生局長などに届け出た医療機関において、栄養管理が必要な患者さんに対して医師、看護師、薬剤師、管理栄養士などが共同で診療を行った場合に、以下の表に示す点数を算定できます。

 

区分 加算の名称 医療機関の所在地 算定点数
注1 栄養サポートチーム加算 規定なし 200点
注2 栄養サポートチーム加算(特定地域) 「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げる地域 100点

 

療養病棟入院基本料や結核病棟入院基本料、精神病棟入院基本料、特定機能病院入院基本料(結核病棟または精神病棟に限る)を算定している患者さんの場合、入院日から1カ月以内は週1回(対象患者をチームで回診した日に算定)まで、1カ月を超えて6カ月以内の期間は月1回のみ算定できます。さらに、障害者施設等入院基本料を算定している患者さんについては、月1回に限り算定が可能です。
 
また、入院栄養食事指導料や集団栄養食事指導料、乳幼児育児栄養指導料との併算定は認められていません。
 
「注2」の栄養サポートチーム加算(特定地域)は、医療提供体制の確保の状況に鑑み厚生労働大臣が定める地域に所在し、施設基準に適合しているものとして地方厚生局長などに届け出た医療機関については、「注1」に規定する届出の有無にかかわらず算定可能とされています。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:基本診療料の施設基準等|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成22年3月29日|厚生労働省

3.栄養サポートチーム加算の算定要件

栄養サポートチーム加算の算定要件として、算定対象となる患者さんや栄養サポートチームの業務内容が定められています。
 
ここからは、栄養サポートチーム加算の算定要件を解説します。

 

3-1.算定対象の患者

栄養サポートチーム加算は、栄養管理計画を策定した上で、以下のいずれかに該当する患者さんが算定対象です。

 

● 栄養管理計画の策定に係る栄養スクリーニングの結果を踏まえ、GLIM基準による栄養評価を行い、低栄養と判定された患者さん(※)
● 経口摂取または経腸栄養への移行を目的として、現に静脈栄養法を実施している患者さん
● 経口摂取への移行を目的として、現に経腸栄養法を実施している患者さん
● 栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者さん

参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

※2022年度の診療報酬改定までは、「血中アルブミン値が3.0g/dL以下であって、栄養障害を有すると判定された患者」であることが要件とされていました。しかし、2024年度において本要件は削除され、「GLIM基準による栄養評価を行い、低栄養と判定された患者」となっています。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項(2022年度版)|厚生労働省
 
また、「栄養サポートチームが、栄養治療により改善が見込めると判断した患者」の一例は以下のとおりです。

 

● 脱水状態にある入院直後の患者さんで、血清アルブミン値は高値を示しているものの、他の指標や背景から明らかに栄養障害があると判断できる患者さん
● これから抗がん剤による治療を開始する患者さんで、副作用などにより当該治療によって栄養障害をきたす可能性が高いと予想される患者さん
● 脳卒中を発症して救急搬送された直後の患者さんで、栄養状態はまだ低下していないが、嚥下障害を認めており、経口摂取が困難となる可能性が高いと予想される患者さん
● 集中的な運動器リハビリテーションを要する状態にある患者さんで、入院中に著しい食欲低下を認めており、栄養治療を実施しなければリハビリテーションの効果が十分に得られない可能性が高いと判断できる患者さん

参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成22年3月29日|厚生労働省

 

3-2.栄養サポートチームの業務内容

栄養サポートチームは、患者さんの栄養状態を改善し、必要に応じて経口摂取への円滑な移行を促進するために、以下の診療を行います。

 

● 栄養状態の改善に係るカンファレンスおよび回診が週1回程度開催されており、栄養サポートチームの構成員および必要に応じて、当該患者の診療を担当する保険医、看護師などが参加している
● カンファレンスおよび回診の結果を踏まえて、当該患者の診療を担当する保険医、看護師などと共同の上で、別紙様式5またはこれに準じた栄養治療実施計画を作成し、その内容を患者さんなどに説明の上交付するとともに、その写しを診療録などに添付する
● 栄養治療実施計画に基づいて適切な治療を実施し、適宜フォローアップを行う
● 治療終了時または退院・転院時に、治療結果の評価を行い、それを踏まえてチームで終了時指導または退院時等指導(退院後の栄養に関する指導を含む)を行い、その内容を別紙様式5またはこれに準じた栄養治療実施報告書として記録し、その写しを患者さんなどに交付するとともに診療録などに添付する
● 当該患者さんの退院・転院時に、紹介先医療機関などに対して診療情報提供書を作成した場合は、当該報告書を添付する

 

参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成22年3月29日|厚生労働省
 
また、医療機関の栄養管理体制を強化するとともに、院内における他のチーム医療との連携が求められます。具体的な業務内容は、以下のとおりです。

 

● 現に当該加算の算定対象となっていない患者さんの診療を担当する保険医、看護師などからの相談に速やかに応じ、必要に応じて栄養評価などを実施する
● 褥瘡対策チーム、感染制御チーム、緩和ケアチーム、摂食嚥下支援チームなど、当該医療機関において活動している他チームとの合同カンファレンスを、必要に応じて開催し、患者さんに対する治療およびケアの連携に努めること

 

参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

3-3.その他の算定要件

1日の算定患者数は、1チームあたりおおむね30人以内です。ただし、「注2」の栄養サポートチーム加算(特定地域)を算定する場合は、おおむね15人以内に限定されます。
 
また、療養病棟、結核病棟および精神病棟では、入院日から180日以内に限り算定が可能です。ただし、180日を超えた場合でも、栄養サポートチームによる栄養管理を継続することが推奨されます。
 
「注2」の栄養サポートチーム加算(特定地域)は、「基本診療料の施設基準等」別表第六の二に掲げられた地域に所在する医療機関の一般病棟で算定が可能です。ただし、特定機能病院や許可病床数400床以上の病院、DPC対象病院、一般病棟入院基本料に係る届出において急性期一般入院料1のみを届け出ている病院は対象外です。また、看護配置の異なる病棟ごとに一般病棟入院基本料の届出を行っている場合は、一般病棟入院基本料(急性期一般入院料1を除く)を算定する病棟において算定できます。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.栄養サポートチーム加算の施設基準

栄養サポートチーム加算の施設基準は、以下のとおりです。

 

(1)当該医療機関内に、以下から構成される栄養管理に係るチーム(以下「栄養サポートチーム」)が設置されていること。また、以下のうちのいずれか1人は専従であること。ただし、当該栄養サポートチームが診察する患者数が1日に15人以内である場合は、いずれも専任で差し支えない。
 
 ア 栄養管理に係る所定の研修を修了した専任の常勤医師
 イ 栄養管理に係る所定の研修を修了した専任の常勤看護師
 ウ 栄養管理に係る所定の研修を修了した専任の常勤薬剤師
 エ 栄養管理に係る所定の研修を修了した専任の常勤管理栄養士
 
なお、アからエまでのほか、歯科医師、歯科衛生士、臨床検査技師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、言語聴覚士が配置されていることが望ましい。
 
注2に規定する点数を算定する場合は、以下から構成される栄養サポートチームにより、栄養管理に係る専門的な診療が行われていること。
 
 オ 栄養管理に係る所定の研修を修了した常勤医師
 カ 栄養管理に係る所定の研修を修了した看護師
 キ 栄養管理に係る所定の研修を修了した薬剤師
 ク 栄養管理に係る所定の研修を修了した管理栄養士
 
(2)(1)のア又はオに掲げる常勤医師については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている専任の非常勤医師(栄養管理に係る所定の研修を修了した医師に限る。)を2名組み合わせることにより、常勤医師の勤務時間帯と同じ時間帯にこれらの非常勤医師が配置されている場合には、当該2名の非常勤医師が栄養サポートチームの業務に従事する場合に限り、当該基準を満たしていることとみなすことができる。
 
(3)当該保険医療機関において、栄養サポートチームが組織上明確に位置づけられていること。
 
(4)算定対象となる病棟の見やすい場所に栄養サポートチームによる診療が行われている旨の掲示をするなど、患者に対して必要な情報提供がなされていること。

 

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

4-1.栄養サポートチーム加算の施設基準における「所定の研修」とは?

施設基準(1)のアおよびオに該当する「栄養管理に関する所定の研修」とは、栄養管理に必要な専門的知識やスキルを有する医師の養成を目的とした、医療関係団体などが実施する研修です。10時間以上の受講が求められるとともに、以下に示す内容が含まれている必要があります。

 

● 栄養不良がもたらす影響
● 栄養評価法と栄養スクリーニング
● 栄養補給ルートの選択と栄養管理プランニング
● 中心静脈栄養法の実施と合併症およびその対策
● 末梢静脈栄養法の実施と合併症およびその対策
● 経腸栄養法の実施と合併症およびその対策
● 栄養サポートチームの運営方法と活動の実際

 

また、(1)のイからエ、カからクの職種(看護師、薬剤師、管理栄養士)における「栄養管理に係る所定の研修」は、以下の事項を満たすものでなければなりません。

 

ア 医療関係団体などが認定する教育施設において実施され、40時間以上を要し、当該団体より修了証が交付される研修であること
イ 栄養管理のための専門的な知識・技術を有する看護師、薬剤師および管理栄養士などの養成を目的とした研修であり、次の内容を含むものであること
 ● 栄養障害例の抽出・早期対応(スクリーニング法)
 ● 栄養薬剤・栄養剤・食品の選択・適正使用法の指導
 ● 経静脈栄養剤の側管投与法・薬剤配合変化の指摘
 ● 経静脈輸液適正調剤法の取得
 ● 経静脈栄養のプランニングとモニタリング
 ● 経腸栄養剤の衛生管理・適正調剤法の指導
 ● 経腸栄養・経口栄養のプランニングとモニタリング
 ● 簡易懸濁法の実施と有用性の理解
 ● 栄養療法に関する合併症の予防・発症時の対応
 ● 栄養療法に関する問題点・リスクの抽出
 ● 栄養管理についての患者・家族への説明・指導
 ● 在宅栄養・院外施設での栄養管理法の指導

 

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

4-2.栄養サポートチーム加算の施設基準に関する届出

栄養サポートチーム加算を算定するためには、施設基準に関する届出が必要です。別添7の様式34を用いて、医療機関が所在する都道府県の管轄である厚生局事務所などに届出を行います。なお、栄養サポートチーム加算の届出について、実績要件は必要ありません。
 
参照:基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)|関東信越厚生局

5.栄養サポートチーム加算の歯科医師連携加算

歯科医師連携加算は、栄養サポートチームに歯科医師が参加し、チームとして診療に従事した場合に算定できる加算です。栄養サポートチーム加算の「注1」を算定する場合において、50点を加算できます。
 
参加する歯科医師が院外の医療機関に所属する場合でも要件を満たすものの、チームの構成員として2週に1回以上の頻度で、継続して診療に従事している必要があります。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)平成28年3月31日|厚生労働省

6.多職種で連携を取り、患者さんの栄養管理を支えよう

栄養サポートチーム加算は、栄養障害があるケースなど、栄養管理を必要とする患者さんに対して、多職種が共同して診療を行うことを評価する加算です。患者の生活の質(QOL)の向上や疾患の治癒促進、感染症などの合併症予防などに貢献することを目的としています。
 
高齢化が進む日本において、医療における栄養管理の重要性は高まっています。多職種で連携を取り、積極的に患者さんの栄養管理に携わりましょう。

 
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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。