薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.01.22 薬剤師のスキルアップ

薬剤管理指導料とは?1・2の算定要件や施設基準を分かりやすく解説

文:篠原奨規(薬剤師)

薬剤管理指導料の算定にあたって、医療機関に従事する薬剤師は患者さんにただ服薬指導をするのではなく、算定要件になっている薬学的管理を行うとともに、定められた事項に関して患者さんごとに薬剤管理指導記録を作成しなければなりません。本記事では、薬剤管理指導料の算定要件や点数、施設基準を分かりやすく解説します。また、薬剤管理指導料1の対象薬剤一覧も紹介します。

1.薬剤管理指導料とは?

薬剤管理指導料とは、医学管理料等のひとつで、医療機関に従事する薬剤師が、医師の同意を得て、薬剤管理指導記録に基づき、直接服薬指導や服薬支援などを行った際に算定できるものです。
 
患者さんに投薬または注射されている医薬品の種類に応じて、薬剤管理指導料1・2のいずれかを算定します。
 
麻薬の投薬や注射が行われている患者さんであれば、麻薬の使用に関する薬学的管理指導を行うと、薬剤管理指導料とともに麻薬管理指導加算をあわせて算定できます。

 

1-1.服薬管理指導料との違い

薬剤管理指導料と混同しやすいものとして、服薬管理指導料が挙げられます。前述のとおり、薬剤管理指導料は、医療機関の薬剤師が服薬指導、服薬支援などを行った場合に算定できます。一方、服薬管理指導料は、調剤報酬の薬学管理料のひとつで、薬局において薬剤師が服薬指導などを行った場合に算定が可能です。
 
また、服薬管理指導料には麻薬管理指導加算や特定薬剤管理指導加算、小児特定加算、吸入薬指導加算、乳幼児服薬指導加算と、さまざまな加算項目が設けられています。

 
🔽 服薬管理指導料について解説した記事はこちら

2.薬剤管理指導料の算定要件

薬剤管理指導料を算定するには、薬剤師が医師の同意を得て、薬剤管理指導記録に基づいた服薬指導や服薬支援を行う必要があります
 
薬剤師は指導を行う前に、他の医療機関での治療内容も含めて、過去に行われた投薬や注射、副作用の発生状況などについて患者さんやその家族から聞き取り、把握しておかなければなりません。
 
服薬指導や服薬支援を行うとともに、薬学的管理指導として以下を含む事項を確認することで、患者さん1人につき週1回かつ月4回に限り算定が可能です。

 

● 処方された薬剤の投与量、投与方法、投与速度、相互作用、重複投薬、配合変化、配合禁忌などに関する確認
● 患者さんの状態を適宜確認することによる効果、副作用などに関する状況把握

 

なお、薬剤管理指導料の施設基準を満たしていても、これらの算定要件を満たさない場合は、調剤技術基本料の「1」を算定します。
 
小児の患者さんや精神障害のある患者さんであれば、家族に対して服薬指導を行った場合でも算定可能です。
 
薬剤管理指導料を算定する際は、診療報酬明細書の摘要欄に算定日を記載します。
 
服薬指導を行った後は、以下に関する薬剤管理指導記録を作成し、最後の記入の日から最低3年間は保管しなければなりません。

 

● 氏名
● 生年月日
● 性別
● 入退院の年月日
● 診療録の番号
● 投薬や注射の履歴
● 副作用やアレルギーの履歴
● 薬学的管理指導の内容
● 指導内容と患者さんからの相談事項
● 薬剤管理指導などの実施日
● 薬剤管理指導記録の作成日
● その他、記録が必要な事項

 

なお、薬剤管理記録を診療録などと一緒に管理する場合は、重複する項目について記録する必要はありません。
 
薬剤管理指導記録に添付が必要な文書などを別途保存しても差し支えないとされていますが、その際にはすぐに突き合わせができるような管理体制を整備しておく必要があります。
 
また、薬剤管理指導および麻薬管理指導を行った場合、必要に応じてその要点を医師に文書で提供することが求められます。
 
さらに、医薬品に関する重要な情報を得た場合には、すみやかに文書を用いて医師へ情報提供し、必要に応じて投薬を受けている患者さんに指導を行います。
 
医薬品に関する重要な情報としては、緊急安全性情報(イエローレター)、安全性速報(ブルーレター)、ならびに医薬品・医療機器等安全性情報が挙げられます。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

2-1.薬剤管理指導料1の対象薬剤

薬剤管理指導料1は、特に安全管理が必要な医薬品が投薬または注射されている患者さんに対して算定が可能です。
 
薬剤管理指導料1の対象薬剤となる「特に安全管理が必要な医薬品」としては、以下の医薬品が該当します。

 

● 抗悪性腫瘍剤
● 免疫抑制剤
● 不整脈用剤
● 抗てんかん剤
● 血液凝固阻止剤(内服薬のみ)
● ジギタリス製剤
● テオフィリン製剤
● カリウム製剤(注射薬のみ)
● 精神神経用剤
● 糖尿病用剤
● 膵臓ホルモン剤
● 抗HIV薬

 

これらの医薬品は、誤った使用によって大きなリスクにつながる恐れがあるため、必要に応じて医師への疑義照会や処方提案をするなど、高度な薬学的管理が求められます。
 
また、特に安全管理が必要な医薬品は、重篤な状態の患者さんに処方されることも少なくありません。そのため、薬剤師は服薬指導だけでなく、服薬状況(アドヒアランス)や副作用の発現状況、医薬品の管理方法などを総合的にチェックし、適切に薬物治療を行えているか評価することが求められます。
 
参照:ハイリスク薬に関する業務ガイドライン(Ver.2.2)|日本病院薬剤師会
 
なお、「特に安全管理が必要な医薬品」に該当する具体的な品目の一覧については、厚生労働省のウェブサイト上で確認できます
 
参照:診療報酬情報サービス(厚生労働省)

 
🔽 ハイリスク薬について解説した記事はこちら

 

2-2.麻薬管理指導加算の算定要件

薬剤管理指導料を算定している患者さんのうち、麻薬が投与されている患者さんであれば、麻薬管理指導加算として1回につき50点を算定できます
 
麻薬管理指導加算は、麻薬を服用する際の注意事項など、麻薬での緩和治療において必要な薬学的管理指導を行うことで算定が可能です。
 
麻薬管理指導加算を算定するにあたり、薬剤管理指導記録に記載しなければならない事項は以下のとおりです。

 

● 麻薬に係る薬学的管理指導の内容(麻薬の服薬状況、疼痛緩和の状況など)
● 麻薬に係る患者さんへの指導および患者さんからの相談事項
● その他、麻薬に係る事項

 

特に麻薬を使用する患者さんの多くは、悪性腫瘍の痛みに悩んでいます。痛みを和らげるためには、薬剤師が痛みの経過を詳しく聞き取り、痛みの強さに応じて、麻薬の種類や投与量を調整することが大切です。
 
また、麻薬は悪心・嘔吐や便秘、眠気などの副作用を起こしやすい医薬品です。副作用が現れると、患者さんの生活の質(QOL)が低下しやすいため、適切な治療を続けるには、副作用の状況に応じた治療薬の提案や、麻薬の減量を行うなど、薬剤師のサポートが欠かせません。
 
本加算は、麻薬による緩和治療を支える薬剤師の役割を評価する加算といえるでしょう。
 
参照:医療用麻薬適正使用ガイダンス ~がんの痛みの治療における医療用麻薬の使用と管理のガイダンス~(令和6年)|厚生労働省

3.薬剤管理指導料1・2の点数

医薬品の種類に応じて算定する薬剤管理指導料1と2は、それぞれ算定できる点数が異なります。
 
特に安全管理が必要な医薬品を使用する患者さんに対しては、薬剤管理指導料1として380点を算定し、それ以外の患者さんに対しては、薬剤管理指導料2として325点を算定します。
 
特に安全管理が必要な医薬品を使用する場合、相互作用や副作用に関する高度な薬学的管理が求められるため、このような点数差が設けられています。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.薬剤管理指導料の施設基準

薬剤管理指導料を算定するには、以下の施設基準を満たす必要があります。

 

● 医療機関に常勤する薬剤師が、2名以上配置されているとともに、薬剤管理指導に必要な体制がとられていること。なお、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている非常勤薬剤師を2人組み合わせることで、常勤薬剤師の勤務時間帯と同じ時間帯に非常勤薬剤師が配置されている場合には、非常勤薬剤師の実労働時間を常勤換算し、常勤薬剤師数に算入できる。ただし、常勤換算して常勤薬剤師に算入することができるのは、常勤薬剤師のうち1名までに限る。

● 医薬品情報の収集および伝達を行うための専用施設(医薬品情報管理室)を設置して、院内からの相談に対応できる体制が整備されていること。なお、院内からの相談に対応できる体制とは、医師などからの相談に応じる体制があることを周知していればよく、医薬品情報管理室に薬剤師が常時配置されている必要はない。

● 医薬品情報管理室の薬剤師が、有効性、安全性など薬学的情報を管理するとともに、医師などに対して情報提供を行っていること。

● 薬剤師は入院中の患者ごとに薬剤管理指導記録を作成し、投薬または注射に際して、副作用に関する状況把握を含め、必要な薬学的管理指導を行い、必要事項を記入するとともに、その記録に基づく適切な患者指導を行っていること。

● 投薬・注射の管理は、原則として、注射薬についてもその都度処方箋により行うものとするが、緊急やむを得ない場合においてはこの限りではない。

● 当該基準については、やむを得ない場合に限り、特定の診療科につき区分して届出を受理して差し支えない。

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

5.薬剤管理指導料の届出

薬剤管理指導料の算定にあたっては、医療機関が所在する都道府県を管轄する厚生局事務所などに施設基準に関する届出をしなければなりません。届出に必要な書類は以下のとおりです。

 

● 特掲診療料の施設基準に係る届出書
● 薬剤管理指導料の施設基準に係る届出書添付書類(別添2 様式14)
● 当該保険医療機関に勤務する全ての薬剤師の名簿(別添2 様式4)
● 調剤所および医薬品情報管理室の平面図

 

「薬剤管理指導料の施設基準に係る届出書添付書類」には、医薬品情報管理室や薬学的管理指導記録に関する事項、投薬・注射の管理状況、服薬指導方法などを記載しなければなりません。
 
別添2の様式4には、医療機関に従事する全ての薬剤師について、氏名と勤務の態様(常勤・非常勤、専従・非専従、専任・非専任)、勤務時間を記載します。また、従事している業務内容(調剤、医薬品情報管理、病棟薬剤業務、薬剤管理指導、在宅患者訪問薬剤管理指導)を備考欄に記載し、兼務の場合にはその旨も併記します。
 
参照:特掲診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)|関東信越厚生局

6.薬剤管理指導料の算定には、薬剤師による適切な薬学的管理指導が必要

薬剤管理指導料とは、医療機関の薬剤師が、医師の同意を得て薬剤管理指導記録に基づき、直接服薬指導、服薬支援、その他の薬学的管理指導を行った際に算定できるものです。
 
薬剤管理指導料1・2の区分があり、特に安全管理が必要な医薬品が投薬または注射されている患者さんに対しては、より点数の高い薬剤管理指導料1を算定できます。
 
また、麻薬を使用する患者さんに対して、服用する際の注意事項など、麻薬での緩和治療に必要な指導を行うと、麻薬管理指導加算をあわせて算定できます。
 
薬剤管理指導料には、複数薬剤師の常駐や医薬品情報管理室の設置など、いくつかの施設基準が設けられており、基準を満たした上で届出を行う必要があります。
 
適切に薬剤管理指導料を算定するため、患者さんから情報収集をして薬学的管理指導を行い、必要事項を踏まえて薬剤管理指導記録を作成しましょう。

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 
🔽 病院薬剤師に関連する診療報酬について解説した記事はこちら







執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。