薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.02.28 薬剤師のスキルアップ

連携充実加算とは?算定要件・点数や施設基準などについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

連携充実加算は、外来がん化学療法を行う患者さんが、より安全安心に治療を受けるための体制整備などを評価したものです。連携充実加算の算定要件や施設基準を満たすことで、質の高い外来がん化学療法を実施できるでしょう。本記事では、連携充実加算の算定要件や点数、施設基準などをお伝えするとともに、連携充実加算に関連する外来腫瘍化学療法診療料や、特定薬剤管理指導加算2についても解説します。

1.連携充実加算とは?

連携充実加算とは、外来がん化学療法を受ける患者さんへの情報提供や指導、地域薬局と連携するための体制整備などを評価するものです。2020年の医科診療報酬改定で新設されました。
 
参照:令和2年度診療報酬改定の概要(個別的事項)|厚生労働省
 
連携充実加算を算定するためには、外来がん化学療法を受ける患者さんにレジメンを提供し、患者さんの状態を踏まえた指導を行わなければなりません。加えて、地域の薬局薬剤師を対象とした研修会を実施するなど、連携体制を整備することも求められます。

2.連携充実加算の点数と算定要件

連携充実加算の点数と算定要件は、以下のとおりです。

 

点数・算定要件
点数 150点
対象患者 外来腫瘍化学療法診療料1のイの(1)を算定していること
算定タイミング 外来腫瘍化学療法診療料1のイの(1)を算定する日に、算定に必要なすべての業務を実施した場合に月1回に限り算定
対応者 化学療法の経験がある専任の医師、または化学療法に係る調剤経験のある専任の薬剤師
服薬評価 1.注射または投薬されている抗悪性腫瘍剤などの副作用の発現状況の評価を行うこと
2.ほかの医療機関や薬局から、以下のような情報提供があった場合には、必要な分析や評価などを行うこと
 ● 服薬状況
 ● 抗悪性腫瘍剤などの副作用 など
文書の交付 治療の進捗に関する以下の事項を記載した文書を患者さんへ交付すること
 (イ)患者さんに実施しているレジメン
 (ロ)レジメンの実施状況
 (ハ)患者さんに投与した抗悪性腫瘍剤などの投与量
 (ニ)主な副作用の発現状況
  ● 「有害事象共通用語規準 v5.0 日本語訳JCOG版」に基づく副作用の重篤度のスケール(Grade)
  ● 関連する血液・生化学的検査の結果 など
 (ホ)その他医学・薬学的管理上必要な事項
患者さんへの指導 治療状況などを共有することを目的に、交付した文書を他の医療機関の医師や薬剤師、薬局薬剤師へ提示するよう指導すること
他職種との連携・共同 ● 悪性腫瘍の治療を担当する医師は、あらかじめ薬剤師や看護師などと連携して、服薬状況、抗悪性腫瘍剤などの副作用などに関する情報を収集し、診療に活用することが望ましい
● 療養のために必要な栄養指導を実施する場合は、管理栄養士と連携すること

参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.連携充実加算の施設基準

連携充実加算を算定するためには、以下の施設基準を満たさなければなりません。

 

施設基準
届出 外来腫瘍化学療法診療料1に係る届出を行っていること
委員会への管理栄養士の参加 外来腫瘍化学療法1の施設基準における「実施される化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価し、承認する委員会」に管理栄養士が参加していること
体制整備 地域の医療機関・薬局と以下の連携体制を構築すること
 (ア)医療機関で実施している化学療法のレジメンをホームページなどで閲覧できるようにしておくこと
 (イ)外来化学療法に関わる職員や地域の薬局薬剤師などを対象とした研修会などを年1回以上実施すること
 (ウ)他の医療機関や薬局からのレジメンに関する照会や患者の状況に関する相談、情報提供などに応じる体制を整備すること
 (エ)照会や相談、情報提供などに対応するための体制について、ホームページや研修会などで周知すること
人員配置 以下の経歴を持つ専任の常勤管理栄養士が勤務していること
 ● 外来化学療法を実施している医療機関に5年以上勤務
 ● 栄養管理(悪性腫瘍患者に対するものを含む)に係る3年以上の経験

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

続いて、連携充実加算の施設基準に含まれる「外来腫瘍化学療法診療料」「管理栄養士の参加が必要な委員会」「地域連携のための研修会」について解説します。

 

3-1.外来腫瘍化学療法診療料とは?

外来腫瘍化学療法診療料とは、医科診療報酬の医学管理料等のひとつで、入院中の患者さん以外の悪性腫瘍を主病とする患者さんに対して、注射による外来化学療法の実施や、その他の治療管理を行った場合に算定します。
 
外来化学療法診療料には1・2・3の区分があり、さらにそれぞれがイ(1)(2)とロに区分されています

 

区分 点数
外来腫瘍化学療法診療料1 イ:抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで 800点
(2)4回目以降 450点
ロ:イ以外の必要な治療管理を行った場合 350点
外来腫瘍化学療法診療料2 イ:抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで 600点
(2)4回目以降 320点
ロ:イ以外の必要な治療管理を行った場合 220点
外来腫瘍化学療法診療料3 イ:抗悪性腫瘍剤を投与した場合 (1)初回から3回目まで 540点
(2)4回目以降 280点
ロ:イ以外の必要な治療管理を行った場合 180点

参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省

 

外来腫瘍化学療法診療料の算定にあたっては、化学療法の経験を持つ医師や専任の看護師・薬剤師が、必要に応じてその他の職種と共同することが求められています。
 
外来腫瘍化学療法診療料1・2・3の大きな違いは施設基準です。連携充実加算を算定するために届出が必要な外来化学療法診療料1は、人員配置や委員会の設置以外にもさまざまな施設基準が設けられており、外来化学療法診療料1・2・3の中で最も厳しい要件になっているといえます。

 
🔽 外来腫瘍化学療法診療料のがん薬物療法体制充実加算について解説した記事はこちら

 

3-2.管理栄養士の参加が求められる委員会とは?

外来腫瘍化学療法1は、「実施される化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価・承認する委員会」を少なくとも年1回開催することが施設基準となっています。
 
この委員会は、化学療法に携わる各診療科の医師の代表者や業務に携わる看護師、薬剤師に加え、必要に応じてその他の職種から構成されます。
 
連携充実加算を算定するためには、「実施される化学療法のレジメン(治療内容)の妥当性を評価・承認する委員会」に、管理栄養士が参加していなければなりません。

 

3-3.連携充実加算の算定に必要な研修会とは?

連携充実加算を算定するためには、外来化学療法に関わる職員や地域の薬局薬剤師を対象とした研修会などを年1回以上開催しなければなりません。
 
この研修会は、連携充実加算の届出を行っている医療機関が、自施設のレジメン・治療内容の解説などを行うものです。
 
施設基準を満たす研修会として、医療機関が主催する研修会や、地域の医師会や薬剤師会と医療機関が共同して開催する研修会などが挙げられます。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その5)2020年4月16日|厚生労働省

4.連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2

連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2は、どちらも医療機関と薬局が連携することを評価した加算です。連携充実加算は医科診療報酬、特定薬剤管理指導加算2は調剤報酬で評価されます。
 
ここでは、特定薬剤管理指導加算2の概要と、連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2の関連性について解説します。

 

4-1.特定薬剤管理指導加算2とは?

調剤報酬の特定薬剤管理指導加算2は、医科診療報酬の連携充実加算を算定する医療機関で抗悪性腫瘍剤を注射した患者さんに対して、抗悪性腫瘍剤や制吐剤などの支持療法で使用する薬剤を調剤した薬局の薬剤師が、必要な薬学的管理や指導などを行った場合に算定できる加算です。
 
特定薬剤管理指導加算2を算定する薬局は、医療機関のホームページや患者さんから化学療法に関するレジメンを確認し、患者さんへの服薬指導後も体調変化や服薬状況について電話などで確認しなければなりません。
 
また、医療機関が実施する研修会に参加することや、医療機関へ文書で情報提供することなども求められます。
 
参照:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 
🔽 特定薬剤管理指導加算2について解説した記事はこちら

 

4-2.連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2の関連性

外来がん化学療法を行う患者さんをサポートするためには、医療機関と薬局の連携が欠かせません。密に連携をとるためにも、施設職員はもちろん、薬局薬剤師がレジメンを深く理解することはとても重要です。
 
そのため、医療機関はホームページや地域の薬剤師会などを活用して、外来がん化学療法の理解促進に努めています。連携充実加算は、研修会の実施やレジメンの公開などを施設基準とすることで、医療機関から薬局への情報発信を後押ししているといえるでしょう。
 
また、特定薬剤管理指導加算2を算定するためには、医療機関が実施する研修会への参加やホームページに掲載しているレジメンのチェックなどが必要になります。
 
医療機関からの情報発信を薬局がしっかりと受け取れるようルール化されており、連携充実加算と特定薬剤管理指導加算2によって、医療機関と薬局の双方が密に連携できる体制整備を促しているといえるでしょう。

 

4-3.医療機関と薬局が連携するための具体的な体制例

医療機関によっては、薬局薬剤師が行う服薬状況や副作用の発現状況の確認について、電話などのタイミングを具体的に定めていたり、情報提供文書のフォーマットを提示していたりします。中には、情報提供文書に記載してほしい内容を提示している医療機関もあります。
 
そのため、薬局薬剤師は、連携充実加算を算定する医療機関のホームページをチェックして、研修会へ参加するとともに、情報提供文書のフォーマットなどを確認することが大切です。
 
医療機関が求める情報についてあらかじめ把握することで、患者さんへの聞き取りを適切に行うことができるでしょう。一つひとつの丁寧な取り組みが、患者さんの治療効果の向上や副作用の予防・軽減につながります

5.外来がん化学療法を受ける患者さんのサポート体制を整えよう

外来がん化学療法を実施するにあたって、医療機関内の連携や地域の薬局と情報共有することは、患者さんの薬物治療に大きく影響します。患者さんが安心安全にがん化学療法を続けるために、医療機関と薬局が連携して患者さんが治療を継続できるようサポートすることが大切です。外来腫瘍化学療法診療料1を算定する医療機関は、自施設のスタッフや薬局と連携して患者さんのサポート体制を整え、連携充実加算の算定を目指しましょう。

 
🔽 2024年度調剤報酬改定について解説した記事はこちら

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。