薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.04.24 薬剤師のスキルアップ

感染対策向上加算とは?1・2・3の算定要件や施設基準について解説

文:篠原奨規(薬剤師)

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、医療機関における感染対策がさらに重視されるようになりました。そのような背景から、2022年度の診療報酬改定で新設されたのが感染対策向上加算です。本記事では、感染対策向上加算1・2・3の算定要件や施設基準、届出方法について解説します。また、2024年度診療報酬改定における主な変更点などについても、表を用いて分かりやすく解説します。

1.感染対策向上加算とは?

感染対策向上加算とは、診療報酬の入院基本料等加算のひとつで、医療機関の感染防止対策の実施や、地域の医療機関などが連携して実施する感染症対策の取り組み、新興感染症の発生時などに都道府県などの要請を受けて感染症患者を受け入れる体制などの確保について評価するものです。
 
2022年度の診療報酬改定において、従来の感染防止対策加算を発展させた形で導入されました。施設基準によって、感染対策向上加算1・2・3に分類されます。
 
本加算では、医療機関における感染制御チーム(ICT)の設置が求められるほか、地域の医療機関や行政と連携した感染症対策の推進、感染症の監視や分析(サーベイランス)への参加が必要とされます。個々の医療機関だけでなく、地域全体での感染防止体制の強化を目的としているのが特徴です。
 
参照:令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項I(感染症対策)|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

1-1.外来感染対策向上加算とは?

外来感染対策向上加算とは、外来診療を行う診療所が感染防止対策を強化し、地域の感染症対策に貢献する取り組みを評価するために、2022年度の診療報酬改定で新設された加算です。外来診療において患者さん1人につき月1回に限り6点を算定します。
 
感染対策向上加算が入院患者さんを対象としているのに対し、外来感染対策向上加算は外来診療に特化している点が特徴です。算定にあたっては、平時からの感染防止対策の徹底に加え、地域の医療機関と連携して感染症対策を推進することが求められます。
 
参照:令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項I(感染症対策)|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

2.感染対策向上加算の2024年度診療報酬改定における主な変更点

2024年度の診療報酬改定における感染対策向上加算の変更点は、以下のとおりです。

 

● 第8次医療計画における協定締結の枠組みを反映した施設基準の変更
● 介護保険施設等との連携推進を目的とした施設基準の追加

 

それぞれの変更点について解説します。

 

2-1.第8次医療計画における協定締結の枠組みを反映した施設基準の変更

2024年度より運用開始となった第8次医療計画における協定締結の枠組みを踏まえ、2024年度の診療報酬改定では、感染対策向上加算と外来感染対策向上加算の施設基準の見直しが行われています。具体的な変更内容は、以下のとおりです。

 

加算 改定前 改定後
感染対策向上加算1 新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制を有し、そのことを自治体のホームページにより公開していること。 都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関であること。
感染対策向上加算2 新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者または疑い患者を受け入れる体制を有し、そのことを自治体のホームページにより公開していること。 同上
感染対策向上加算3 新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者もしくは疑い患者を受け入れる体制または発熱患者の診療等を実施する体制を有し、そのことを自治体のホームページにより公開していること。 都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関または都道府県知事の指定を受けている第二種協定指定医療機関(発熱外来に係る措置を講ずるものに限る。)であること。
外来感染対策向上加算 新興感染症の発生時等に、都道府県等の要請を受けて感染症患者を受け入れる体制を有し、そのことを自治体のホームページにより公開していること。 都道府県知事の指定を受けている第二種協定指定医療機関(発熱外来に係る措置を講ずるものに限る。)であること。

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【ポストコロナにおける感染症対策】|厚生労働省

 

2-2.介護保険施設等との連携推進を目的とした施設基準の追加

感染対策向上加算の施設基準として、連携する介護保険施設などから求めがあった場合には、現地を訪問して感染対策に関する助言を行うことに加え、院内感染対策に関する研修を合同で実施することを推奨する内容が追加されました。
 
さらに、感染対策向上加算1における感染制御チームの職員の専従業務として、介護保険施設などに対する助言が含まれることが明記されました。

 

改定前 改定後
感染対策向上加算の施設基準:
新設
感染対策向上加算の施設基準:
介護保険施設等から求めがあった場合には、当該施設等に赴いての実地指導等、感染対策に関する助言を行うとともに、院内感染対策に関する研修を介護保険施設等と合同で実施することが望ましい。
感染対策向上加算1の施設基準:
感染防止対策部門内に以下の構成員からなる感染制御チームを組織し、感染防止に係る日常業務を行うこと。
ア~エ(略)
アに定める医師またはイに定める看護師のうち1名は専従であること。なお、感染制御チームの専従の職員については、抗菌薬適正使用支援チームの業務を行う場合および感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の医療機関に対する助言に係る業務を行う場合には、感染制御チームの業務について専従とみなすことができる。
感染対策向上加算1の施設基準:
感染防止対策部門内に以下の構成員からなる感染制御チームを組織し、感染防止に係る日常業務を行うこと。
ア~エ(略)
アに定める医師またはイに定める看護師のうち1名は専従であること。なお、感染制御チームの専従の職員については、抗菌薬適正使用支援チームの業務を行う場合および感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の医療機関に対する助言に係る業務を行う場合および介護保険施設等からの求めに応じ、当該介護保険施設等に対する助言に係る業務を行う場合には、感染制御チームの業務について専従とみなすことができる。ただし、介護保険施設等に赴いて行う助言に携わる時間は、原則として月10時間以下であること。

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【ポストコロナにおける感染症対策】|厚生労働省

3.感染対策向上加算1・2・3の点数

感染対策向上加算1・2・3の算定点数は、以下のとおりです。

 

加算 点数
感染対策向上加算1 710点
感染対策向上加算2 175点
感染対策向上加算3 75点

参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省

4.感染対策向上加算の算定要件

感染対策向上加算は、後述する施設基準を満たし、届出を行った医療機関において、入院している患者さんに対して入院初日に算定できます。
 
ただし、感染対策向上加算3に限り、入院期間が90日を超えるたびに算定することも可能で、入院日から起算して91日目や181日目などにおいても算定できます。
 
なお、感染対策向上加算1と2は入院期間が通算される再入院の場合には算定ができず、感染対策向上加算3は通算した入院期間を算出します。
 
また、感染対策向上加算を算定するにあたっては、院内に感染制御チームを設置し、以下の業務を行うこととされています。
 

ア 感染制御チームは、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行う。また、院内感染事例、院内感染の発生率に関するサーベイランス等の情報を分析、評価し、効率的な感染対策に役立てる。院内感染の増加が確認された場合には病棟ラウンドの所見およびサーベイランスデータ等を基に改善策を講じる。巡回、院内感染に関する情報を記録に残す。
イ 感染制御チームは微生物学的検査を適宜利用し、抗菌薬の適正使用を推進する。感染対策向上加算1および感染対策向上加算2の届出を行っている保険医療機関にあっては、バンコマイシン等の抗MRSA薬および広域抗菌薬等の使用に際して届出制又は許可制をとり、投与量、投与期間の把握を行い、臨床上問題となると判断した場合には、投与方法の適正化をはかる。感染対策向上加算3の届出を行っている保険医療機関にあっては、感染対策向上加算1を算定する他の保険医療機関又は地域の医師会とのカンファレンス等により助言を受け、適切に抗MRSA薬および広域抗菌薬等が使用されているか確認する。
ウ 感染制御チームは院内感染対策を目的とした職員の研修を行う。また院内感染に関するマニュアルを作成し、職員がそのマニュアルを遵守していることを巡回時に確認する。
エ 感染制御チームは緊急時に地域の医療機関同士が速やかに連携して各医療機関の対応への支援がなされるよう、日常的な相互の協力関係を築く。なお、その際、感染対策向上加算1の届出を行っている保険医療機関の感染制御チームが中心的な役割を担う。
オ 感染制御チームは保健所や地域の医師会と適切な連携体制を構築する。

 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

5.感染対策向上加算の施設基準

感染対策向上加算を算定するには、院内の感染対策だけではなく、他の医療機関や介護施設と連携して地域の感染対策の体制を整備しなければなりません。
 
ここからは、感染対策向上加算の施設基準について、感染対策向上加算1・2・3に共通する項目と異なる項目に分けて解説します。

 

5-1.感染対策向上加算1・2・3に共通する施設基準

感染対策向上加算1・2・3に共通する施設基準は、以下のとおりです。

 

(1)感染防止対策部門を設置していること。医療安全対策加算に係る医療安全管理部門をもって感染防止対策部門としても差し支えない。
(2)感染防止対策の業務指針および院内感染管理者または感染制御チームの具体的な業務内容が整備されていること。
(3)感染制御チームにより、最新のエビデンスに基づき、自施設の実情に合わせた標準予防策、感染経路別予防策、職業感染予防策、疾患別感染対策、洗浄・消毒・滅菌、抗菌薬適正使用等の内容を盛り込んだ手順書(マニュアル)を作成し、各部署に配布していること。なお、手順書は定期的に新しい知見を取り入れ改訂すること。
(4)感染制御チームにより、職員を対象として、少なくとも年2回程度、定期的に院内感染対策に関する研修を行っていること。なお当該研修は安全管理の体制確保のための職員研修とは別に行うこと。※1
(5)感染制御チームにより、1週間に1回程度、定期的に院内を巡回し、院内感染事例の把握を行うとともに、院内感染防止対策の実施状況の把握・指導を行うこと。
(6)当該医療機関の見やすい場所に、院内感染防止対策に関する取組事項を掲示していること。※2
(7)公益財団法人日本医療機能評価機構等、第三者機関による評価を受けていることが望ましい。
(8)外来感染対策向上加算に係る届出を行っていない医療機関であること。
(9)介護保険施設等または指定障害者支援施設等から求めがあった場合には、当該施設等に赴いての実地指導等、感染対策に関する助言を行うとともに、(4)の院内感染対策に関する研修を介護保険施設等または指定障害者支援施設等と合同で実施することが望ましい。

 

※1:感染制御チームが当該研修を主催している場合は、必ずしも感染制御チームが講師として行う必要はない。 ただし、当該研修は、以下に掲げる事項を満たすことが必要であり、最新の知見を共有することも求められるものであることに留意すること。

 

● 院内感染対策の基礎的考え方および具体的方策について、当該医療機関の職員に周知徹底を行うことで、個々の職員の院内感染対策に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能の向上等を図るものであること。
● 当該医療機関の実情に即した内容で、職種横断的な参加の下に行われるものであること。
● 医療機関全体に共通する院内感染対策に関する内容について、年2回程度定期的に開催するほか、必要に応じて開催すること。
● 研修の実施内容(開催または受講日時、出席者、研修項目)について記録すること。 なお、研修の実施に際して、AMR臨床リファレンスセンターが公開している医療従事者向けの資料を活用することとして差し支えない。

 

※2:以下の内容について掲示すること。

 

● 院内感染対策に係る基本的な考え方
● 院内感染対策に係る組織体制、業務内容
● 抗菌薬適正使用のための方策
● 他の医療機関等との連携体制

 

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 令和4年3月31日|厚生労働省

 

5-2.感染対策向上加算1・2・3の異なる施設基準

先述した共通の施設基準に加えて、以下の表に示す施設基準を満たす必要があります。

 

  感染対策向上加算1 感染対策向上加算2 感染対策向上加算3
一般病床の数 規定なし(300床未満でも届出可能) 300床未満を標準とする
感染制御チームの構成
(感染防止対策部門内に感染制御チームを組織し、感染防止に係る日常業務を行うこと。)
ア 感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師(歯科医療を担当する医療機関にあっては、当該経験を有する専任の常勤歯科医師)
イ 5年以上感染管理に従事した経験を有し、感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師※6
ウ 3年以上の病院勤務経験を持つ感染防止対策にかかわる専任の薬剤師
エ 3年以上の病院勤務経験を持つ専任の臨床検査技師
※3
ア 感染症対策に3年以上の経験を有する専任の常勤医師(歯科医療を担当する医療機関にあっては、当該経験を有する専任の常勤歯科医師)
イ 5年以上感染管理に従事した経験を有する専任の看護師
ウ 3年以上の病院勤務経験を持つまたは適切な研修を修了した感染防止対策にかかわる専任の薬剤師※7
エ 3年以上の病院勤務経験を持つまたは適切な研修を修了した専任の臨床検査技師※7
※4
ア 専任の常勤医師(歯科医療を担当する医療機関にあっては、当該経験を有する専任の常勤歯科医師)
イ 専任の看護師
※5
カンファレンスの実施や参加 感染制御チームにより、保健所および地域の医師会と連携し、感染対策向上加算2または3に係る届出を行った医療機関と合同で、少なくとも年4回程度、定期的に院内感染対策に関するカンファレンスを行い、その内容を記録していること。また、このうち少なくとも1回は、新興感染症の発生等を想定した訓練を実施すること。本カンファレンスはビデオ通話が可能な機器を用いて実施しても差し支えない(感染対策向上加算2や3を算定する複数の医療機関と合同でカンファレンスを開催してもよい。保健所および地域の医師会のいずれかまたは両方が参加していない場合には、要件に該当しない。ただし、やむを得ない理由により参加できず、参加に代えて、後日書面等によりカンファレンスの内容を共有している場合は該当する。保健所や地域の医師会が主催するカンファレンスに参加する場合は該当しない。なお、共催の場合には要件としてみなされる)。 感染制御チームは、少なくとも年4回程度、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関が定期的に主催する院内感染対策に関するカンファレンスに参加していること。なお、感染対策向上加算1に係る届出を行った複数の医療機関と連携する場合は、当該複数の医療機関が開催するカンファレンスに、それぞれ少なくとも年1回参加し、合わせて年4回以上参加していること(連携する感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関が複数ある場合、これらの医療機関が合同で開催するカンファレンスに参加すれば、それぞれの医療機関のカンファレンスに1回ずつ参加したものとみなせる)。また、感染対策向上加算1に係る届出を行った医療機関が主催する新興感染症の発生等を想定した訓練については、少なくとも年1回以上参加していること。本カンファレンスは、ビデオ通話を用いて実施しても差し支えない。
他の医療機関への院内感染対策に関する助言を行う体制 感染制御チームにより、感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の医療機関に対し、必要時に院内感染対策に関する助言を行う体制を有すること。 規定なし
抗菌薬の適正使用に向けた取り組み 院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制を有すること。特に、特定抗菌薬(広域スペクトラムを有する抗菌薬、抗MRSA薬等)については、届出制または許可制の体制をとること。 院内の抗菌薬の適正使用について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関または地域の医師会から助言を受けること。また、細菌学的検査を外部委託して いる場合は、薬剤感受性検査に関する詳細な契約内容を確認し、検査体制を整えておくなど「中小病院における薬剤耐性菌アウトブレイク対応ガイダンス」に沿った対応を行っていること。
サーベイランスへの参加 院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること。 規定なし
協定指定医療機関の指定 都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関であること。 都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関または第二種協定指定医療機関(発熱外来に係る措置を講ずるものに限る。)であること。
新興感染症発生時の体制 新興感染症の発生時等に、感染症患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制を有すること。 新興感染症の発生時等に、感染症患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制を有すること。
新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応を想定した地域連携に係る体制について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関等とあらかじめ協議されていること。
新興感染症の発生時等に、感染症患者もしくは疑い患者を受け入れることを念頭に、汚染区域や清潔区域のゾーニングを行うことができる体制または発熱患者等の診療を実施することを念頭に、発熱患者等の動線を分けることができる体制を有すること。
新興感染症の発生時や院内アウトブレイクの発生時等の有事の際の対応を想定した地域連携に係る体制について、連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関等とあらかじめ協議されていること。
他の医療機関への感染防止対策に関する評価の実施 他の医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っている医療機関に限る。) と連携し、少なくとも年1回程度、当該加算に関して連携するいずれかの医療機関に相互に赴いて感染防止対策に関する評価を行い、当該医療機関にその内容を報告すること(複数の医療機関が、同一の医療機関の「感染防止対策に関する評価」を行うことは可能。感染制御チームを構成する職種のうち、医師・看護師を含む2名以上が評価を行う。リアルタイムでの画像を介したコミュニケーション(ビデオ通話)が可能な機器を用いて実施しても差し支えない)。また、少なくとも年1回程度、他の医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っている医療機関に限る。)から当該評価を受けていること。
なお、医療安全対策地域連携加算1または2を算定している医療機関については、当該加算に係る評価と本要件に係る評価とを併せて実施しても差し支えない。
規定なし
抗菌薬適正使用支援チームの構成 以下の構成員からなる抗菌薬適正使用支援チームを組織し、抗菌薬の適正使用の支援に係る業務を行うこと(新たに抗菌薬適正使用支援チームに係る体制を整備する場合、届出時点で当該体制が整備されていれば届出可能。感染制御チームの構成員と兼任できるが、いずれかのチームにおいて専従である者は、抗菌薬適正使用支援チームの業務または感染制御チームの業務のいずれかのみ実施可能)。
ア 感染症の診療について3年以上の経験を有する専任の常勤医師(歯科医療を担当する医療機関にあっては、当該経験を有する専任の常勤歯科医師)
イ 5年以上感染管理に従事した経験を有し、感染管理に係る適切な研修を修了した専任の看護師※6
ウ 3年以上の病院勤務経験を持つ感染症診療にかかわる専任の薬剤師
エ 3年以上の病院勤務経験を持つ微生物検査にかかわる専任の臨床検査技師(院内に細菌検査室がなく、微生物検査を院外に委託している医療機関においては、微生物検査に係る管理を行っている院内の専任の臨床検査技師でも可)
※8
規定なし
抗菌薬適正使用支援チームによる相談等を受ける体制 抗菌薬適正使用支援チームが、他の医療機関(感染対策向上加算1に係る届出を行っていない医療機関に限る。)から、抗菌薬適正使用の推進に関する相談等を受ける体制を整備していること。また、抗菌薬適正使用の推進に関する相談等を受ける体制があることについて、定期的なカンファレンスの場を通じて、他の医療機関に周知すること。 規定なし

 

※3:アに定める医師またはイに定める看護師のうち1名は専従であること。なお、感染制御チームの専従の職員については、抗菌薬適正使用支援チームの業務を行う場合および感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の医療機関に対する助言に係る業務を行う場合および介護保険施設等または指定障害者支援施設等からの求めに応じ、当該介護保険施設等または指定障害者支援施設等に対する助言に係る業務を行う場合には、感染制御チームの業務について専従とみなすことができる。ただし、介護保険施設等または指定障害者支援施設等に赴いて行う助言に携わる時間は、原則として月10時間以下であること。当該医療機関内に上記のアからエまでに定める者のうち1名が院内感染管理者として配置されていること。なお、当該職員は医療安全対策加算に規定する医療安全管理者とは兼任できないが、第2部通則7に規定する院内感染防止対策に掲げる業務は行うことができる。また、アに掲げる常勤医師については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている専任の非常勤医師(感染症対策に3年以上の経験を有する医師に限る。)を2名組み合わせることにより、常勤医師の勤務時間帯と同じ時間帯にこれらの非常勤医師が配置されている場合には、当該2名の非常勤医師が感染制御チームの業務に従事する場合に限り、当該基準を満たしていることとみなすことができる。
 
※4:当該医療機関内にアからエまでに定める者のうち1名が院内感染管理者として配置されていること。なお、当該職員は医療安全対策加算に係る医療安全管理者とは兼任できないが、第2部通則7に規定する院内感染防止対策に掲げる業務は行うことができる。
 
※5:当該医療機関内に上記のアおよびイに定める者のうち1名が院内感染管理者として配置されていること。アの常勤医師およびイの看護師については、適切な研修※7を修了していることが望ましい。なお、当該職員は医療安全対策加算に係る医療安全管理者とは兼任できないが、第2部通則7に規定する院内感染防止対策に掲げる業務は行うことができる。
 
※6:感染管理に係る適切な研修とは、次の事項に該当する研修のことをいう。

 

ア 国または医療関係団体等が主催する研修であること(600時間以上の研修期間で、修了証が交付されるもの)。
イ 感染管理のための専門的な知識・技術を有する看護師の養成を目的とした研修であること。
ウ 講義および演習により、次の内容を含むものであること。
 ○ 感染予防・管理システム
 ○ 医療関連感染サーベイランス
 ○ 感染防止技術
 ○ 職業感染管理
 ○ 感染管理指導
 ○ 感染管理相談
 ○ 洗浄・消毒・滅菌とファシリティマネジメント等について

 

※7:適切な研修とは、次の事項に該当する研修のことをいう。

 

ア 国または医療関係団体等が主催する研修であること(修了証が交付されるもの)。
イ 医療機関における感染防止対策の推進を目的とした研修であること。
ウ 講義により、次の内容を含むものであること。
 ○ 標準予防策と経路別予防策
 ○ 院内感染サーベイランス
 ○ 洗浄・消毒・滅菌
 ○ 院内アウトブレイク対策
 ○ 行政(保健所)との連携
 ○ 抗菌薬適正使用

 

※8:アからエのうちいずれか1人は専従であること。なお、抗菌薬適正使用支援チームの専従の職員については、感染制御チームの専従者と異なることが望ましい。また、抗菌薬適正使用支援チームの専従の職員については、感染制御チームの業務を行う場合および感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った他の医療機関に対する助言に係る業務を行う場合には、抗菌薬適正使用支援チームの業務について専従とみなすことができる。 また、アに掲げる常勤医師については、週3日以上常態として勤務しており、かつ、所定労働時間が週22時間以上の勤務を行っている専任の非常勤医師(感染症の診療について3年以上の経験を有する医師に限る。)を2名組み合わせることにより、常勤医師の勤務時間帯と同じ時間帯にこれらの非常勤医師が配置されている場合には、当該2名の非常勤医師が感染制御チームの業務に従事する場合に限り、当該基準を満たしていることとみなすことができる。
 
抗菌薬適正使用支援チームは以下の業務を行うこと。

 

ア 抗MRSA薬および抗緑膿菌作用のある抗菌薬を含めた広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染症兆候のある患者、免疫不全状態等の特定の患者集団など感染症早期からのモニタリングを実施する患者を施設の状況に応じて設定する。
イ 感染症治療の早期モニタリングにおいて、アで設定した対象患者を把握後、適切な微生物検査・血液検査・画像検査等の実施状況、初期選択抗菌薬の選択・用法・用量の適切性、 必要に応じた治療薬物モニタリングの実施、微生物検査等の治療方針への活用状況などを経時的に評価し、必要に応じて主治医にフィードバックを行い、その旨を記録する。
ウ 適切な検体採取と培養検査の提出(血液培養の複数セット採取など)や、施設内のアンチバイオグラムの作成など、微生物検査・臨床検査が適正に利用可能な体制を整備する。
エ 抗菌薬使用状況や血液培養複数セット提出率などのプロセス指標および耐性菌発生率や抗菌薬使用量などのアウトカム指標を定期的に評価する。
オ 当該医療機関の外来における過去1年間の急性気道感染症および急性下痢症の患者数並びに当該患者に対する経口抗菌薬の処方状況を把握する。
カ 抗菌薬の適正な使用を目的とした院内研修を少なくとも年2回実施する。なお、当該院内研修については、感染対策向上加算に係る院内感染対策に関する研修と併せて実施しても差し支えない。また、院内の抗菌薬使用に関するマニュアルを作成する。当該院内研修およびマニュアルには、厚生労働省健康局結核感染症課「抗微生物薬適正使用の手引き」を参考に、外来における抗菌薬適正使用に係る内容を含めること。
キ 当該医療機関内で使用可能な抗菌薬の種類、用量等について定期的に見直し、必要性の低い抗菌薬について医療機関内での使用中止を提案する。
ク 院内の抗菌薬の適正使用を監視するための体制に係る業務については、施設の実態に応じて、感染制御チームではなく、抗菌薬適正使用支援チームが実施しても差し支えない。

 

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1) 令和4年3月31日|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その3)令和4年4月11日|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その19) 令和4年7月26日|厚生労働省

 

5-3.感染対策向上加算の施設基準の届出

感染対策向上加算を算定するには、施設基準の届出が必要です。「基本診療料の施設基準等に係る届出書」と「感染対策向上加算に係る届出書添付書類」(様式35の2)を、医療機関の所在地を管轄する厚生局事務所等へ提出します。
 
提出は郵送で行い、到着したかを確認したい場合は、レターパックや簡易書留など追跡可能なサービスを利用しましょう。また、提出前には必ず写しを取り、保管しておきましょう。
 
なお、2024年3月31日時点で感染対策向上加算1~3のいずれかを届け出ている医療機関は、2024年12月31日までの間、以下の施設基準は該当しているものとみなされる経過措置が設けられていました。

 

● 感染対策向上加算1・2:都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関であること。
● 感染対策向上加算3:都道府県知事の指定を受けている第一種協定指定医療機関または第二種協定指定医療機関(発熱外来に係る措置を講ずるものに限る。)であること。

 

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)|関東信越厚生局

6.感染対策向上加算に関連した加算

感染対策向上加算に関連して算定できる加算には、以下のものがあります。

 

● 指導強化加算
● 連携強化加算
● サーベイランス強化加算
● 抗菌薬適正使用体制加算

 

各加算について、算定点数や施設基準、届出に用いる資料などを解説します。

 

6-1.指導強化加算

指導強化加算とは、感染対策向上加算1を算定している医療機関の感染制御チームの専従医師または看護師が、他の医療機関の院内感染対策を支援するために訪問し、助言を行った場合に算定できる加算です。
 
感染対策向上加算2・3または外来感染対策向上加算を算定している医療機関を訪問し、院内感染対策などに関する助言をすることで30点が加算されます。施設基準は以下のとおりです。

 

1. 感染対策向上加算1の届出を行っている医療機関であること。
2. 感染制御チームの専従医師または看護師が、過去1年間に4回以上、感染対策向上加算2、感染対策向上加算3または外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関に赴き院内感染対策に関する助言を行っていること。

 

「指導強化加算に係る届出書添付書類」(様式35の3)を用いて、施設基準の届出を行います。

 

6-2.連携強化加算

連携強化加算とは、感染対策向上加算2または3を算定する医療機関が、感染対策向上加算1を算定している医療機関に対し、感染症の発生状況や抗菌薬の使用状況などを定期的に報告することで算定できる加算です。この取り組みにより30点が加算されます。
 
算定にあたっては、以下の施設基準を満たした上で、「連携強化加算・サーベイランス強化加算・抗菌薬適正使用体制加算に係る届出書添付書類」(様式1の5)を用いて届出を行う必要があります。

 

1. 感染対策向上加算2または感染対策向上加算3に係る届出を行っている医療機関であること。
2. 当該医療機関が連携する感染対策向上加算1に係る届出を行った他の医療機関に対し、過去1年間に4回以上、感染症の発生状況、抗菌薬の使用状況等について報告を行っていること。

 

6-3.サーベイランス強化加算

サーベイランス強化加算では、感染対策向上加算2または感染対策向上加算3を算定する医療機関が、地域や全国のサーベイランスに参加することで3点を算定できます。
 
サーベイランスを通じて感染対策のデータを収集・分析し、地域全体の感染対策向上を目指す取り組みを評価するものです。
 
施設基準に関する届出には、「連携強化加算・サーベイランス強化加算・抗菌薬適正使用体制加算に係る届出書添付書類」(様式1の5)を使用します。施設基準は以下のとおりです。

 

1. 感染対策向上加算2または感染対策向上加算3に係る届出を行っていること。
2. 院内感染対策サーベイランス(JANIS)、感染対策連携共通プラットフォーム(J-SIPHE)等、地域や全国のサーベイランスに参加していること。

 

6-4.抗菌薬適正使用体制加算

抗菌薬適正使用体制加算は、日本におけるAccess抗菌薬の使用比率が低い現状を改善し、適正使用を促進することを目的として、2024年度の診療報酬改定で新設された加算です。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【ポストコロナにおける感染症対策】|厚生労働省
 
算定点数は5点で、「連携強化加算・サーベイランス強化加算・抗菌薬適正使用体制加算に係る届出書添付書類」(様式1の5)を使用して施設基準の届出を行います。施設基準は以下のとおりです。

 

1. 抗菌薬の使用状況のモニタリングが可能なサーベイランスに参加していること。
2. 直近6カ月における入院中の患者以外の患者に使用する抗菌薬のうち、Access抗菌薬に分類されるものの使用比率が60%以上または1のサーベイランスに参加する病院または有床診療所全体の上位30%以内であること。

7.医療機関同士で連携を取り、地域の感染症対策の質向上を目指そう

感染対策向上加算は、感染防止対策を強化する医療機関を評価するために設けられた加算で、2022年度の診療報酬改定において新設されました。2024年度の改定では施設基準が見直され、第8次医療計画における協定締結の枠組みを反映した内容への変更と、介護施設との連携に関する要件の追加が行われました。
 
感染対策向上加算加算1・2・3にはそれぞれ異なる施設基準があり、医療機関の取り組みに応じた評価が行われます。医療機関同士が連携を取ることによって、地域における感染症対策の質の向上が期待されています。

 
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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。