薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.05.21 薬剤師のスキルアップ

病院薬剤師の平均年収はいくら?年収1000万円は可能?年齢別データを紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

病院薬剤師の平均年収は、年齢や職場によって異なります。地域によっても違いがあるため、病院薬剤師として就職しようと考えている薬剤師の中には、どの程度の年収が期待できるのか気になる人もいることでしょう。本記事では、病院薬剤師の年収について、20代・30代・40代などの年齢別や国立病院・公立病院といった職場別の平均金額を紹介するとともに、薬局薬剤師との比較データ、年収1000万円を稼ぐ病院薬剤師の割合、年収アップを目指す方法などをお伝えします。

1.病院薬剤師の平均年収

中央社会保険医療協議会の「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和5年実施-」によると、一般病院で働く常勤の病院薬剤師の平均年収は568万8,862円です。
 
平均年収の内訳は、平均給与年度額が456万1,694円、賞与が112万7,167円です。賞与は平均給与年度額の25%程度であることから、病院薬剤師は平均3カ月分程度の賞与を受け取っていることが分かります。
 
ただし、病院薬剤師の平均年収は、年齢によって異なります。また、国立や公立、法人など、職場によっても違いがあるでしょう。ここでは、病院薬剤師の平均年収について、年齢別、職場別に詳しくお伝えします。

 

1-1.病院薬剤師の年齢別の平均年収

厚生労働省が公開している資料「薬剤師の偏在への対応策」によると、病院薬剤師の年齢別の平均年収は以下のとおりです。

 

年齢 常勤 非常勤
20代 380万円 300万円
30代 500万円 250万円
40代 600万円 200万円
50代 700万円 200万円
60代 600万円 250万円

 

常勤の病院薬剤師の平均年収は、年齢とともに上昇する傾向にあり、50代が最も高く、60代になるとやや下がっています
 
常勤薬剤師の年収の変化については、昇給・昇進や、定年のタイミングが影響していると考えられます。経験を積んだり、資格を取得したりすることで昇給や昇進をしていき、年齢を重ねるごとに年収が上がっていきます。60代は定年を機に役職を降りることもあるため、平均年収が下がっていると考えられます。
 
一方、非常勤の病院薬剤師は平均年収が250万円前後となっています。常勤とは異なり、20代が最も高く、年齢を重ねるごとに徐々に下がっていき、60代になると上昇しているのが特徴です。
 
非常勤薬剤師は、主にフルタイムで働くことが難しい人や、プライベートを充実させたい人などが選択する働き方です。20代から50代は、家庭を持ったり、親の介護をしたりする時期と重なりやすく、育児や介護などを優先して働く時間をセーブすると、収入が減ることもあるでしょう。そのため、20代から50代にかけて平均年収が徐々に下がっていると考えられます。
 
60代は定年を迎えた常勤薬剤師が非常勤に切り替えたり、仕事に当てる時間が得られやすくなったりする時期のため、平均年収がやや上昇していると推測されます。

 

1-2.国公立病院などで働く場合の平均年収

第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和5年実施-」では、病院の開設主体別に、常勤の病院薬剤師の平均年収が公表されています。国公立病院などで働く場合の平均年収は以下のとおりです。

 

病院の種類 平均給与の年額 賞与 平均年収
国立 477万1,145円 149万4,326円 626万5,471円
公立 458万24円 137万4,903円 595万4,927円
公的 473万9,484円 131万5,520円 605万5,003円
社会保険関連法人 463万1,788円 131万7,840円 594万9,629円

 

ここでの国立とは、国、独立行政法人国立病院機構、国立大学法人、独立行政法人労働者健康安全機構、国立高度専門医療研究センター、独立行政法人地域医療機能推進機構を指しています。
 
公立は、都道府県立、市町村立、地方独立行政法人立病院、公的は日赤、済生会、北海道社会事業協会、厚生連、国民健康保険団体連合会です。
 
社会保険関係法人は、健康保険組合およびその連合会、共済組合およびその連合会、国民健康保険組合が含まれています。
 
上記の資料によると、病院薬剤師の平均年収は国立病院が最も高く、次いで公的病院、公立病院、社会保険関連法人の順となっています。

 

1-3.医療法人や個人病院などで働く場合の平均年収

同じく「第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告-令和5年実施-」によると、医療法人や個人病院などで働く常勤の病院薬剤師の平均年収は以下のとおりです。

 

種類 平均給与の年額 賞与 平均年収
医療法人 441万2,516円 87万3,867円 528万6,383円
その他 455万7,856円 99万4,438円 555万2,294円
個人 611万1,664円 45万5,266円 656万6,931円

 

ここでのその他とは、公益法人、学校法人、社会福祉法人、医療生協、会社、社会医療法人、その他の法人などを指します。
 
上記のデータでは、個人病院の平均年収が最も高く、次いでその他、医療法人となっています。

 
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2.病院薬剤師は薬局薬剤師よりも年収が低い?

病院薬剤師は、一般的に薬局薬剤師よりも年収が低い印象があるかもしれません。「薬剤師の偏在への対応策」によると、病院薬剤師と薬局薬剤師の年齢別の累計年収は以下のとおりです。

 

年齢 病院薬剤師(常勤) 薬局薬剤師(常勤)
20代 2,280万円 2,580万円
30代 7,280万円 7,880万円
40代 13,280万円 13,880万円
50代 20,280万円 19,880万円
60代 23,280万円 22,768万円

 

上記より、20代、30代、40代の累計年収は、病院薬剤師の方が薬局薬剤師よりも低いものの、50代、60代になると、病院薬剤師の方が若干高くなっており、生涯年収に大きな差はないことが分かります。

 
🔽 薬剤師の年収が低いといわれる理由などについて解説した記事はこちら

3.病院薬剤師が年収1000万円を稼ぐことは可能?

厚生労働省が公開している資料『「薬剤師の需給動向把握事業」報告書』では、医療機関で働く薬剤師の年収に関する調査結果が記載されています。医療機関で働く薬剤師の年収状況は以下のとおりです。

 

年収 医療機関勤務(343人)
人数 割合
200万円未満 6人 1.7%
200万~300万円未満 11人 3.2%
300万~400万円未満 40人 11.7%
400万~500万円未満 102人 29.7%
500万~600万円未満 88人 25.7%
600万~700万円未満 38人 11.1%
700万~1000万円未満 56人 16.3%
1000万円以上 2人 0.6%

 

上記より、病院薬剤師で年収1000万円以上を稼ぐことは不可能ではないものの、その割合はとても低く、狭き門といえます。

 
🔽 薬剤師は年収1000万円を稼げるのかなどについて解説した記事はこちら

4.病院薬剤師が年収アップを目指すには?

病院薬剤師が現職で年収アップを目指すのであれば、資格取得や管理職への昇進が必要でしょう。現職での年収アップが難しい場合には、転職を検討するのも手段のひとつです。ここでは、病院薬剤師が年収アップを目指す方法についてお伝えします。

 

4-1.認定薬剤師・専門薬剤師の資格を取得する

認定薬剤師や専門薬剤師などの資格を取得することは、病院薬剤師にとって年収アップにつながります。例えば、資格は取得する過程でさまざまなことを学ぶため、資格取得を通じて日常業務に役立つ知識やスキルを身に付けることが可能です。職場や患者さんにより貢献できるようになれば、人事考課での評価アップなどが期待できるでしょう。
 
また、認定薬剤師や専門薬剤師には、がんや感染症などの専門領域に関するものが少なくありません。自身が担当している業務やこれから担当したい業務に関連する資格を取得することで、院内での活躍の場が広がるでしょう。昇給や昇進のきっかけになることもあるほか、職場によっては資格手当が支給されることもあります。

 
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4-2.管理職を目指す

現在の職場で年収アップをする方法として一般的なのが、昇進をすることでしょう。病院薬剤師の昇進としては、薬剤部長や主任などの役職に就くことが挙げられます。責任のあるポジションに就くことで、給料アップにつながるのはもちろん、自身のキャリアアップにもなるため、転職時にも有利に働きます。
 
ただし、通常業務だけでなく、スタッフの業務の把握やリソース管理、スタッフの育成、部署としての目標設定、トラブル発生時の対処など、さまざまな業務を担うことになります。そのため、管理職には強い責任感が求められるでしょう。
 
管理職に就くには、経験やスキルだけでなく、他の薬剤師や多職種と良好な関係を築くためのコミュニケーション能力なども必要です。管理職を目指すのであれば、相応のスキルを身に付けるための自己研鑽を行うことが求められます。

 
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4-3.給料の高い求人に応募して転職する

なるべく早く年収アップを実現したいのであれば、現職より給料の高い求人に応募して転職するのも方法のひとつです。資格取得や管理職を目指すのは、ある程度時間がかかりますが、転職をすれば早期に年収アップが叶う可能性もあります。
 
ただし、転職活動ではしっかりと下調べを行うことが大切です。毎月の給料は高かったとしてもボーナスが少ない場合、現職よりも年収が下がる可能性があります。また、現職の福利厚生や昇給・昇進制度などが整っているのであれば、勤続年数を積み重ねることによって、長期的には転職しない方が年収が高くなることも考えられます。
 
🔽 薬剤師が「給料を上げてほしい」と交渉するときのポイントを解説した記事はこちら


 
転職したことを後悔しないためにも、転職活動における事前準備は入念に行うことがポイントです。現職が忙しく、転職活動が十分に進められない場合は、転職エージェントを活用するとよいでしょう。自身の状況や希望に合わせて、転職活動のサポートを受けられます。

5.病院薬剤師の年収は年齢や職場によって異なる

病院薬剤師の年収は、薬局薬剤師と比較して低い印象がありますが、実際は年齢や職場によって異なります。地域によっても異なるため、病院への就職を考えている薬剤師は、年齢や職場、地域などによる差を踏まえた上で、年収を比較するとよいでしょう。
 
現状の給料に不満がある場合、まずは転職サイトなどで相場を確認するのがおすすめです。労働時間や業務内容に見合った給料でない場合には、転職を検討するとよいかもしれません。ただし、福利厚生や昇給・昇進制度によっては、現職で勤続年数を重ねることで、いずれ納得のいく年収がもらえる場合もあります。現時点での年収だけで判断せず、長期的な視点で考えることが大切です。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。