薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.07.10 薬剤師のスキルアップ

【例文付き】調剤薬局の志望動機の書き方とは?就職・転職を成功させるポイント

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

志望動機は、採用担当者が企業のニーズと合致する人材であるかを判断する上で重要なものといえます。調剤薬局の志望動機を作成するときは、企業ごとの特徴や強みを把握した上で、自身の経験やキャリアビジョンを盛り込むことが大切です。本記事では、調剤薬局の概要や仕事内容について解説するとともに、志望動機の書き方や例文、注意点・NG例について紹介します。

1.調剤薬局とは?

調剤薬局とは、主に医師の処方箋に基づいて調剤を行い、患者さんが適切な薬物治療を行えるよう情報提供を行うところです。調剤薬局にはそれぞれ特徴があり、薬局ごとの強みもさまざまです。
 
例えば、診療所や中小規模の医療機関の門前薬局と、総合病院や大学病院など規模の大きな医療機関の門前薬局では、扱う処方箋の内容がやや異なります。在宅医療に力を入れている調剤薬局であっても、注射薬などを扱っているか、終末期医療に対応しているかなどによって、求められる知識やスキルに違いがあるでしょう。
 
また、全国展開をしている大手調剤薬局や地域密着型の中小規模薬局など、調剤薬局の規模もさまざまです。
 
調剤薬局への就職を考えているのであれば、志望する薬局の特徴や強みを把握した上で、どんな職場で働きたいのか、なぜ働きたいのかなどを考えることが大切です。

2.調剤薬局の仕事内容

調剤薬局での仕事には、調剤業務や服薬指導、薬歴管理、健康相談、OTC医薬品などの販売・管理、在宅業務などがあります。調剤業務や服薬指導、薬歴管理については、ほとんどの調剤薬局で行われている業務です。
 
一方、健康相談やOTC医薬品などの販売・管理、在宅業務については、調剤薬局によって違いがあるでしょう。ここでは、それぞれの主な仕事内容について解説します。

 

2-1.調剤業務

調剤薬局の薬剤師は、医師の処方箋に基づいて、医薬品の調剤を行います。処方箋の不備や処方内容、準備した医薬品が処方箋のとおりに用意されているかを確認します。
 
加えて、お薬手帳などを活用して患者さんの服用薬についてチェックし、重複投薬や相互作用の可能性がある場合は、医師へ問い合わせや処方提案などを実施します。
 
🔽 医師への疑義照会について解説した記事はこちら

 

2-2.服薬指導

服薬指導とは、薬剤師の対人業務のひとつで、処方された医薬品について指導や説明を行うことです。
 
用法用量、薬効、注意点などの説明のほか、患者さんから症状や悩み、不安などを聞き取ってアドバイスをします。必要に応じて、処方医へ情報提供し、医療機関と連携しながら、患者さんの薬物治療をサポートします。
 
🔽 服薬指導について解説した記事はこちら

 

2-3.薬歴管理

薬歴とは、薬剤服用歴のことです。調剤薬局の薬剤師は、服薬指導の後に患者さんの薬歴を入力・管理します。薬歴には服薬指導の記録のほか、患者さんの基本情報や服用歴、副作用・アレルギー歴などが記録されており、処方箋の調剤や服薬指導の際に活用します。
 
また、薬歴管理は、調剤報酬を請求する上で欠かせない業務のため、調剤薬局の薬剤師の重要な業務のひとつとなっています。
 
🔽 薬歴について解説した記事はこちら

 

2-4.健康相談

調剤薬局の薬剤師は、患者さんや地域住民からの健康相談を受けることも重要な役割です。

 

● 体調不良の患者さんから医療機関の受診の可否について相談を受けた場合
● サプリメントや医薬品などの飲み合わせの相談を受けた場合
● 患者さんや地域住民が、OTC医薬品を購入する場合

 

上記のようなケースで指導や説明を行い、適切なセルフメディケーションができるようサポートします。

 

2-5.OTC医薬品などの販売・管理

2024年度の診療報酬改定で、地域支援体制加算にOTC医薬品の取り扱いに関する要件が追加されました。加算を算定するためにOTC医薬品を取り扱い始めた調剤薬局も多いでしょう。
 
🔽 地域支援体制加算について解説した記事はこちら


 
昨今は、セルフメディケーションが推進されていることから、OTC医薬品だけでなく健康食品やサプリメントなどを取り揃えている調剤薬局もあります。包括的に地域の健康サポートに取り組む調剤薬局では、OTC医薬品などの販売・管理も業務のひとつです。

 

2-6.在宅業務

在宅業務とは、薬剤師が在宅医療を受ける患者さんに交付された処方箋をもとに調剤を行い、患者さんの居宅に訪問して服薬指導や薬剤管理、衛生材料の提供などを行うことです。
 
在宅業務では、訪問医や訪問看護師、介護職員、ケアマネージャーなどの医療従事者や福祉関係者と連携しながら、患者さんの治療をサポートします。
 
参考:薬剤師|厚生労働省職業情報提供サイト job tag(日本版O-NET)

 
🔽 薬局薬剤師の仕事内容について解説した記事はこちら

3.調剤薬局の志望動機の書き方

調剤薬局の志望動機は、ポイントを押さえて書くことで、説得力のある内容にすることができます。ここでは調剤薬局の志望動機の書き方について、詳しく見ていきましょう。

 

3-1.なぜ調剤薬局を選んだのか明確にする

薬剤師の就職先には、調剤薬局のほかにも、病院やドラッグストア、製薬企業などがあります。さまざまな就職先の中で、なぜ調剤薬局を選んだのかを伝えられる内容にしましょう。

 

3-2.なぜその会社で働きたいのか明確にする

調剤薬局には、大手チェーン薬局や個人薬局、在宅薬局、調剤薬局併設ドラッグストアなどがあります。企業理念や事業内容も調剤薬局によってさまざまです。調剤薬局を選んだ理由だけでなく、多くの企業がある中で、なぜその企業で働きたいのかを明確に記載することが大切です。

 

3-3.入社後のビジョン・どう貢献したいか明確にする

入社後のビジョンを明確化することで、自分の目標や強みをアピールする志望動機を作成することができます。企業が自身を採用するメリットが伝わるよう、入社後にどのように貢献できるのかについてもなるべく具体的に提示しましょう。

 

3-4.企業と自身の強み・スキルを結びつける

求人情報には「求める人物像」が記載されている場合も多いでしょう。自身の強みやスキルがどのように企業への貢献につながるかを提示することも大切です。企業が求める人材に合致していることをアピールしましょう。

 

3-5.具体的なエピソードを盛り込む

具体的なエピソードを志望動機に盛り込むことで、説得力が増します。採用担当者の共感も得られやすくなるでしょう。

 

3-6.自己PRと一貫性を持たせる

志望動機と自己PRに一貫性を持たせることで、自分の強みや経験が入社後の業務に生かせることを分かりやすく示すことができます。企業のニーズと一致していることを伝えられれば、採用担当者によい印象を与えることができるでしょう。

4.調剤薬局の志望動機の例文

続いて、調剤薬局の志望動機の例文を紹介します。ただし、例文はあくまで参考として、自身の強みや得意分野と、志望する企業の特徴を踏まえた内容にしましょう

 

4-1.地域医療に貢献したい

私は地域に根差した医療の提供に関心があります。これまでは病院薬剤師として入院患者さんの薬物治療をサポートしてきましたが、患者さんの中には自宅での服薬管理が不十分なために、入退院を繰り返す患者さんもいました。これからは外来患者さんの健康をサポートし、入退院を繰り返す患者さんを少しでも減らしたいと考えています。
 
地域密着型の薬局として患者さんとのコミュニケーションを重視している貴社で、地域医療に貢献していきたいという思いから志望いたしました。入社した暁には、処方薬についての指導・説明だけでなく、生活環境や価値観などの幅広い情報が得られるよう適切なコミュニケーションを取り、患者さん一人ひとりの健康を支えたいと思っています。

 

4-2.専門知識を向上させたい

私は、研修で学んだ最新の医療情報が服薬指導に役立った経験があります。患者さんから感謝の言葉をいただき、学び続けることの大切さを実感しました。このような経験から、認定薬剤師の資格取得などを通して薬学の知識をさらに深め、患者さんの健康に役立てたいと考えています。
 
貴社は教育制度や研修、認定薬剤師の資格取得支援が充実しており、積極的にスキルアップに取り組める環境で知見を広げ、患者さんの健康を支えられる薬剤師として貢献していきたいと考え、志望いたしました。

 

4-3.在宅医療に参画したい

私は大学での実務実習を通して、訪問医や訪問看護師などと連携し、チームで患者さんや家族に寄り添った服薬指導、薬剤管理などを行う在宅医療に魅力を感じました。また、患者さんの生活を支える在宅医療では、薬物治療をサポートする薬剤師が不可欠な存在であり、私も地域の医療を支える一員となりたいと思いました。
 
昨今は在宅医療の需要がますます高まっていることから、在宅医療の分野で先進的な取り組みを行っている貴社で経験を積み、患者さんの健康維持・増進に貢献していきたいと思い、志望しました。

 
🔽 ドラッグストアの志望動機の書き方を解説した記事はこちら

5.調剤薬局の志望動機を書くときの注意点・NG例

調剤薬局の志望動機を書くときは、自分の価値観や目標と、企業が求める人物像が一致していることがアピールできるように記載するのが大切です。ここでは、志望動機を書くときの注意点やNG例をお伝えします。

 

5-1.会社のために貢献できることを述べる

入社後にやりたいことや自身のスキル向上について、志望動機に記載するのは問題ありませんが、自身にとってのメリットを書き連ねるだけにならないようにしましょう。自身のやりたいことやスキル向上によって、企業に貢献できることを示すのが大切です。

 

5-2.企業ごとにオリジナルの内容を盛り込む

前述のとおり、企業によって強みや特徴は異なります。健康相談やOTC医薬品の販売・管理、在宅業務など、力を入れている事業は企業によって異なるため、企業の強みや特徴と関連した内容を盛り込むことが大切です。

 

5-3.福利厚生や給与などの条件・待遇面を強調しすぎない

給与や福利厚生などの条件・待遇は働く上で重要なものですが、志望動機としてそれらを強調しすぎると、企業側としては「事業方針とキャリアビジョンが合致しているか」「長期的に事業に貢献する意欲があるか」といったことが判断しづらくなってしまうでしょう。基本的に条件や待遇面だけを志望動機にするのは避け、仕事内容やキャリア構築などに関することを盛り込むのが望ましいでしょう。

6.オリジナリティのある調剤薬局の志望動機を書こう

調剤薬局の志望動機を書く際は、自身の経験や考え方が伝えられるように意識することが大切です。企業が求める人材に合致していることをアピールできるだけでなく、入社後のミスマッチを解消することにもつながります。オリジナリティのある志望動機を作成するためには、自身のエピソードや価値観を適切に盛り込むのがポイントです。就職・転職を成功させるために、志望する企業の情報を調べることはもちろん、十分な自己分析を行った上で志望動機を書くようにしましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。