先日、私の部下が仕事中に失敗をしてしまい、それ以来ずっと元気がなく落ち込んでいます。失敗したことについては十分反省している様子なので、また前向きな気持ちで仕事に取り組めるようにフォローしたいと思っているのですが、上司の立場からどのようなことができるでしょうか？

仕事をしていると、失敗やミスは誰にでもあるものです。ミスの後に落ち込んだり、失敗を引きずってしまったりすると、その後の業務に集中できず、さらにミスを重ねたり、仕事に対する意欲を失ってしまったりすることも考えられます。上司として、早めにフォローしたいという気持ちもよくわかります。落ち込んでいる部下のモチベーションを回復させるために効果的な方法を考えてみましょう。
 
今回のようなケースで、部下に対して「頑張って」という励ましの言葉をかけるのは、あまり有効ではないかもしれません。励ましの言葉ばかりを伝えると、部下にプレッシャーを与えたり、一層落ち込ませてしまったりすることも考えられます。部下からの信頼を失ってしまう可能性もありますから、言葉の選び方には注意が必要です。
 
部下が落ち込んでいる、元気がないように見える、モチベーションが低い……そんなときは、励ましの言葉をかけるより、部下の気持ちを推察して共感の言葉をかけてみましょう。たとえば、「大変だったね」「苦しいよね」「つらかったね」などと部下の気持ちに寄り添う言葉をかけ、部下の気持ちを理解しようとする意思を伝えると、相手の心に寄り添うことができます。さらに、一緒に考えたいという気持ちを伝えるために、「いつでも話を聞くよ」「もしよかったら、何が苦しいか話してもらえませんか」などと言ってみてもいいでしょう。
 
部下の落ち込みが続いていて、かける言葉がみつからない場合、無理して言葉をかけるより、あえて何も言わない方がいいこともあります。そんなときは、素直に「なんと言えばいいのかわからないんだけど……」と言ってその場に居るだけでも、部下を気にかけている気持ちが伝わると思います。

 
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薬剤師の接遇マナー・テクニック Q172 部下の仲が悪いとき上司はどうすべき？

 

部下が前向きに考えられるようになるまで、根気強く寄り添う声かけを続けながら、モチベーションを回復させるコミュニケーションも進めていきましょう。
 
まず、現状の把握から始めます。一対一で面談する場合、部下が話しやすい雰囲気づくりを心がけ、部下の思いを引き出すようにしっかりヒアリングしましょう。部下の話に間違いがあっても遮らず、一旦「そう思うんだね」と共感して傾聴を意識します。部下の考えや、目標、業務量、スキル、難易度に問題はないかなどを丁寧に聴くことは、信頼関係を構築するきっかけにもなります。
 
また、部下の話をよいと思ったら、すぐにほめましょう。結果にかかわらず、努力した行動をほめると、部下のモチベーションアップにつながります。
 
ヒアリングを通して具体的な問題点がわかったら、状況の改善に向けた話をしていきます。たとえば、失敗してしまってから仕事への意欲が戻らないのであれば、部下の仕事がどんな意味を持つのか、お客様や地域社会への貢献にどのようにつながっているのかを、具体的に言葉にして伝えてみましょう。
 
失敗を恐れて、新しいことに挑戦するのが怖いと感じている場合は、成長のためには新しい仕事へのチャレンジが必要なこと、たとえ失敗しても上司としてフォローすることを伝えて、背中を押しましょう。部下の強みを生かせる環境を整え、取り組む様子を見守っていくと伝えると、部下も安心感を得られるでしょう。
 
ただし、前向きに仕事に取り組めるかどうかは、最終的には部下の気持ちの問題でもあります。上司ができることは限られるのを理解した上で、現状を乗り越えるために共に考えていく姿勢を伝え、部下が自身で立ち直るのを焦らず待つことも重要です。

薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日　同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling！」: https://smilegrdn.exblog.jp/