薬剤師の働き方 公開日:2025.12.16 薬剤師の働き方

薬剤師の製薬会社における仕事内容・年収や転職するためのポイントを解説

文:篠原奨規(薬剤師)

薬剤師と聞くと、薬局や病院で働く姿を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、製薬会社でも研究開発や品質管理、医薬品情報業務、営業など幅広い分野で薬剤師が活躍しています。本記事では、製薬会社での代表的な仕事内容や平均年収、働くメリット・デメリットを紹介するとともに、薬剤師が製薬会社に転職するためのポイントについて解説します。

1.薬剤師は製薬会社に就職・転職できる?

薬剤師が製薬会社で働くことは可能です。厚生労働省が公表した「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師32万3,690人のうち「医薬品関係企業」で働いているのは3万7,086人で、全体の11.5%でした。そのうち「医薬品製造販売業・製造業(研究・開発、営業、その他)に従事する者」は2万5,786人で、全体の8.0%です。
 
このデータは製薬会社に限定したものではありませんが、薬局(58.9%)、医療施設(19.3%)と比べて少数ながら、企業分野でも一定数の薬剤師が活躍していることが分かります。製薬会社は、薬剤師にとって十分に現実的な就職・転職先のひとつといえるでしょう。

2.製薬会社で働く薬剤師の仕事内容

これから就職活動を始める方や転職を検討している方にとって、製薬会社で薬剤師がどのような仕事に携わるのか気になることもあるでしょう。ここからは、薬剤師が担う主な仕事内容を解説します。

 

2-1.管理薬剤師

製薬会社で働く管理薬剤師は、品質管理や安全管理を担い、GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)を遵守する役割を果たします。
 
例えば、医薬品を製造する工場や倉庫、物流センターなどでは、管理薬剤師の配置が求められており、製造プロセスにおける品質管理や、製造・保管・輸送が法令に準拠しているかを確認することが主な業務です。
 
そのほかにも、副作用情報の収集、在庫管理、DI業務の管理に加え、行政機関への書類提出や、関連文書の保管といった業務を担うことがあります。

 
🔽 管理薬剤師について解説した記事はこちら

 

2-2.医薬情報担当者(MR)

医薬情報担当者(MR)とは、自社が製造・販売する医療用医薬品について、医師や薬剤師、看護師などの医療従事者に情報提供を行う職種です。
 
医薬品が安全かつ効果的に使用されるよう、効果や使用方法、副作用、注意点を正しく伝える役割を担います。
 
医療現場からの問い合わせに対応するだけでなく、副作用情報や使用上の注意点などのデータを収集・分析し、必要に応じて迅速かつ正確にフィードバックを行います。
 
参考:医薬情報担当者(MR)|厚生労働省職業情報提供サイト job tag

 
🔽 MRについて解説した記事はこちら

 

2-3.臨床開発モニター(CRA)

臨床開発モニター(CRA)は、新薬の承認を得るために行われる「治験」を円滑に進めるための専門職です。製薬会社や医薬品開発業務受託機関(CRO)に所属し、治験の計画から終了まで幅広く関与します。
 
CRAの主な業務には、治験実施計画書(プロトコール)の作成支援、標準業務手順書(SOP)の確認、治験を行う医療機関や治験責任医師の選定・契約などがあります。
 
治験開始後は、治験薬の交付・管理、プロトコールに沿ったモニタリング、データの収集・確認、最終報告書の作成などを担当します。
 
参考:臨床開発モニター(CRA)|厚生労働省職業情報提供サイト job tag

 
🔽 CRAについて解説した記事はこちら

 

2-4.品質管理(QC)

品質管理(QC)とは、生産の過程で医薬品が一定の品質基準を満たしているかを確認し、安全性を担保する仕事です。GMP(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準)に基づき、製造された医薬品に不備がないかを検査します。
 
具体的には、原材料が規定の基準を満たしているかを検査・試験し、その後の製造過程では中間製品をチェックして品質を保持できているかを確認します。さらに、完成品については市場に出荷する前に最終試験を実施し、すべての基準をクリアしていることを保証します。
 
また、これらの試験結果や品質管理に関する文書を作成・保管することも品質管理担当の業務です。

 

2-5.研究開発

製薬会社の研究開発部門において、薬剤師が新薬開発に向けて基礎研究や非臨床試験を行うこともあります。
 
基礎研究では、化学合成やバイオテクノロジー、ゲノム情報などを活用して新規の候補物質を創出し、化学構造や物理化学的特性から医薬品としての有用性を調べます。
 
その後、有効性や体内動態、安全性を確認する非臨床試験に進み、さらに品質試験や製剤化の検討を行います。
 
参考:薬学研究者|厚生労働省職業情報提供サイト job tag

 

2-6.DI業務(医薬品情報業務)

DI業務とは、医薬品情報を収集・整理し、必要に応じて医師や薬剤師、MRなどに提供する仕事です。
 
具体的には、国内外の論文やガイドライン、学会発表などから医薬品に関する最新情報を収集・整理します。その上で情報を体系的に管理し、必要に応じて社内外で活用できるよう、資料を作成します。
 
また、医療従事者向けの勉強会の企画・実施や、MRへの教育研修もDI業務を担当する薬剤師の仕事のひとつです。

 
🔽 薬剤師のDI業務について解説した記事はこちら

 

2-7.薬事業務

薬事業務は、医薬品や医療機器の承認申請や薬事規制への対応を中心に行う仕事です。新薬を市場に届けるためには、科学的なデータだけでなく、法規制に適合していることを証明する必要があり、その実務を担うのが薬事担当者です。
 
主な業務には、新薬の承認申請書類の作成・提出、薬事情報システムの運用、社内での監査や教育などがあります。
 
さらに、国内規制だけでなく海外の法規制についても調査・分析を行い、グローバル展開に向けた薬事戦略を策定することも重要な役割です。製品が承認された後も、製造販売後調査(PMS)や副作用報告の管理など、市販後のフォローアップ業務に関与します。

3.製薬会社で働く薬剤師の平均年収

製薬会社で働く薬剤師に限定した公的な年収データは公表されていません。参考として、厚生労働省が実施した「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、薬剤師全体の平均年収は約599.3万円でした。
 
※平均年収は「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合算して算出
 
また、厚生労働省の「職業情報提供サイト job tag」では、「令和6年賃金構造基本統計調査」の結果をもとに、職種ごとの平均年収が公表されています。
 
ただし、これらのデータは、当該職種が属する主な職業分類に対応する統計情報であり、必ずしもその職種のみのデータを表しているものではありません。また、薬剤師だけを対象としたものではない点に注意が必要です。

 

職種 平均年収
医薬情報担当者(MR) 618.3万円
臨床開発モニター(CRA) 481.4万円
薬学研究者 750.5万円

参考:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口 e-Stat
参考:医薬情報担当者(MR)|job tag
参考:臨床開発モニター(CRA)|job tag
参考:薬学研究者|job tag

 

また、以下の記事では、薬剤師の平均年収を男女別・年齢別・都道府県別・業種別に解説していますので、参考にしてください。

 

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4.薬剤師が製薬会社で働くメリット

製薬会社で働く薬剤師には、薬局や病院勤務とは異なる魅力があります。ここからは「年収」「働き方」「キャリア」の3つの視点から、薬剤師が製薬会社で働くメリットを見ていきましょう。

 

4-1.年収アップの可能性がある

製薬会社で働く薬剤師は、薬局や病院勤務に比べて高い収入を得られる可能性があります。前述のとおり、あくまで参考データではありますが、厚生労働省の調査では薬剤師全体の平均年収が約599.3万円とされている一方で、製薬会社の関連職種を見ると医薬情報担当者(MR)は618.3万円、薬学研究者は750.5万円といった水準です。
 
特に医薬情報担当者(MR)の場合、業績や成果に応じて、インセンティブが支給されるケースもあります。

 

4-2.ワークライフバランスを整えやすい

製薬会社では、薬局や病院勤務と異なり、基本的には土日祝日が休みになるケースが多いでしょう。特に病院薬剤師の場合、夜勤や休日出勤が求められる場合もありますが、製薬会社では平日の勤務が中心となるため、規則正しい生活を送りやすくなります。
 
さらに、大手企業であれば福利厚生が充実しており、各種手当の支給や社員向けの福利厚生施設、育児支援制度など、長く働きやすい環境が整備されていることも多いでしょう。
 
プライベートとの両立を重視したい薬剤師にとって、製薬会社は魅力的な選択肢となり得ます。

 

4-3.キャリアアップの選択肢を広げられる

薬局や病院に比べると、製薬会社には多種多様な職種があります。特に外資系企業や国際共同治験に携わる部署では、英語力を生かして海外の研究者や医療機関と連携する機会もあり、グローバルな視野を広げるチャンスにもつながります。
 
こうした環境で働くことは、薬剤師にとって新たなキャリアの選択肢を増やし、将来活躍できる場を大きく広げるきっかけとなるでしょう。

5.薬剤師が製薬会社で働くデメリット

続いて、薬剤師が製薬会社で働くにあたり、デメリットになり得るポイントを見ていきましょう。

 

5-1.薬局や病院への転職が難しくなる可能性がある

製薬会社で働くデメリットとして、将来的に薬局や病院への転職が難しくなる可能性があります。製薬会社に勤務すると、調剤や服薬指導といった臨床業務に携わる機会は限られます。
 
特に新卒で製薬会社に就職した場合は、臨床スキルを身に付ける機会が少ないまま、社会人生活を過ごすことになるため、臨床経験を求められる職場への転職では不利になる可能性があります。
 

5-2.ノルマが設定される場合がある

MRのような営業職では、ノルマが設定されるケースがあります。営業成績が人事評価に直結するため、常に成果を求められるプレッシャーがあり、精神的な負担を感じることがあるかもしれません。

6.製薬会社で働く薬剤師に必要なスキル

製薬会社では、研究や開発、営業、品質管理など担当する業務によっても必要とされるスキルが異なります。そのため、自分が従事する業務に必要な能力を把握しておくことが重要です。
 
ここからは、「医薬品に関する専門知識」「コミュニケーション能力」「マネジメント能力」「営業スキル」「語学力」といった代表的なスキルを取り上げ、それぞれがどのような場面で必要になるのかを解説していきます。

 

6-1.医薬品に関する専門知識

製薬会社で働く薬剤師にとって、医薬品に関する専門知識は不可欠です。例えば、DI業務では国内外の論文や学会情報をもとに、最新の医薬品情報を整理・分析し、医療機関やMRへ分かりやすく提供することが求められます。医薬品情報の理解が不十分だと、適切な情報提供ができず、信頼を損なう恐れがあります。
 
また、薬事業務でも新薬の承認申請や規制対応を行う際には、医薬品の有効性・安全性に関する理解が必要です。臨床試験や非臨床試験のデータを正確に読み解き、その根拠を明確に示した資料を規制当局に提出することが求められます。

 

6-2.コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、製薬会社で働く薬剤師にとって欠かせないスキルのひとつです。研究者や開発部門、行政機関、医療従事者などさまざまな関係者と協力しながら業務を進めるためには、情報を正しく伝える力が求められます。
 
例えば、臨床開発モニター(CRA)の業務では、治験を実施する医師や看護師、薬剤師など医療従事者との円滑なコミュニケーションが欠かせません。
 
治験の手順や目的を説明する際には、投与方法や検査スケジュールなどの情報を、相手に合わせて分かりやすく伝える力が求められます。さらに、相手の疑問や不安に丁寧に対応し、信頼関係を築く姿勢も重要です。

 

6-3.マネジメント能力

チームをまとめたり、他部署や関係者と協力して業務を進めたりする場面では、マネジメント能力が求められます。
 
その代表例が管理薬剤師です。スタッフへの的確な指示に加えて、経験の浅いメンバーに対しては教育・指導を行いながら、職場全体の運営を支える役割を担います。
 
さらに、医薬品の品質や安全性を担保する立場として、リスク管理や業務改善を通じて、組織の信頼性を維持・向上させる責任もあります。マネジメント能力は、社内外において信頼性や存在価値を高める上で、欠かせないスキルといえるでしょう。

 

6-4.営業スキル

製薬会社において、社外の関係者と接する職種では、営業スキルが求められます。特に医薬情報担当者(MR)として活動する場合は、社会人としての基本的なマナーに加え、相手のニーズを的確に読み取る力が必要です。
 
単に製品の特徴を説明するだけでなく、医療現場が抱える課題を理解し、それに対応した情報提供や提案を行うことが求められます。
 
また、医療制度の変化や業界の動向を常に把握し、広い視野を持って会話ができることも、信頼構築につながるポイントです。

7.薬剤師が製薬会社に転職するためのポイント

製薬会社への転職を考える際には、自分の強みを整理し、希望する職種や企業の特徴を理解することが大切です。事前の準備を丁寧に行うことで、転職活動を有利に進められるでしょう。

 

7-1.スキルや資格の棚卸しをする

転職を検討する際は、自身が持っているスキルや資格を整理しておくことが大切です。
 
例えば、薬剤の作用機序や副作用、適応症といった専門知識は、自社製品の効果や安全性を正しく伝える上で役立ちます。また、医療従事者と専門的な議論を交わす場面でも、こうした知識が信頼を得る土台となるでしょう。
 
さらに、人材育成などマネジメントに携わった経験があれば、企業から管理職候補として評価される可能性もあります。

 

7-2.自己分析・他己分析を行う

転職活動を始める前に、自己分析を行い、自分の強みや価値観を整理しておくことで、どのような場面で力を発揮できるかが具体的に見えてきます。得意な分野やこれまでの経験を棚卸しすることで、自分に合った企業や職種の方向性も見えやすくなるでしょう。
 
ただし、自己分析だけでは視点が偏ることも少なくありません。そういったときは、家族や同僚など第三者の意見を取り入れる「他己分析」も取り入れてみましょう。他人から見た自分の強みや個性を教えてもらうことで、新たな発見につながります。

 

7-3.業界や企業の情報収集をする

転職活動では、業界や企業に関する情報収集を怠ると「働き方が自分に合わなかった」「実際の労働環境がイメージと異なっていた」といったミスマッチが起こる可能性があります。
 
こうした事態を避けるためには、事前の細かな調査が欠かせません。企業のホームページや募集要項を確認するのはもちろん、可能であれば職場見学を行い、現場の雰囲気や業務の様子を実際に見ておくとよいでしょう。
 
さらに、企業がどのような強みを持ち、主力製品や得意分野にどのような特色があるのかを把握しておくことも重要です。製薬会社ごとの特徴を理解した上で、自分の知識や経験をどう生かせるかを見極めることが、満足度の高い転職につながります。

 

7-4.書類選考や面接の対策・準備をしておく

製薬会社への転職を成功させるためには、書類選考や面接の対策を入念に行うことが重要です。履歴書や職務経歴書には、その企業に対してどのように貢献できるかを具体的に記載しましょう。
 
特に志望動機や自己PRには、これまでの経験や強みを盛り込み「この人に会ってみたい」と思わせる内容に仕上げることがポイントです。
 
また、面接に臨む際は収集した企業情報をもとに、自分の言葉でどう語るかを整理しておきましょう。不安がある場合は家族や友人と模擬面接を行ったり、転職エージェントを活用して客観的なアドバイスをもらったりするのも効果的です。

8.製薬会社は薬剤師にとって働き方の選択肢のひとつ

薬剤師が製薬会社で行う仕事としては、管理薬剤師やMR、CRA、品質管理、研究開発、DI業務、薬事業務などが挙げられます。年収面では薬局や病院勤務に比べて高水準となる場合もあり、土日休みの職場が多いためワークライフバランスも取りやすいことがメリットです。
 
製薬会社で働くためには、医薬品に関する深い知識だけでなく、コミュニケーション力やマネジメント力、語学力など幅広いスキルが求められます。転職を目指す際は、スキル・資格の棚卸し、企業分析を行うとともに、書類選考や面接の準備を進めることが重要です。
 
就職・転職先に悩んでいる方は、製薬会社でのキャリアを視野に入れてみるのはいかがでしょうか。

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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。