薬剤師のスキルアップ 公開日:2026.06.10 薬剤師のスキルアップ

調剤ベースアップ評価料とは?算定要件・点数・施設基準について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

調剤ベースアップ評価料は、薬局の賃上げ実施を後押しすることを目的として、2026年度調剤報酬改定で新設されました。本記事では、調剤ベースアップ評価料の概要や算定要件、施設要件について解説するとともに、届出に関する事項や疑義解釈Q&Aについてもお伝えします。

 

※本記事の内容は、初出時の情報をもとにしたものです。2026(令和8)年度診療報酬改定に関する最新情報は、厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」などから確認してください。

1.調剤ベースアップ評価料とは?

調剤ベースアップ評価料とは、調剤報酬において、薬局の薬剤師や事務職員などの確実な賃上げを実現するために、2026年度調剤報酬改定で新設されたものです。
 
2024年度改定で新設されたベースアップ評価料では、病院や診療所などに勤務する看護職員、薬剤師などの職員が対象となっており、薬局に勤務する薬剤師や事務職員は対象外でした。しかし、2026年度改定で調剤ベースアップ評価料が新設され、評価対象となりました。
 
参考:令和6年度診療報酬改定と賃上げについて ~今考えていただきたいこと(病院・医科診療所の場合)~|厚生労働省

参考:令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について|厚生労働省

参考:賃上げについて(その2)令和8年1月14日|厚生労働省

 

患者さんへの対応から
実務に役立つ知識まで
すべて無料で視聴可能!
\薬剤師のスキルアップにおすすめ/

2.調剤ベースアップ評価料の点数と算定要件

調剤ベースアップ評価料は、地方厚生局長等に届出を行った薬局が、処方箋の受付1回につき4点を算定できます。2027年6月以降は、所定点数の100分の200に相当する点数を算定することになります。
 
調剤ベースアップ評価料で得られる収入は、対象職員の基本給または手当、賞与、時間外手当、薬局が負担する法定福利費などの増加分以外に用いることはできません。法定福利費とは、職員を雇っている事業者が負担しなければならない費用のことで、健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険などが該当します。
 
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.調剤ベースアップ評価料の施設基準

調剤ベースアップ評価料の施設基準は、以下のとおりです。

 

1. 調剤基本料に係る届出を実施している薬局であること。
2. 薬局に勤務する以下を除く職員(対象職員)がいること。
 ● 事業主
 ● 使用者
 ● 開設者
 ● 管理者・管理薬剤師
 ● 40歳以上の薬剤師
 ● 業務委託により勤務する者
  ただし、ほかの薬局または事業所を主とする勤務先とし、薬局における調剤業務などに直接従事していない本部職員やエリアマネージャーなどの管理的業務に専従する者は、対象職員に含めない。
3. 調剤ベースアップ評価料により得られる収入は、対象職員の基本給または決まって毎月支払われる手当の引き上げ、およびそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費などの増加分に用いること。
 ● 恒常的に夜間を含む交替制勤務を取っている薬局の職員に支払われる夜勤手当については、決まって毎月支払われる手当に準じて基本給などに含めて差し支えない。
 ● 賃上げを実施した薬局において、処方箋受付回数の変動などにより調剤ベースアップ評価料の収入が賃上げ額を上回り、追加で賃上げできない場合に限り、賞与や手当などの賃上げ以外の方法で賃金改善を行うことが認められる。いずれの場合においても、賃金改善の対象とする項目を特定して行うこと。
 ● 調剤ベースアップ評価料によって賃金改善を実施する項目以外の賃金項目の水準を低下させてはならない。ただし、業績などに応じて変動するものは除く。
 ● 賃金改善の実績については、薬局における「原則として、2026年3月時点の給与体系を当該年度に勤務している職員の賃金に当てはめた場合の基本給等総額」と、「当該評価料を算定した年度に勤務している職員の基本給等総額」との差分により判断すること。
  ただし、これらの総額および賃金改善の実績に「2025年度医療機関等における賃上げ・物価 上昇に対する支援事業」の補助金によるものは含めない。
 ● 6月から翌年5月の1年間に算定した調剤ベースアップ評価料による収入を、当該年の4月から翌年3月の給与改善に充当することは差し支えない。
4. 薬局は調剤ベースアップ評価料の趣旨を踏まえ、労働基準法などを遵守すること。
5. 薬局は対象職員に対して賃金改善を実施する方法などについて周知するとともに、就業規則などの内容についても周知すること。
 ● 対象職員から調剤ベースアップ評価料に係る賃金改善に関する照会を受けた場合には、書面を用いて説明することなどにより分かりやすく回答すること。
6. 店舗販売業を併設している薬局においては、調剤ベースアップ評価料により得られる収入を調剤に従事する職員の賃上げにのみ用いること。店舗販売業に従事する職員の賃上げには用いない。
 ● 3の賃金の改善の判断にあたり、調剤に従事する職員と店舗販売業に従事する職員を明瞭に分けることができない場合には、店舗販売業を併設している薬局に勤務する全職員数に薬局の全体収入に対する調剤収入の割合を乗じて得た職員の数を用いること。
 ● 調剤による収入には、保険外併用療養費を除く診療報酬や介護保険、国、地方公共団体、保険者などが交付する補助金などに係るものを含めることとし、労災保険に係るものを除く。

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて令和8年3月5日|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

4.調剤ベースアップ評価料の届出

調剤ベースアップ評価料の届出に関する事項は、以下のとおりです。

 

1. 調剤ベースアップ評価料の施設基準に係る届出は、別添2の様式103を用いること。
2. 毎年8月において、以下の書類を作成し、地方厚生(支)局長に報告すること。
 ● 賃金改善実績報告書
 ● 賃金改善中間報告書
  賃金改善実績報告書は前年度における賃金改善の取組状況を評価するため、賃金改善中間報告書は算定を行っている年度における賃金改善の取組状況を薬局において適切に把握するために作成する。
3. 事業の継続を図るため、対象職員の賃金水準を引き下げた上で調剤ベースアップ評価料による賃金改善を行う場合には、薬局の収支状況や賃金水準の引き下げの内容などについて記載した「特別事情届出書」を作成し、届け出ること。
  年度を超えて対象職員の賃金を引き下げることとなった場合は、次年度の「賃金改善中間報告書」を提出する際に、「特別事情届出書」を再度届け出る必要がある。
4. 薬局は調剤ベースアップ評価料の算定に係る書類(「賃金改善実績報告書」の記載内容の根拠となる資料など)を、調剤ベースアップ評価料を算定する年度の終了後3年間保管すること。
5. 法人内またはグループ内の同一の給与体系に基づく複数の薬局において、「賃金改善実績報告書」および「賃金改善中間報告書」を複数の医療機関を集約して作成する場合には、別添2の様式104の別添2を用いること。

参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて令和8年3月5日|厚生労働省

患者さんへの対応から
実務に役立つ知識まで
すべて無料で視聴可能!
\薬剤師のスキルアップにおすすめ/

5.調剤ベースアップ評価料の疑義解釈Q&A

2026年4月1日時点で厚生労働省の「令和8年度診療報酬改定について」に掲載されている、主な疑義解釈Q&Aを紹介します。

 

5-1.調剤ベースアップ評価料の対象に派遣職員は含まれる?

以下の要件を満たすことで、派遣職員に限り調剤ベースアップ評価料の対象とすることができます。ただし、業務委託職員(請負業務を行う職員)については対象外となります。

 

● 派遣元と相談・協力した上で、勤務する職員と同程度以上の賃金改善を行う。
● 派遣元から実際の賃金の改善額などの報告書の記載に必要な情報の提供を受けた上で、賃金改善実績報告書と賃金改善中間報告書について派遣職員を含めて作成・提出する。

参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

5-2.調剤ベースアップ評価料の届出で、新設された薬局も給与の支払い実績は必要?

調剤ベースアップ評価料の届出を行うにあたっては、対象職員に対する届出前の1月における給与の支払い実績が必要です。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

5-3.調剤ベースアップ評価料の算定開始月から賃金改善の実施は必要?

原則として、調剤ベースアップ評価料の算定開始月から賃金改善を実施し、算定する月においては継続する必要があります
 
なお、6月から翌年5月の1年間に算定した調剤ベースアップ評価料による収入を、当該年の4月から翌年3月の賃金改善に充当することは差し支えありません。
 
ただし、やむを得ない理由で算定開始月からの賃金改善が難しい場合は、同年度末までに算定開始月または当該年の4月まで遡及して実施することで、算定開始月または当該年の4月から賃金改善を実施したものとみなすことができます。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

5-4.調剤ベースアップ評価料の収入を繰り越すことは可能?

原則として、2026年6月から2027年5月までに得られた収入については、2027年5月までの賃金改善に用いる必要があります。翌年度についても同様です。
 
ただし、患者数などの変動によってやむを得ず残余が生じた場合には、当該年度の実績報告書を提出する8月までの対象職員の賃金改善に充当した上で、充当分を含めて報告すれば差し支えありません。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

5-5.調剤業務などを主とする人が本部やエリアの管理業務を兼務する場合、調剤ベースアップ評価料の対象になる?

薬局の調剤業務や保険請求事務などの業務を主とする場合は、調剤ベースアップ評価料の対象となります。ただし、これらの業務に主として直接従事した実績のある月のみ対象職員として取り扱えます。
 
なお、一人の本部職員やエリアマネージャーなどが複数の店舗で薬局業務に従事した場合は、重複して対象職員とすることはできません。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

 

5-6.対象職員が出向している場合、賃金改善報告書はどのように作成する?

賃金改善報告書の作成にあたっては、出向元との協議の上で、対象職員を出向先における賃金改善の実績に含めてよいことになっています。
 
なお、対象職員に出向元が賃金を支払っている場合、出向先が調剤ベースアップ評価料で得た収入は、出向先と出向元の合議で適切に精算することになります。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)令和8年4月1日|厚生労働省

6.調剤ベースアップ評価料を正しく理解しよう

調剤ベースアップ評価料は、薬局が継続的に賃金改善に取り組めるようにするために新設されました。対象職員の範囲や賃金改善の方法、報告書の作成など、実務上の要件が多いですが、制度の趣旨を踏まえて適切に運用することが、薬局全体の処遇改善と人材定着につながります。通知や疑義解釈を確認して理解を深めましょう。

患者さんへの対応から
実務に役立つ知識まで
すべて無料で視聴可能!
\薬剤師のスキルアップにおすすめ/


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。