薬剤師のスキルアップ 公開日:2026.07.16 薬剤師のスキルアップ

かかりつけ薬剤師訪問加算とは?算定要件や2026年度改定で新設された背景を解説

文:篠原奨規(薬剤師)

かかりつけ薬剤師として担当している患者さんの中に、窓口での服薬指導だけでは残薬の問題を解消しきれない方はいないでしょうか。2026年度調剤報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師訪問加算」は、こうした場面で薬剤師が患者さんの自宅を訪問し、残薬整理や服薬管理の指導を行った場合に算定できる加算です。本記事では、かかりつけ薬剤師訪問加算の概要や新設の背景、点数や算定要件、算定できないケース、在宅訪問を行うためのポイントなどについて解説します。

1.かかりつけ薬剤師訪問加算とは?

かかりつけ薬剤師訪問加算とは、2026年度調剤報酬改定で新設された服薬管理指導料の加算です。患者さんの自宅を訪問して残薬整理や薬剤管理に関する指導などを行い、その結果を医療機関へ情報提供した場合に算定できます。
 
外来患者さんが、窓口での服薬指導だけでは解消しきれない残薬の問題を抱えているケースは少なくありません。こうした課題に対応するため、かかりつけ薬剤師による自宅での状況確認と対応を評価する仕組みが設けられました。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

 

1-1. 2026年度調剤報酬改定で新設された背景

2026年度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師に関する評価の見直しが行われました。かかりつけ薬剤師指導料とかかりつけ薬剤師包括管理料が廃止され、服薬管理指導料1・2に新設された「イ(かかりつけ薬剤師が行った場合)」と「ロ(イ以外の場合)」の区分で評価する仕組みへ変更されています。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省
 


 
さらに、かかりつけ薬剤師の実績を評価する新たな加算が設けられました。服薬期間中の継続的な薬学的管理を評価する「かかりつけ薬剤師服薬フォローアップ加算」と、自宅訪問による対応を評価する「かかりつけ薬剤師訪問加算」の2種類です。
 

 
厚生労働省が公開している「個別事項 その19 残薬対策(第637回中央社会保険医療協議会 総会 資料 2025年12月19日)」によると、かかりつけ薬剤師が患者さんから受ける相談の約6割は残薬に関するものであるとされています。また、薬局で残薬調整を実施するときの問題点として「患者さんが全ての薬剤を持参しない」ことを挙げた薬剤師が半数を超えるという調査結果も示されています。
 
在宅患者訪問薬剤管理指導料や居宅療養管理指導費を算定できない患者さんの自宅を訪問して残薬整理をしている事例もあったとされ、かかりつけ薬剤師訪問加算は、こうした残薬対策に関する課題の解消に向けて新設された加算といえるでしょう。

 

1-2.在宅患者訪問薬剤管理指導料・居宅療養管理指導費との違い

かかりつけ薬剤師訪問加算と区別しておきたいのが、在宅患者訪問薬剤管理指導料・居宅療養管理指導費です。いずれも患者さんの自宅への訪問が必要な点は同じですが、対象となる患者さんや算定要件などは異なります
 
かかりつけ薬剤師訪問加算は、外来患者さんが対象です。残薬の整理や薬剤管理に関する指導が中心で、患者さんや家族からの求めを受けて自宅を訪問します。
 
一方、在宅患者訪問薬剤管理指導料・居宅療養管理指導費は、在宅療養を行っていて、通院が困難な方が対象です。医師の指示に基づいて作成した薬学的管理指導計画に沿って、継続的に患者さんの自宅を訪問します。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参考:指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準|厚生労働省

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2.かかりつけ薬剤師訪問加算の点数

かかりつけ薬剤師訪問加算の点数は230点で、6月に1回に限り算定が可能です。算定タイミングは患者さんの自宅を訪問したときではなく、訪問後に再度処方箋を受け付けたときになります。
 
また、訪問にかかる交通費は患者さんの実費負担となります。訪問前に患者さんまたは家族へ発生する自己負担額について説明し、了解を得ておく必要があります。
 
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)|厚生労働省

3.かかりつけ薬剤師訪問加算の算定要件

かかりつけ薬剤師訪問加算は、患者さんまたは家族からの求めに応じて自宅を訪問し、残薬の整理や服用薬の管理方法の指導などを行い、その結果を医療機関へ情報提供した場合に算定できます。
 
訪問前には、訪問に伴う自己負担額(交通費を含む)に加え、自宅で実施する指導内容を患者さんや家族へ説明し、了解を得る必要があります。訪問後は、自宅を訪問した旨や残薬の状況、指導内容などを薬剤服用歴に記載します。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省
 
なお、患者さんから再度処方箋を受け付けたときにかかりつけ薬剤師が不在でも、加算の算定は可能です。この場合は服薬管理指導料1のロまたは2のロと併せて算定し、薬剤服用歴には先述した内容に加えて、かかりつけ薬剤師の氏名も記載します。
 
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)|厚生労働省

 

3-1.かかりつけ薬剤師訪問加算の対象患者

かかりつけ薬剤師訪問加算の対象は、服薬管理指導料1のイまたは2のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合)を算定している患者さんです。
 
かかりつけ薬剤師として継続的に関わっている外来患者さんのうち、自宅での残薬整理や服用薬の管理方法の指導を必要とする方が該当します。
 
なお、複数の保険薬局で服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している患者さんは、いずれの薬局でも本加算を算定できません。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

3-2. かかりつけ薬剤師訪問加算を算定できないケース

以下のケースでは、かかりつけ薬剤師訪問加算の算定が認められていません。

 

● 患者さんが外来服薬支援料1、施設連携加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料、居宅療養管理指導費、介護予防居宅療養管理指導費のいずれかを算定している場合
● 特別調剤基本料Aを算定している薬局が、不動産取引などの特別な関係を有する医療機関へ情報提供を行った場合
● 特別調剤基本料Bを算定している場合

 

算定にあたり、他の加算の算定状況や自薬局の調剤基本料の区分、情報提供先の医療機関との関係性を確認しておく必要があります。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

4.かかりつけ薬剤師に関する2026年度調剤報酬改定での主な変更点

かかりつけ薬剤師訪問加算の新設以外にも、2026年度調剤報酬改定ではかかりつけ薬剤師に関する変更が行われました。主な変更点は以下のとおりです。

 

変更項目 改定前 改定後
かかりつけ薬剤師指導料
かかりつけ薬剤師包括管理料
かかりつけ薬剤師指導料:76点
かかりつけ薬剤師包括管理料:291点
廃止(服薬管理指導料に統合)
服薬管理指導料1・2 区分なし イ(かかりつけ薬剤師が対応)とロ(それ以外)の区分を新設
かかりつけ薬剤師の
同意取得
患者さんとの同意書の取り交わし お薬手帳に担当薬剤師がかかりつけである旨を記載し、コピーを薬局で保管
かかりつけ薬剤師の
在籍期間要件
薬局に1年以上勤務 薬局に6カ月以上勤務
かかりつけ薬剤師の
勤務時間要件
週32時間以上 週31時間以上
薬局の施設基準 なし 勤務薬剤師の平均在籍期間1年以上、または管理薬剤師の継続勤務3年以上のいずれかを満たすこと
かかりつけ薬剤師服薬フォローアップ加算 なし 新設:50点(3月に1回)
服用薬剤調整支援料2 ► イ:110点、ロ:90点
► かかりつけ薬剤師以外も算定可
► 1,000点
► 所定の研修を修了したかかりつけ薬剤師が薬剤調整を提案した場合に算定可

参考:個別改定項目について|厚生労働省

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5.かかりつけ薬剤師として在宅訪問を行うためのポイント

かかりつけ薬剤師訪問加算を算定するにあたり、在宅訪問を行うときのポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

 

● 来局時に残薬や服薬状況をしっかり聞き取る
● 訪問時に自宅での薬の管理状況を確認し、課題を見つける
● 次の処方につながる情報提供を行う

 

それぞれのポイントについて、詳しく見ていきましょう。

 

5-1.来局時に残薬や服薬状況をしっかり聞き取る

在宅訪問を行うにあたっては、来局時に残薬や服薬状況を聞き取り、訪問の必要性を判断することが大切です。聞き取りの際は、どの薬がどのくらい余っているのか、なぜ余ってしまうのか、家族のサポートが得られているのかなど詳細を確認することで、訪問の必要性を判断しやすくなります。
 
残薬が生じる背景には、処方側と患者さん側の両方の要因があります。代表的なものとしては、以下が挙げられます。

 

■ 処方側の要因
● 薬剤数が多い(ポリファーマシー)
● 用法・用量が複雑である
● 剤形が飲みにくい
● 症状が安定しているにもかかわらず、継続して処方されている

 

■ 患者さん側の要因
● 認知機能が低下している
● 視力の低下や手指の不自由さによって、取り扱いが困難になっている
● 生活リズムが不規則である

 

中には、残薬を申告することに抵抗を感じる患者さんもいるでしょう。「飲み忘れていることを責められるのではないか」「処方を減らされてしまうのではないか」と不安に思うケースも考えられます。
 
場合によっては残薬の有無を直接尋ねるよりも、生活の様子や薬の管理方法から話を広げていくと、自然に情報を引き出しやすくなります。こうして得られた情報をもとに、在宅訪問による対応が必要かどうかを判断することが重要です。

 

5-2.訪問時に自宅での薬の管理状況を確認し、課題を見つける

患者さんの自宅に訪問すると、薬の管理状況を直接確認できるため、来局時には気付けなかった課題を見つけられることがあります。
 
まず注目したいのは、薬の保管場所です。生活動線から外れた場所に保管していると、飲み忘れや飲み間違いにつながりやすくなります。患者さんが手に取りやすい位置へ移すなど、配置を整えることを検討するとよいでしょう。
 


 
薬剤数が多いことが原因で服薬管理が難しくなっているようなら、一包化の提案も選択肢の一つです。複数の薬をまとめて一包にすることで、服薬ミスを減らせる可能性があります。
 

 
また、漫然投薬の有無にも目を向けたいところです。症状が安定しているにもかかわらず長期にわたって同じ薬が処方されている場合、患者さんの自己判断で服薬が中断され、残薬が積み重なっているケースもあります。残薬の状況や患者さんの訴えを医師へ情報提供することで、処方の見直しにつなげられる場合もあるでしょう。

 

5-3.次の処方につながる情報提供を行う

訪問結果を医療機関へ情報提供することは、かかりつけ薬剤師訪問加算の算定要件であると同時に、処方内容の見直しにつなげるための重要なプロセスです。
 
情報提供の際は、訪問時に確認した事実に加えて、薬学的観点からの分析や評価も盛り込むことが大切です。例えば「残薬が30錠あった」という事実だけでは、次の処方をどう判断すればよいか十分に伝わらないかもしれません。残薬が生じた原因の分析や、改善に向けた提案を記載することで、処方判断に役立つ情報提供につながることがあります。
 
情報提供ツールとしては、トレーシングレポートの活用が有効です。トレーシングレポートは、患者さんの服薬状況や残薬、アドヒアランス改善提案などを医師へ伝える文書です。作成の際は、一文に情報を詰め込みすぎず、要点を絞って簡潔にまとめることを意識しましょう。

 

6.かかりつけ薬剤師訪問加算をきっかけに、残薬・服薬状況への意識を高めよう

かかりつけ薬剤師訪問加算とは、2026年度調剤報酬改定で新設された加算項目で、患者さんの自宅を訪問して残薬整理や薬剤管理に関する指導などを行い、その結果を医療機関に情報提供した場合に算定できます。点数は1回230点で、6月に1回に限り算定できます。服薬管理指導料1のイまたは2のイを算定している外来患者さんが対象です。訪問前には指導内容と自己負担額を説明し、了解を得る必要があります。
 
2026年度の調剤報酬改定では、かかりつけ薬剤師に関する評価の見直しが行われました。かかりつけ薬剤師であることに加えて、患者さんに対してどのような行動を取っているかが重視されつつあります。来局時の聞き取りや会話の中で、残薬や服薬状況へ意識を向けることから始めてみてはいかがでしょうか。

患者さんへの対応から
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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。