地域枠薬学生の定着促進へ ~ 薬剤師確保「奨学金に限界」 文部科学省
文部科学省は、地域の薬剤師確保に向け、地域枠で入学した薬学生の定着促進に乗り出す。薬学部の定員削減が進み、病院薬剤師不足や地域偏在が課題となる中、都道府県と大学が連携した養成体制の構築を後押しし、地域枠卒業生の地域定着率100%を短期目標に掲げる。現在、地域枠を導入している薬学部は全国12校にとどまっており、その拡大も目指す。高等教育局医学教育課の日比謙一郎課長は本紙の取材に対し、「奨学金だけで学生を地域に残す発想には限界がある。学生が早期から地域医療を知り、病院や地域薬局で働く意義を実感できる教育が重要だ」と述べ、薬剤師確保につながる教育体制の構築に意欲を示している。
文科省は、新たに「2040年に向けた地域医療人材の養成体制最適化事業」を27年度から開始する計画で、全国的な養成規模の縮小と地域での人材確保の両立を図る。対象は大学進学時に学生流入超過となっている東京、神奈川、愛知、京都、大阪、福岡の6都府県を除く41道県。道県と大学が協働し、恒久定員内での地域枠拡大や地域定着につながる教育体制の整備を進める。
薬学部が設置されていない県については、明治薬科大学のように他県の薬学部が当該県の薬剤師確保に貢献する仕組みも想定している。
27年度概算要求では事業全体で20億円を計上した。「看護職員の確保」と「薬剤師・医師・歯科医師等の確保」の2メニューを設け、それぞれ10件ずつ計20件を採択する予定。採択案件には1件当たり1億円を充て、5年間支援する。薬剤師を含むメニューでは、薬学部、医学部、歯学部などからの応募状況や提案内容を踏まえて採択を判断する。既に地域枠を設けている大学だけでなく、今後導入を検討する大学も対象となる。
採択に当たっては、道県との連携状況に加え、医療人材の需給把握や医療提供体制、人材確保策の具体性を重視する。地域枠の設置にとどまらず、入学した学生を地域医療に貢献できる人材へ育成する教育構想も審査対象となる。
また、道県には県、薬剤師会、病院、大学などで構成する協議の場の設置を求める。地域医療構想調整会議や地域医療対策協議会など既存の会議体の活用も想定し、医療人材の需給把握や医療提供体制、人材確保策を検討する。県内の薬学部だけでなく、地域枠を導入している他県の大学の意見も共有できる場としたい考えだ。
地域医療人材をめぐる議論の場に大学や教育関係者が参加する機会は多くない。日比氏は「少子化時代に人材養成と人材確保をどう維持するのか、どの養成機関を残していくのかという議論には、地域の将来像を共有する場が必要だ」と指摘。「知事も含め、地域の将来を議論できる枠組みを促していきたい」と意欲を示す。
事業は厚生労働省と連携して実施する。文科省が大学側のカリキュラム開発や実習体制整備、学生支援、遠隔教育などを支援し、厚労省は都道府県側の協議体制整備や奨学金事業などを担う。文科省高等教育局と厚労省医薬局が協議して実現した取り組みで、日比氏は「医療行政とも密接に関わるため、一体となって進めなければ成果は上がらない。緊密に連携して取り組みたい」と語った。
卒前教育から卒後教育まで一貫した支援体制を構築すると共に、地域枠入学者の定着支援やキャリア形成にも両省が連携して取り組み、薬剤師の地域偏在解消につなげる考えだ。
事業は概算要求の「強く豊かな日本投資枠」に位置付けられ、33年度までの総事業費は246億円を見込む。事業期間中には中間評価を実施し、成果を踏まえて支援継続の可否や改善点、予算配分への反映を検討する。
日比氏は、「関係団体への説明を開始しており、日本薬剤師会や日本病院薬剤師会、国公私立大学の薬学部関係者にも丁寧に説明していく。意欲のある大学や県には、現段階から準備を進めてもらえればありがたい」と呼びかけた。
出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
地域の薬剤師確保に向けで、文科省が地域枠で入学した薬学生の定着促進に乗り出します。都道府県と大学が連携した養成体制の構築を後押しし、地域枠卒業生の地域定着率100%を短期目標に掲げています。