”漢方”に強くなる! まるわかり中医学 公開日:2026.10.08 ”漢方”に強くなる! まるわかり中医学

知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

 第130回 金銀花(キンギンカ・スイカズラの花)の効能 化膿・炎症などの解毒薬

初夏になると公園や道端などでスイカズラの花を見かけます。その花の蕾(つぼみ)は、「金銀花(キンギンカ)」と呼ばれる、れっきとした漢方薬です。抗ウイルス作用・抗菌作用・抗炎症作用を持ち、解毒薬としてさまざまな炎症や化膿に使われます。清熱解毒薬(せいねつ・げどく・やく)のなかでも比較的におなかに優しいため、消化器系が弱い人向けの中薬として重宝されています。

1. 金銀花(キンギンカ)とは?

スイカズラの花は、甘く優しい香りがします。咲き始めは白色で、咲き進むと黄色に変化していきます。強い生命力を持つツル植物で、道端のフェンスなどに絡みつきながら、ものすごい勢いで育ちます。生命力が強いということは、ある意味、パワーを持った植物・中薬ともいえるでしょう。
 
『中医臨床の中薬学』(東洋学術出版社)によると、金銀花の基原植物は
「スイカズラ科 Caprifoliaceae のスイカズラ Lonicera japonica THUNB. またはその他同属植物の花蕾(からい)」
とあります。

 

金銀花の四気五味(四性五味)とは

中薬・食物(薬食)には、四性(四気)と呼ばれる「寒・熱・温・涼」の四つの性質があり、さらに、温めもせず冷やしもしない、寒熱の偏りがないものは「平(へい)」といいます。金銀花は「寒性」です。

 

■ 生薬や食べ物の「四気(四性)」

生薬や食べ物の「四気(四性)」

 

金銀花の四気五味(四性五味)は「寒性、甘味」なので、次のような作用があることがわかります。

 

● 寒性=冷やす性質。冷たい性質。涼性よりも冷たい。
● 甘味=動きを止める→補う作用。(→よどみを生む、よどませる)

 

また、金銀花は「肺・胃・大腸(心)のグループ」に作用し、これを中医学では「肺経・胃経・大腸経(肺経・胃経・心経)に作用する(帰経する)」と表現します(文献によって諸説あり)。

 

金銀花の分類:清熱解毒薬(せいねつ・げどく・やく)

中薬学の書籍では、金銀花は「清熱薬(せいねつ・やく)」のなかの「清熱解毒薬(せいねつ・げどく・やく)」に分類されます。その名のとおり、清熱=熱を冷まし、解毒する作用を持つ薬物です。
 
清熱解毒薬という分類名のなかに、「熱」と「毒」という二つの邪があることから、熱や毒を治療する薬、ともいえます。熱というのは「熱邪」、毒というのは「毒邪」、あわせて「熱毒邪」といわれることもあります。
 
熱はその名のとおり、熱がこもっていることです。中医学で「毒」という用語が使われるときは、たとえば、以下のようなイメージです。
 

● 邪気の勢いが強い。状況が重い。
● ふつうの状況よりやっかい(治しにくい)。セオリーどおりの治し方では治りにくい。
● (組織などが)変質、変容している。
● 危険度が高い。

 
このようなときには、解毒作用を持つ薬物の出番です。
 
清熱解毒薬が必要になるのは、たとえば、熱があり、なおかつ細胞や組織などが変質・変容しているとき、化膿性の炎症で膿が出たときなどです。
 
身近な例としては、
 

● 呼吸器系の感染症で化膿している、膿性・膿血性の痰が出る
● アトピー性皮膚炎が傷により感染し悪化している
● ニキビの膿が出る
● 悪性のモノができてしまった

 
などが挙げられます。このように身近な感染症はもちろん、ちょっとやっかいな治しにくく珍しい感染症にも活用されます。
 
中薬の清熱解毒薬は一般的に、西洋医学の抗菌薬(抗生物質)や抗ウイルス薬のように有効成分が単一成分ではないため、耐性菌や耐性ウイルスを作りにくい(成分が複雑すぎて作れない)のではないか、といわれています。その複雑な作用機序は未だ解明しきれていませんが、数千年の歴史と実体験を積み重ねてきていますから、使用法さえ間違えなければ人体への安全性はある程度確保されているのだろうと推察できます。
 
また、一般論として、人間も犬も猫も、すべての生物は一つの個体の中に必ず陽と陰の両面を持ち合わせているものです。陽と陰は、活動的なときと静かなとき、交感神経と副交感神経、アクセルとブレーキなどをイメージするとわかりやすいかもしれません。植物も含めた自然界のものは、陰陽両面を持っているからこそ、効き過ぎることがない。したがって副作用が比較的に起きにくい、ともいわれます。

2. 金銀花はどんな時に用いられるのか(使用例)

金銀花が持つ清熱解毒の効能は、現代医学的には抗菌作用・抗ウイルス作用・抗真菌作用・収斂(しゅうれん)作用・利尿作用が該当します。したがって、化膿性皮膚疾患・細菌性下痢・急性腸炎・感冒などの感染性疾患・熱性疾患・化膿性疾患などに活用されます。
 
例えば、以下のようなケースに用いられます。
 

(1) 外感風熱や温病初起の発熱・ノドの痛み・発疹に:清熱解毒+疏散風熱(そさん・ふうねつ)
(2) 熱毒による皮膚化膿症・咽喉の腫脹疼痛に:清熱解毒
(3) 細菌性下痢・急性腸炎など熱毒の下痢で膿血便や血便があるとき:清熱解毒+涼血止痢(りょうけつ・しり)

 
具体的な例を見ていきましょう!

 

(1) 外感風熱や温病初起の発熱・ノドの痛み・発疹に:清熱解毒+疏散風熱

金銀花は外感風熱(がいかんふうねつ)や、発熱・軽度の悪寒を伴う温熱病の初期段階に用いられます。平たくいえば、感染症の初期症状で、寒気というよりも熱っぽくて、ノドの痛みやノドのイガイガが強く感じられる感染症に用いられます。
 
金銀花は清熱解毒作用に加え、疏散作用(そさんさよう:道をひらいて熱を逃すイメージの作用)も持ち、体の表面に侵入・停滞している風熱の邪気を体外へ追い出します。疏散・清熱作用を増強するために、荊芥穂(けいがいすい)や連翹(れんぎょう)や薄荷(はっか)と配合することもあります。
 
【方剤例】銀翹散(ぎんぎょうさん)
銀翹散は日本でもエキス顆粒剤などが販売されています。
 
熱が体内に入ったことによる、高熱、強い口渇、洪大脈(こうだいみゃく:強く有力な脈が、大波のように押し寄せてすぐ去る)がある場合には、石膏(せっこう)・知母(ちも)・連翹(れんぎょう)と配合します。これにより強力な清熱瀉火(せいねつしゃか:こもった熱を冷まし取り除く)・解毒作用が得られます。
 
熱がさらに体の奥深くに入っていくと、赤い斑点や発疹、舌が真っ赤になる、口やノドの乾燥、いらだち、不眠などが見られる場合があります。金銀花とともに、牡丹皮(ぼたんぴ)・生地黄(しょうじおう)などと配合することで、熱を冷まし、陰液を保護し、熱を帯びた血を冷まして毒を取り除きます(涼血解毒<りょうけつげどく>)。

 

(2) 熱毒による皮膚化膿症・咽喉の腫脹疼痛に:清熱解毒

金銀花は中医外科で常用される清熱解毒薬です。瘡癰癤腫(そうようせつしゅ)などの中医学でいう皮膚化膿症の治療によく用います。
 
単独で使用することもあれば、タンポポ(蒲公英・ホコウエイ)、野菊花、紫花地丁(しかじちょう)などと組み合わせて解毒・消腫作用を増強して活用することもあります。もし、採りたてのフレッシュな金銀花が手に入れば、すりつぶして患部に塗布するのも効果的です。
 
【方剤例】五味消毒飲(ごみしょうどくいん)
五味消毒飲の加減方(※)は、エキス剤や錠剤が日本でも製品化されて販売されています。
※加減方:症状に応じて生薬を足したり引いたり、分量を増減すること
 
また、腸癰(ちょうよう:腸の化膿性炎症)の治療にも適しており、ハトムギ(薏苡仁<ヨクイニン>)・黄芩(おうごん)・当帰(とうき)などと組み合わせて用いられます。
 
【方剤例】清腸飲(せいちょういん)
さらには、金銀花の揮発性成分を用いて「銀花露(ぎんかろ)」または「金銀花露(きんぎんかろ)」が作られます。金銀花に水を加え、蒸留して作られる伝統的なハーブウォーター(清涼飲料)で、これには夏の暑さによる不調を和らげる(清熱解暑<せいねつげしょ>)、頭や目をすっきりさせる(清頭目<せいとうもく>)などの作用があります。甘く香りがよく、中国では暑気払いやノドのケアのため、お茶代わりに飲まれることもあります。

 

(3) 細菌性下痢・急性腸炎など熱毒の下痢で膿血便や血便があるとき:清熱解毒+涼血止痢

金銀花は熱毒による下痢や膿血便赤痢(血や膿が混じった便)にも用いられます。金銀花を単品で濃く煎じて頻繁に服用することで、解毒・涼血・止痢(下痢を止める)の作用を発揮します。
 
重症の場合は、黄連(おうれん)・白頭翁(はくとうおう)・赤芍(せきしゃく)などと組み合わせて用いることもあります。

 

金銀花(キンギンカ・スイカズラの花)の効能

3. 金銀花の効能を、中医学の書籍をもとに解説

ここでは中薬学の書籍で紹介されている金銀花の効能を見ていきましょう。効能の欄には、四字熟語のような文字が並んでいます。一瞬ギョッとするかもしれませんが、漢字の意味から効能のイメージを掴むのに役立ちます。

金銀花(キンギンカ)

【分類】
清熱解毒薬

【処方用名】
金銀花・銀花・双花・二花・三宝花・忍冬花・銀花炭・キンギンカ。

【基原】
スイカズラ科 Caprifoliaceae のスイカズラ Lonicera japonica THUNB. またはその他同属植物の花蕾。

【性味】
甘、寒。

【帰経】
● 肺・胃・大腸。『中薬学』(上海科学技術出版社)
● 肺・胃・心。『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)

【効能】
清熱解毒。

【応用】
1. 外感風熱や、発熱・軽度の悪風・悪寒を伴う温熱病の初期段階に用いる。金銀花は清熱解毒に加え疏散作用も持つ。疏散・清熱作用を増強するために、しばしば荊芥穂や連翹と配合される(例:銀翹散)。熱が気分に入り、壮熱・煩渇・洪大脈がある場合には、石膏・知母・連翹と配合することで、強力な瀉火解毒作用が得られる。熱が営血に入り、斑疹・舌絳で乾燥・煩躁や不眠を呈する場合には、牡丹皮・生地黄と配合することで、営分の熱を清し、陰を保護し、涼血解毒する。
 
2. 瘡癰癤腫に用いる。金銀花は外科で常用する清熱解毒薬である。単独で使用することもあれば、蒲公英、野菊花、紫花地丁などと組み合わせて解毒消腫作用を増強することもある(例:五味消毒飲)。あるいは、新鮮なものをすり潰して患部に塗布するのも良い。また、腸癰の治療に、薏苡仁、黄芩、当帰などと組み合わせて用いられる(例:清腸飲)。金銀花の揮発性成分を用いて「銀花露」が作られ、清熱解暑・清頭目の作用がある。
 
3. 熱毒瀉痢・下痢膿血に用いる。生金銀花を単品で濃く煎じて頻繁に服用することで、解毒・涼血・止痢作用を発揮する。重症の場合は、黄連、白頭翁、赤芍などを配合する。

【用量・用法】
● 10~15g。外用時は適量。『中薬学』(上海科学技術出版社)
● 10~15g;大量使用時は30~120g。『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)

[附薬]忍冬藤(ニンドウトウ)
スイカズラの茎葉。金銀藤・銀花藤ともいう。
性味・効能は金銀花と似ており、廱腫瘡毒によく用いる。連翹・蒲公英などとよく配合する。また、黄耆・当帰・甘草と配合すると解毒内托する(例:神効托裏散)。また、経絡の風湿熱邪を除き止痛するため、風湿熱痹の関節の紅・腫・痛、屈伸不利の治療に用いる。用量:16~20g。煎服あるいは酒に浸して服用。
 
※金銀花の【分類】【処方用名】【基原】【性味】【帰経】【臨床使用の要点】【使用上の注意】は『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)より部分的に引用/金銀花の【分類】【性味】【帰経】【効能】【応用】【用量・用法】【使用上の注意】と忍冬藤は『中薬学』(上海科学技術出版社)より部分的に抜粋し筆者が和訳・加筆したもの

 

清熱解毒薬の親分的存在といえば、ガツンと効く苦寒薬(くかんやく:苦+寒)ですが、金銀花は甘寒薬(甘+寒)ですので、甘味がある分、比較的におなかに優しいイメージです。しかも、苦味が少ないので、消化器系が弱い体質や状況の人はもちろん、苦い味が苦手な子どもや、消化器系など内臓が未発達の子どもにもわりと使いやすいのがポイントです。
 
なお、金銀花はスイカズラの蕾ですが、茎や葉は忍冬藤(ニンドウトウ)という中薬名で用いられます。効能効果は似ており、金銀花と同じく皮膚の炎症や化膿のほか、関節の腫痛などにも活用されます。

金銀花

4. 中薬としての金銀花はどこで買える?

金銀花は、ドクダミ(魚腥草・十薬)や薏苡仁(ハトムギ)と同じように、日本では医薬品扱いと食品扱いの両方が存在し、その違いは品質などにあります。中薬としての金銀花、また、金銀花を含むエキス製剤や錠剤は漢方薬局で販売されています。
 
金銀花は使用する目的や体質によって、剤型・使用方法・量・組み合わせる生薬などが異なります。詳細は購入先の中医学の専門家に相談して決めると良いでしょう。

 
 
参考文献:
・小金井信宏(著)『中医学ってなんだろう(1)人間のしくみ』東洋学術出版社 2009年
・丁光迪(著)、小金井信宏(翻訳)『中薬の配合』東洋学術出版社 2005年
・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社 1994年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社 2004年
・翁 維健(編集)『中医飲食営養学』上海科学技術出版社 2014年6月
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店 2019年
・許 済群(編集)、王 錦之(編集)『方剤学』上海科学技術出版社 2014年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 2004年
・伊藤良・山本巖(監修)、神戸中医学研究会(編著)『中医処方解説』医歯薬出版株式会社 1996年
・李時珍(著)、陳貴廷等(点校)『本草綱目 金陵版点校本』中医古籍出版社 1994年
・ウチダ和漢薬『生薬の玉手箱(金銀花)』
・Yue Ding, Zeyu Cao,Lingmei Cao,Gang Ding,Zhenzhong Wang,Wei Xiao(著)『Antiviral activity of chlorogenic acid against influenza A (H1N1/H3N2) virus and its inhibition of neuraminidase』
・宮崎忠昭(著)『インフルエンザの病態形成機構と生薬成分のウイルス増殖抑制』
・厚生労働科学研究成果データベース『漢方薬の作用機序を解明するための研究』
・厚生労働科学研究成果データベース『貧血用漢方薬の作用メカニズム解析と有効成分の同定』
・大阪市立環境科学研究所・日本製紙(株)生産技術研究所、石井営次・尾立純子・久保聡、宮田武志・相川道雄(著)『メチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)に対する漢方生薬の抗菌活性とそ活性成分の検索』
・『Effects of Honeysuckle,Forsythia and Their Drug Pair on Resistance Genes and Virulence Genes of Streptococcus equi subsp,equi(マレンサ属の耐性遺伝子と病原性遺伝子に対する金銀花,レンギョウ,および薬の効果の研究)』
・鈴木成尚・西村甲(著)『東西両医学からみたアトピー性皮膚炎の病態と治療』

 
 
 

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、医学気功整体師、国際中医薬膳師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
恵泉女学園、東京薬科大学薬学部を卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学にて中国研修、国立北京中医薬大学日本校などで中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/