”漢方”に強くなる! まるわかり中医学 公開日:2023.02.09 ”漢方”に強くなる! まるわかり中医学

知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

 第89回 冷やしてデトックス「ドクダミ(魚腥草・十薬・ギョセイソウ・ジュウヤク)」の効能【雑草シリーズ】

前回に引き続き、今回も雑草シリーズです。ありふれた身近な雑草の中には、秘めたる効能を持っているものがあり、ドクダミもそんな雑草のひとつ。雑草としてはやっかい度高めな植物ですが、中医学(中国伝統医療)ではれっきとしたクスリ(中薬)として扱われていて、色々な炎症や化膿に使われます。

1.キングオブ雑草「ドクダミ」

初夏にかわいい白いお花を咲かせるドクダミは、繁殖力・生命力の強い植物です。地下茎を伸ばして繁殖するため、見えているところを刈ってもすぐにまた生えてきます。どこにでも生えている雑草ですが、日本でも昔からクスリとして用いられてきたので、「お茶」「入浴剤」「便秘薬」としてご存知の方もいるかもしれません。

 


 

独特な強い匂いを放つのが特徴で、中薬学では「魚のくさったニオイ」を表して「魚腥草(ギョセイソウ)」、日本では効能が多いことから「重薬(ジュウヤク)」「十薬(ジュウヤク)」などとも呼びます(諸説あり)。薬にする際には、花・葉・茎・根など植物全体(=全草)を用います。

2.ドクダミ=十薬(ジュウヤク)のはたらき

十薬(=ドクダミ)は中薬学の教科書において「清熱薬(せいねつやく)」に分類されています。解毒作用・抗菌作用・抗ウィルス作用・利尿作用・抗炎症作用などがあり、急性腸炎、赤痢、皮膚化膿症、肺化膿症、尿路感染症などの色々な炎症や化膿に用いられます。(『漢薬の臨床応用』『中医臨床のための中薬学』より)
 
清熱薬はさらに以下の5つに分類され、十薬は「清熱解毒薬」のうちのひとつです。ちなみにウィルス性の感染症対策に活用される「板藍根(ばんらんこん)」や、細菌性の下痢や皮膚トラブルに使われる「五行草(スベリヒユ)」、乳腺炎や皮膚トラブルに使われる「蒲公英(タンポポ)」も清熱解毒薬です。

 

・清熱瀉火薬(せいねつしゃかやく)
・清熱燥湿薬(せいねつそうしつやく)
・清熱涼血薬(せいねつりょうけつやく)
・清熱解毒薬(せいねつげどくやく)
・清虚熱薬(せいきょねつやく)

 

生薬や食べ物には四性(四気)と呼ばれる「寒・熱・温・涼」の4つの性質があり、さらに、温めもせず冷やしもしない、寒熱の偏りがないものは「平(へい)」といいます。十薬は「微寒性」です。

 

■生薬や食べ物の「四気(四性)」 

生薬や食べ物には四性(四気)と呼ばれる「寒・熱・温・涼」の4つの性質があり、さらに、温めもせず冷やしもしない、寒熱の偏りがないものは「平(へい)」といいます。蒲公英は「寒性」です。

十薬の四気五味(四性五味)は「微寒性、辛味」なので、次のような作用があることが分かります。また、十薬は「肺のグループ」に作用し、これを中医学では「肺経に作用する(帰経する)」と表現します(文献によっては、「肺・腎・膀胱」とあり)。

 

・微寒性=冷やす・冷ます性質。寒性より冷ます程度は少ない。
・辛味=「通」「行」「散」のイメージ。通すイメージ。発散させるイメージ。活血(かっけつ:血流改善)のイメージ。行気(こうき・ぎょうき:気を巡らす・気を通す)のイメージ。

 

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3.十薬はどんな時に用いられるのか(使用例)

十薬の代表的な使用例を紹介します。具体的な例を見ていきましょう!

 

(1) 化膿があるトラブル①肺化膿症に
(2) 化膿があるトラブル②皮膚化膿症に
(3) 尿路感染症
(4) その他の利用法:便秘解消・入浴剤として

 

(1) 化膿があるトラブル① 肺化膿症に

代表的な使用例の1つ目は肺化膿症です。肺が炎症を起こし肺組織が破壊されてできた空洞に、膿がたまっている状態をいいます。十薬は「清熱解毒(せいねつ・げどく)」作用と「排膿(はいのう)」作用によって、熱を冷まし、解毒し、炎症を鎮め、膿を排出する働きがあるため、発熱・咳嗽・腐臭のある膿性の喀痰などがある時、咳とともに膿血性の粘っこい痰を出す状態などに適しています。
 
『漢薬の臨床応用』(医歯薬出版株式会社)の重薬(十薬)のページには、以下のように記載されています。

 

「薬理作用
(1)抗菌:in vitroで黄色ブドウ球菌を強く抑制し、1/4万の濃度で効果がある。
(2)抗ウィルス:薬液はインフルエンザウィルスによる細胞変性を抑制し、ECHO11ウィルスによる細胞変性の進行をおさえる。」

 

肺化膿症までいかなくとも、肺炎・急性気管支炎・慢性気管支炎・腸炎などの色々な炎症・化膿に対して、その時の状況や体質に合わせ、他の中薬と組み合わせて用います。

 

(2) 化膿があるトラブル② 皮膚化膿症に

上述したように、十薬には抗菌作用・抗ウィルス作用・抗炎症作用・解毒作用・排膿作用などがあり、黄色ブドウ球菌やインフルエンザウィルスによる細胞変性を抑制する作用が確認されています(『漢薬の臨床応用』より)。

 

 

漢方の本場・中国では、例えば、ニキビ・ふきでもの・アトピー性皮膚炎などの各種皮膚病で「熱毒」がある状態に、十薬を内服や外用で用います。多くは野菊花(キクの花)や蒲公英(タンポポ)などと配合して、薬草を組み合わせて用います。皮膚病がある時は、後述のように「薬湯」にするのもひとつでしょう。

 

(3) 尿路感染症に

尿路感染症の排尿痛・排尿困難・尿の混濁などの症候がある時に、車前子(しゃぜんし)・木通(もくつう)など、ほかの中薬と組み合わせて用います。

 

(4) その他の利用法:便秘解消・入浴剤として

日本では古くから、十薬を便秘薬として重宝してきました。漢方薬局にはたまに、「祖母、母、私も便秘薬として飲んでいます。自然な薬草だし、大丈夫ですよね?」という女性がいらっしゃいます。「十薬=便秘薬・デトックス作用」というシンプルな認識は、半分正解で、半分間違いです。
 
最も本質的な性質が抜け落ちているのが、もうお分かりでしょうか? そう!ドクダミ(十薬)は「清熱薬」であり「微寒性」、つまり、冷やすのです。ドクダミ(十薬)を飲めば便の出は良くなりますが、冷え性は悪化します。上記の女性も母娘三代で冷え性にお困りでした。

 


 

また、十薬は入浴剤としても有名です。煎じたエキスを風呂湯に混ぜてもいいし、お湯を張る時に乾燥した葉を浴槽に入れておいてもいいでしょう。乾燥した葉は手ぬぐいなどの要らない布に包んだり、生薬専用の和紙パックに入れたりしておくと後始末が楽です。100円ショップやスーパーで売られている一般的なお茶パックでは小さ過ぎますが、漢方薬局にはその約6~8倍の大きさの薬草パックがあります。

4.十薬(魚腥草)の効能を、中医学の書籍をもとに解説

ここでは中薬学の書籍で紹介されている「十薬(魚腥草)」の効能を見ていきましょう。効能の欄には、四字熟語のような文字が並んでいます。一瞬ギョッとするかもしれませんが、漢字の意味から効能のイメージを掴むのに役立ちます。

魚腥草(ギョセイソウ)

【分類】
清熱解毒薬

【処方用名】
魚腥草・蕺菜(じゅうさい)・重薬・十薬・ジュウヤク

【基原】
ドクダミ科SaururaceaeのドクダミHouttuynia cordata THUNB.の花期から果実期にかけての全草

【性味】
辛、微寒

【帰経】


【効能】
清熱解毒(せいねつ・げどく)・排膿(はいのう)・利尿(りにょう)

【応用】
(1)
肺廱で咳や膿血を吐く、肺熱の咳嗽、痰が粘稠などの症候に用いられる。
魚腥草は、清熱解毒と排膿消廱の効能がある。肺経の熱邪を清熱し、肺廱を治療する。多くは、桔梗(ききょう)・芦根(ろこん)・薏苡仁(よくいにん)などと配合し応用する。
熱咳の治療には、知母(ちも)・貝母(ばいも)・桑白皮(そうはくひ)などを配合する。
熱毒廱腫の治療には、魚腥草単品を煎じて服用するか、新鮮な魚腥草は搗いて潰して外用する。
最近では、肺炎・急性慢性気管支炎・腸炎・尿路感染症に対してひとしく比較的に有効な治療効果をあげている。

(2)
熱毒瘡瘍に用いる。魚腥草は解毒消廱することができ、大抵は、野菊花(のぎくか)・蒲公英(ほこうえい)・連翹(れんぎょう)などと用いる。また、搗きつぶしたものを外用で塗布して用いる。

(3)熱淋(ねつりん)・小便澁痛の証に用いる。魚腥草は清熱除湿(せいねつ・じょしつ)・利尿通淋(りにょう・つうりん)の効能がある。魚腥草に、海金砂(かいきんさ)・石葦(せきい)・金銭草(きんせんそう)などを配合する。

【用量】
9~30g。煎服。外用は適量

【使用上の注意】
(1) 新鮮品は倍量を用いる。
(2) 長時間煎じてはならない。
 
※【処方用名】【基原】【用量】【使用上の注意】は『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)より引用/【分類】【出典】【性味】【帰経】【効能】【応用】は『中医学』(上海科学技術出版社)より部分的に抜粋し筆者が和訳・加筆したもの

このように、十薬は、さまざまな炎症や化膿に用いられます。特に、肺の炎症や化膿・皮膚病などが得意分野です。

5.十薬の注意点と蒲公英を含むエキス顆粒剤

十薬は蒲公英(タンポポ)と同じ清熱解毒薬なので、実熱がある時に用います。身体を冷やすので、冷え性の方、特に冷えてお腹が痛い・冷えて下痢をするタイプの人には、実熱があったとしても単品では用いません。そもそも、十薬は下剤としても使われているくらいですので、もともと軟便傾向の人はますます下痢になりやすくなります。

 
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もともと脾胃虚弱(ひいきょじゃく≒消化器系が弱い)で、慢性的にお腹が弱く軟便傾向にある人が、胃もたれ・胃痛・食欲不振・泥状便~下痢等の症状がある時は、十薬のような冷やす薬の使用は特に注意しましょう。もし、脾胃虚弱の体質だけれども、肺化膿症・皮膚病などの「実熱」があり、十薬を使わざるを得ない場合は、胃腸に負担がかからないよう、補気健脾薬(ほき・けんひ・やく)や消食薬(しょうしょくやく)などの胃腸をケアする漢方薬を必ず併用します。

 


 

また、「ジュウヤク」は医薬品においてのみ使われる呼び名で、日本では、「食品扱いのドクダミ」と「医薬品扱いのジュウヤク」があります。日本の漢方薬局では、根を乾燥させて細かく刻んだ状態のもの(煎じてお茶として飲む※)が入手できますが、それも、食品扱いのものと医薬品扱いのものが存在します。「医薬品」表記の有無で見分けられますから、外装をチェックしてみましょう。
 
※煎じる、とは水を加えて煮ること。量や時間は購入先の漢方薬局に相談するとよいでしょう。
 
ちなみに、スーパーやドラッグストアで売られているドクダミ茶は食品がほとんどで、医薬品とくらべて味も香りも、また、効果もソフトです。気軽に試すならば、食品で充分かと思います。医薬品の「ジュウヤク」は、味や香りが良く、効果も高く、品質管理も高いです。なにかしら改善したい症状がある時はやはり医薬品がよいでしょう。その際は、中医学の専門家にご相談ください。
 
手間はかかりますが、庭などに生えているドクダミを引っこ抜いて洗い、干して乾燥させる方法もあります。動物の糞尿がかかって無さそうなものをチョイスするのが一番のポイントです。手に匂いがつくので手袋をしましょう!
 
話が変わりますが、最近、パクチー(香菜)の匂いが、ドクダミの匂いに似ていることに気がつきました(皆様はとうにお気づきでしたでしょうか?)。 私はドクダミの匂いはかなり苦手なのですが、パクチーは大好きなので、気づいてしまった時はちょっと衝撃でした。似ているけれど、それでもやはりなにかが違う……。
 
もしかしてパクチーはドクダミ科なの?と思い調べてみたら、パクチーはセリ科で、ドクダミはドクダミ科!パクチーは見た目もセリ科っぽいですね。セリ科の中薬は香りの良いものが多く、また、気を巡らせる作用があるものが多いのです。パクチーの香りは好き嫌いが分かれるところですが、一般的にセリ科の中薬は香りが良く、その香りが気を通し、気の巡りを良くします。
 
ドクダミも香りが強く辛味のため、その発散力で気を通し、肺経絡に作用するため、肺化膿症や皮膚病に応用されます(おさらい:鼻・気管支・肺・皮膚はすべて同じ肺グループの仲間です)。

 


 

ちなみに、パクチーも同じく肺経に入り、辛味で邪を発散して表(おもて=体表)に追い出し、解毒する作用があります。匂いが似ていると効能も似ているのかなぁと思う調査結果でした。
 
前回に引き続き、植物の力強さ、味や香りと効能の関係についてしみじみ考えを巡らせました。十薬として用いる際は、中医学の専門家にご相談ください。

 
参考文献:
・小金井信宏(著) 『中医学ってなんだろう(1)人間のしくみ』東洋学術出版社 2009年
・丁光迪 (著), 小金井 信宏 (翻訳) 『中薬の配合』 東洋学術出版社 2005年
・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社 1994年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社 2004年
・翁 維健 (編集) 『中医飲食営養学』 上海科学技術出版社 2014年6月
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店 2019年
・許 済群 (編集)、 王 錦之 (編集)『方剤学』上海科学技術出版社2014年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 2004年
・伊藤良・山本巖(監修)、神戸中医学研究会(編著)『中医処方解説』医歯薬出版株式会社 1996年
・李時珍(著)、陳貴廷等(点校)『本草綱目 金陵版点校本』中医古籍出版社 1994年
ウチダ和漢薬『生薬の玉手箱 十薬(ジュウヤク)』

 
 

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、医学気功整体師、国際中医薬膳師、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
恵泉女学園、東京薬科大学薬学部を卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学にて中国研修、国立北京中医薬大学日本校などで中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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