薬剤師の就業先は多岐にわたり、それぞれ異なったやりがいや魅力が存在します。しかし、実際に働いているうちに、就職前に思い描いていたイメージと違う面ばかりが気になり、仕事へのやりがいや情熱を見出せなくなってしまうことがあるかもしれません。能力を発揮して生き生きと働くためには、就職前に各勤務先の特徴を把握しておくことも大切です。本記事では、薬剤師のやりがいについて紹介するとともに、病院・薬局・ドラッグストア・企業で働く薬剤師の仕事の魅力や、「やりがいがない」と感じる主な理由とその対処法をお伝えします。
- 1.薬剤師のやりがいとは?
- 1-1.患者さんの治療や健康維持に関われる
- 1-2.地域医療のために貢献できる
- 1-3.医療に関する幅広い知識を習得できる
- 1-4.国家資格保有者としてキャリアを構築できる
- 1-5.平均年収・給料が高い
- 2.薬剤師の主な職場ごとの仕事の魅力
- 2-1.病院
- 2-2.薬局
- 2-3.ドラッグストア
- 2-4.企業
- 3.薬剤師が「やりがいがない」と感じる理由
- 3-1.人間関係のトラブルがある
- 3-2.給与や待遇、労働環境に不満がある
- 3-3.自身の知識・技術不足を痛感する
- 4.薬剤師が「やりがいがない」と感じたときの対処法
- 4-1.同僚や上司に相談する
- 4-2.スキルアップのための勉強に取り組む
- 4-3.転職を検討する
- 5.薬剤師としてのやりがいを見失ったときは広い視野で考えてみよう
1.薬剤師のやりがいとは?
薬剤師のやりがいには、患者さんや地域医療への貢献、医療に関する知識や経験の習得、キャリアの構築や収入面などが挙げられます。ここでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1.患者さんの治療や健康維持に関われる
薬剤師のやりがいの一つに、患者さんの治療や健康維持・増進に関われる点が挙げられるでしょう。
薬剤師として得た知識や経験は、薬物治療を受ける患者さんのために役立てられるため、患者さんの健康の維持・増進に貢献できます。
また、患者さんの中には、薬物治療への不安や悩みを抱えている人もいます。自身のアドバイスによって患者さんの不安や悩みが解消されたり、感謝の言葉をもらったりしたときには、薬剤師としてのやりがいを感じられるでしょう。
1-2.地域医療のために貢献できる
地域医療では、医師や看護師などのさまざまな医療関連職種が、チームとして連携しながら医療を提供しています。自身がチーム医療の一端を担い、薬の専門家として多職種に意見や助言を行うことは、薬剤師の重要な職務といえます。
また、薬局薬剤師は、地域住民のセルフメディケーションをサポートしたり、緊急避妊薬の販売をしたりする役割も求められることもあります。
医療関連職種との連携に加え、自身の知見をもとに地域住民へのサポートや助言などを行い、地域医療に貢献することは、薬剤師としてのやりがいにつながるでしょう。
1-3.医療に関する幅広い知識を習得できる
医療に関する幅広い知識を習得できる点も、薬剤師のやりがいとなるでしょう。医療関連の最新情報にアンテナを張り、情報を収集する努力をし続けなければならない点は、薬剤師の大変なところといえるかもしれません。
しかし、自身の努力で得たさまざまな知見は、患者さんの薬物治療だけでなく、家族や友人の不安、悩みなどの解消にも役立てられることがあります。
新たに得た知識や経験が、仕事やプライベートで役立てられたときには、薬剤師として働く意義を感じることができるでしょう。
1-4.国家資格保有者としてキャリアを構築できる
薬剤師の国家資格を取得することは、専門性を証明し、安定したキャリアを築く上での大きな強みとなります。
努力によって得た資格を生かし、医療業界で人々の健康を支える存在になることは、仕事への誇りや充実感を得ることにつながるでしょう。
資格を基盤にスキルを磨くことで、キャリアアップや独立開業など、新たな挑戦が可能になるのも魅力といえます。
1-5.平均年収・給料が高い
薬剤師の年収や給与は、比較的高い水準にあるとされています。調査資料や年度が異なるため、あくまで参考としての比較となりますが、「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、日本における給与所得者の平均年収は約460万円であるのに対し、「令和6年賃金構造基本統計調査」における薬剤師の平均年収は約600万円となっており、薬剤師は平均年収が高い職種といえるでしょう。
自身の努力によって得た資格を活用し、人々の健康維持・増進に寄与して高収入を得られることは、充実感や達成感につながります。
参考:令和5年分民間給与実態統計調査|国税庁
参考:賃金構造基本統計調査 令和6年賃金構造基本統計調査|政府統計の総合窓口 e-Stat
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2.薬剤師の主な職場ごとの仕事の魅力
薬剤師が働く職場はさまざまです。ここでは、病院や薬局、ドラッグストア、企業で働く魅力についてお伝えします。

2-1.病院
病院薬剤師のやりがいは、チーム医療の一員として患者さんの治療に携われる機会が多いことです。
治療方針を決定するカンファレンスでは、薬学的な立場からの意見を求められるため、薬の専門家としての職能を発揮することができます。
高度医療や急性期を取り扱う病院であれば、希少疾病などの症例に触れる機会もあり、薬剤師としてのキャリア形成に役立つ経験を積める点もメリットです。
また、入院患者さんの症状が落ち着いて退院していくときや、患者さんに「ありがとう」と感謝の言葉をかけられたときに、達成感や充実感を得られるのも病院薬剤師の魅力といえるでしょう。
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2-2.薬局
薬局薬剤師のやりがいは、患者さん一人ひとりを継続的にサポートできることです。
慢性疾患の患者さんの場合は長い付き合いとなることも多く、服薬指導の際には薬の説明をするだけでなく、患者さんの趣味や生活の話を聞く場面も少なくありません。個々の患者さんに合わせたサポートができることが、薬局薬剤師の仕事の魅力です。
例えば、スポーツをする人であれば、運動時の薬の影響を考慮したアドバイスを送ることもあるでしょう。不規則の生活を送る人には、飲み忘れを防ぐ工夫について提案できます。
また、食事の嗜好に合わせて薬の飲み方を調整するなど、患者さんにとって実践しやすい指導を行っていくことが可能です。
患者さんと密なコミュニケーションを取りつつ、薬学知識を生かして健康維持・増進に貢献できるのは、薬局薬剤師ならではのやりがいといえるでしょう。
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2-3.ドラッグストア
ドラッグストア薬剤師のやりがいは、患者さんの症状や生活背景に合った商品を医師の処方によらずに提案できることです。
近年では、スイッチOTC薬の種類も増え、セルフメディケーションをサポートする薬剤師がより求められるようになりました。
健康に悩みを抱えて来店した人へのカウンセリングによって、自分の持つ知識をもとに数多くの薬の中から適切なものを提案できたり、「あなたに相談してよかった」「ありがとう」と声をかけてもらえたりするときには、薬剤師としてのやりがいを感じられるでしょう。
そのほか、商品販売の工夫が売上アップにつながることを通じて達成感を得られるのも、ドラッグストアで働く魅力の一つです。
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2-4.企業
医薬品関係企業に勤めている薬剤師は、主に研究開発職のほか、医薬品の営業を行うMR(医薬情報担当者)、治験に関わるCRC(治験コーディネーター)やCRA(臨床開発モニター)などとして働いています。
また、食品メーカーや化粧品メーカーで製品の品質管理などを担う管理薬剤師、自社製品の医薬品情報をMRや医療関係者に提供する学術職など、企業薬剤師の仕事はさまざまです。
そのため、企業薬剤師のやりがいは、業種によって異なるでしょう。例えば、研究開発職などの仕事では、新薬開発によってこれまで治療が難しかった患者さんの助けになれるというやりがいがあります。
また、医薬品の流通や情報提供に関わるMRは、正しい情報の提供や副作用情報の収集などを行い、安全で適切な薬物治療が行えるようにサポートするという大切な役割があります。
企業薬剤師は、創薬や薬の流通、情報提供といった立場から、より多くの人々の健康を守ることができる点が魅力といえるでしょう。
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3.薬剤師が「やりがいがない」と感じる理由
薬剤師として働いていると、仕事に「やりがいがない」と感じてしまうこともあるでしょう。
ここでは、やりがいを感じられなくなる主な理由についてお伝えします。

3-1.人間関係のトラブルがある
薬剤師に限らず、どのような職場であっても、人間関係の悩みでやりがいを見失う人は少なくありません。
例えば、薬局内では同じメンバーと仕事をする場面が多いため、対人問題が生じると大きなストレスになることがあります。
職場の人間関係が原因で仕事自体が苦痛となってしまい、やりがいを見出せなくなることがあるでしょう。
3-2.給与や待遇、労働環境に不満がある
給与や待遇、労働環境も仕事へのモチベーションに関わる要素です。給与と仕事内容が見合っていないと感じた場合、転職を検討するきっかけになるかもしれません。
また、一人薬剤師や24時間開局している店舗など、自分の希望するペースでの勤務が難しい環境にいると、自分の生活スタイルに合った職場で働きたいと感じることがあるでしょう。
3-3.自身の知識・技術不足を痛感する
医療分野は新しい情報の発信頻度が高く、薬剤師は意識して情報収集に努める必要があります。たくさんの情報をしっかりと習得して仕事に生かしている同僚や上司が職場にいると、自身の知識や技術不足を痛感することもあるでしょう。
やりがいよりも劣等感が先に立ってしまい、仕事への意欲をなくしてしまうというケースも考えられます。
🔽 薬剤師の大変なことについて解説した記事はこちら
4.薬剤師が「やりがいがない」と感じたときの対処法
仕事に「やりがいがない」と感じたときは、やりがいを見出せるよう行動することで、状況が改善する場合もあります。
ここでは、薬剤師が「やりがいがない」と感じたときの対処法についてお伝えします。

4-1.同僚や上司に相談する
人間関係や労働環境、待遇などが原因となる場合は、同僚や上司に相談すると改善できるケースがあります。
勤務先によっては、店舗内での解決が難しいときは部署異動を希望することで、自分らしく働ける環境を整えることもできるでしょう。
4-2.スキルアップのための勉強に取り組む
実力不足や単調な仕事内容に悩んでいる人は、スキルアップのための勉強に取り組むのもおすすめです。
例えば、認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得を目指すのもよいでしょう。習得した知識を仕事に生かすことで、やりがいを得られる可能性もあります。
また、資格の取得をきっかけに、より専門的な業務を任されるようになれば、従来の仕事とは違った働きがいを感じられるようになるでしょう。
4-3.転職を検討する
現在の職場や職種が自分に合っていないと感じる場合は、転職を検討するのも一つの方法です。
自分がどのような薬剤師を目指すのか、どのような働き方をしたいのかなどを明確にした上で、自分らしく働ける転職先を探しましょう。

5.薬剤師としてのやりがいを見失ったときは広い視野で考えてみよう
薬剤師はさまざまな場所で働いており、職種によってやりがいや魅力が異なります。仕事を続けている中で、やりがいを感じられなくなることもあるかもしれません。仕事へのモチベーションを上げるには、原因に応じた対策を行うとともに、現在の職種を選んだときの初心や、かけられてうれしかった言葉を思い出してみましょう。それでも今の仕事に魅力を感じられない場合は、転職も含め、広い視野で「自分に合った仕事とは何か」を考えてみてはいかがでしょうか。

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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