薬学生に実務実習の指導をしています。ここ最近の薬学生は「指示待ち」で、こちらが言ったことをただやるだけの子が多いです。自ら考えて行動する薬剤師になってもらいたいのですが、どう指導したら良いですか。

新人・若手薬剤師に多いと言われる「指示待ち」のスタンスは、薬学生にも同じようにみられるようです。指示されたことだけをやっているように見えるかもしれませんが、今どきの学生さんたちはとても優秀。
 
私の個人的な考えですが、指導者の考えまで瞬時に察して、必要と判断したことを無駄なく着実にやっているように感じています。スマホ世代、デジタル時代に成長してきたため、わからないことがあればすぐに調べて答えを見つける能力にたけています。
 
一方で、理にかなっていれば納得して取り組みますが、理屈が合わないと思えばスルー。指導方法や内容が腑に落ちないと、モチベーションが上がらない傾向があるようです。
 
実務実習に臨む学生さんたちは、目的や経緯・背景を正しく理解しさえすれば、自ら積極的に行動することができると感じます。
 
指導する側は、彼らの気質や関心を正しく理解して説明してほしいと思います。実習のやり方だけでなく、何のためにやるのか、どういう効果が期待できるのか、これまでどのような経緯をたどってきたのか等を学生さんたちが理解するまで具体的に説明しましょう。

 

もう一つ大切なのが、学生さんたちに自ら考えてもらうこと。たとえば、「今日は〇〇をやってもらいます」と方法を指導するだけでなく、どうすればさらに良い方法になるか考えてもらいながら実習するようにします。
 
ただピッキングをするだけで終わらせず、「調剤過誤を減らすために棚の配置をどのように工夫すればいいか、もっといい方法を考えてみて」という具合です。その際、現在の配置になった経緯や背景を伝えることで、次の改善策を考える足掛かりになります。
 
ピッキング一つとっても、スピードと正確性を求めて考えることは山のようにあります。指導する側がきっかけを与えるだけで、学生さんたちはアクティブに実習に参加するようになるでしょう。
 
実習が終わったら、課題に対する学生さんたちの考えをきちんと聞いて意見や感想等を伝えましょう。フィードバックによって自分の考え方の方向性が正しいのか、もっと深く考える必要があるのか等が分かるため、次の目標を立てやすくなります。

 

 
フィードバックがないと、「なんだ、せっかく考えたのに、考えるだけ無駄だった」と感じて、指示待ちに戻ってしまいます。「その考えはとてもいいですね、でもこういう場合はどうですか？」などと指導者の考えを伝えましょう。
 
多方面から物事を見て考える習慣をつけることで、課題解決の力を養うことになりますし、実習の項目一つ一つに目的と経緯や背景があることがわかれば、実習に取り組む姿勢も変わってくるでしょう。
 
「指示待ち」を今どきの学生さん気質と言ってしまうことは簡単ですが、そうさせないために、指導方法にも新しい工夫が必要かもしれません。学生さんたちに問題があると決めつけず、指導する側にも改善の余地があると謙虚に受けとめて、学生さんたちが考えたり意見したりする場を増やしましょう。薬学生に「この薬局で実習できてよかった」と喜んでもらえる指導者を目指してほしいと思います。

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薬剤師、医療接遇コミュニケーションコンサルタント。
株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日　同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling！」: https://smilegrdn.exblog.jp/