薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.10.10 薬剤師のスキルアップ

認定薬剤師とは?種類一覧と資格取得のメリットについて解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

認定薬剤師は、薬剤師としてのスキルや能力を証明する資格です。自身の強みとなる専門分野を持つためにも、認定薬剤師の種類を把握しておくことは大切でしょう。本記事では、認定薬剤師の概要や専門薬剤師との違いを解説するとともに、認定薬剤師の種類一覧と主な資格を紹介します。また、認定薬剤師を取得するメリットについてもお伝えします。

1.認定薬剤師とは?

認定薬剤師とは、薬剤師として一定の知識やスキル、経験などを有することを証明する資格です。
 
認定薬剤師は、かかりつけ薬剤師になるための要件となっているため、勤務する薬局から取得を目指すよう促されることもあるでしょう。その際に話に上がる「認定薬剤師」は、日本薬剤師研修センターが認定する「研修認定薬剤師」を指すことが一般的です。
 
2008年の日本学術会議による提言「専門薬剤師の必要性と今後の発展-医療の質の向上を支えるために-」では、薬剤師のキャリアラダーとして、以下のようなステップが示されています。
 

■薬剤師のキャリアラダー(2008年の日本学術会議による提言)
1. 薬学部6年制
↓ (薬剤師国家試験)
2. 薬剤師
↓ (実務経験・講習の履修)
3. 研修認定薬剤師
↓ (実務経験・講習の履修・認定試験)
4. 認定薬剤師
↓ (専門実務経験・講習・研修・認定試験)
5. 領域別専門薬剤師
↓ (学会発表・論文作成)
6. 領域別高度専門薬剤師

参照:専門薬剤師の必要性と今後の発展-医療の質の向上を支えるために-|日本学術会議

 
ただし、厚生労働科学研究成果データベースに掲載されている2022年度「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」の総合研究報告書によれば、「認定薬剤師」「専門薬剤師」などの名称の使い方は「各認定団体内では整備される方向にあるものの、認定団体の枠を超えての統一性に欠ける」とされてます。
 
上記の状況を踏まえ、同研究班は資格を有する薬剤師の名称と定義について、以下のように統一化することを提言しています。
 

■資格を有する薬剤師の名称と定義(2022年度「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」における提言)
● ステップ1:認定薬剤師(ジェネラル)
 免許取得後3~5年目の薬剤師すべてが目指すべき資格で、薬剤師としてのジェネラルな基礎知識を持つ証
● ステップ2:領域別認定薬剤師
 特定領域の専門的薬剤業務を提供する能力(知識・技術・経験)を兼備した薬剤師としての証
● ステップ3:専門薬剤師
 領域別認定薬剤師が行う専門的薬剤業務と同等以上の質の高い業務を行うことができ、さらに、専門領域に関する研究能力も兼ね備え、指導的役割を果たすことができる証
● 指導薬剤師
 専門薬剤師の上位資格として薬剤師を指導し、専門薬剤師を養成する管理的立場として必要時に置くことができる

参照:「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」総合研究報告書|厚生労働科学研究成果データベース

 

1-1.専門薬剤師とは?

上述のとおり、「専門薬剤師」という名称の使い方は認定団体によって違いがあるものの、厚生労働科学研究成果データベースに掲載されている2013年度「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究」の研究報告書では、専門薬剤師とは「特定の専門領域の疾患と薬物療法についての十分な知識と技術ならびに経験を活かし、医療スタッフの協働・連携によるチーム医療において質の高い薬剤師業務を実践するとともに、その領域で指導的役割を果たし、研究活動も行うことができる能力を有することが認められた者」と定義されています。
 
参照:「6年制薬剤師の輩出を踏まえた薬剤師の生涯学習プログラムに関する研究」総括・分担研究報告書|厚生労働科学研究成果データベース
 
専門薬剤師になるための要件についても制度によって異なりますが、「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」研究班は、専門薬剤師の新規要件として、下記のように統一化することを提言しています。

 

■専門薬剤師の新規申請に必要な外形基準(2022年度「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」における提言)
● 薬剤師としての実務経験が5年以上
● 認定薬剤師(ジェネラル)であること
● 専門領域のカリキュラムに沿った研修を受けていること
● 過去5年間での自身が関わった症例または事例の要約を提出すること
● 認定試験に合格すること
● 専門領域の筆頭論文1報(要査読)または学会発表2回(うち筆頭1回)の実績があること

参照:「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」総合研究報告書|厚生労働科学研究成果データベース

2.認定薬剤師の種類一覧

2022年度「国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究」の資料によると、認定薬剤師の種類には以下のようなものがあります。

 

■認定薬剤師の種類一覧
認定組織 認定薬剤師等
日本薬剤師研修センター 研修認定薬剤師
漢方薬・生薬認定薬剤師
小児薬物療法認定薬剤師
日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師
感染制御認定薬剤師
精神科薬物療法認定薬剤師
妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師
HIV感染症薬物療法認定薬剤師
日病薬病院薬学認定薬剤師
薬学教育協議会 認定実務実習指導薬剤師
日本臨床腫瘍薬学会 外来がん治療認定薬剤師
日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師
外来抗感染症薬認定薬剤師
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター(ICD)
日本結核病学会
(現・日本結核・非結核性抗酸菌症学会
抗酸菌症エキスパート
日本腎臓病薬物療法学会 腎臓病薬物療法認定薬剤師
日本緩和医療薬学会 緩和薬物療法認定薬剤師
日本老年薬学会 老年薬学認定薬剤師
日本糖尿病療養指導士認定機構 日本糖尿病療養指導士
日本くすりと糖尿病学会 糖尿病薬物療法認定薬剤師
日本骨粗鬆症学会 骨粗鬆症マネジャー
日本臨床救急医学会 救急認定薬剤師
日本中毒学会 認定クリニカル・トキシコロジスト
日本医薬品情報学会 医薬品情報認定薬剤師
日本医療情報学会 医療情報技師
医薬品ライフタイムマネジメント(DLM)センター DLM認定薬剤師
日本臨床薬理学会 認定薬剤師
認定CRC
日本プライマリ・ケア連合学会 プライマリ・ケア認定薬剤師
日本禁煙学会 禁煙認定指導者
日本在宅薬学会 在宅療養支援認定薬剤師
日本核医学会 核医学認定薬剤師
日本リウマチ財団 リウマチ財団登録薬剤師
日本褥瘡学会 褥瘡認定師
在宅褥瘡予防・管理師
日本肥満学会 肥満症生活習慣改善指導士
日本静脈経腸栄養学会
(現・日本栄養治療学会
NST専門療法士
神戸薬科大学 健康食品領域研修認定薬剤師
日本サプリメントアドバイザー認定機構 NR・サプリメントアドバイザー
日本アンチ・ドーピング機構
日本スポーツフェアネス推進機構
スポーツファーマシスト

参照:国民のニーズに応える薬剤師の専門性のあり方に関する調査研究 資料1-1 主な領域別認定・専門薬剤師|厚生労働科学研究成果データベース

 

続いて、研修認定薬剤師をはじめとした主な資格を紹介します。

 

2-1.研修認定薬剤師

研修認定薬剤師は、公益財団法人日本薬剤師研修センターが認定する資格です。学会に所属したり、試験を受けたりする必要がないため、薬剤師免許を取ったばかりの薬剤師が取得しやすい資格といえるでしょう。

 
🔽 研修認定薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

2-2.日病薬病院薬学認定薬剤師

日病薬病院薬学認定薬剤師は、一般社団法人日本病院薬剤師会が認定する資格です。資格を取得するためには、日本病院薬剤師会の正会員または特別会員になる必要があります。

 
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2-3.外来がん治療認定薬剤師

外来がん治療認定薬剤師は、一般社団法人日本臨床腫瘍学会が認定する資格です。認定を受けるには、日本臨床腫瘍学会の正会員であることや、外来のがん患者さんのサポート事例を10例提出するといった条件があります。

 
🔽 外来がん治療認定薬剤師について詳しく解説した記事はこちら

 

2-4.小児薬物療法認定薬剤師

小児薬物療法認定薬剤師は、公益財団法人日本薬剤師研修センターが認定する資格です。認定を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

 

● 「小児薬物療法研修会」の研修を修了し、試験に合格すること
● 小児薬物療法認定薬剤師新規認定のためのレポートを提出し、合格すること

 

小児薬物療法研修会の試験は1年に1回実施されています。

 

2-5.救急認定薬剤師

救急認定薬剤師は、一般社団法人日本臨床救急医学会が認定する資格です。認定要件には、病院や診療所の勤務歴が5年以上あり、そのうち2年以上は救急医療に従事していることなどがあります。

 
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2-6.認定実務実習指導薬剤師

認定実務実習指導薬剤師は、一般社団法人薬学教育協議会が認定する資格です。病院や薬局で実務実習を行う薬学生に指導するための基本的素養を有していることなどを証明するものです。

 
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2-7.感染制御認定薬剤師

感染制御認定薬剤師とは、一般社団法人日本病院薬剤師会が認定する資格です。感染制御認定薬剤師の資格は、認定試験への合格や団体への所属、症例報告などの要件を満たすことで取得できます。

 
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2-8.スポーツファーマシスト

スポーツファーマシストとは、一般社団法人日本スポーツフェアネス推進機構公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構が共催している認定資格です。基礎講習会と実務講習を受講後、知識到達度確認試験に合格することで取得できます。

 
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3.認定薬剤師になるメリット

認定薬剤師を取得すると、キャリアアップや年収アップが期待できるほか、転職時に役立ちます。ここでは、認定薬剤師になるメリットについてお伝えします。

 

3-1.キャリアアップを目指せる

認定薬剤師を取得するメリットのひとつに、薬剤師としての専門的な知識を習得できることが挙げられます。定期的に研修会や講習会に参加することで、医療情報や知識をアップデートできるため、スキルアップにつながります。
 
スキルアップが上司や同僚からの信頼を得るきっかけとなり、昇進につながることもあるでしょう。

 

3-2.年収アップにつながる

認定薬剤師などの資格取得に応じた手当や昇進制度を設けている企業もあります。直接年収がアップする制度がなかったとしても、認定薬剤師の取得をきっかけに任される業務が増え、自身の評価が高まることもあるでしょう。
 
昇給や賞与に反映されることもあるため、認定薬剤師の取得は年収アップにつながる可能性があります。

 
🔽 薬剤師の年収について詳しく解説した記事はこちら

 

3-3.転職時にスキルの証明に役立つ

認定薬剤師の資格を持っていると、転職時に自身のスキルを証明するのに役立ちます。即戦力としてアピールできることはもちろん、ほかの応募者との差別化も期待できます。
 
また、認定薬剤師としての専門性を証明するだけでなく、継続して学び続ける姿勢についてもアピールできるため、転職時に役立つでしょう。

4.認定薬剤師を取得しよう

認定薬剤師を取得することで、薬剤師としての専門的な知識やスキルを習得できます。また、資格の更新ために研修会や講習会に参加することで、仕事をする上で必要な知識を定期的にアップデートできるでしょう。
 
日進月歩の医療では、情報のキャッチアップが非常に重要であるため、認定薬剤師の取得によって得られる知識は業務に役立ちます。安全安心な薬物治療を行うためにも、認定薬剤師の取得を目指しましょう。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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