薬剤師のスキルアップ 公開日:2024.12.17 薬剤師のスキルアップ

バイオ後続品使用体制加算とは?算定要件・施設基準・計算方法などを解説

文:篠原奨規(薬剤師)

2024年度の診療報酬改定では、バイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進を目的として、新たに「バイオ後続品使用体制加算」が設けられました。本加算を正しく算定するためには、算定要件や点数のほか、施設基準として求められる置き換え割合の計算方法についても把握しておく必要があるでしょう。本記事では、バイオ後続品使用体制加算が新設された背景や点数・算定要件、施設基準に加え、計算方法や対象薬剤について詳しく解説します。

1.バイオ後続品使用体制加算とは?

バイオ後続品使用体制加算とは、入院中の患者さんに対してバイオ後続品の有効性や安全性を十分に説明した上で薬剤を投与し、成分ごとに定められた使用目標を達成した場合について評価した加算です。バイオ後続品の使用推進を目的として、2024年度の診療報酬改定により新設されました。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅱ)】|厚生労働省
 
本加算は入院中の患者さんが対象となるため、入院施設のある医療機関において算定できる加算であり、入院施設のない病院や一般の調剤薬局は算定できません。

 

1-1.バイオ後続品(バイオシミラー)とは?

バイオ後続品(バイオシミラー)とは、国内ですでに承認されている先行バイオ医薬品(バイオテクノロジー応用医薬品)と、同等かつ同質の品質・安全性・有効性を持つ医薬品のことです。先行バイオ医薬品とは異なる製造販売業者から販売され、開発コストが低く済むため、原則として先行バイオ医薬品の70%の薬価が設定されています。
 
バイオ医薬品とは、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術などを応用し、微生物や細胞が持つタンパク質を生成する能力を利用して製造される医薬品のことです。多くの医薬品に使用される化学合成物質とは異なり、ホルモンや酵素、抗体などで構成されるバイオ医薬品は、有効成分が複雑な構造かつ不安定な性質を持つため、先行バイオ医薬品との同一性などを検証することが困難とされています。そのような理由から、バイオ後続品として薬事承認を受けるためには、品質の類似性を確認するとともに、先行バイオ医薬品との同等性・同質性を評価するための治験などが行われます。
 
また、バイオ後続品は先行バイオ医薬品の特許が満了し、再審査期間が終了した後に薬事承認が行われます。そのため、先行バイオ医薬品の一部の適応症が特許期間中もしくは再審査中の場合には、効能・効果が一部取得できない場合があります。
 
参照:バイオ後続品|医薬品医療機器総合機構
参照:バイオ医薬品・バイオシミラーを正しく理解していただくために(医療関係者向け)|厚生労働省
参照:バイオシミラーに係る政府方針|厚生労働省
参照:Q&A集(医療関係者向け)|日本バイオシミラー協議会

 

1-2.2024年度診療報酬改定で新設された背景

高齢化の進む日本において、社会保障制度を維持するためには医療費の適正化が欠かせません。医療費の適正化に向けて、先行バイオ医薬品よりも薬価の安いバイオ後続品が注目されており、「2029年度末までにバイオ後続品に80%以上置き換わった成分数が全体の成分数の60%以上」となることが国の目標として掲げられています。
 
参照:後発医薬品(ジェネリック医薬品)及びバイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進について|厚生労働省
 
そういった背景から、2020年度の診療報酬改定において、在宅での自己注射を実施している患者さんを対象に「バイオ後続品導入初期加算」が新設され、2022年度の診療報酬改定で外来化学療法を実施している患者さんにも対象が拡大されました。本加算の新設をきっかけに、外来医療におけるバイオ後続品への置き換えは進んだものの、入院医療で使用される薬剤については置き換えが進んでいないものがありました。
 
また、中央社会保険医療協議会総会(第566回)の資料として厚生労働省が公開している「個別事項(その5) 後発医薬品、バイオ後続品、リフィル処方箋等」によると、患者さん向けの調査において、「できればバイオ後続品を使用したい」、「とりあえずバイオ後続品を試してみたい」と考える患者さんが一定数いることや、少しでも経済的な負担が少なくなるのであればバイオ後続品を使用したいと考える患者さんも多いことが分かっています。
 
そこで、2024年度の診療報酬改定において、入院中の患者さんに対するバイオ後続品の使用を推進するために、バイオ後続品使用体制加算が新設されることになりました。

 

1-3.バイオ後続品導入初期加算との違い

バイオ後続品使用体制加算と同じく、バイオ後続品に関する加算として「バイオ後続品導入初期加算」があります。
 
バイオ後続品使用体制加算は、入院中の患者さんが対象です。一方、バイオ後続品導入初期加算は、2020年度の診療報酬改定で在宅自己注射を実施している患者さん、2022年度の診療報酬改定で外来化学療法を実施している患者さんへと対象が拡大され、2024年度の診療報酬改定では、外来化学療法を実施している患者さんから、医療機関において注射するバイオ後続品を使用するすべての患者さんが対象になるよう見直されました
 
バイオ後続品導入初期加算は、対象となる患者さんに対し、バイオ後続品の有効性や安全性などについて説明した上で、バイオ後続品を使用(在宅自己注射指導管理料に係る場合は処方)した場合に、初回使用(処方)月から3カ月を限度として、月1回に限り150点を算定できます。
 
参照:令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅱ)】|厚生労働省
参照:令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項Ⅴ|厚生労働省

2.バイオ後続品使用体制加算の点数・算定要件

バイオ後続品使用体制加算は、施設基準を満たした保険医療機関において、バイオ後続品のある先発バイオ医薬品(バイオ後続品の適応のない患者さんに対して使用する先発バイオ医薬品は除く)およびバイオ後続品を使用する入院患者さんに対して算定できます。
 
本加算を算定できるのは入院期間中1回のみであり、入院初日に100点を算定します。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.バイオ後続品使用体制加算の施設基準

バイオ後続品使用体制加算の施設基準として、バイオ後続品の使用を促進するための体制を整備しなければなりません。具体的には、病院の薬剤部門や薬剤師がバイオ後続品の品質や安全性、安定供給体制などの情報を収集・評価し、その結果を踏まえてバイオ後続品の採用を決定する体制を整備する必要があります。
 
また、入院医療および外来医療において、バイオ後続品の使用を推進している旨を医療機関の見やすい場所に掲示しておくことが求められます。
 
そのほか、原則として、医療機関のウェブサイト上にも同内容を掲載する必要があります。ただし、自らで管理するホームページなどがない場合には、必ずしも実施する必要はありません。加えて、ウェブサイト上における掲載については、2025年5月31日までに限り該当しているものとみなされる経過措置が設けられています。
 
さらに、直近1年間でバイオ後続品のある先発バイオ医薬品(バイオ後続品の適応のない患者さんに対して使用するものを除く)とバイオ後続品の使用回数が合計100回を超えていなければなりません。
 
そして、医療機関で調剤した先発バイオ医薬品とバイオ後続品を合算した規格単位数量に占めるバイオ後続品の規格単位数量の割合(置き換え割合)が一定の基準を超える必要があります。置き換え割合の計算方法がやや複雑であるため、対象薬剤とともに後述します。

 

3-1.バイオ後続品使用体制加算の施設基準の届出

バイオ後続品使用体制加算を算定するには、あらかじめ施設基準の届出が必要です。
 
「基本診療料の施設基準等に係る届出書」とともに、様式40の3の2「バイオ後続品使用体制加算の施設基準に係る届出書添付書類」を作成し、医療機関が所在する都道府県を管轄する事務所に提出しなければなりません。
 
参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
参照:基本診療料の届出一覧(令和6年度診療報酬改定)|関東信越厚生局

4.バイオ後続品使用体制加算の計算方法

バイオ後続品使用体制加算を算定するには、下表に示す成分ごとの置き換え割合を達成する必要があります。
 
ただし、いずれも直近1年間に調剤した規格単位数量の合計が50未満の場合は除きます。

 

①置き換え割合80%を目標とするバイオ医薬品 ②置き換え割合50%を目標とするバイオ医薬品
● エポエチン
● リツキシマブ
● トラスツズマブ
● テリパラチド
● ソマトロピン
● インフリキシマブ
● エタネルセプト
● アガルシダーゼベータ
● ベバシズマブ
● インスリンリスプロ
● インスリンアスパルト
● アダリムマブ
● ラニビズマブ

参照:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
 
置き換え割合の計算方法は、以下のとおりです。

 

①の計算方法
医療機関で調剤した①に掲げるバイオ後続品の規格単位数量の合計÷医療機関で調剤した①に掲げるバイオ医薬品の規格単位数量の合計(バイオ後続品の適応のない患者さんに対して使用する先発バイオ医薬品を除く)≧0.8

 

②の計算方法
医療機関で調剤した②に掲げるバイオ後続品の規格単位数量の合計÷医療機関で調剤した②に掲げるバイオ医薬品の規格単位数量の合計(バイオ後続品の適応のない患者に対して使用する先発バイオ医薬品を除く)≧0.5

 

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【個別改定事項(Ⅱ)】|厚生労働省

5.バイオ後続品使用体制加算の対象薬剤

バイオ後続品の置き換え割合を算出するときには、計算の対象となる薬剤がバイオ後続品かどうかを確認する必要があります。
 
バイオ後続品についての情報は、厚生労働省の「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」に掲載されています。
 
新医薬品が薬価収載された場合や薬価改定の際には情報が更新されるため、最新の情報を参照して判断しましょう。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その5)|厚生労働省

6.バイオ後続品の使用を通じて、医療費の適正化に貢献しよう

2024年度の診療報酬改定では、医療費の適正化を目指し、バイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進を図るために「バイオ後続品使用体制加算」が新設されました。入院中の患者さんに対して、バイオ後続品の有効性や安全性を十分に説明した上で使用し、成分の特性を踏まえた使用目標を達成した場合について評価する加算となっています。
 
算定に際して、医療機関はバイオ後続品の品質や安定供給体制などの情報を収集・評価し、バイオ後続品の採用を決定する体制を整備する必要があります。また、バイオ後続品の置き換え割合が定められた基準以上であることも条件となっています。
 
患者さんに対して丁寧な説明を心がけ、医療費の適正化への貢献を目指しましょう。

 
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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。