薬剤師の就職先には、調剤薬局や病院以外にもさまざまな選択肢があります。資格や知識を生かし、やりがいを持って働くためには、自身に合った職場を選ぶことが大切です。本記事では、薬剤師の就職先や就職先ごとの人数割合・人気ランキング、メリット・デメリット、年収などについて紹介するとともに、自分に合った就職先を選ぶためのポイントをお伝えします。

- 1.薬剤師の就職先にはどんなところがある?
- 1-1.薬剤師の就職先ごとの人数・割合・人気ランキング
- 2.薬剤師の就職先ごとのメリット・デメリット
- 2-1.調剤薬局
- 2-2.病院
- 2-3.ドラッグストア
- 2-4.企業
- 2-5.公務員
- 2-6.大学
- 3.薬剤師の就職先ごとの年収
- 3-1.病院薬剤師
- 3-2.薬局薬剤師
- 3-3.企業(MR)
- 3-4.公務員薬剤師
- 4.薬剤師が就職先を選ぶときのポイント
- 4-1.自己分析・他己分析でキャリアビジョンを明確にする
- 4-2.さまざまな方法で情報収集や企業研究を行う
- 4-3.待遇や勤務地などの条件が希望に合っているかチェックする
- 4-4.長期的に希望どおりの働き方ができるのか確認する
- 5.自分にぴったりの就職先を選ぼう
1.薬剤師の就職先にはどんなところがある?
薬剤師の資格や知識を生かせる就職先は、病院や調剤薬局といった医療機関だけでなく、企業や公的施設など、臨床・非臨床を問わずさまざまな選択肢があります。主な就職先としては、以下のようなところが挙げられます。
● 病院
● 医薬品関係企業
● 診療所
● 介護保険施設
● 衛生行政機関
● 大学
1-1.薬剤師の就職先ごとの人数・割合・人気ランキング
薬剤師の代表的な就職先について、厚生労働省が公開している「医師・歯科医師・薬剤師統計」の概況をもとに、人数や割合、人気ランキングを紹介します。
| 順位 | 就職先 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 薬局 | 19万735人 | 58.9% |
| 2位 | 病院 | 5万6,585人 | 17.5% |
| 3位 | 医薬品関係企業 | 3万7,086人 | 11.5% |
| 4位 | 衛生行政機関 保健衛生施設 |
6,927人 | 2.1% |
| 5位 | 診療所 | 5,878人 | 1.8% |
| 6位 | 大学勤務者 大学院生 |
4,902人 | 1.5% |
| 7位 | 介護保険施設 | 1,091人 | 0.3% |
| – | その他 | 2万486人 | 6.3% |
参考:令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師|厚生労働省

※厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 3 薬剤師」をもとに作成
2022年12月31日時点では、薬剤師の過半数が薬局に就職しています。病院、診療所などで働く薬剤師の人数と合わせると全体の8割近くになり、多くの薬剤師が調剤や服薬指導を行う職場に勤めていることが分かります。
2.薬剤師の就職先ごとのメリット・デメリット
薬剤師の就職先には、それぞれ特徴があります。ここでは、薬剤師の就職先ごとの主なメリットとデメリットについて見ていきましょう。
2-1.調剤薬局
調剤薬局は、さまざまな医療機関から処方箋を受け付けるため、幅広い医薬品の知識や経験を習得できます。
薬剤師としてのスキルを磨ける上に、経験を積めば管理薬剤師やエリアマネジャーなどの役職に就くこともできるでしょう。
さらに、調剤薬局では基本的に夜勤がなく、日曜が休日となるケースが多いため、ワークライフバランスを重視したい薬剤師にもおすすめです。
ただし、特定の医療機関に隣接する調剤薬局は、処方箋の種類が限られる場合があり、幅広い経験を得るのが難しいこともあります。
🔽 薬局薬剤師について詳しく解説した記事はこちら
2-2.病院
病院薬剤師の特徴として挙げられるのが、当直や夜勤を行う可能性があることです。
当直や夜勤の回数が増えると、規則的な生活を送りづらくなるデメリットはあるものの、手当によって収入アップを目指せる場合がある点はメリットでしょう。
病院薬剤師の仕事は、病棟業務のほか、入院・外来処方箋の調剤、抗がん剤の混注、治験サポート、委員会活動など広範囲にわたります。
また、医師や看護師などさまざまな医療従事者と関わり、チーム医療の中で高度な医学・薬学の知識を得られるのは、病院薬剤師のメリットといえます。
🔽 病院薬剤師について詳しく解説した記事はこちら
2-3.ドラッグストア
ドラッグストアの薬剤師は、OTC医薬品の販売などを通じて、地域住民の健康管理に貢献できるのが魅力でしょう。
第2類、第3類のOTC医薬品のみを販売するドラッグストアでは、登録販売者を雇用するケースも多く、薬剤師は調剤併設型のドラッグストアで雇用されることが多いかもしれません。
調剤併設型のドラッグストアに就職した場合は、OTC医薬品の知識や店舗運営、マーケティングスキルに加え、調剤スキルも身に付けられます。
ただし、ドラッグストアは営業時間が長く、土日や祝日勤務が必要になるケースもあります。レジ業務や品出し、接客などを行うこともあるため、臨機応変な対応力が求められるでしょう。
🔽 ドラッグストア薬剤師について詳しく解説した記事はこちら
2-4.企業
企業で働く薬剤師は、土日祝日休みの場合が多く、比較的プライベートの時間を確保しやすいでしょう。
大手企業では住宅手当や家族手当などの福利厚生が充実している傾向にあり、営業職や管理職などになることで高収入を得られる可能性もあります。
ただし、病院や調剤薬局と異なり、基本的に患者さんと直接接する機会はないため、臨床経験が積みにくい点はデメリットといえるかもしれません。
また、企業や職種によっては、全国各地の支社などに転勤するケースもあります。
🔽 企業薬剤師について詳しく解説した記事はこちら
2-5.公務員
公務員薬剤師は、長期的に安定した環境で働けるのが魅力のひとつです。扶養手当や育児休業制度などが整っており、比較的ワークライフバランスを保ちやすいのもメリットといえます。
ただし、公務員薬剤師になるには、薬剤師免許を取得するだけでなく、公務員試験に合格しなければなりません。公務員薬剤師は基本的に求人数が少ないため、就職は狭き門となっています。
また、転勤や異動で配属先が変わることもあり、希望する職場で長く働けるとは限らない点も留意しておく必要があるでしょう。
🔽 公務員薬剤師について詳しく解説した記事はこちら
2-6.大学
大学で働く薬剤師は、教育や研究を通じて薬学の発展に貢献できるのが魅力です。新薬の開発や薬学の研究などに関わり、専門分野の知識を深められます。
ただし、大学の職員のポストは限られているため、教授職への昇任にはさまざまな実績が求められ、研究資金を確保するための活動も必要になるでしょう。
また、臨床業務を行う機会は少なく、薬剤師としての実践的なスキルを磨くのは難しいかもしれません。
3.薬剤師の就職先ごとの年収
厚生労働省が発表した「令和6年賃金構造基本統計調査」の結果によると、薬剤師の平均年収(企業規模計10人以上)は599.32万円でした。
※年収は、「きまって支給する現金給与額」×12カ月分+「年間賞与その他特別給与額」で算出
🔽 薬剤師の年収について解説した記事はこちら
ただし、同じ薬剤師免許を持っていても、就職先によって得られる年収の相場は異なります。ここでは、薬剤師の就職先ごとの年収について見てみましょう。
3-1.病院薬剤師
病院薬剤師の平均年収は、就職先の開設者によって違いがあります。厚生労働省が公表している「第24回医療経済実態調査」の結果によると、病院薬剤師の平均年収は、以下のとおりです。
| 開設者 | 平均年収 |
|---|---|
| 国立 | 626万5,471円 |
| 公立 | 595万4,927円 |
| 公的 | 605万5,003円 |
| 社会保険関係法人 | 594万9,629円 |
| 医療法人 | 528万6,383円 |
| その他 | 555万2,294円 |
| 法人その他全体 | 568万7,777円 |
| 個人 | 656万6,931円 |
| 全体 | 568万8,862円 |
参考:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和5年実施-|厚生労働省
🔽 病院薬剤師の年収について解説した記事はこちら
3-2.薬局薬剤師
薬局薬剤師の平均年収も病院薬剤師と同様、開設者によって相場が異なるほか、管理薬剤師と一般薬剤師でも金額に違いがあります。「第24回医療経済実態調査」によると、薬局薬剤師の平均年収は、以下のとおりです。
| 開設者 | 平均年収 | |
|---|---|---|
| 一般薬剤師 | 管理薬剤師 | |
| 個人 | 400万2,718円 | |
| 法人 | 487万2,875円 | 736万3,108円 |
| 全体 | 486万4,287円 | 734万8,725円 |
参考:第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告 -令和5年実施-|厚生労働省
3-3.企業(MR)
厚生労働省の「職業情報提供サイト job tag」によると、企業(MR)の平均年収は618.3万円とされています。
参考:医薬情報担当者(MR)|厚生労働省職業情報提供サイト job tag
企業(MR)の年収は、役職の有無や営業成績によっても相場が異なり、場合によっては年収が1,000万円を超えるケースもあります。
🔽 薬剤師が年収1,000万円を目指すためのポイントを解説した記事はこちら
3-4.公務員薬剤師
病院などに勤務する公務員薬剤師には、医療職俸給表(二)が適用されます。人事院が公表している「令和6年国家公務員給与等実態調査」の結果によると、医療職俸給表(二)の平均給与月額は36万2,560円、平均俸給額(基本給額)は31万8,618円です。
令和6年人事院勧告におけるボーナス支給月数の年間4.6カ月分を合算すると、公務員薬剤師の平均年収は581.6万円となります。
※平均年収=平均給与月額×12カ月分+平均俸給額×4.6カ月分で算出
参考:令和6年国家公務員給与等実態調査報告書|人事院
参考:令和6年 人事院勧告|人事院
関連記事:初任給1万1600円増~6年制の公務員薬剤師 人事院
4.薬剤師が就職先を選ぶときのポイント
薬剤師としてのやりがいを持ちながら働き続けるためには、自分らしく仕事ができる勤務先を選ぶことが大切です。ここでは、薬剤師が就職先を選ぶときのポイントをお伝えします。
4-1.自己分析・他己分析でキャリアビジョンを明確にする
まずは、自己分析・他己分析を行い、希望する働き方を明確にしましょう。自身の価値観や性格、夢中になれることなど総合的に分析して、自身に向いている就職先を検討します。
また、自分の得意分野や習得したいスキル、就職後のキャリアプランについても考えましょう。臨床現場で活躍したいのであれば、病院や調剤薬局などが就職先の候補となるでしょう。臨床から一歩離れ、幅広く医療に貢献したいのなら、企業やCRAなどが向いています。
語学力を生かすのであれば、外国人対応の需要が大きい職場や海外の文献・資料を扱う業種を選ぶなど、さまざまな視点から就職先を検討することが大切です。
🔽 薬剤師のキャリアプランについて解説した記事はこちら
4-2.さまざまな方法で情報収集や企業研究を行う
自分にぴったりの勤務先に就職するためには、十分な情報収集と企業研究を行うことが大切です。まずは大学で公開されている募集要項や就職情報サイトなどを利用して、自分の希望に合った就職先の情報を集めましょう。
知り合いや先輩に、勤めている会社や業界について話を聞くと、現場のよりリアルな情報を得られます。
企業によっては、社内や店舗の見学ができる場合があります。実際の職場の雰囲気を確認したり、勤務している人たちの声を聞いたりすることで、就職後のイメージをつかみやすくなるでしょう。
4-3.待遇や勤務地などの条件が希望に合っているかチェックする
実際に働くにあたり、あらかじめ待遇を確認しておくことは重要です。月々の収入は生活費となるだけでなく、奨学金を借りていた場合は返済にも充てられます。
また、企業によっては引っ越しを伴う異動が必要になる場合もあります。もし生活圏を変えたくないのであれば、勤務地や転勤の有無についても確認が必要です。
ライフステージによっては、産休・育休が取りやすい環境を希望する人もいるでしょう。就職後にどのような生活を送りたいかをイメージし、優先順位を決めておきましょう。
4-4.長期的に希望どおりの働き方ができるのか確認する
希望どおりの働き方を続けるためには、各種支援制度や企業の長期的なビジョンについても把握しておくことが大切です。例えば、勤務時間の調整が可能か、ライフステージの変化に対応できる制度が整っているかなどを確認しましょう。
また、研修制度やキャリアアップのサポートが充実しているかもポイントになります。さらに、経営の安定性や今後の成長性も、長期的に安心して働くためには確認しておきたい点でしょう。
自身の価値観やキャリアプランと合致しているかを見極め、自分にとって最適な環境であるかを判断することが重要です。
5.自分にぴったりの就職先を選ぼう
同じ薬剤師資格を持っていても、働き方は十人十色です。持っている力を存分に発揮して、いきいきと働き続けるためには、自分に合った職場選びが大切です。目指している薬剤師像や、どのように仕事をしたいのかをじっくり考え、自分らしく働ける就職先を見つけましょう。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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