薬剤師の働き方 公開日:2024.01.16 薬剤師の働き方

薬剤師が薬局への転職を成功させるには?志望動機や面接・求人探しのコツ

文:テラヨウコ(薬剤師ライター)

薬剤師は国家資格を持つ専門職であり、他の職種に比べると転職しやすい職業といえます。しかし、実際に転職を考えたとき、何から始めたらよいのか悩むこともあるでしょう。転職を成功させるには、転職先のリサーチから面談まで、計画的に行うことが大切です。今回は、薬剤師が転職を考える主な理由とともに、情報収集のコツから希望する調剤薬局へのアプローチ方法までを体験談を交えながらお伝えします。

1.薬剤師が転職を考える主な理由と対策

仕事をしていると理想と現実のギャップから、ふと転職が脳裏をよぎることもあるでしょう。では、実際に、多くの薬剤師はどのようなきっかけで転職を考えるのでしょうか。
 
ここでは、薬剤師が転職を検討する主な理由と、対策について見てみましょう。

 

1-1.【理由その1】人間関係に悩んでいる

薬局内では、数名の勤務者が1日中同じ空間で過ごしています。そのため、人間関係で問題が生じると仕事にも影響が出てしまいます。
 
人間関係が改善できないときには、転職を考えることになるでしょう。しかしながら、人間関係で悩んでいるときは、いきなり転職を考えるのではなく、まずは上司へ相談して異動をお願いするのも選択肢のひとつです。
 
メンバーが変わると、心地よく働ける可能性があります。ただし、他店舗がない、もしくは異動が難しい、異動しても問題が解決しない場合には、転職のきっかけとなります。

 
🔽 薬剤師の人間関係の悩みと解決策について解説した記事はこちら

 

1-2.【理由その2】給与が希望通りの額ではない

希望額より給与が少ない場合も、転職を考える理由となります。役職に就いて手当を増やしたり、副業をしたりする方法もありますが、必ずしも希望通りの結果になるとは限りません。
 
働き方を見直すことで年収を増やしたいなら、平均賃金が高い地域への転職もひとつの手です。厚生労働省の調査結果をもとに、地域別の薬剤師の平均年収を比べてみましょう。

順位 都道府県 年収
1位 宮崎県 717.7万円
47位 三重県 491.1万円
全国平均 583.3万円

※平均年収=「きまって支給する現金給与額」×12カ月+「年間賞与その他の給与額」で算出(小数点第二位以下切り捨て)
 
参照:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査 結果の概況
 
調査結果によると、1位の宮崎県と47位の三重県では、平均年収に約226.6万円の差があります。地域別の平均年収の違いは、薬剤師の需要と供給のバランスなどによると考えられます。年収アップを最優先するなら、地域の給料相場も考慮して転職先を検討してみましょう。

 
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1-3.【理由その3】労働環境に不満がある

希望の休みが取りづらい、他店への応援が多くて落ち着かない、一人薬剤師で勤務体制が不安など、労働環境への不満も転職を考えるきっかけになります。
 
この場合も、すぐに転職を決めるのではなく、まずは上司へ相談してみましょう。人員配置を見直してもらうなど、働きやすい環境になれば不満も解消する場合があります。相談しても改善が難しい場合には、転職を考えてもよいかもしれません。

 

1-4.【理由その4】キャリアアップをしたい

薬剤師にとって転職は知識の幅を広げるチャンスです。門前病院の診療科で扱う薬には詳しいけれど、それ以外の知識がなかなか広げられないという悩みを抱える薬剤師は少なくありません。
 
薬局によっては在宅医療に強いところや、認定薬剤師の取得推進に意欲的なところもあります。今の職場内で認定薬剤師などの資格が取得できるのであれば、まずは経験や実績を積んでおくのもよいでしょう。
 
また、自分が伸ばしたい分野に長けている薬局への転職なら、今後のキャリア形成に役立ちます。

 
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1-5.【理由その5】転居や家庭の事情などで仕方なく

現在勤めている薬局に不満はなくても、引っ越しなどで転職を余儀なくされるパターンもあります。心機一転し、希望に沿った転職ができるように万全の体制で臨みましょう。

2.転職先候補の薬局について理解しよう

調剤薬局には大きく分けると、大手チェーン薬局と個人薬局の2種類があります。それまでの経験や自身の性格、ライフスタイルを考えながら、自分に合う職場を選ぶことが大切です。
 
給与や勤務地、労働条件などを確認して、まずは転職の候補先をしっかりと検討しましょう。

 

2-1.大手チェーン薬局の特徴

大手チェーン薬局のメリットは、個人薬局と比べるとしっかりした研修体制が敷かれていたり、福利厚生が手厚かったりする傾向にあることです。制度面が整っていれば、希望の休みが取りやすいのもメリットです。
 
その一方で、全国規模での異動を指示されたり、日替わりのように他店応援に行く可能性があったりします。マニュアルがしっかりしている職場では、その分自分の意見が反映されにくいことがある点もデメリットといえるでしょう。

 

2-2.個人薬局の特徴

個人薬局は、地域を大きくまたぐような異動が少ないのがメリットです。さらに、地域密着型や在宅医療への貢献を強化しているなど、特色があるところが多いので、自分の希望に合った薬局を選べるのも魅力といえます。
 
ただし、大手に比べると福利厚生が整っていないことが多く、人手不足の薬局では希望の休みが取りにくいというデメリットもあります。また、研修体制が整っていない場合は、自力で知識を積み重ねる必要があるでしょう。

 
🔽 調剤薬局の仕事内容ややりがいについて解説した記事はこちら

3.転職先候補の薬局の評判や雰囲気を知る方法

転職先候補となる薬局について詳しく知るために、具体的なリサーチ方法を3つ紹介します。それぞれのリサーチ方法の長所と短所も見てみましょう。

 

3-1.ネットからの情報

昨今は、気になる薬局について、インターネット上のホームページを見るだけでなく、勤務者の口コミなどまで手軽に調べられるようになりました。スマートフォンで簡単に見られるため、手間がかからない情報収集方法です。
 
しかし、個人的な書き込みは意見が偏ることもあり、必ずしも正しい情報とはかぎりません。 あくまでも基礎情報を知るためのツールとして使うことを意識しましょう。

 

3-2.知人からの情報

薬剤師の世界は意外と狭く、知人経由で情報を得られることもあります。転職先候補の薬局に勤務している人だけでなく、同じ地域で働いている薬剤師からも貴重な話が聞けるかもしれません。
 
私自身、転職先候補としていた薬局の近くで働いている知人に相談したところ、経営者の人柄や薬局の雰囲気などを教えてもらったことがあります。信頼している人からの情報は、転職先を考える上で大きな判断材料になるでしょう。
 
しかし、教えてくれる人の主観が入ることもあるため、最終的にはきちんと自分で判断することが大切です。

 

3-3.転職エージェントからの情報

転職エージェントには、多くの情報が集まるため、転職先となる薬局の詳しい事情を得ることができます。何科の処方箋が多いのか、どのくらいの規模の薬局なのかなどを知ることで、勤務しているイメージをつかみやすくなるでしょう。
 
とはいえ、百聞は一見にしかず。気になる薬局があれば実際に見学をさせてもらうのが一番です。

4.転職先候補の薬局への求人応募の方法

いくつかの転職先候補があっても、絞り込むのに時間がかかることもあるでしょう。逆に、多くの情報がありすぎて、大まかな候補を決めるのが難しい場合もあるかもしれません。続いて、転職先候補を絞り込み、求人先にアプローチするコツを紹介します。

 

4-1.転職エージェントを利用する

転職エージェントを利用する最大のメリットは、全国各地にある薬局から候補先を選べることにあります。希望条件はあるけれど、働きたい薬局が具体的に決まっていないという人におすすめです。また、まったく土地勘がないところで転職する際には、特に心強い存在でしょう。
 
エージェントを間に挟むと、給与や労働条件の交渉をストレスなく行えます。サポートもあるので、初めての転職で不安な人にもぴったりです。
 
転職エージェントを利用するときには、担当者とのスムーズなやりとりが欠かせません。こちらから条件を示すだけでなく、担当者からの連絡を受けられる時間や、転職希望時期をきちんと伝えましょう。

 

4-2.薬局へ直接問い合わせる

ピンポイントで働きたい薬局がある場合には、直接問い合わせてみるのも一案です。薬剤師の友人は希望する薬局に、文字通り「飛び込み営業」を行い、当時は募集が出ていなかったにもかかわらず転職を成功させました。
 
積極的なアプローチ方法のため、こちらの熱意も伝わりやすく、薬局によっては好印象を持たれることもあります。
 
また、直接やりとりできるので、薬局の雰囲気や細かい疑問点を確認しやすいのもメリットです。ただし、自力で給与や労働条件を交渉する必要があることを覚えておきましょう。

 

4-3.知り合いからの紹介

知り合いから紹介を受けられれば、転職先となる薬局の雰囲気などをしっかり把握した上で決断できます。知り合いがいるため、新しい職場にもなじみやすいでしょう。
 
しかし、人手不足解消に向けてどうしても転職してきてもらいたいと考え、紹介者が薬局の長所しか伝えてこない場合もあるので注意が必要です。
 
また、知り合いの紹介だからと断れなくなる恐れもあります。信頼する人からの紹介であっても、転職は今後の人生を歩む上で大切なこと。じっくり考えて慎重に判断しましょう

5.薬局の転職面接・履歴書のポイント

転職先候補となる薬局が決まったら、いよいよ応募です。ここでは転職を成功させるために意識したい、面接や履歴書作成のポイントを紹介します。

 

5-1.志望動機にはその薬局だけの魅力を書こう

採用する側が知りたいのは「数ある薬局の中で、なぜうちの薬局で働きたいのか」という具体性のある志望動機です。薬局にはそれぞれの特色があります。在宅医療対応が中心、輸液調製を行っている、透析施設の門前、地域密着の健康イベントを行っているなど、さまざまです。
 
事前に他の薬局にはない特色をリサーチし、「どうして他の薬局ではなく、ここで一緒に働きたいのか」を志望動機に簡潔にまとめましょう。採用側も、薬局の魅力に気づいている応募者に好印象を持ちやすいでしょう。

 

5-2.面接でよくある質問には回答を考えておこう

採用側が面接で確認したいのは、履歴書だけでは伝わらない応募者の人柄や魅力です。一緒に働きたいと思える人か、現在すでに在職している他のスタッフとコミュニケーションが取れる人かなどを細かくチェックされます。
 
また、志望動機や今後のキャリアプランなど、必ず聞かれる質問には、事前にしっかり回答を準備しておきましょう。前職の退職理由を聞かれることもありますが、きちんと理由を分析して、なるべくポジティブな視点で回答できるように意識してみてください。

 
🔽 薬剤師の就職・転職面接のコツを解説した記事はこちら

6.事前リサーチを徹底し、薬局への転職を成功させよう

自分に合った職場を見つけるためには、しっかりとしたリサーチが大切です。インターネット、知人、転職エージェントなどリサーチのツールが増えるほど、より確かな情報を集めることができます。
 
また、薬局へのアプローチ方法もさまざまですが、それぞれにメリット、デメリットがあります。人によって向き不向きがあるので、無理せず自分の性格に合ったやり方で、希望に沿う転職活動を行いましょう。

 
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執筆/テラヨウコ

薬剤師。3人兄弟のママ。大学院卒業後、地域密着型の調剤薬局に勤務。大学病院門前をはじめ、内科・婦人科・皮膚科・心療内科・皮膚科門前などで多くの経験を積む。15年の薬剤師歴ののち独立して薬剤師ライターへ。健康や医療、美容に関する記事を執筆。休日は温泉ドライブや着物でのおでかけが楽しみ。