薬局経営は、薬剤師としてのキャリアを広げる選択肢のひとつです。薬局を開業・運営するには、薬剤師としての専門知識だけでなく、会計・マーケティング・制度などの幅広い知識やスキルが求められます。本記事では、薬局経営が儲かるのかについて解説するとともに、薬局経営が厳しいといわれる理由、独立開業までの流れとメリット・デメリットなどをお伝えします。加えて、薬局経営の今後と成功のポイントについても見ていきましょう。

- 1.薬局経営は儲かる?
- 2.薬局経営が厳しいといわれる理由
- 2-1.調剤報酬改定に合わせて経営方針を変える必要がある
- 2-2.地域によっては薬剤師不足により人材確保が難しい
- 2-3.医薬品の供給が安定しない
- 2-4.DXへの対応が求められている
- 3.薬局経営に必要な準備と独立開業までの流れ
- 3-1.独立開業までの流れ
- 3-2.薬局を経営する上で身に付けておきたい知識
- 4.薬剤師の独立開業のメリット
- 4-1.年収アップが期待できる
- 4-2.理想の薬局を作れる
- 4-3.経営スキルを含めて自身の成長につながる
- 5.薬剤師の独立開業のデメリット
- 5-1.安定収入が得られなくなる可能性がある
- 5-2.初期投資・運転資金の負担がかかる
- 5-3.責任の範囲が広がる
- 6.薬局経営を成功させるポイント
- 6-1.処方箋の枚数を増やす
- 6-2.加算や管理料などを算定するための体制を整備する
- 6-3.人件費などのコストを抑える
- 6-4.他医療機関や介護施設と信頼関係を築く
- 6-5.ケアマネジャーとつながりを持つ
- 7.今後の薬局経営に求められること
- 8.薬局経営に必要な知識を身に付け、選ばれる薬局づくりを
1.薬局経営は儲かる?
中央社会保険医療協議会が2025年(令和7年)に実施した「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告」によると、薬局1施設あたり、年間で平均900万円ほどの利益が出ていることが分かります。調査前々年(度)の薬局全体の損益差額は881万円でした。
ただし、薬局経営は毎年安定して利益を出すのが簡単ではありません。経営を軌道に乗せるにはいくつかの課題をクリアする必要があります。その理由として、制度の変化や医療情勢に応じて柔軟に対応できる経営体制が求められる点が挙げられます。
したがって、薬局経営が儲かるかどうかは、個別の状況によって異なり、求められる薬局像に対応していくことがポイントとなるでしょう。
2. 薬局経営が厳しいといわれる理由
近年、薬局を取り巻く経営環境は大きく変化しており、従来の運営スタイルでは安定した収益を維持することが難しくなっているといわれています。ここでは、薬局経営が厳しいとされる主な理由について解説します。
2-1.調剤報酬改定に合わせて経営方針を変える必要がある
調剤報酬は、原則として2年ごとに国が目指す薬局像が反映された改定が行われています。そのため、国が目指す薬局像と薬局の経営方針がマッチしていない場合、調剤報酬を算定しにくくなり、安定した売り上げや利益を出すのが難しくなる傾向にあります。
例えば、2024年度の調剤報酬改定では、処方箋の集中率が高い「点分業の薬局」(特定の病院などの近くに位置し、その病院の処方箋が集中する薬局)は調剤基本料が下がり、集中率が低い「面分業の薬局」(さまざまな医療機関から幅広く処方箋を受け付ける薬局)は調剤基本料が上がっています。また、感染症流行時・災害発生時への対応や、在宅訪問を行うための体制整備をする薬局が評価されるよう調剤報酬が見直されています。
国の目指す薬局像に沿うよう経営方針を柔軟に見直していく必要がある点は、薬局経営が厳しいといわれる理由のひとつでしょう。
参考:令和6年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省保険局医療課
2-2.地域によっては薬剤師不足により人材確保が難しい
人口減少などの影響で、将来的に薬剤師の人数は過剰になるという推計もありますが、地域によっては薬剤師が不足しているところがあります。厚生労働省は、地域ごとの薬剤師の偏在について調査しており、薬剤師の過不足を偏在指数で評価しています。
薬局薬剤師の偏在指数は全国平均で1.08となっており、全国的には薬局薬剤師は充足していると評価されています。しかし、偏在指数が1を超える都道府県がある一方で、青森県は0.88、福井県は0.73と1以下の地域もあり、地域によって充足状況が異なる状況です。薬局薬剤師が不足している地域では人材確保が進みにくいため、薬局経営が厳しくなる傾向にあるでしょう。
参考:現在の病院・薬局別薬剤師偏在指標|厚生労働省
2-3.医薬品の供給が安定しない
医薬品の供給が安定しないことも、薬局経営が難しいといわれる理由となっています。近年、製造上のトラブルや原料不足などにより、医薬品の出荷調整や供給停止がたびたび起こっています。
そのため、薬局では、欠品の対応や代替薬の提案、医師への処方変更依頼などの業務負荷が課題です。日本保険薬局協会の資料によると、医薬品供給が不安定であることによる1日あたりの平均対応時間は約6時間20分に及んでおり、データからも医薬品の供給状況が薬局の業務に影響していることが分かります。
薬局薬剤師は、医薬品供給が不安定であっても、患者さんが継続的に薬物治療を行えるよう丁寧に対応しなければならず、経営者も薬局経営の厳しさを感じることがあるでしょう。
参考:保険薬局における医薬品安定供給に係る実態調査 調査報告書|日本保険薬局協会
2-4.DXへの対応が求められている
電子処方箋やオンライン服薬指導、在庫管理の自動化など、DX対応は業務の効率化とサービスの向上に不可欠です。また、医療DXの推進は国の方針でもあるため、薬局にとって「やった方がいい」ではなく「やらなければならない」課題といえるでしょう。
しかし、システムの導入にはコストがかかり、スタッフに対してはITリテラシーの教育が求められます。業務フローの見直しも必要なため、中小薬局ほど負担が大きくなるでしょう。さらに、DX関連の加算制度や施設基準への理解・対応も必要であることから、薬局経営者は制度・技術・人材を総合的に判断・対応するスキルを身に付けることが欠かせません。
薬局経営におけるDX対応は、技術導入だけでなく業務改革も同時進行となることから、難度が高い課題といえます。
参考:薬局薬剤師DXの推進について|厚生労働省
3.薬局経営に必要な準備と独立開業までの流れ
初めて薬局を開業する場合は、独立開業までの流れを把握し、薬局経営に必要な知識を事前に身に付けておく必要があります。ここでは、薬局経営に必要な準備と独立開業までの流れについてお伝えします。
3-1.独立開業までの流れ
一般的な独立開業までの流れは、以下のとおりです。
| 1. 事業計画を作成する | 理想の薬局像を実現するための計画書を作成します。門前の医療機関や予定する処方箋枚数、近隣の家賃相場などの情報を集め、具体的な事業計画を作成します。 |
|---|---|
| 2. 資金を用意する | 開業には、店舗の賃貸・購入にかかる費用、設備資金、開業後の運転資金となる費用を用意しておく必要があります。 |
| 3. 開局する場所を決める | 周辺環境を確認した上で、開局する立地を決めます。 |
| 4. 建設、内装工事を行う | 店舗を新たに建てる場合には建築工事、賃貸などで利用する場合には必要に応じて内装工事を行います。 |
| 5. 必要な設備や機器類を購入する | 必要な設備や機器類は、予算や設置スペースを踏まえた上で購入します。 |
| 6. 薬局開設許可申請をする | 保健所に「薬局開設許可申請」をした後、建物検査などが行われ、問題なければ「薬局許可証」が発行されます。この許可証をもって、開業が可能となります。 必要に応じて「保険薬局指定申請」や「麻薬小売業者免許」の申請も行います。 |
| 7. 医薬品や医療機器を購入する | 開業に向けて、必要な医薬品や医療機器を準備します。 |
| 8. 従業員を募集・採用する | スタッフを雇用する場合、求人の手配や社会保険などの手続きを行います。 |
薬局経営をするのであれば、まずは上記のような開業までの流れを把握した上で、必要な知識を身に付けることが大切です。
3-2.薬局を経営する上で身に付けておきたい知識
薬剤師として調剤業務に従事するのと、薬局の経営者になるのとでは、必要な知識が異なります。ここでは、薬局経営をするにあたり、身に付けておくべき知識を解説します。
3-2-1.利益に関わる調剤報酬の知識
調剤報酬とは、薬局の機能や薬剤師が行うサービスに対して支払われる報酬のことです。調剤報酬を理解することで、加算の算定に向けて適切な対応ができるようになります。
また、調剤報酬には、国の目指す薬局・薬剤師像が反映されています。具体的には、対人業務の強化や在宅医療への参画、点分業から面分業へのシフトなどが求められているといえます。薬局の経営者となるのであれば、薬局に期待されている機能・役割を理解し、事業を進めていくことがとても重要です。
3-2-2.経営状況の分析に役立つ会計の知識
薬局の経営状態を把握するには、会計の知識が不可欠です。薬局でどれくらいの利益が出ていて、コストがかかっているかを知ることで、「どこを見直せば利益が増えるか」といった経営の改善ポイントを見つけやすくなります。薬の仕入れや人件費、家賃など、毎月の支出を整理して、無理のない経営につなげましょう。
こうした数字の見方は、簿記の入門書を読んだり、医療・薬局向けの経営セミナーに参加したりすることで、少しずつ身に付けることができます。専門家に任せきりにせず、自分でも基本を理解しておくと、安心して経営判断ができるようになります。
3-2-3.他薬局との差別化に役立つマーケティング戦略の知識
薬局経営では、薬そのものの価格や診療報酬で差別化するのが難しいため、処方箋の調剤以外に付加価値を提供する必要があります。例えば、健康相談や在宅支援、OTC医薬品の提案力といった、地域住民との接点を増やす工夫が求められるでしょう。
こうした差別化をするために身に付けておきたいのが、マーケティング戦略の知識です。ターゲット層のニーズを把握し、サービス設計や情報発信をすることで、地域住民から選ばれる薬局づくりができます。マーケティング戦略の知識を身に付けるのであれば、経営に関する本を読んだり、セミナーに参加したりするのがおすすめです。
4.薬剤師の独立開業のメリット
薬剤師としてのキャリアを考える中で、「独立開業」は大きな選択肢のひとつです。薬局を自ら経営することで、収入の増加や理想の働き方の実現、さらには地域医療への貢献など、多くのメリットが得られる可能性があります。ここでは、薬剤師が独立開業することで得られるメリットについて解説します。
4-1.年収アップが期待できる
薬局を独立開業することで、処方箋枚数や立地条件によっては高収益が見込めます。薬局の経営者となると、薬局の売り上げや利益から経費等を除いた分が自身の報酬となるため、薬剤師として雇用されるよりも年収が大幅にアップする可能性があるでしょう。
特に病院門前や高齢者が多い地域では、安定した処方箋応需が見込め、経営次第で収益性を高めることができます。
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4-2.理想の薬局を作れる
薬局を自身で経営すると、勤務時間やスタッフ体制を自分で決められるため、家庭やライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能になります。また、漢方や在宅医療など自身の専門性を生かした自由な薬局づくりができます。薬剤師としての理想を形にできる点は、大きな魅力でしょう。
また、定年がないため長期的なキャリア設計がしやすく、将来的には複数店舗の展開などを視野に入れることもできます。薬局運営の自由度が高い点は、働き方や理想の薬局像がある人にとってメリットといえるでしょう。
4-3.経営スキルを含めて自身の成長につながる
薬局の経営者は、薬剤師の専門性に加えてマネジメントや財務知識など幅広いスキルが求められます。そのため、経営を通じて視野が広がり、自己成長につながる点も魅力です。
また、独立開業した薬局は、地域の「かかりつけ薬局」としての役割を担います。医師や介護施設との連携を深めることで、地域医療ネットワークの一員として活躍できるでしょう。
5.薬剤師の独立開業のデメリット
薬剤師として独立し、自ら薬局を経営することは大きなやりがいがある一方で、リスクや負担も少なくありません。ここでは、薬剤師が独立開業する際に直面しやすい主なデメリットについて解説します。
5-1.安定収入が得られなくなる可能性がある
薬局経営は処方箋依存型の収益構造であるため、近隣の医療機関との連携が弱いと集客が難しくなります。また、調剤報酬改定や制度変更によって収益が減少するリスクもあり、雇用薬剤師のような安定収入は保証されません。経営には常に市場や制度の変化への対応力が求められます。
また、大手ドラッグストアやチェーン薬局との競合によって、価格競争やサービスの差別化が必要になることもあるでしょう。立地選定を誤ったり、近隣に大手企業が開業したりすると、集客が難しくなって経営に大きな影響を与える可能性もあります。地域ニーズを的確に捉えた戦略が求められるため、マーケティングやブランディングをしっかりと学び、安定した経営を目指す必要があります。
5-2.初期投資・運転資金の負担がかかる
薬局の開業には、物件取得費、薬剤の在庫、レセコン導入など多額の初期費用がかかります。数百万円〜数千万円規模になることもあり、資金調達や返済計画が重要です。
M&Aやフランチャイズ型の開業では営業権やロイヤリティの支払いも発生し、資金繰りに苦労するケースもあるでしょう。
5-3.責任の範囲が広がる
薬局経営では、人材の採用や教育、医薬品や物品の在庫管理、法令遵守などさまざまな業務を自分で管理する必要があります。薬剤師としての業務に加えて、経営者としての責任が重くなるため、精神的・時間的負担も増えるでしょう。
特に、人材確保が難しい地域では、安定した運営体制を築くまでに時間がかかることもあります。
6.薬局経営を成功させるポイント
薬局事業を継続・発展させるには、利益を上げ続ける必要があります。また、近隣の医療機関や介護施設と定期的にコミュニケーションを取って信頼関係を築くことも重要です。ここでは、薬局経営を成功させるためのポイントについて解説します。
6-1.処方箋の枚数を増やす
処方箋の獲得は、薬局の収益アップにつながります。処方箋の枚数を増やすには、これまで来局したことのない患者さんに、薬局を利用してもらえるよう取り組むことが重要です。
ポスティングやWeb広告を活用して地域の方に認知してもらったり、地域の健康イベントに参加して住民の方々と交流したりと、地道な活動を続けることが求められるでしょう。
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また、患者さん1人あたりの来局頻度を増やすためのアプローチも大切です。複数の医療機関を受診している患者さんに対して、ひとつの薬局で服用している全ての薬を管理する「一元管理」の声かけを行い、かかりつけ薬局として利用してもらいましょう。
🔽 かかりつけ薬剤師の同意の取り方について解説した記事はこちら
6-2.加算や管理料などを算定するための体制を整備する
加算や管理料などを算定できる体制を整えることも、薬局経営を成功させるポイントのひとつです。先にも述べたとおり、近年、対人業務への評価となる加算や管理料などが見直されています。
薬局薬剤師に求められている対人業務を充実させるための体制を整備して、利益アップを目指しましょう。
6-3.人件費などのコストを抑える
どれだけ収益が高くても、過剰にコストがかかっていると利益が減ってしまいます。特に、薬局経営においてコストになりやすいのが人件費です。人件費を抑えるには、業務効率化に向けて調剤のオペレーションを改善したり、過剰な人員計画となっていないかシフトを見直したりするとよいでしょう。
また、一包化や軟膏の混合調製など薬剤の調剤が多い薬局では、機器導入も対策のひとつです。初期費用はかかるものの、調剤にかかる時間が短縮され、薬剤師の人件費削減につながります。
6-4.他医療機関や介護施設と信頼関係を築く
薬局をうまく経営しようとすると、人や設備面など薬局の内部を改善しようと考えがちです。しかし、薬局の外にも目を向け、医療機関や介護施設とコミュニケーションを取り、信頼関係を築くことも大切です。
日頃から医療機関とのコミュニケーションを強化しておくと、疑義照会や処方提案などで連携しやすくなります。患者さんの服薬情報や医療ニュースなどの話題を用意し、事前に面会のアポイントメントを取った上で訪問するとよいでしょう。
6-5.ケアマネジャーとつながりを持つ
介護施設や訪問介護のケアマネジャーは、患者さんの生活状況や細かな体調変化を把握しています。そのため、患者さんの状況に応じて、薬局に在宅訪問の依頼をしてくれることがあります。
患者さんが在宅医療を必要としたときに、スムーズに移行できるよう、普段からケアマネジャーとつながりを持っておくとよいでしょう。
7.今後の薬局経営に求められること
今後の薬局経営においては、調剤報酬改定の変更点から国が求める薬局の役割・機能を読み取ることが求められます。薬局の機能を国の方針に順応させることが、経営の安定につながります。
例えば、患者さんの服薬情報の一元的・継続的管理や24時間対応、在宅対応などに取り組むことで、患者さんにかかりつけ薬局として選ばれる薬局を目指しましょう。
また、健康サポート薬局機能や高度薬学管理機能を持つことも、今後薬局に求められる役割の一つです。健康サポート薬局として医療機関や地域包括支援センターなどとあらかじめ地域連携体制を構築したり、高度薬学管理機能を持つ薬局として専門薬剤師など高度な知識・技術と臨床経験を持つ薬剤師を配置したりすることが求められます。
参考:地域における薬局・薬剤師のあり方について|厚生労働省
🔽 薬剤師の将来性について解説した記事はこちら
8.薬局経営に必要な知識を身に付け、選ばれる薬局づくりを
薬局経営は、調剤報酬改定や薬局の役割の変化などに柔軟に対応する必要があります。地域住民に選ばれる薬局を目指して、かかりつけ薬局・薬剤師として機能を磨くなどの取り組みが求められます。結果として、加算や管理料などの算定につながり、利益アップも見込めるでしょう。

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。
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