実際にあった! 薬剤師あるある体験談 公開日:2024.04.11 実際にあった! 薬剤師あるある体験談
文:岡本妃香里(薬剤師ライター)
薬剤師や薬学生の生活は、経験してみて初めて分かる大変さがいろいろとあります。「こんな経験をしているのは自分だけ?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。この記事では、筆者が実際に薬剤師として働いていた経験をもとに「薬剤師あるある」を薬学生編、新人薬剤師編、派遣薬剤師編に分けて紹介しましょう。

 

 

 

1.薬剤師を目指す学生のあるある

「薬剤師になるぞ!」と意気込んで薬学部に入ったものの、最初の講義から心を折られている方も多いのではないでしょうか。「ここまで忙しいなんて……」「思っていた大学生活と違う」と感じながら学生時代を過ごす薬学生は少なくありません。

 

 

1-1.お金がない、アルバイトをする時間もない

薬学生はとにかく忙しいものです。午前中で講義が終わることもありますが、18時を過ぎることも珍しくありません。そのため、アルバイトをしたくても時間を取れない学生も多く見かけます。

 

「早く授業が終わる日にアルバイトをすればいいのでは?」と思うかもしれませんが、薬学生は勉強をする時間も必要なため、そもそもアルバイトをしても思うようにシフトに入れないのです。

 

一方で、薬学生の学生生活にはとにかくお金がかかります。1冊で数千円もするような教科書を何冊も購入する必要があるため、自分でアルバイトをして教科書代に充てている学生はいくらお金があっても足りないと感じることがあるでしょう。

 

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薬学部の学費はどのくらい? 国公私立大学の学費一覧・特待生制度・奨学金制度について解説

 

1-2.コピー代に意外とお金がかかる

試験期間がやってくるたびに必要になるのがコピー代です。気がつけば1,000円以上かかってしまうこともあります。しかし、薬学部の試験はいかに過去問を集められるかが大切。コピー代を出し惜しみするわけにはいきません。過去問からそのまま出題されるケースもあるため、試験前になると友人のネットワークを駆使してとにかく過去問を集めることになります。

 

1枚ずつコピーしていると膨大な枚数になるため、1枚に4ページくらいが載るようにコピーして節約する学生がほとんどです。あまりにコピー代がかかるので、学外にある安いコピー機を使うために遠出をしたり、裏面に広告が入る0円で使えるコピー機を活用したりしてなんとかやりくりしている学生もいました。

 

たかがコピー代、されどコピー代。学生にとって侮れない金額です。コピー代にここまでお金を使うのは後にも先にも学生の時だけではないでしょうか。

 

 

1-3.試験前になると泣きながら勉強している学生が現われる

薬学部の試験はとにかく過酷です。「勉強しなくてはいけない学部なのは分かっていたけれど、ここまでなんて……」と思わず漏らしたくなるでしょう。大量に出てくるカタカナ用語、似たような響きの薬剤名、苦手な人には地獄でしかない難しい計算。日頃からコツコツ勉強していても間に合わないほどの量を詰め込まないといけません。

 

「分からない」「間に合わない」「あと1単位で留年なのに」と泣きながら勉強している人の姿を試験の度にどこかで見かけます。

 

1-4.ほとんど使わない教科書を買ってしまう

購入リストに含まれていたから買った教科書でも、ほとんど使わずに終わってしまうものもあります。1冊5,000円以上するのに、パラパラっとめくっただけで使わなくなった教科書もあるでしょう。大学生活が始まってからしばらくは、購入リストにある教科書は律儀に全て購入する人がほとんどです。

 

しかし、学年が上がるにつれて「この教科書は買わなくても問題ないらしい」「友人や先輩からコピーさせてもらうほうが安上がり」といった情報が次第に回り始め、だんだんと購入する教科書を取捨選択するようになります。教科書代を自分のアルバイト代から出している人からすれば、高いお金を出したのにほとんど使わないのは悲しすぎる現実です。

 

ただし、講義でほとんど使わなかったとしても、教科書を無駄にするか活用するかは本人次第であり、役立つこともあります。

 

 

1-5.キラキラのキャンパスライフを送れる日がないまま卒業

好きな時間割で講義を入れて、お昼はみんなでランチ。空き時間は友人と談笑して講義が終わったらショッピングにアルバイトに……。そんな輝かしいキャンパスライフは残念ながら卒業するまで訪れませんでした。

 

講義は基本的に全て受ける必要があるので、そもそもあれこれ選ぶ余地がないのです。試験前になるとお昼ご飯を片手で食べながらひたすら勉強することになるので、ゆっくり休憩することもできないかもしれません。

 

もちろん、みんなで遊びに行ける余裕がある日もどこかで必ずあるので、その時は勉強のことを忘れて存分に楽しみたいですね。

 

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薬剤師国家試験の勉強法は?効率的な時間の使い方やスケジュールを解説

2.新人薬剤師のあるある

過酷な卒業試験と国家試験を突破し、いよいよ社会人デビューを果たした新人薬剤師。薬剤師として働き始めると、学生の時とは違った大変さがあるものです。

 

 

2-1.棚の配置を覚えたと思ったら異動

チェーンストアに属している調剤薬局やドラッグストアに多いのが異動です。数年で異動になるケースもあれば、数カ月ごとに違う店舗で働かなければいけないケースもあります。異動が多いか少ないかはその時の人員配置や人事の采配にもよりますが、棚の配置を覚えてやっとスムーズにピッキングできるようになったタイミングで異動になるとつらいものです。

 

棚の配置は店舗によってまったく異なるため、異動の度に覚え直さなければいけません。「また覚え直しか」「ピッキングに時間がかかるから、また周りに迷惑をかけてしまうのかな」と不安に思ってしまうことがあります。

 

2-2.「いつも飲んでいる薬だから」と言われ説明を聞いてもらえない

服薬指導をしていると「いつも飲んでいてわかっているから」という患者さんに一度は遭遇するのではないでしょうか。話をまったく聞いてくれない患者さんの場合だと、完全にお手上げ状態です。

 

同じ説明を過去に何度も受けているのは分かりますが、同じ薬を飲んでいるからといって患者さんの体調がずっと保たれているとはかぎりません。加算を取るためにも、服薬指導は必要です。

 

しかし、中には怒り出したり薬剤師の話を完全に無視したりする患者さんもいるので、時には心が折れてしまうこともあります。

 

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「薬の説明はいらない」と言われたら

 

2-3.「タクシー呼んだから早くして」と急かされる

処方箋は受け付けた順番に調剤を進めることが基本です。準備ができたものから患者さんにお渡しするため、混み合う日には患者さんをお待たせしてしまうこともあるでしょう。

 

しかし「タクシーを呼んでしまったから早くして」「バスの時間があるから急いで」と急かされてしまうことがあります。順番に調剤していることを説明しても「急いでいるんで!」と怒り出してしまう患者さんも……。

 

お急ぎの事情があるのは分かりますが、「せめてタクシーを呼ぶのは名前を呼ばれた後にしてくれないかな……」と思わずにはいられません。

 

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待ち時間が長引いてしまったときの謝り方

 

2-4.添付文書を集めがち

新人薬剤師はなぜか添付文書を集めてしまう傾向があります。私も実際に集めていた時期がありました。

 

「まだまだ知識が少ないから、扱っている薬だけでも覚えないと」とピッキングしながら箱を新しく開けた薬の添付文書をポケットに次々と詰めこんでいく様子は新人薬剤師でよく見られる光景です。

 

集めた添付文書は家に帰ってからきれいにファイリングして読みやすくしておきます。薬剤師としての経験年数が増えてくるとだんだんと添付文書を集める人が不思議と少なくなります。

 

 
      

2-5.営業電話の多さに驚く

薬剤師宛にかかってくる電話は薬の相談だけではありません。場合によっては相談よりも多いのが不動産の営業電話です。「投資に興味ありますか?」「節税したいと思いませんか?」「マンションの購入は考えていませんか?」などと持ちかけられ、忙しい時にはイライラの原因に。

 

悪質なものだと「薬について相談したいので薬剤師と代わってください」とかけておきながら、いざ薬剤師が電話を代わると営業電話だったということもあります。

3.派遣薬剤師のあるある

派遣は正社員やパートとは違い、契約期間が短期間です。そのため、短いスパンでいろいろな職場で勤務することになります。

 

 

3-1.正社員や非正規社員の待遇に不満を持つようになる

薬剤師の平均時給は2,000円~3,000円前後ですが、派遣薬剤師だと高い場合では時給4,000円~5,000円であることもあります(※)。時給5,000円でフルタイム勤務すると月収換算で80万円、年収換算で960万円です。

 

※時給は筆者の経験をもとにした概算値を記載しています。最新の時給相場はマイナビ薬剤師の求人情報をご参照ください。

 

一般的な薬剤師の平均年収が500万円~600万円くらいであることを考えると、かなり高額です。ここまで時給が高いと、派遣薬剤師を辞める決意ができなくなる方もいるでしょう。

 

ただし、正社員歴が少ないと、いざ転職先を探す時に「すぐに辞めてしまう」「正社員で働けない理由が何かあるのでは」と思われてマイナス印象になってしまうこともあるので注意したいところです。

 

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薬剤師の平均時給はいくら?パート・アルバイトや正社員の相場を紹介
薬剤師の平均年収はいくら?男女別・年代別・都道府県別データを紹介

 

3-2.いろいろな店舗に行きすぎて棚の配置を覚えられない

数カ月で派遣先が変わることが多いため、棚の配置を覚えるのにはとても苦労します。「あれ?この薬はここにあったはずなのに」と探している途中で「あ、ここに置いていたのはほかの店舗だった」なんて気がつくことも。

 

派遣薬剤師は即戦力が求められていることも多いため、ピッキングに時間がかかっているとプレッシャーを感じてしまうこともあるでしょう。

 

3-3.投薬ばかりさせられる

派遣先によって異なるものの、派遣薬剤師は投薬をメインに任せられることが多い傾向にあります。ピッキングは慣れている薬剤師が行い、監査済みのものを派遣薬剤師が投薬するのです。

 

そのため一日中ひたすら投薬台に立って服薬指導をしていることも少なくありません。投薬もたしかに薬剤師の仕事ではありますが、たまにはピッキングのほうに回りたいと思ってしまいます。

 

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3-4.薬歴がたまりがち

ひたすら投薬が続いた日は、書かなければいけない薬歴の量も膨大です。投薬を続けていると、なかなか書くタイミングがありません。

 

しかし、派遣薬剤師は残業をすることがほぼないため、薬局を閉めてからゆっくり書く暇もありません。いつの間にか、書いていない薬歴が何十件もたまってしまうことがあります。

 

契約最終日が近づくといよいよ終わらせないといけなくなるので、鬼のようにひたすら薬歴を書き進めることもあるでしょう。

 
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派遣薬剤師とは?仕事内容・時給相場・メリットややりがいを紹介

 

 

4.薬剤師あるあるを共有すれば仕事が楽しくなる

薬剤師として働いていると思わぬハプニングが起こったり、へこんだりしてしまうこともあります。患者さんに怒鳴られたり、うまく棚の配置が覚えれらず「周りに迷惑をかけているかも」と心配になったりすることもあるものです。

 

でも心配はいりません。クレームを受けてしまうのも業務をうまくこなせないのも、みんな一度は経験していること。薬剤師の資格取得にむけて頑張っている薬学生も、あまりの大変さに心が折れそうになるかもしれませんが、みんなも頑張っていると思えれば少しは気が楽になるのではないでしょうか。つらいと思った時は「薬剤師あるある」を思い出してみてくださいね。


執筆/岡本妃香里(おかもと・ひかり)

薬剤師ライター。薬学部を卒業後、都内の大手ドラッグストアでOTCメインの薬剤師として4年間勤務。その後ライター業に転身し、正しい医療知識や医薬品の使い方、選び方などを広めるため執筆を続けている。自身が薬剤師としての働き方に悩んだ経験から、資格にとらわれない働き方も発信。スポーツファーマシストや化粧品検定1級、漢字検定準1級や薬事法管理者などの資格も取得し、伸び伸びと幅広く活動をしている。

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