薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局や、医薬品に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!
「納豆がダメ」な薬があるって本当ですか?
一部の薬は特定の食べ物と飲み合わせが悪く、効果に影響することがあります
私たちが口にした食品と薬が体内で一緒になると、食品に含まれる成分によっては薬の効き目が強く出過ぎたり、逆に弱くなったりすることがあります。これを「薬と食品の相互作用」と呼んでいます。
最も有名な例の一つが「納豆+抗凝固薬のワルファリン」です。ワルファリンは血液を固まりにくくして血栓を予防するための薬で、その効果は体内のビタミンKの働きを抑えることで発揮されます。一方で、納豆にはビタミンKが非常に豊富に含まれており、さらに腸内でビタミンKを作り出す納豆菌も含まれています。そのため、ワルファリンを服用している人が納豆を食べると、薬の効果が打ち消され、血液が固まりやすくなり、血栓ができる危険性が高まってしまうのです。
ワルファリンを服用している人から「納豆は少しでもダメですか?」とよく聞かれますが、少量であっても摂取を避ける必要があります。わずか10gの納豆でも、ワルファリンの効果を弱める成分は2日間増加するとも、その影響は数日間続くともいわれているからです。
このようなわけで、ワルファリンの服用中は、納豆はもちろん、ビタミンKを多く含むクロレラや青汁などの摂取も避ける必要があります。
参照元:添付文書|ワルファリンK錠
参照元:日本血栓止血学会誌|納豆の少量摂取における血中ビタミンKの変動について
参照元:医薬品医療機器総合機構|ワルファリンを飲んでいますが、納豆、クロレラ、青汁などの摂取を避けるように指導されました。なぜ、食べてはいけないのですか?
参照元:日本製薬工業協会|食べ物が、くすりに影響を与えることはありますか。
果物の中では、特にグレープフルーツに注意が必要です。高血圧や狭心症の治療に使われるカルシウム拮抗薬の多くは、グレープフルーツジュースと一緒に摂取すると薬の効き目が強く出過ぎてしまうことがあります。
これは、グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分が、腸内にある「薬を分解する酵素」の働きを邪魔するためです。その結果、血液中の薬の濃度が上がることで、血圧が下がり過ぎたり、頭痛、めまい、動悸(どうき)などの副作用が起こりやすくなったりします。グレープフルーツジュースを飲む場合だけでなく、果肉を食べる場合にも同様の注意が必要です。
参照元:YAKUGAKU ZASSHI|グレープフルーツ果肉部分摂取時によるジヒドロピリジン系Ca拮抗薬ニフェジピン及びニソルジピンの薬物動態への影響
それでは、他のかんきつ類はどうでしょうか。実は、種類によって影響の有無が違います。ブンタン、ハッサク、夏ミカン、スウィーティーなどは、グレープフルーツと同様にフラノクマリン類を含むため避ける必要があります。一方で、温州ミカン、レモン、イヨカン、ユズなどはフラノクマリン類をほとんど含まないため、基本的には薬と一緒に摂取しても問題ありません。
参照元:医療薬学誌|酵素免疫測定法による食物・生薬中のフラノクマリン類含有量のスクリーニング
また、テトラサイクリン系やニューキノロン系と呼ばれる種類の抗菌薬を、牛乳やヨーグルトなどの乳製品やカルシウムを含むサプリメントと一緒に服用すると、薬の成分がカルシウムと結び付いて吸収されにくくなってしまいます。その結果、薬の効き目が弱まり、本来の治療効果が得られなくなる可能性があります。乳製品を摂取する場合は、薬を飲む時間から2時間程度空けるなどの工夫が必要です。
参照元:和歌山県薬剤師会|食品・嗜好品と薬との相互作用について
参照元:添付文書|バクシダール錠
ここで紹介したのはあくまで一例であり、他にも飲み合わせに注意が必要な組み合わせはあります。薬が処方された際は、必ず医師や薬剤師に、食事に関する注意事項がないか確認するようにしましょう。
また、お薬手帳を活用し、普段から飲んでいるサプリメントや健康食品があれば、それらも併せて伝えることが大切です。ドラッグストアなどで買い物をする際にも、お薬手帳を持参するとよいでしょう。薬剤師や登録販売者にお薬手帳を見せながら相談できます。疑問や不安があれば、遠慮なく相談してください。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
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