薬剤師・薬局の仕事は、一般の利用者の立場からは分かりにくい部分も多いかもしれません。薬剤師・薬局に関する素朴な疑問について、薬剤師さんに詳しく解説してもらいました!
「薬剤師にできて医師にできないこと」って何がある?
処方箋に基づく調剤、処方内容の確認、薬局での医薬品販売などは、薬剤師にしかできません
日本の医療制度では、医師と薬剤師の業務を独立させる「医薬分業」という仕組みが採用されており、これによって患者さんの安全を守っています。簡単にいうと、「医師が診察して使用する薬を決め、薬剤師がその薬を患者さんが正しく・安全に使えるように用意する」という役割分担です。もし、医師が処方から調剤までを一人で完結させてしまうと、思い込みによるミスや個人の思惑が入り込む余地が生まれ、客観的で適切な治療が行えなくなる可能性があるためです。
現在の法律上、医師にはできず薬剤師にしかできない独占業務の一つが処方箋に基づく調剤です。調剤業務は、患者さんから処方箋を受け取ってから実際に薬を渡すまでに、処方内容の監査や薬の準備などさまざまな手順があり、これらは原則として薬剤師の資格がなければ行えません。
その手順の一環として、疑義照会(ぎぎしょうかい)を行うことがあります。処方箋の内容に少しでも疑問や不明点がある場合、薬剤師には処方した医師へ必ず問い合わせる義務があります。その際、患者さんの状態や飲み合わせを考慮し、より適した別の薬(代替薬)を提案することも薬剤師の重要な役割です。また、患者さんやご家族に対して、薬の正しい使い方などの情報提供や服薬指導をすることも薬剤師の責務とされています。
適切な情報提供や指導をするためには、かかりつけ薬剤師として患者さんの服薬状況を一元管理することが望まれます。複数の病院やクリニックを受診している患者さんの場合、それぞれの医師は自らが処方した薬しか把握していないことが少なくありません。そこで、薬剤師が「お薬手帳」などを活用してすべての薬をチェックし、重複投与や危険な飲み合わせ(相互作用)を未然に防ぎます。薬が多過ぎる状態(ポリファーマシー)を解消するため、薬剤師から医師へ処方の見直しを提案することもあります。
さらに、薬の専門家である薬剤師が責任を持つという観点から、薬局の管理者(管理薬剤師)になることや、薬局での医薬品の販売も医師にはできません。
参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第三十六条の三~十|e-Gov法令検索
参考:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第七条|e-Gov法令検索
医師と薬剤師は「患者さんの命と健康を守る」という共通の目的を持っていますが、受けてきた教育は異なります。医学部では人体の構造や病気の診断・治療法を中心に学ぶのに対して、薬学部では主に薬の有効成分が体内でどう吸収・分解されるか(薬物動態学)や、成分同士の化学反応、安全な製剤技術といった薬そのものについて学びます。
新薬が次々と開発される現代において、それぞれの薬のメカニズムや副作用のリスクを隅々まで把握し、医師の治療方針を薬学的な観点から支える役割は、薬剤師にしか担えないものといえます。医師は「治療の専門家」、薬剤師は「薬の専門家」として、力を合わせて医療を支えているのです。

東北大学薬学部卒業後、ドラッグストアや精神科病院、一般病院に勤務。現在はライターとして医療系編集プロダクション・ナレッジリングのメンバー。専門知識を一般の方に分かりやすく伝える、薬剤師をはじめ働く人を支えることを念頭に、医療関連のコラムや解説記事、取材記事の制作に携わっている。
ウェブサイト:https://www.knowledge-ring.jp/





