創薬・臨床試験

原田社長、成長には「新薬投入しかない」‐早期承認制度を最大限活用

薬+読 編集部からのコメント

ファイザー日本法人新社長の原田明久さんが4月からの薬価制度改革を前にこれからの方針を語りました。
日本の市場で成長していくには新薬の開発しかないと述べ、(新薬の早期承認を支援する)優先審査制度やオーファンドラッグ指定などを活用していく考えを示しました。
また、ファイザー本社との連携についても協力して薬事戦略を練り、新薬の効果についても多角的に独自データを収集し、価値を説明できるエビデンスとしていく予定です。

実臨床データで当局と交渉

 

昨年12月に新社長に就任したファイザー日本法人の原田明久氏は、本紙のインタビューに応じ、「これから日本市場で成長していくには、新薬の投入しかない」と抱負を述べた。4月に実施される薬価制度改革について、「(新薬の)開発戦略を一度立て直さないといけない」と厳しい現状認識を示しながらも、「(新薬の早期承認を支援する)優先審査制度やオーファンドラッグ指定など、今回の薬価制度改革では、まったく無傷で残ったあらゆる制度を最大限に活用していく」とし、グローバル本社と協調した薬事戦略から開発品の早期申請の実現を目指す方向性を語った。また、昨年12月に設置した上市医薬品の価値を様々なデータから独自に検証する新部署「コーポレートアフェアーズ・ヘルスアンドバリュー本部」で得られた、実臨床でのリアルワールドエビデンスについても、「当局との何らかの交渉に活用する」と述べ、新薬が患者にもたらす価値をデータで示していく考えだ。


ファイザー日本法人では、かつて存在していた日米間の社内ドラッグラグを解消し、現在は世界同時開発を目指す国際共同治験の枠組みに日本が組み込まれ、品目によっては米国と同時期に承認を取得できる体制になった。だが、今回の薬価制度では、新薬創出加算の条件として、新規作用機序の品目の収載から3年以内・3番手以内に収載された医薬品とする「品目要件」が設けられ、日本の規制環境に対応するための開発戦略の立て直しを迫られている。

 

原田氏は、日本の薬価制度が厳格化する環境下で成長していくためには、ファイザー本社のグローバル機能を生かしながら、有望な開発パイプラインを早期に申請していく体制が必須だとした。日本で世界同時開発が進む一方で、日本人データが必ず求められる国内の薬事制度により、「まだ問題視されていない隠れたドラッグラグ」の存在を指摘。欧州には、米国で承認された薬剤データだけで早期に承認される薬事制度があり、先駆け審査制度など既存の制度を最大限活用するのに加え、日本でも新薬申請時に海外の臨床試験データを有効活用できるよう、当局に働きかけていく。

 

探索・非臨床段階にある国内の大学発シーズ獲得にも引き続き取り組んでいく。製薬企業間で大学が保有する有望なシーズの獲得競争が激しくなっている。原田氏は、「従来は単一のアセットでアカデミアと交流をしていたが、これからはアカデミアの先生でチームを作ってもらい、ファイザーが研究の支援を行うことを考えている」と説明。日本発の研究成果をもとに、「病理」「毒性」「薬物動態」と専門家から構成された日本人研究者でチームをつくり、日本法人からファイザー本社に提案している。研究から開発まで切れ目のない体制で日本発シーズの実用化をファイザーが後押しする。

 

一方、薬価制度への対応策にも乗り出す。上市後に薬剤の有効性・安全性・有用性を検証するリアルワールドエビデンス構築に向けて、コーポレートアフェアーズ・ヘルスアンドバリュー本部を設立。日本では製薬企業が利用できる実臨床のデータベースが限られていることから、ファイザーがデータベースを構築し、薬剤のリスクベネフィット評価に役立てていく。

 

独自に蓄積した医薬品の費用対効果データなどを当局に提出し、企業主導で上市医薬品の再評価につなげるのが狙いだ。米国では製薬企業が積極的にリアルワールドデータをFDAに提出しており、患者が自身の症状や体調を申告する「患者日誌」では、企業の提案からFDAが評価ツールとして導入した事例もあるという。「(日本でも)われわれが積極的にデータを出していかないと、当局も見る目が養われないと思う」と新部署での事業展開に意欲を示した。

 

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出典:薬事日報

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