創薬・臨床試験

国内CRO2社と優先契約‐治験システムはロシュに統一

薬+読 編集部からのコメント

臨床開発体制において、中外製薬がスイスのロシュと協業を強化します。
標準業務手順書(SOP)にロシュのSOPを必要に応じて取り込むほか、治験の電子化に対応したITシステムも中外とロシュの2台併用から、ロシュのシステムに一本化する体制にシフトします。
主力の癌領域治験では開発業務受託機関CROを最大限活用し、将来的には、治験デザインの決定で人工知能の活用も目指しています。

中外製薬は、スイスのロシュと協業した臨床開発体制を強化する。ロシュ主導のグローバル試験を国内で実施する場合に、中外の標準業務手順書(SOP)にロシュのSOPを必要に応じて取り込むほか、治験の電子化に対応したITシステムも中外とロシュの2台併用から、ロシュのシステムに一本化する体制にシフトした。主力の癌領域治験ではCROを最大限活用し、ロシュが優先的に活用するグローバルCROとは別に、子会社CRO「中外臨床研究センター」(CCRC)を軸に、国内治験で経験のある抗癌剤開発に強いCROを選定することでリソースを確保する。

 

中外とロシュは、ヒトでの有効性・安全性を検証する「プルーフ・オブ・コンセプト」(POC)取得を目的とした早期臨床試験まではそれぞれが実施し、その後の後期段階の治験では両社が協働して実施する開発モデルを敷く。しかし、国内では開発難易度が高い抗癌剤を中心に治験が長期化しており、中外が実施する治験も年間60試験まで増加し、リソース面で圧迫している。治験の実施形態も、ロシュと中外の創出品目で主導企業が分かれ、グローバル治験と国内限定の治験が混在するため、臨床試験を効率的に進めていくことが難しい状況にあることから、新たな治験実施体制を構築することを決めた。

 

その一環として、ロシュ品のグローバル試験を国内で実施する場合には、中外SOPにロシュSOPの必要な部分を取り込み、柔軟な実施体制にした。臨床開発で用いるITシステムも、一元管理に向けてロシュのシステムに一本化する。日米欧3極での臨床試験に関する情報共有が必要となる中、リスクベースドモニタリング(RBM)にも対応し、昨年にパイロット試験を済ませ、今年から全ての治験でRBMを導入している。

 

癌領域では、患者対象の第I相試験で適応範囲を探索し、ピポタル試験の第II相試験で実薬の有効性が認められれば、早期承認への道ができつつあり、各社が開発スピードで競争する環境が生まれている。中外ではこれまで海外第I相試験の後追いで実施していた国内第I相試験を、グローバルと同時並行で進める戦略に転換。外部委託するモニタリング業務は、ロシュがプリファード契約を結ぶクインタイルズやコーヴァンス、PPDとは別に、社内CROであるCCRCを軸に、抗癌剤に強い国内CRO2社と優先契約を結び、戦略的に活用する方針。リソース確保のため、これら以外のCRO2社とも契約を検討している段階だ。癌領域における臨床開発モニターの生産性としては現在、1人あたり3施設を担当しているが、「4~5施設まで引き上げたい」としている。

 

将来的には、治験デザインの決定で人工知能の活用も目指す。ロシュが実施したグローバル治験と中外が実施した国内治験のデータから予測モデルを作成し、そのモデルを用いて国内未実施のロシュ導入品の治験プロトコルと結果を予測する。治験開始後の脱落などで試験途中に症例を追加したり、新たな治験実施医療機関を立ち上げなければならないなど、予測と実際の結果には乖離も大きく、治験の遅れにつながっている。今後、人工知能メーカーと協業し、最適なプロトコル作成に挑む。

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出典:薬事日報

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