処方せん

患者への「声かけ」で成果‐「聞く力」の重要性も強調

薬+読 編集部からのコメント

2015年6月21日、日本薬局管理学研究会が第10回年会を東京都内で開催しました。メインテーマは「保険薬局の未来を考える」。年会では薬局店頭での薬剤師による声かけや資料提供が生活習慣病の改善につながるという研究結果が紹介されるなど、興味深い内容の講演が行われたようです。

日本薬局管理学研究会は第10回年会を21日、「保険薬局の未来を考える」をメインテーマに都内で開催した。年会では、京都医療センター臨床研究センター研究員の岡田浩氏が、薬局店頭での薬剤師による数分程度の声かけ、資料提供等が生活習慣病の改善につながるという研究結果を紹介した。また、昭和大学リウマチ膠原病内科医局長の高橋良氏が、臨床推論の修得に向けたアプローチの一端を具体的な症例を用いて解説すると共に、臨床能力向上の必要性を指摘。薬剤師が患者の声に真に耳を傾け、薬物療法に介入することで、薬剤師職能の質向上、役割の拡大につながることを示唆した。このほか、一歩先を見据えた取り組み等も一般演題で発表された。


 

岡田氏は聴衆同士を巻き込む独特のスタイルで「高齢化社会における薬剤師の新たな役割:COMPASS研究からの提言」をテーマに講演した。国内では薬局薬剤師による疾病予防や合併症進展抑制などの試みがほとんどなかったことから、2011年から全国の70薬局で慢性疾患患者の生活習慣改善を含めた薬剤師の支援効果を検討する研究「COMPASS研究」を開始している。数分程度の介入でも効果的な声かけにより患者行動の変容、検査値の改善などが可能とする中間解析結果を2012年の国際薬剤師・薬学連合(FIP)年会で発表、ベストポスター賞を受賞した。

 

岡田氏は、特に糖尿病患者に対する臨床研究の成果について、自らの患者対応の様子などを織り交ぜながら、今後の薬剤師が取り組むべき姿の一端を示した。現在は高血圧患者への生活習慣改善支援の研究などに取り組んでいることを紹介。「薬剤師は指導だけでなく、伴走者であっていいと思う。薬局・薬剤師はフラットであり、患者にも信頼される」とし、地域における薬局という立ち位置を活用する必要性を改めて示唆した。

 

一方、高橋氏は特別講演「『聞くちから』―患者さんの訴えをどう聴き、どう考えるべきか?そして、これから薬剤師に求められること」を行った。2025年の先にある2100年には想像を超える人口減少・高齢化が起き、当然、医師不足は深刻であり「医療者は総力戦で乗り切るしかない」と強調した。

 

そういった考えのもと、高橋氏は東京都病院薬剤師会の「薬剤師臨床能力向上プロジェクト」に協力、研修会等を介して薬剤師の臨床推論の修得等を支援しており、「本来の臨床推論とは患者の訴え(言葉)や状態、社会的背景など、患者に関わる全ての情報を考慮して、最善のアウトカムを導き出す臨床思考そのもの」と解説した。また、臨床推論を進める上で、「最初に思い浮かんだ疾患は必ず一度は引っ込める。診断よりも病態を考える」などとポイントを示した。

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出典:薬事日報

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