処方せん

院内フォーミュラリーを導入‐ビスホスホネート製剤で開始

薬+読 編集部からのコメント

東北医科薬科大学病院が4月から医薬品使用指針として院内フォーミュラリーを導入しましたが、特徴的なのは、ジェネリックだけでなく先発品も併記したところです。
すでにジェネリック使用率が80%を超えているものの薬剤費が増加を続けているため、新たな患者さんの視点もとりいれたフォーミュラリーを目指しています。

患者目線で先発品も推奨薬に

 

左から渡辺薬剤部長、菊池主任薬剤師
左から渡辺薬剤部長、菊池主任薬剤師

 

東北医科薬科大学病院は、4月から医薬品の使用指針として院内フォーミュラリーを導入した。後発品のシェアが8割を超えるにもかかわらず、薬剤費の増加に歯止めがかからないことから、新たなシステムとしてフォーミュラリーの導入が必要と判断。第1弾として、ガイドラインに一般名でエビデンスの記載があり、適応症範囲が狭いビスホスホネート製剤から開始した。整形外科医の意見を踏まえ、第1推奨薬に後発品と月1回製剤の先発品を並列で定め、患者のアドヒアランスを考慮した格好となった。渡辺善照薬剤部長は、「単に経済性と有効性だけで選ぶのではなく、患者さん目線の評価を加えた形のフォーミュラリー策定が大事なポイントではないか」と話す。他の薬効群でも検討を進め、将来的には保険薬局も参加する地域フォーミュラリーへと発展させたい考えだ。


5年前まで民間病院だった同院は、旧東北薬科大の医学部新設を受け、2016年4月に大学病院となったことから、教育機関としての体制を整えるため新たな診療科を増設した。これに伴い、医師数と患者数も拡大し、薬剤費は急速に増加の一途をたどった。既に同院の後発品シェアは80%を超えていたが、膨らみ続ける薬剤費に対し、後発品の使用促進だけでは医療費抑制効果に限界があると判断。新たな仕組みとして、使用薬剤に優先順位をつけるフォーミュラリーの導入を検討することになった。

 

先行事例を参考に、薬剤部が主導する形で院内の薬事委員会に小委員会を設置。対象薬剤の選定をスタートさせた。候補薬剤の中から、ガイドラインに一般名でエビデンスの記載があり、適応症範囲が狭く、剤数が少ないことを踏まえ、第1弾として骨粗鬆症治療薬のビスホスホネート製剤を選定。1年がかりで策定にこぎつけた。

 

当初、薬剤部案ではフォーミュラリーの定義に基づき、経済性を優先させて後発品を第1推奨薬としていたが、整形外科医と協議したところ、「患者のアドヒアランスも考慮すべき」との意見があった。そのため、最終案では後発品の「アレンドロン酸錠35mg」と共に、月1回製剤の先発品「アクトネル錠75mg」を第1推奨薬に定めた。ただ、基本的には後発品のアレンドロン酸錠を優先することになっている。

 

第2推奨薬には、嚥下困難な患者にのみ使用する先発品の「ボナロン経口ゼリー35mg」、第3推奨薬には「ボノテオ錠50mg」を決めた。ボノテオ錠は、院外処方限定のため、実質的に院内ではほとんど使用できないとされ、医師がフォーミュラリーの第1推奨薬以外を処方した場合には、ポップアップで警告文が出るようにオーダリングシステムの設定を行っている。

 

渡辺氏は、「薬剤部が主導して原案を作り、専門医と議論しながら意見を聞き、理解を得ながら進めることが必須だと思う。有効性、経済性だけでなく、患者さんの使いやすさまで考慮した評価を盛り込んでいくことがポイントになるのではないか」と実感を語る。

 

医薬品情報室の菊池大輔主任薬剤師は、「新規処方としては、(後発品の)アレンドロン酸錠は徐々に伸びている。第1推奨薬以外を処方すると、オーダリング画面でポップアップの警告が出ることが注意喚起につながっているのではないか」と話す。

 

フォーミュラリーの導入により、院内では「他科の医師が処方するときの医薬品選択に便利」と前向きに評価する声も出てきた。結果的に、医薬品の適正使用につながる予想外の効果が生まれているようだ。

 

第2弾として、H2受容体遮断薬(H2ブロッカー)のフォーミュラリーを策定した。消化器内科医と協議した結果、第1推奨薬に後発品の「ファモチジンD錠20mg」「ファモチジン細粒2%」、第2推奨薬に先発品の「プロテカジンOD錠10mg」を選定した。

 

原則として後発品のファモチジンを使用し、腎機能障害患者には減量で対応する。それでも対応が難しい場合は、先発品のプロテカジンを使用する基準を作った。H2ブロッカーの有効性に差はなかったことから、「経済性を重視した本来のフォーミュラリーになった」(菊池氏)としている。今月の薬事委員会で承認され次第、早ければ7月から運用を開始できる見通しだ。さらに、抗アレルギー薬のロイコトリエン受容体拮抗薬のフォーミュラリー策定にも着手しており、今後は順次他の薬効群での検討を進めていく。

 

渡辺氏は、「フォーミュラリーは随時見直していく必要がある」と指摘。「本来は新規採用薬でフォーミュラリーの議論に踏み込むことが重要だと思うが、そのためにも既存薬の手順をしっかり確立し、新規採用薬の議論に応用していきたい」と話す。

 

将来的には、院外処方箋を受け取る保険薬局と連携した地域フォーミュラリーへの展開も構想している。病院の推奨医薬品がフォーミュラリーで定められていれば、処方箋を受ける薬局の在庫問題などを解決できる可能性がある。まず院内でシステムを確立した上で、薬局を巻き込んだ地域フォーミュラリーへの展開を目指していきたい考えである。

 

渡辺氏は「本質的には医薬品の適正使用が目的で、その一つのツールがフォーミュラリーだと思う。医師と話し合いをするのは大変だが、医薬品の適正使用を進めたいと薬剤師が熱意を持ち、医師に理解してもらう努力をしていくことが必要」と話している。

 

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出典:薬事日報

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