創薬・臨床試験

「アビガン」国内治験で有効性確認、新型コロナ治療薬として10月にも承認申請

薬+読 編集部からのコメント

新型コロナウイルスの流行早期から日本国内で治療薬候補とされていた抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」。「日重篤な肺炎を有するCOVID-19患者」を対象に同薬の治験を進めてきた富士フイルム富山化学は「主要な評価項目を達成した」として、10月中にもCOVID-19の効能追加を承認申請する方針です。一方で、日本集中治療医学会と日本救急医学会が公表したCOVID-19薬物療法のガイドラインにおいては、アビガンの投与は「酸素投与を必要としない軽症患者」の場合に「弱い推奨」とされており、薬事承認の際に適応患者がどのように記載されるかも注目されます。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬としての承認を目指し、抗インフルエンザウイルス薬「アビガン錠」(一般名:ファビピラビル)の治験(国内臨床第III相試験)を進めている富士フイルム富山化学は9月23日、治験において「主要評価項目を達成した」と発表した。

同社は「非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者」を対象に今年3月からアビガンの治験を開始。「症状(体温、酸素飽和度、胸部画像)の軽快かつウイルスの陰性化までの時間」を主要評価項目として、アビガン投与の有効性と安全性をランダム化プラセボ対照単盲検比較試験(被験者を実薬群とプラセボ群に割り付け、割り付けた薬剤を被験者に知らせずに投薬し比較検討する試験)で検討した。

156例を解析した結果、主要評価項目の中央値は、プラセボ投与群(標準治療+プラセボ投与)14.7日に対しアビガン投与群(標準治療+アビガン投与)11.9日。非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者へのアビガン投与で早期に症状を改善することが統計学的有意差(p値=0.0136)をもって確認された。

同社は、安全性についても「新たな懸念は認められなかった」とし、試験の詳細なデータ解析を行った上で、10月中にもアビガンへのCOVID-19の効能追加について承認申請する方針。日本政府の備蓄増や海外からの提供要請に応えるため、富士フイルムグループとして「国内外の企業と連携してアビガンの増産を進めていく」としている。

 

■安倍前首相が早期承認に意欲、患者数減少で治験難航

アビガンは、早くから中国での臨床試験で良好な成績が示されていたことから、COVID-19への効果に対する期待が大きく、安倍晋三首相(当時)も5月4日の記者会見で、COVID-19治療薬として「5月中の承認を目指す」考えを示していた。

富士フイルム富山化学も治験開始当初、「6月末までに治験を終了したい」(広報担当)としていたが、4~5月の緊急事態宣言の効果で国内のCOVID-19感染者数・患者数が減少した影響もあり、被験者の確保は予想以上に難航。有効性の確認に時間を要することとなった。

同社によると、アビガンの増産は計画通り進んでおり、9月中に「約30万人分/月」の生産を実現できるレベルに達するという。

治験は「非重篤な肺炎を有するCOVID-19患者」を対象に行われたが、日本救急医学会と日本集中治療医学会が9月9日に公表したCOVID-19薬物療法のガイドラインでは、アビガンの投与は「酸素投与を必要としない軽症患者」の場合に推奨(推奨の強さ:弱い推奨)とされており、薬事承認の際に適応患者がどのように記載されるかも注目される。

 

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出典:Web医事新報

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