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変異株ワクチン開発に着手~国内勢の塩野義、アンジェス

薬+読 編集部からのコメント

新型コロナウイルスのワクチン効果に影響を与える変異株が英国や南アフリカ、ブラジルなどで検出され、日本でも変異株の陽性者数が急増する中、ワクチン開発を進める国内製薬企業とベンチャーの2社が、変異株に対応可能なワクチン開発に着手することが日本感染症学会学術講演会(5月9日、横浜市内)で明らかにされました。アンジェスは、南ア型をベースに通常株にも対応したDNAワクチンを設計。遺伝子組み換え蛋白ワクチンを開発する塩野義製薬も基礎実験に入る見通しです。

新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発を進めている国内製薬企業とベンチャーの2社が、変異株に対応可能なワクチン開発に着手した。アンジェスは、南アフリカ型をベースに通常株にも対応したDNAワクチンを設計。遺伝子組み換え蛋白ワクチンを開発する塩野義製薬も、基礎実験に入る見通しである。

 

感染症学会で表明

 

9日に横浜市で開催された日本感染症学会学術講演会で明らかにした。新型コロナウイルスの感染性や重篤性、ワクチン効果に影響を与える変異株が英国や南アフリカ、ブラジルなどで検出され、日本でも変異株の陽性者数が急増している。海外では変異株に対するワクチンの感染予防効果を評価する臨床試験が始まっているが、国内では開発に着手している企業はなかった。

 

学会では、新型コロナウイルス感染症ワクチンの開発を進めている国内製薬企業などが進捗状況を報告した。DNAワクチンの国内臨床試験を行っているアンジェスの森下竜一メディカルアドバイザーは、安全性と免疫原性を評価する国内8施設500人を対象とした第II/III相試験について「安全性に関しては、問題ないデータが出ている」と説明した。

 

有効性に関しては、米ファイザー製ワクチンの発症予防効果95%には及ばないとしつつ、「現時点では発症予防、重症化予防共に問題ない数値になると思う。2回目以降の接種に使用すれば、単独よりも高い有効性が出る」とした。

 

森下氏は、変異株に対応したDNAワクチンの開発に着手したことも明らかにし、「南アフリカ型をベースに、現在主流となっている欧州型にも対応できるものにする」との考えを示した。ワクチン設計を終えて製造を行っている段階だが、感染者が急増するインド型にも対応可能とするかについては、「情報収集し、状況を見据えたい」と述べるにとどめた。

 

変異株に対応したワクチンについては、塩野義製薬の有安まりCOVID-19ワクチンプロジェクトリーダーも、開発を開始したことを明らかにし、「近いうちに基礎実験に入れるような抗原が取れると思うので、引き続き検討を進めたい」とした。

 

ただ、ワクチン接種が国内で始まり、臨床試験が進めにくいことが課題となる。同社が開発を進めている遺伝子組み換え蛋白ワクチンでは、国内第I/II相試験で安全性を確認した一方、ワクチン普及により感染者が減少し、国内第III相試験の実施が困難になるとの見通しを示した。

 

海外での発症予防試験の準備を進めると共に、発症予防以外を主評価とする方法も行政側に相談しているという。

 

一方、既存の新型コロナウイルスに対するワクチン開発の進捗も報告された。不活化ワクチンの国内第I/II相試験を行っているKMバイオロジクスの園田憲悟製品開発部長は、緊急使用と同様の形で接種を開始し、実際の有効性についてはリアルワールドデータで取得する体制であれば、来年にも供給を開始できるとの見通しを示し、「現行の規制では、頑張っても2023年になる。1年前倒すにはどうすれば良いか、規制当局側と相談したい」と述べた。

 

センダイウイルスベクターを用いたワクチン開発を行っているIDファーマは、国内臨床試験の開始が他社よりも遅れていたが、草野好司研究開発センター長は「10月以降に開始予定で、それに向けた製造、品質検査等を進めている」と説明した。

 

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出典:薬事日報

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