医療

薬剤師確保に一定成果~独自の修学金貸付制度で

薬+読 編集部からのコメント

公的医療機関の五戸総合病院(青森県=病床数120床)は、五戸町独自の薬剤師修学資金貸付事業(卒後に同院で学費貸付期間の2倍の期間勤務すれば返済を全額免除)で、薬剤師確保に一定の成果を上げています。一時は薬剤師数2人の状態にまで追い込まれましたが、同事業によって5人確保のメドが立ちました。

青森県にある公的医療機関の五戸総合病院(病床数120床)は、五戸町独自の薬剤師修学資金貸付事業で、薬剤師確保に一定の成果を上げている。卒後に同院で学費貸付期間の2倍の期間勤務すれば返済を全額免除するもの。長年、薬剤師を募集しても応募がなく、薬剤師数2人の状態まで追い込まれたが、同事業で5人確保のメドが立った。15日にウェブ上で開幕した日本病院薬剤師会フューチャーファーマシストフォーラムで概要を説明した同院医療技術局長兼薬剤長の若田部修氏は「地方の病院薬剤師の確保には行政の協力が不可欠」と語った。

 

同院の薬剤師数は1997年には7人だったが、同年を最後に薬剤師を確保できず、11年には3人に減少。12年度から4年間各薬系大学の合同就職説明会に参加してテコ入れを図ったものの、小規模の同院に興味を抱く学生はほとんど存在せず、1人の応募もない結果に終わった。

 

このままでは病院の運営にも影響が出るとして、同院の医師向け奨学金制度を薬剤師に応用することを提案。事務長や院長の理解を得た上で、町長や副町長、議員に説明して条例の改定を実現した。長年募集しても薬剤師を確保できない実態を踏まえて反対意見はなく、18年度から五戸町薬剤師修学資金貸付事業が始まった。

 

同事業は、同院で将来薬剤師として勤務する学生に修学資金を貸し付けるもの。月額10万円以内を12~72カ月の範囲で貸し付け、貸付の2倍の期間働いた場合、返済を全額免除する。

 

合わせて、薬剤師業務手当5万円の新設も議会で承認された。若田部氏は「返済免除期間が終わり、退職されたら困る。少しでも薬局薬剤師の給与水準に近づけたいと思い、手当の新設も了解してもらった」と振り返った。

 

これまで同事業には、五戸町や近隣地域の出身者ら5人の学生が応募した。修学資金の額は5人全てが月額10万円。貸付期間は24カ月が2人、71~72カ月が3人となっている。

 

20年3月に貸付期間を終了した薬剤師が同院に就職し、業務を行っている。今後も24年に2人、25年に1人、26年に1人が同院に就職し、薬剤師数は増加に転じる見込みだ。

 

若田部氏は「応募には成績証明書の提出を義務づけている。優秀な学生ばかりが応募してくるため、優秀な人材を確保できるのもメリット」と強調した。

 

20年に入職した薬剤師は、近隣の八戸市立市民病院で研修を受け、昨年度から抗癌剤の混注業務を新たに手がけるようになった。若田部氏は「同地区の他病院で研修を実施することで当院の弱いところを補い、薬剤師を育てていければ良い」と語った。

 

このほか、同フォーラムのシンポジウムで講演したJCHO宮崎江南病院薬剤部長の伊東健一氏は、インターンシップや奨学金制度による薬剤師確保に取り組む一方、「退職者をなくすことも重要で、魅力ある職場づくりが必要」と話した。

 

実際に同院では、入職後3カ月で病棟業務を実践できるように新人薬剤師を支援。症例の指導やミーティングを継続し、やりがいや目標を見つけてもらうよう支えている。2~3年目には学会参加や学会発表を経験してもらい、各種認定資格の取得へとつなげている。

 

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出典:薬事日報

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