薬剤師のスキルアップ 公開日:2015.09.07更新日:2021.08.04 薬剤師のスキルアップ

第34回 長谷川聰 先生

4人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎え、日本は2035年には3人に1人が高齢者になると推計されています。こうした社会背景を受け、問題となっているのが高齢者を受け入れる医療施設不足。これを解消するために今後ますます在宅医療の必要性が増してくると考えられます。
そこで今回は、湘南の地で栄養サポートチーム(NST)専門薬剤師として在宅医療チームに参加し、薬と栄養の面から在宅患者さんをサポートしている長谷川聰先生にお話をうかがいました。

Q
患者さんへ普段の食生活の聞き取りをしたところ、偏った食生活を送っていることがわかりました。不足している栄養を補ってもらったり、オーバーしているカロリーを控えてもらうためには、どのようなアドバイスをしたらいいでしょうか。
患者さんへ普段の食生活の聞き取りをしたところ、偏った食生活を送っていることがわかりました。不足している栄養を補ってもらったり、オーバーしているカロリーを控えてもらうためには、どのようなアドバイスをしたらいいでしょうか。
総菜など身近な食べ物のカロリーを覚え、アドバイスに結びつけよう

 

惣菜のカロリー表示や糖尿病患者さん用の食品換算表を活用

 
患者さんから食生活の聞き取りをしたり、BMIを算出したりしても、そこから具体的な食事のアドバイスに結びつけるのはなかなか難しいですよね。
 
そうした場合にお勧めしたい方法が2つあります。
一つは、普段からコンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜や食品についているカロリー表示を意識して見ること。「この食べ物は○○kcalくらい」と、身近な食品に対するカロリーを感覚的に身につけるのです。
もう一つは、糖尿病患者さん用の食品換算表を手元に置いておき、それぞれの食品の100gあたりのカロリーを大まかに把握しておくことです。
 
以前、退院して自宅に戻ったばかりの患者さんのケースです。
この方は固形物はまだ摂れないけれど、おかゆとアイスキャンディーを食べることはできました。どちらも約100kcalです。
この分を差し引いた在宅中心静脈栄養(HPN)の投与量を医師に提案し、その後も経口摂取量の増加に従って、その分を差し引いたHPN投与量を提案し続けたのです。それにより、在宅医療チームにおける薬物療法だけではなく、栄養療法の領域でも継続して関わっていくことができました。
 
これは、身近な食品のカロリーや、食品換算表の知識が身についていたおかげだと考えています。
 

患者さんの“食の好み”を知ることがコンプライアンス向上のきっかけに

 
服薬指導の最中に、患者さんが偏食気味だったり、1日の食事量が不足している恐れがあることに気づいたときには、マルチビタミンのようなサプリメントや医療用食品・介護用食品を勧めています。この医療用食品・介護用食品は、多職種合同の勉強会で教えてもらったのですが、患者さんの普段の食事内容を知るための良い手段の一つになっています。
 
私が勧めてもらったのはカタログから選ぶ通販タイプの食品でした。このカタログを患者さんにお渡しして、ご自身で健康づくりに役立てていただくことができます。不足している栄養を補うメニューを患者さんと一緒に選び、発注から自宅への宅配までをサポートすることもあります。
 
一緒にメニューを見ていると、患者さんが普段どのような食事を好むのか、固さや形状はどのようなものなら食べられるのかが見えてきます。
たとえば、とろみをつけたり、柔らかく加工した食品を好む患者さんがいたとします。この患者さんは食べ物をうまく噛めない、飲み込みづらいといった不調を感じるから柔らかい食品を好んで食べているのです。
もしもこの患者さんに、カプセル剤や大きな錠剤の薬が出ていたとしたら、「薬を問題なく飲めているだろうか」「剤形変更の必要はないだろうか」という疑問が浮かんできますよね。
 
患者さんが普段食べているものを知ると、そこから、「服薬のしづらさ」を推察することが可能になるのです。これは、患者さんの食生活を確認することで得られるメリットの一つだと思います。
患者さんから詳細に聞き取りを行い、実際に飲みづらさが確認されたら、医師への剤形変更の提案へとつなげていきます。これは、ひいては患者さんの飲みやすさ・コンプライアンスの向上へと結びついていきますよ。
 

総菜など身近な食べ物のカロリーを覚え、アドバイスに結びつけよう

 

惣菜のカロリー表示や糖尿病患者さん用の食品換算表を活用

 
患者さんから食生活の聞き取りをしたり、BMIを算出したりしても、そこから具体的な食事のアドバイスに結びつけるのはなかなか難しいですよね。
 
そうした場合にお勧めしたい方法が2つあります。
一つは、普段からコンビニエンスストアやスーパーマーケットの惣菜や食品についているカロリー表示を意識して見ること。「この食べ物は○○kcalくらい」と、身近な食品に対するカロリーを感覚的に身につけるのです。
もう一つは、糖尿病患者さん用の食品換算表を手元に置いておき、それぞれの食品の100gあたりのカロリーを大まかに把握しておくことです。
 
以前、退院して自宅に戻ったばかりの患者さんのケースです。
この方は固形物はまだ摂れないけれど、おかゆとアイスキャンディーを食べることはできました。どちらも約100kcalです。
この分を差し引いた在宅中心静脈栄養(HPN)の投与量を医師に提案し、その後も経口摂取量の増加に従って、その分を差し引いたHPN投与量を提案し続けたのです。それにより、在宅医療チームにおける薬物療法だけではなく、栄養療法の領域でも継続して関わっていくことができました。
 
これは、身近な食品のカロリーや、食品換算表の知識が身についていたおかげだと考えています。
 

患者さんの“食の好み”を知ることがコンプライアンス向上のきっかけに

 
服薬指導の最中に、患者さんが偏食気味だったり、1日の食事量が不足している恐れがあることに気づいたときには、マルチビタミンのようなサプリメントや医療用食品・介護用食品を勧めています。この医療用食品・介護用食品は、多職種合同の勉強会で教えてもらったのですが、患者さんの普段の食事内容を知るための良い手段の一つになっています。
 
私が勧めてもらったのはカタログから選ぶ通販タイプの食品でした。このカタログを患者さんにお渡しして、ご自身で健康づくりに役立てていただくことができます。不足している栄養を補うメニューを患者さんと一緒に選び、発注から自宅への宅配までをサポートすることもあります。
 
一緒にメニューを見ていると、患者さんが普段どのような食事を好むのか、固さや形状はどのようなものなら食べられるのかが見えてきます。
たとえば、とろみをつけたり、柔らかく加工した食品を好む患者さんがいたとします。この患者さんは食べ物をうまく噛めない、飲み込みづらいといった不調を感じるから柔らかい食品を好んで食べているのです。
もしもこの患者さんに、カプセル剤や大きな錠剤の薬が出ていたとしたら、「薬を問題なく飲めているだろうか」「剤形変更の必要はないだろうか」という疑問が浮かんできますよね。
 
患者さんが普段食べているものを知ると、そこから、「服薬のしづらさ」を推察することが可能になるのです。これは、患者さんの食生活を確認することで得られるメリットの一つだと思います。
患者さんから詳細に聞き取りを行い、実際に飲みづらさが確認されたら、医師への剤形変更の提案へとつなげていきます。これは、ひいては患者さんの飲みやすさ・コンプライアンスの向上へと結びついていきますよ。
 

長谷川聰先生プロフィール
長谷川聰先生プロフィール
タカノ薬局湘南秋谷管理薬剤師。栄養サポートチーム(NST)専門薬剤師。湘南の地にて、地域に根ざした医療を提供。栄養サポートの知識を活かして、在宅療養中の患者さんたちの日常を見守っている。
 

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