薬剤師のお悩みQ&A 公開日:2015.10.26更新日:2015.10.23 薬剤師のお悩みQ&A

第41回 赤瀬朋秀 先生

現在、調剤薬局の店舗数はコンビニエンスストアをしのぐといわれています。処方箋獲得競争の激化、2014年度診療報酬の改定での調剤報酬引き下げなど、これまでと同じように業務を行っているだけでは経営を安定化させることが難しくなってきました。
年々、調剤薬局を取り巻く環境の厳しさが増していくなかで、生き残る薬局となるにはどうすればよいのでしょうか。
今回は薬剤師でありながらMBAを取得し、数々の薬局や病院の経営立て直しやコンサルテーションを実践してきた赤瀬朋秀先生にお話をうかがいました。全5回のシリーズです。
原稿/高垣育(薬剤師・ライター)

Q
地域の人たちに親しまれ、必要とされる薬局であり続けるためには、何に気をつければよいでしょうか。
地域の人たちに親しまれ、必要とされる薬局であり続けるためには、何に気をつければよいでしょうか。
「地域包括ケア」のなかで薬剤師や薬局の役割を果たせるようになろう

 

地域包括ケアの目標は「ときどき入院、ほぼ在宅?」

 
要介護状態の高齢者が最期まで住み慣れた街で過ごせるよう、生活の支援を目的とした「地域包括ケアシステム」の実現が進められています。普段は地域の医療機関や介護施設で患者さんをケアし、重症化したときのみ病院へ戻って入院するというイメージです。
 
したがって、地域医療を支える薬局をはじめとした医療機関には、地域にいる患者さんを再入院させないようにするための責務があります。そのために必要な要素には「リハビリ」「感染症予防」「栄養管理・指導」の三つが挙げられますが、「リハビリ」と「食事指導・栄養管理」については、在宅医療チームの中で理学療法士と管理栄養士という専門家に任せられます。
 
ただし、「感染症予防」と「栄養管理」については薬剤師が担うべきであり、薬剤師の腕の見せどころとなり、薬剤師の積極的な介入が求められます。
 

今後は薬局内分業も必要になる可能性が

 
今後、地域が求める医療に関するプロフェッショナルサービスは、保険調剤のみではなく、在宅医療や高齢者の生活の質向上にも貢献できる薬局です。
しかし、在宅医療は採算がとりにくいのも現実で、頭を悩ませている経営者も多いのではないでしょうか。そこで、一人薬剤師という状況でなければ、「薬局内分業」という考え方を推奨します。ある程度の収入を確保しつつ、在宅医療に参入するための先行投資が可能となるでしょう。
 
薬局内分業は造語ですが、一つの薬局内で薬剤師が保険調剤と在宅医療を分担し、業務を遂行していく仕組みです。たとえば薬局に4人の薬剤師がいるとき、1人を在宅のエキスパートにして、他の3人で保険調剤を担当するといったイメージです。
 
在宅のエキスパートは、患者さんを病院へ逆戻りさせないためのフォローアップを行います。それには専門薬剤師、認定薬剤師の資格や、専門性の高い知識や技術、スキルが必要になります。
 
すると次に直面するのが、知識や技能獲得のための研修先をどのように確保するのかという問題ではないでしょうか。この問題の解決には地域の薬薬連携を最大限に利用しましょう。薬局の所在地の薬剤師会、地域の勉強会などのつながりを活用し、地域の基幹病院の薬剤部に学びに行き、そこで院内のICT(Infection Control Team)やNST(Nutrition Support team)の中で薬剤師がどのような仕事をしているか、まずは見てみませんか。
そして、そのテクニックを習得し、地域で発揮させるのです。経営学では“技術移転”という単語を使うますが、本来の意味とは違うもののイメージは理解できると思います。
 
このような経営上の工夫をして、はじめてその地域における患者さんや他職種からの期待に応えることができるでしょう。こういった努力の積み重ねにより、地域に必要とされ、生き残る薬局・薬剤師への道が開けると確信しています。
 

「地域包括ケア」のなかで薬剤師や薬局の役割を果たせるようになろう

 

地域包括ケアの目標は「ときどき入院、ほぼ在宅?」

 
要介護状態の高齢者が最期まで住み慣れた街で過ごせるよう、生活の支援を目的とした「地域包括ケアシステム」の実現が進められています。普段は地域の医療機関や介護施設で患者さんをケアし、重症化したときのみ病院へ戻って入院するというイメージです。
 
したがって、地域医療を支える薬局をはじめとした医療機関には、地域にいる患者さんを再入院させないようにするための責務があります。そのために必要な要素には「リハビリ」「感染症予防」「栄養管理・指導」の三つが挙げられますが、「リハビリ」と「食事指導・栄養管理」については、在宅医療チームの中で理学療法士と管理栄養士という専門家に任せられます。
 
ただし、「感染症予防」と「栄養管理」については薬剤師が担うべきであり、薬剤師の腕の見せどころとなり、薬剤師の積極的な介入が求められます。
 

今後は薬局内分業も必要になる可能性が

 
今後、地域が求める医療に関するプロフェッショナルサービスは、保険調剤のみではなく、在宅医療や高齢者の生活の質向上にも貢献できる薬局です。
しかし、在宅医療は採算がとりにくいのも現実で、頭を悩ませている経営者も多いのではないでしょうか。そこで、一人薬剤師という状況でなければ、「薬局内分業」という考え方を推奨します。ある程度の収入を確保しつつ、在宅医療に参入するための先行投資が可能となるでしょう。
 
薬局内分業は造語ですが、一つの薬局内で薬剤師が保険調剤と在宅医療を分担し、業務を遂行していく仕組みです。たとえば薬局に4人の薬剤師がいるとき、1人を在宅のエキスパートにして、他の3人で保険調剤を担当するといったイメージです。
 
在宅のエキスパートは、患者さんを病院へ逆戻りさせないためのフォローアップを行います。それには専門薬剤師、認定薬剤師の資格や、専門性の高い知識や技術、スキルが必要になります。
 
すると次に直面するのが、知識や技能獲得のための研修先をどのように確保するのかという問題ではないでしょうか。この問題の解決には地域の薬薬連携を最大限に利用しましょう。薬局の所在地の薬剤師会、地域の勉強会などのつながりを活用し、地域の基幹病院の薬剤部に学びに行き、そこで院内のICT(Infection Control Team)やNST(Nutrition Support team)の中で薬剤師がどのような仕事をしているか、まずは見てみませんか。
そして、そのテクニックを習得し、地域で発揮させるのです。経営学では“技術移転”という単語を使うますが、本来の意味とは違うもののイメージは理解できると思います。
 
このような経営上の工夫をして、はじめてその地域における患者さんや他職種からの期待に応えることができるでしょう。こういった努力の積み重ねにより、地域に必要とされ、生き残る薬局・薬剤師への道が開けると確信しています。
 

赤瀬朋秀プロフィール
赤瀬朋秀先生プロフィール
日本経済大学大学院教授。図書館・情報センター長。
1989年に日本大学理工学部薬学科卒業後、慶應義塾大学病院薬剤部を経て北里大学病院薬剤部に入局。その後、経営学大学院に進学し経営学を学ぶ。MBA取得後9年間にわたって2つの病院において薬剤部門長を務め、2012年4月より現職。

<完全無料>転職やキャリアのご相談はマイナビ薬剤師へ