“漢方”に強くなる! まるわかり中医学 公開日:2022.01.18 “漢方”に強くなる! まるわかり中医学

知れば知るほど奥が深い漢方の世界。患者さんへのアドバイスに、将来の転職に、漢方の知識やスキルは役立つはず。薬剤師として今後生き残っていくためにも、漢方の学びは強みに。中医学の基本から身近な漢方の話まで、薬剤師・国際中医師の中垣亜希子先生が解説。

第76回 あんこの「アズキ」も生薬!むくみが気になるときに

温かいお汁粉を食べたくなる季節がやってきました。さて、実はあんこやお赤飯に使われるアズキも、れっきとした中薬(生薬)のひとつ。中薬でアズキは「赤小豆」と書き、セキショウズと読みます。今回は、日本人に親しみのある「アズキ」=「赤小豆」=「セキショウズ」についてお話しします。

1.食材でも生薬でもある「アズキ」

日本では、アズキはとても親しみ深い食材。乾物のアズキやゆでアズキの缶詰はスーパーなどでいつでも手軽に購入できますし、筆者の感覚では、和菓子といえばまず「あんこ」が思い浮かび、和菓子屋さんの腕は「アズキあん」の出来にかかっているような気すらしています。

日本で中薬(生薬)として使われるアズキは乾物です。水を加えてコトコト煮てその煎じ液を飲んだり患部につけて外用したり(豆も食べたり)、アズキの粉末を外用に用いたりします

2.解毒&むくみに「赤小豆(セキショウズ)」

突然ですが、あるロックバンドの方が家飲みする際に、お酒のつまみとして「ゆでアズキ缶」を持って行ったエピソードをしているのを聞いたことがあります。「酒にアズキは合う!」とおっしゃっていて、「なんて理にかなっているんだろう……!」と話のすじとはちょっとズレたところで、妙に感心したことがあります。
 
アズキには強い解毒作用や利尿作用があり、アルコールを速やかに体外に排出してくれるため、二日酔いやむくみ対策に最適です。なので、アルコールを飲んだら、茹でたアズキを茹で汁ごと、ほかには、アズキ缶やアンパンなどを食べると良いです。消化に負担がかからないように、なるべく糖分少なめ・油分少なめがなお良いです。

中薬学の教科書では、赤小豆(セキショウズ)は余分な水分を追い出し、水のだぶつきを改善する「利水滲湿薬(しすいしんしつやく)」に分類されます。腎炎の水腫・脚気の水腫のほか、一般的な虚証のむくみ(栄養不良性の浮腫)にも効果的です。一般的な虚証のむくみ(栄養不良性の浮腫)に対しては、ナツメや落花生などと一緒に煎じて長期間服用します(具も一緒に食べるとよいでしょう)。
 
そのほか解毒作用・消炎作用・排膿作用があるため、皮膚の炎症・化膿やただれ、おたふくかぜ、乳腺炎、腸の化膿症、痔出血などに対してほかの生薬などと配合して、内服したり外用したりして使います

アズキは古くから日本女性の洗顔料として使われていたようで、現代でもアズキ入りの洗顔料やアズキ入りのスクラブ、小豆100%の粉末の洗顔パウダーなどが売られています。

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3.赤小豆(セキショウズ)の効能

ここでは中薬学の書籍で紹介されている赤小豆の効能を見ていきましょう。ここで言う「赤小豆」は「セキショウズ」と読み、アズキのことです。
 
効能の欄には、四字熟語のような文字が並んでいます。一瞬ギョッとするかもしれませんが、漢字の意味から効能のイメージを掴むのに役立ちます。

赤小豆(セキショウズ)

【分類】
利水滲湿薬

【処方用名】
赤小豆・紅小豆・紅豆・野赤豆

【基原】
マメ科LeguminosaeのツルアズキPhaseolus calcaratusまたはアズキP.angularis WIGHTの成熟種子

【出典】
神農本草経

【性味】
甘・酸、平

【帰経】
心・小腸

【効能】
利水消腫(りすいしょうしゅ)、解毒排膿(げどくはいのう)

【応用】
1.
水腫・腹満・脚気の水腫などに用いる。赤小豆の性質はよく下行し、通利水道することができ、水湿を下泄させることで、消腫する。
水腫病では、赤小豆単品で煎じて服用するか、白茅根(びゃくぼうこん)や桑白皮(そうはくひ)などの利水薬(りすいやく)を配合する。≪食療本草≫には、赤小豆と鯉魚を煮て食し、脚気と腹水を治療したという記載がある。現代はこの方法で、腎炎の水腫・肝硬変の腹水・栄養不良性の水腫を治療し、一定の効果がある。
赤小豆はまた、外用に用いることができる。韋宙の≪独行方≫では、赤小豆単品の温かい煎じ液に膝以下を浸して、脚気水腫を治療する。

2.
熱毒による廱瘡に用いる。赤小豆は解毒排膿することができる。痄腮(おたふくかぜ)・乳廱(乳腺炎)・丹毒・瘡瘍などの症状に対してみな赤小豆を用いて外用できる。廱腫のまだ破裂していないもの(化膿の初期)に対して、赤小豆の粉末を鶏卵の白身、蜂蜜あるいは酢などで練って調製し、患部に湿布すると効果がある。苎麻根の粉末と配合すると、清熱解毒作用が強められ、かつ粘りすぎる弊害を避けられる。丹毒・瘡廱に対して、煎じ液で外洗(外用で洗うこと)ができる。

【用量・用法】
10-30g。外洗適量
 
※【分類】【処方用名】【基原】は『中医臨床のための中医学』(医歯薬出版株式会社)より引用/【出典】【性味】【帰経】【効能】【応用】【用量・用法】は『中医学』(上海科学技術出版社)より部分的に抜粋し筆者が和訳・加筆したもの

このように、赤小豆(セキショウズ)は、利水薬として水腫などに中医内科的に使われる一方で、その解毒排膿作用から中医外科・皮膚科においても外用薬としても用いられます。

4.【薬膳レシピ】手軽にアズキをとろう!

身近な食材の「アズキ」に秘められたパワーを感じていただけたでしょうか?
 
実は、アズキに限らず、緑豆、黒豆、黄大豆…など、豆には解毒作用を備えているものが多いです。解毒作用以外にも、それぞれの豆に個性ある作用が備わっているので、私は体調や症状や季節によって使い分けています。そのほかの豆についてもまた、ゆくゆく紹介できたらと思います。
 
あんこに目がない私の姉は、乾物のアズキを何度も茹でこぼして、自分であんこを作っています。すごくおいしそうで羨ましいけれどなかなか腰が重い話だわと感じてしまうのは私だけでしょうか。ズボラな私は、品質の良い甘さ控えめの既製品あんこを購入する派です。
 
冬は既製品のあんこでお汁粉、夏はアズキあんと寒天を溶かして水ようかんを作ります。ちなみに、夏はアズキより緑豆がより向いている季節なので、緑豆あんと寒天で水ようかんの方が作る頻度はずっと高いですが……。

 

また、ほんのり甘く味付けされて柔らかく蒸しあげたアズキを、甘栗みたいにレトルトパウチ包装されたお菓子なども売られています。おやつ代わりに食べてもとってもおいしいですし、体にもよくて一石二鳥です。甘納豆よりずっと甘さ控えめで食べやすいです。
 
そのほか、よく洗った乾物のアズキを一晩水に浸けて、白米や玄米、雑穀などと一緒に炊飯器に入れて多めの水で炊くのも、簡単でおすすめです(アズキを鍋で煮る作業を省いています)。また、アズキと雑穀を入れたお粥は朝食にぴったりです。

むくんだとき、解毒したいとき、ぜひアズキを活用してみてください!

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参考文献:
・小金井信宏『中医学ってなんだろう(1)人間のしくみ』東洋学術出版社 2009年・凌一揆(主編)『中薬学』上海科学技術出版社 2008年
・中山医学院(編)、神戸中医学研究会(訳・編)『漢薬の臨床応用』医歯薬出版株式会社 1994年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための中薬学』医歯薬出版株式会社 2004年
・南京中医学院(編)、石田秀実(監訳)『現代語訳 黄帝内経素問 上巻』2014年 東洋学術出版社
・・南京中医学院(編)、石田秀実(監訳)、白杉悦雄(監訳)『現代語訳 黄帝内経霊枢 下巻』2012年 東洋学術出版社
・日本中医食養学会(編著)、日本中医学院(監修)『薬膳食典 食物性味表』燎原書店 2019年
・田久和義隆(翻訳)、羅元愷(主編)、曽敬光(副主編)、夏桂成・徐志華・毛美蓉(編委)、張玉珍(協編)『中医薬大学全国共通教材 全訳中医婦人科学』 たにぐち書店 2014年
・戴毅(監修)、淺野周(翻訳)、印会河(主編)、張伯訥(副主編)『全訳 中医基礎理論』たにぐち書店 2000年
・許 済群 (編集)、 王 錦之 (編集)『方剤学』上海科学技術出版社2014年
・神戸中医学研究会(編著)『中医臨床のための方剤学』医歯薬出版株式会社 2004年
・伊藤良・山本巖(監修)、神戸中医学研究会(編著)『中医処方解説』医歯薬出版株式会社 1996年
・王財源(著)『わかりやすい臨床中医臓腑学 第3版』医歯薬出版株式会社 2016年
・李時珍(著)、陳貴廷等(点校)『本草綱目 金陵版点校本』中医古籍出版社 1994年
・鄧明魯、夏洪生、段奇玉(主編)『中華食療精品』吉林科学技術出版社 1995年
・翁維健(主編)『中医飲食営養学』上海科学技術出版社 2007年
・梁 晨千鶴 (著)『東方栄養新書―体質別の食生活実践マニュアル』メディカルコーン2008年

中垣 亜希子(なかがき あきこ)

すがも薬膳薬局代表。国際中医師、国際中医薬膳師、 医学気功整体師 、日本不妊カウンセリング学会認定不妊カウンセラー、管理薬剤師。
薬局の漢方相談のほか、中医学・薬膳料理の執筆・講演を務める。
東京薬科大学薬学部卒業。長春中医薬大学、国立北京中医薬大学、国立北京中医薬大学日本校にて中医学を学ぶ。「顔をみて病気をチェックする本」(PHPビジュアル実用BOOKS猪越恭也著)の薬膳を担当執筆。

すがも薬膳薬局:http://www.yakuzen-sugamo.com/

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