





今回のご相談ですが、「立ったほうが良い」または「座ったほうが良い」とどちらかを正解にすることはできないように思います。大切なのは、患者さんが快適と感じる状況や姿勢で服薬指導を聞いてもらうこと。相手との目線の高さを合わせることを礼儀やマナーの世界では考えますが、そうした枠組みにこだわらず、患者さんが一番聞きやすい姿勢で指導を受けてもらうことを優先すればいいように思います。
ご相談の患者さんは、急いでいてすぐにでも帰りたい、次の予定が気になって座る気になれない、など座りたくない理由が何かあったのかもしれません。同じ患者さんが毎回立っている場合、思い切って座りたくない理由を尋ねてみれば、服薬指導に反映させることができそうです。

私は、患者さんと医療者は対等な立場であることが大切だと思っています。目線の高さを合わせるのは、相手を見下ろさないというマナーのほかに、目を見て話すことで相手の考えや気持ちを理解しやすくなるというコミュニケーション上の理由があります。
そのため、患者さんの表情が見えず何を考えているのかよくわからないのであれば、目線を合わせるために患者さんに合わせて立って投薬することも必要でしょう。
服薬指導は、ただ伝えるというものではなく、患者さんに理解してもらい適切な薬物治療につなげることに意味があります。
指導が一方通行にならないように、患者さんが話を聞いていないなと感じたら立ち上がって説明するなど、常に患者さんの様子を観察して、臨機応変に自身の姿勢を変えることを意識してほしいと思います。確実に伝えたい情報があれば目を見る、という基本が重要です。
なお投薬時のマナーとして、立て肘をつく、足を組む、貧乏ゆすりをする、ペン回しをするといった姿勢は失礼なのでNGです。無意識にこうしたしぐさが出ないように注意しましょう。



株式会社スマイル・ガーデン代表取締役。
薬剤師として総合病院薬剤部、漢方調剤薬局、調剤薬局で20年以上にわたり調剤、患者応対を経験。管理薬剤師として社員の人材育成に注力する。
現在は医療現場経験を活かし、医療接遇コミュニケーションコンサルタントとして活躍中。
マイナビ薬剤師・連載コラムが書籍化された、
「患者さん対応のプロをめざす! 『選ばれる薬剤師』の接遇・マナー」が
2017年7月19日 同文舘出版より発売。
株式会社スマイル・ガーデン : https://smile-garden.jp/
ブログ「いつもワクワク Always Smiling!」: https://smilegrdn.exblog.jp/


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