薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2020.07.22 薬剤師のためのお役立ちコラム

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新型コロナウイルスの再拡大が続く中、一刻も早い治療薬やワクチンの完成が期待されます。治療薬候補として注目される「アビガン」の最新情報と薬事承認間近の「禁煙アプリ」について紹介します。

【新型コロナ治療薬】アビガンの有効性は認められず/禁煙治療アプリが薬事承認

ラク~にまとめ読み
  • Topics 1 【新型コロナ治療薬】アビガンの有効性は認められず
  • 藤田医科大学を中心に進められていた抗インフルエンザ薬「アビガン」の特定臨床研究の結果、ウイルスの消失率に統計的な有意差は認められなかった。同薬をめぐっては製造元の富士フイルム富山化学が第Ⅲ相試験を実施中であり、その結果が注目される。
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  • Topics 2 禁煙治療アプリが薬事承認へ
  • CureApp社の「ニコチン依存症治療アプリ」が薬事承認される見込み。ニコチン依存症患者さんが対象であり、禁煙補助薬や呼気チェッカーを併用しながら、医師はアプリに入力された情報をもとに患者さんへ個別のアドバイスをする。診療と診療の間の治療継続への効果が期待される。
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Topics 1 【新型コロナ治療薬】アビガンの有効性は認められず

2020年7月10日、新型コロナウイルス感染症に対するファビピラビル(商品名アビガン)の有効性を検証する特定臨床研究を行っていた藤田医科大学は、アビガン投与によるウイルス消失率に統計学的な有意差は認められなかったとの最終報告を発表しました。

新型コロナウイルス治療薬の開発は全世界で待望されており、これまでも既存薬の転用など様々な試みが行われてきました。日本国内では、新型インフルエンザに対する抗ウイルス薬として開発されたアビガンが新型コロナウイルス感染症にも有効ではないかと目されてきましたが、ひとまず今回は残念な結果となりました。

今回の特定臨床研究では、全国の医療機関(47か所)の新型コロナウイルス感染症患者さん(無症状または軽症)89人について、アビガンを1日目から通常投与する群と、6日目から遅延投与する群に分け、ウイルス量の低減の程度を比較するという多施設ランダム化臨床試験が行われました。その結果、アビガンを通常投与した群のほうで解熱が早まるなどの傾向はあるものの、統計学的な有意差はなかったとのことです。

この結果について藤田医科大学は、研究対象となった人数が少ないために有効性の有無を確認できなかった可能性もあるとしています。現在、アビガンの製造販売元である富士フイルム富山化学が第Ⅲ相試験を実施中であり、その結果が今後の焦点となるでしょう。ただし、この第Ⅲ相試験の対象者は肺炎などがある中等症患者さんです。日本国内では中等症以上の患者さんが減少しているため、治験の進行に遅れが出ることが懸念されます。

一方で、東京大学医学部附属病院は、ICU管理となった重症患者さんに対してアビガンと抗凝固薬ナファモスタットメシル酸塩(商品名フサン)を併用したところ、11症例中10例で臨床症状が軽快したとのデータを発表しました(薬事日報、2020年7月10日より)。アビガンとは異なるフサンの作用機序と抗凝固作用が新型コロナウイルスの抑制に有効である可能性が示唆されたといえます。

そのほか、すでにこのコーナーでも取り上げたとおり、2020年5月7日、エボラ出血熱治療薬として開発されたレムデシビル(商品名ベクルリー)が初の新型コロナウイルス治療薬として正式に特例承認されています。また、最近の研究では、新型コロナウイルスはサイトカインストームと呼ばれる現象により過剰な炎症反応を起こすことで重症化することが分かりつつあり、抗炎症作用の強いデキサメタゾンなどのステロイドを使用する医療機関が増えています。英国での臨床研究によれば、デキサメタゾンは重症新型コロナウイルス感染症の患者さんの死亡率を有意に低下させるとのこと(BBC JAPAN、2020年6月18日より)。今後も様々な既存薬の転用が検証され、臨床応用にいたることが期待されます。

Topics 2 禁煙治療アプリが薬事承認へ

2020年6月19日、CureApp社が承認申請していた「ニコチン依存症治療アプリ」が、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会から薬事承認に関する了承を得ました。まもなく厚生労働省として正式に薬事承認が行われる見込みです。

今回承認された治療用アプリは、ニコチン依存症の患者さんを対象とし、スマートフォンなどにインストールする患者さん用および医師用アプリ、呼気中の一酸化炭素(CO)を測定する呼気チェッカーで構成されます。患者さんは禁煙補助薬バレニクリン(商品名チャンピックス)の服用を続けながら、定期的に呼気チェッカーでCO濃度を測定。さらに「喫煙したくなる瞬間」などの情報をアプリに入力します。それらの情報はアプリを通して医師に伝えられ、医師は一人ひとりの状態をふまえたアドバイスを行います。こうした流れを構築することで、従来よりも効果的に禁煙治療をサポートできるというわけです。

このように患者さんの行動変容を促す治療用アプリは、すでに米国や欧州などで様々な疾患に対して活用されています。スマートフォンが急速に普及して、多くの人々が様々な生活場面でアプリを利用するようになった今、診察と診察の間の「空白期間」をアプリでカバーしながら治療継続や健康維持をサポートする試みは、さらに拡大していくことが予想されます。

ただし、治療用アプリは正しく使わなければ十分な効果を得ることができません。また、アプリに頼りすぎることで、医療従事者が患者さんの状態変化を見逃す可能性も考えられます。薬剤師が治療用アプリを使っている患者さんに接するときは、正しいアプリの使用方法だけでなく、アプリを通して医師から送られてくるアドバイスなどの情報の適切な解釈の仕方を伝えることが必要です。

また、薬剤師は「患者さんと最後に接する」医療従事者でもあるため、患者さんの状態や治療意欲の変化などを敏感に察知することが求められます。利便性の高いアプリにも限界はあり、患者さんに対面したときの「観察眼」も薬剤師に必要なスキルの一つなのです。

<参考URL>
【藤田医科大学】アビガンの有効性認めず-ウイルス消失に有意差なく(薬事日報、2020年7月13日)
【機器・体診部会】禁煙治療アプリの承認了承-国内初、行動変容を促す(2020年6月22日)

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※この記事に掲載された情報は2020年7月17日(金)時点のものです。

成田亜希子(なりた あきこ)

医師・ライター。2011年に医師免許取得後、臨床研修を経て一般内科医として勤務。その後、国立保健医療科学院や結核研究所での研修を修了し、保健所勤務の経験もあり。公衆衛生や感染症を中心として、介護行政、母子保健、精神福祉など幅広い分野に詳しい。日本内科学会、日本感染症学会、日本公衆衛生学会に所属。

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