薬剤師のスキルアップ 更新日:2023.11.13公開日:2019.01.17 薬剤師のスキルアップ

薬剤師の悩み”医師との人間関係”とは?

辞めたい、辛い、転職したい薬剤師の不安に達人がアンサー Vol.3
 

「薬剤師の仕事を辞めたい」「薬剤師の仕事が辛い」「薬剤師は勉強が大変」。そんな今の時代に薬剤師が抱えるネガティブな気持ちに、『薬剤師の新・幸福論』の著者、斉木和成さんがアドバイス。今回は、今後ますます必要になる“医師”とのコミュニケーションに注目します。

薬剤師は医師とのコミュニケーションが苦手?

「薬に疑問があって医師に問い合わせると、毎回なんとなく不機嫌な態度になる」(20代・大学病院勤務)

 

「『今忙しいから後にして』と、ぞんざいに電話を切られることがあります」(30代・調剤薬局勤務)

 

「処方ミス?と疑問に思って問い合わせると、前の担当医と同じ薬を出しているから間違いないって…。診察してないの!?」(30代・調剤薬局勤務)

 

「薬+読」ニュースでも報じましたが、医薬連携が推進され、医師と薬剤師の間で活用する服薬情報提供書(トレーシングレポート)の運用も一部で始まっています。
薬剤師は医師との連携が今後ますます必要となりますが、医師とのコミュニケーションにまつわる悩みは尽きないようです。

 

大学病院や総合病院の門前薬局などで薬局長を務めた経験を持つ斉木さんも、医師とのやりとりには苦戦したと言います。

 

「プライドの高い意思とのコミュニケーションに苦戦しましたね。大学病院の薬局で疑問に思ったことをしょっちゅう医師に問い合わせていたら、『医師の権限を尊重するように』と、病院側から注意を受けたことがありますよ」

 

医師が処方した薬をチェックするのは薬剤師の大事な業務のひとつ。処方に少しでも疑問を感じたら、即座に問い合わせをしなければなりません。とはいえ、医師に遠慮してしまうという声も。

 

「診察して処方せんを出すのは医師ですが、病気そのものを“治す”のは『薬』。その薬を調剤するのは薬剤師です。薬剤師が気を使うべきなのは医師ではなく、今目の前にいる薬を必要としている患者さんなのです。

 

薬に関する知識は、医師よりも薬学を専門に学んだ薬剤師のほうが豊富。薬の専門的な知識を吸収し、現場で投薬の経験を積み重ねるうちに、医師と対等に渡り合えるようになっていくのです。コミュニケーションが苦手だからと、逃げてしまっては成長できません」

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医師と良好な関係を目指す「薬剤師心得5か条」

斉木さん自身、はじめは医師から疎まれていましたが、薬だけでなく病理学の知識を深め、薬局でも多くの経験を積み、医師とのコミュニケーションを重ねた結果、医師のほうから薬のアドバイスを求めてくるようになったといいます。

 

「医師本人が調剤室を訪れることはほとんどないため、現場の薬剤師は医師と直接会う機会はほとんどありません。だから私は、薬局長を目指しました。薬局長になれば、病院の事務局長と意見交換できるようになり、ある程度の権限もできてきます。やがて医師とも対等に渡り合えるようになっていきます」

 

*医師との付き合い方、薬剤師心得5か条
1 薬剤師は医師と同じ立場の医療人であると認識すること
2 常に薬の知識やスキルを高め医師に頼られる存在を目指す
3 医師に気後れせず、卑屈な態度をとらず、自信を持って行動を
4 コミュニケーション能力を高め、相手を尊重する気持ちを持つ
5 患者のために医師と連携して医療の質を高める志を持つ

薬局長になれば医師と仲良くなれる?

プライドの高い医師に対して意見をいうときば、「この処方は間違っています」と、いきなり否定するのではなく、「前回と処方が違うようですが、〇〇錠ではありませんか?」などと、相手を気づかい信頼を得られるよう、接し方を工夫することも大切です。
「医師に有益な情報の提供を続けていけば、医療のパートナーとして認めてもらえるようになります。
病院の事務局長を味方につけるというのも賢い手段です。事務側は、病院の経営状況を把握しなければならないため、薬の在庫管理や在庫量の状況を知る必要があります。
在庫管理を把握するということは、あの医師は特定の薬ばかり使うとか、薬を出しすぎなど問題点が見つかることがあります。
私は新人時代、薬の適正な在庫量をきっちりすることで、まずは自分の上司からの信頼を得ました。そして在庫管理がしっかりできていれば、その情報は事務局長を経て病院側に伝わり、医師たちにも感謝されるわけです。こういった誠実な勤務態度の積み重ねで、分野を超えて信頼されるようになっていきます」

 

薬局長にキャリアアップすると、医師との接点が出てきます。専門的な薬の知識のほかに、病理学を学んでおけば、よりレベルの高い話ができるようにもなります。

 

薬のことだけでなく、音楽や文学、スポーツなど趣味の幅を広げておけば、医師ともプライベートな話で盛り上がって一気に距離が縮まります。

 

ただし、馴れ合いの関係にはならず、間違っていると思うことには、ハッキリと意見を言うことが大切です。医師との関係性を構築すれば、疑義照会しても嫌な顔はされなくなり、医師のほうから意見を求められる存在になれることでしょう。

 

医師から信頼される薬剤師になることで、自分で薬局を経営するという新たな目標が見えてくるかもしれません」

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顧問薬剤師 斉木和成さん

1978年東邦大学薬学部を卒業。西新井病院(梅田分院)に5年勤務し、薬局長に就任。
天龍堂漢方薬局勤務後、日本初の大型ドラッグストア1号店『マツモトキヨシ上野店』の企画、創業の責任者を担う。その後、川崎幸病院、慶應義塾大学病院付属「慶友病院」の薬局長、東京大学病院の薬剤師主任を務めるなど、分業薬局を創設して日本の医薬分業と薬剤師の働き方の幅を率先して広げてきた。1994年には埼玉県浦和市に、自営の県内初の医療モールを創業し、経営に携わる。現在は若手育成などに従事している。
現在は顧問薬剤師として若手育成や薬局運営相談、執筆などを手掛ける。著書に『薬剤師の新・幸福論 薬剤師に捧げる成功する処世術!』(幻冬舎ルネッサンス新書、アマゾン電子書籍で販売)がある。

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