薬剤師のスキルアップ 公開日:2021.09.16 薬剤師のスキルアップ

かかりつけ薬剤師の役割とは?指導料や算定要件も詳しく解説 文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

高齢化が進む昨今において、地域医療のサポート体制や医療費削減が課題となっています。そうしたなか、期待が高まるのが「かかりつけ薬剤師」の役割です。2020年度の診療報酬改定により、かかりつけ薬剤師に関わる診療報酬点数がアップしたことからも、その期待の度合いが伺えるでしょう。ますます高齢化が進むことが懸念されている現在、地域全体で高齢者を支えるためにも、かかりつけ薬剤師の役割は大きいものです。今回は、かかりつけ薬剤師になるための条件、算定要件などについて詳しくお伝えします。

1. かかりつけ薬剤師の役割とは?

かかりつけ薬剤師の役割は、担当患者さんが服用している薬などのさまざまな情報を持続的・一元的に把握し、24時間体制で患者さんからの薬の相談に乗ったり治療のサポートを行ったりすることです。

かかりつけでなくても、薬剤師は複数の医療機関から薬を処方されている患者さんに対して、薬の相互作用などについて注意深くチェックします。調剤時のみならず、市販薬や健康食品などとの飲み合わせも確認しなければなりません。

かかりつけ薬剤師になると、患者さんの服用歴をさらに把握しやすくなり、さまざまなケースで対応しやすくなります。例えば、患者さんの中には、体調が悪くなったので病院を受診したいものの、都合がつかずとりあえず市販薬で様子を見たいという人もいるでしょう。市販薬を服用する場合でも、かかりつけ薬剤師に相談することで、安心して選択できるようになります。

深夜に発熱して病院受診ができない場合や誤って重複服用してしまった時など、時間を問わず相談できる、患者さんにとって頼りになる存在です。かかりつけ薬剤師は担当する患者さんの服用歴を一元的に管理しながら、普段の生活で困ったことが起こった時に気軽に相談できる医療従事者としての役割を担います。

 
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2. .かかりつけ薬剤師として薬学管理料を算定するための施設基準

かかりつけ薬剤師として「かかりつけ薬剤師包括管理料」や「かかりつけ薬剤師指導料」などの薬学管理料を算定するためは、まず施設基準をクリアし、地方厚生局長等に届け出る必要があります。施設基準は、以下の4つの要件をすべて満たす保険薬剤師が配置されていることです。

 

施設基準の要件①薬剤師の勤務経験

薬剤師の勤務経験に関する要件は3つあります。

 

<薬剤師の勤務経験に関する要件>
1.保険薬剤師として薬局勤務経験年数
3年以上であることが条件ですが、保健医療機関の薬剤師として勤務経験が1年以上ある場合は1年を上限として計上できます。
2.勤務している薬局での勤務時間が週32時間以上
ただし、育児などの時短勤務が適応されている場合には、週24時間以上かつ週4日以上である場合も含まれます。
3.勤務している薬局の在籍期間が継続して1年以上であること

 

上記全てをクリアした場合のみ、勤務経験の要件を満たします。

 

施設基準の要件②認定薬剤師などの資格取得

薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度などの研修認定を取得していることも、かかりつけ薬剤師の要件に含まれます。薬剤師認定制度認証機構が認証しているプロバイダーは、日本薬剤師会研修センターをはじめとした生涯研修認定制度:Gに分類される25のプロバイダーと、日本在宅薬学会など特定領域認定制度:Pに分類される6のプロバイダーがあります。かかりつけ薬剤師を目指すのであれば、いずれかのプロバイダーで研修認定を受けましょう。

 
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施設基準の要件③地域医療への参画

「医療に係る地域医療活動の取組に参加していること」も要件となります。厚生労働省保険局医療課が公表している「 疑義解釈資料の送付について(その3)」によると、地域医療への参画とは、地域包括ケアシステムを構築するための活動や、地域住民とのつながりがあり、顔が見える関係が築けるような活動をすることを示しています。

具体的には、地域ケア会議など多職種が連携して定期的かつ継続的に行われている医療・介護に関する会議や、地域の行政機関や医療介護関係団体などが主催する住民への研修会などへの主体的、継続的な参加があげられています。

 

施設基準の要件④患者さんのプライバシーへの配慮

4点目は2020年度診療報酬改定で新設された要件です。「患者との会話のやりとりが他の患者に聞こえないようパーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること」が施設基準に加わりました。

かかりつけ薬剤師として服薬指導を行う場合は、プライバシーを守りながら対応できるスペースを確保しなければなりません。

 

3. かかりつけ薬剤師が算定できる指導料と包括管理料

かかりつけ薬剤師として薬学管理料を算定するための施設基準を満たすと、「かかりつけ薬剤師指導料」もしくは「かかりつけ薬剤師包括管理料」を算定できます。それぞれの保険点数を見ていきましょう。

 

3-1. かかりつけ薬剤師指導料

かかりつけ薬剤師指導料」とは、要件を満たした保険薬剤師が患者さんの同意を得て必要な指導等を行った場合に、処方せん受付1回につき算定できます。かかりつけ薬剤師指導料は2020年度の診療報酬改定後、76点に変更され、以前より3点アップしています。

 

3-2. かかりつけ薬剤師包括管理料

かかりつけ薬剤師包括管理料」は、医療機関で地域包括診療加算もしくは認知症地域包括診療加算を算定されている患者さんのかかりつけ薬剤師として、患者さんから同意を得たうえで処方せん受付1回につき所定点数を算定できます。「かかりつけ薬剤師包括管理料」は、2020年度の診療報酬改定後291点に変更され、以前より10点アップしています。

 
▶2020年度診療報酬改定をおさらいする

4. かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の算定要件のポイント

「かかりつけ薬剤師指導料」と「かかりつけ薬剤師包括管理料」の算定要件を見てみましょう。「かかりつけ薬剤師包括管理料」は地域包括診療加算もしくは認知症地域包括診療加算を算定している患者さんに限定されますが、その他の算定要件は共通しています。

 

4-1.一元的で継続的な服薬管理・服薬指導

かかりつけ薬剤師は保険医と連携して患者さんの服薬状況を一元的・継続的に把握することになります。そのため、患者さんは複数の調剤薬局それぞれでかかりつけ薬剤師を持つことはできません。かかりつけ薬剤師の重複を防止するためにも、お薬手帳などにかかりつけ薬剤師の氏名や勤務先について記載するよう定められています。

また、すべての服用薬を管理するため、処方薬や市販薬、サプリメントなどの服用歴についても聞き取り、薬歴やお薬手帳に記録。加えて、自宅にある残薬整理を促す「ブラウンバッグ運動」についても周知することが求められています。

 

4-2.同意書を取得する

かかりつけ薬剤師に関する指導料を算定するためには、必ず対応する薬剤師本人が、患者さんから同意書を取得しなければなりません

かかりつけ薬剤師を持つメリットや費用などを説明後、取得した同意書は薬局で保管し、薬歴にも記載します。また、育児などにより週の勤務時間が32時間に満たない場合は、勤務時間が通常より短いことを説明する必要があります。

 
▶かかりつけ薬剤師の同意取得時の説明事項を詳しく見る
 

なお、同意書を取得した当日は算定ができないため、次回の処方せん受付時以降に算定しましょう。

 

 

4-3. かかりつけ薬剤師が対応できない場合の対処法

前述した通り、原則はかかりつけ薬剤師が対応することになりますが、不在時などやむを得ない場合は、他の薬剤師が服薬指導を行います。その際は「かかりつけ薬剤師指導料」の代わりに「薬剤服用歴管理指導料」を算定します。

また、24時間相談に応じる体制をとるため、開局時間外の連絡先や勤務表などを渡すことになっています。勤務時間外や深夜などかかりつけ薬剤師が対応できない時間帯は、他の薬剤師が対応する旨を伝えることで、かかりつけ薬剤師以外の薬剤師が勤務時間以外の時間帯に対応可能になります。

 

 

4-4. 加算など算定における注意点

「麻薬管理指導加算」「重複投薬・相互作用等防止加算」「特定薬剤管理指導加算1」「特定薬剤管理指導加算2」及び「乳幼児服薬指導加算」については、通常通り加算できます。

「薬剤服用歴管理指導料」・「かかりつけ薬剤師指導料」・「かかりつけ薬剤師包括管理料」は同時に算定することができない薬学管理料です。服薬指導を行った場合は該当するいずれかの1つを算定することになります。

 

4-5. その他の算定要件

薬剤師としての通常業務ともいえますが、「かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さん以外の患者への服薬指導や、地域住民からの相談に対しても丁寧に対応した上で、必要に応じて保険医療機関へ受診勧奨を行うよう努めること」も算定要件に含まれています。

 
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5. かかりつけ薬剤師として患者さんを担当するためには

かかりつけ薬剤師となれば、かかりつけ薬剤師指導料を算定する患者さんには約80~230円、かかりつけ薬剤師包括診療管理料を算定する患者さんには約290~870円の医療費を負担してもらうことになります。

かかりつけ薬剤師は、この負担額に見合った医療を提供することが求められるでしょう。普段の服薬指導に加え、よりプライベートに踏み込んだ指導を行うことで、生活習慣や患者さんの価値観にさらに寄り添った服薬サポートができます。

丁寧なサポートを行うためには、処方薬だけでなく市販薬やサプリメントなど幅広い薬の知識を深めることに加え、患者さんが気軽に相談できるような人柄であることが大切です。どんなことでも気軽に話せる相手になることで、些細な体調の変化に気がついたり、生活習慣を詳細に把握できたりしてアドヒアランス向上につながるでしょう。かかりつけ薬剤師は今以上に身近な存在になるよう努力が必要です。

6. かかりつけ薬剤師はコミュニケーション能力を磨くことも大切

薬剤師は日々医療に関するあらゆる知識を蓄積し、患者さんに還元するように求められます。さらに、患者さんと良好な関係を築くためのコミュニケーション能力を身につけることも大切です。豊富な知識やスキルに加え、信頼できる人柄を心がけ、患者さんが健康に関するすべてを任せたくなるかかりつけ薬剤師を目指しましょう。

※本記事は下記の参考URLを参考に2021年5月時点の情報をまとめたものです。最新の情報は 厚生労働省のサイトをご参照ください。


執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。

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