医療

多剤服用対策を地域展開~病院内から外来、在宅へ

薬+読 編集部からのコメント

厚労省は診療所や薬局、介護施設などが連携した高齢者のポリファーマシー(多剤服用)対策を推進するために、2022年度に複数地域を対象にモデル事業を開始します。これまで医療機関や地域の単位で実施していく重要性や課題は認識されていたものの、取り組み事例は希少でした。医療機関での運用と同様、病院や薬局が連携した地域の取り組みでも国が作成した業務手順書を活用し、対策を進める上での課題を抽出していきます。

厚労省がモデル事業

厚生労働省は、診療所や薬局、介護施設などが連携した高齢者のポリファーマシー(多剤服用)対策を推進するため、今年度に複数地域を対象にモデル事業を開始する。大規模な医療機関を対象としたモデル事業の第1弾では、院内での対策チーム設置に加え、処方見直しや減薬などの効果が見られた。医療機関での運用と同様、病院や薬局が連携した地域の取り組みでも国が作成した業務手順書を活用し、対策を進める上での課題を抽出する。ポリファーマシー対策が院内から地域へと広がり、2023年度以降には全国の各地域が取り組みに着手できるよう準備を進めていく。

 

ポリファーマシーをめぐっては、医療機関や地域の単位で実施していく重要性や課題は認識されているものの、取り組み事例は少ない。厚労省は19年に国として初めて高齢者の特徴に配慮した薬物療法を実践するための基本的な留意事項をまとめた「高齢者の医薬品適正使用の指針」を策定。

 

さらに昨年3月には、ポリファーマシー対策にどう着手していいか分からない医療機関に対し、指針の内容から実践へと促すための取り組みを分かりやすく記載した業務手順書を作成した。

 

昨年度に実施した医療機関を対象としたモデル事業では、ポリファーマシー対策のチーム体制整備に業務手順書が役立ったとの成果が報告されている。処方見直しや減薬を評価する診療報酬の算定件数が増加する病院も確認されたという。

 

今年度は、ポリファーマシー対策を院内から医師や薬剤師の連携のもと、地域へと広げるための準備を進める。約856万円の予算を計上し、医師会や薬剤師会が連携してポリファーマシー対策に取り組む地域を対象に業務手順書の有用性を検証するモデル事業を実施する。

 

各地域から提出された企画書の募集を終え、21日には企画書の提出を行った各事業者がプレゼンテーションを行った。高齢者医薬品適正使用推進事業の企画評価委員会が提出者から複数地域を選び、契約候補者の採択手続きを進めている。正式に契約がまとまれば選定地域で業務手順書を活用したポリファーマシー対策事業を開始する。

 

病院と地域では、ポリファーマシー対策の課題に違いがあるのが現状で、厚労省も「病院でのポリファーマシー対策の導入を促進するための業務手順書がそのまま地域に適用できるか検討が必要」との考えを示す。

 

例えば、連携体制の確保については、病院の場合は院内での連携になるため、関係職種への周知やチーム設置などによる連携体制構築が比較的容易だ。

 

しかし、地域の場合は複数の病院、診療所、薬局、介護施設などにまたがる連携が必要となるため、連携体制の構築が比較的複雑になりやすい。

 

処方見直しの方法も、病院では主治医などへの確認・相談で対応できても、地域の場合は見直しが必要と考えられる薬剤が受け付けた処方箋に含まれない場合、トレーシングレポートでの対応となり、処方変更から継続の検討、決定までに時間を要する。

 

こうした状況を踏まえ、地域を対象とするモデル事業では、病院向けの業務手順書から不足する内容や課題などを明らかにし、業務手順書に追記・修正する内容があれば23年度に改訂を行う。成功事例も集積することでポリファーマシー対策が未着手となっている地域の取り組みを促し、全国に広げていく方針だ。

 

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出典:薬事日報

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