薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2026.07.28 薬剤師のためのお役立ちコラム

アメリカで薬剤師になるには?日本との違いや年収について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

アメリカで薬剤師になるには、現地の薬学教育課程を修了する、FPGEC認定を取得するといった方法があります。また、アメリカの薬剤師は処方権があるなど、日本の薬剤師と異なる役割を担っており、その年収も非常に高い水準です。本記事では、アメリカで薬剤師になる方法や、処方権の有無といったアメリカと日本の薬剤師の違いをお伝えするとともに、アメリカで専門薬剤師資格を取得する方法、年収の相場などについて解説します。

1.アメリカと日本の薬剤師の違いとは?

アメリカと日本では、薬剤師に任されている業務や役割が異なります。その理由の一つとして挙げられるのが、医療機関へのアクセスのしやすさです。アメリカの人口密度は日本の約10分の1で、近くの病院まで車で数時間かかる場所に住んでいる人が非常に多いといわれています。
 
一方で、アメリカの全人口の93%は自宅から8km圏内に薬局があるとされ、薬局の利便性は病院と比較してとても高くなっています。そのため、アメリカの薬局薬剤師は、地域住民にとって健康や病気の相談ができる最も身近な医療従事者となっているのが現状です。また、アメリカの病院薬剤師は地位が高く、医師の委任を受けると処方を書くことができます。
 
参考:令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)|厚生労働省
 
ここでは、アメリカと日本における薬剤師の主な違いについて紹介します。

 

1-1.病院薬剤師の地位が高く、依存型処方権が認められている

アメリカの病院薬剤師は、医師から委任を受けると、病院内のルールに沿って処方を書くことができます。そのため、病院薬剤師は、薬剤を選択し、投与量を決定することに加え、薬物治療の評価やモニタリングまでを行います。
 
アメリカでは医師と病院薬剤師の役割が分担されており、それぞれの業務に集中することで、お互いの職能を十分に発揮できるようなシステムとなっています。
 
参考:薬学と私|公益社団法人日本薬学会

 

1-2.予防接種の注射を行える

アメリカでは、薬剤師が予防接種の注射を行えるため、薬局やドラッグストアなどで予防接種を受けている人がいます。インフルエンザの予防接種を受けた成人のうち、薬局やドラッグストアなどで予防接種を受けた人は30%以上に上ったという調査結果もあり、薬局薬剤師が大きな役割を果たしていることが分かります。
 
参考:米国薬剤師によるワクチン接種(在宅薬学 Vol.6 No.1 2019)|J-STAGE
 
日本の薬剤師の役割は予防接種の周知活動にとどまりますが、アメリカでは薬局やドラッグストアなどで調剤や買い物のついでに予防接種を勧めることもあり、薬剤師の医療活動が予防接種率の向上に貢献しています。予防接種の注射を薬剤師が行うことで、より簡便に感染対策を行える環境が整っているといえるでしょう。
 
参考:IDESコラム vol.28「“flu jab”を受けてきました」|厚生労働省
参考:IDESコラム vol.29「米国での身近なAMR対策」|厚生労働省

 

1-3.リフィル処方箋の普及度が異なる

アメリカでは、リフィル制度が1951年に導入されており、すでに長い歴史があります。そのため、アメリカは日本と比較して、医師や薬剤師、患者さんのリフィル制度への理解度や認知度が高くなっているといえます。
 
アメリカのリフィル制度は、対象患者さんに規制はなく、リフィル処方箋の有効期限もありません。ただし、一般的に2年を超えるリフィル調剤は行われておらず、一部禁止薬剤があることから、安全性と利便性のバランスを意識した制度といえるでしょう。
 
参考:中央社会保険医療協議会 総会(第503回)資料 4-2 個別事項(その8)医薬品の適切な使用の推進について|厚生労働省

 

 

1-4.薬局テクニシャンがいるため専門性の高い業務に集中できる

アメリカの薬局には、薬剤師以外に薬局テクニシャンという職種があります。処方箋どおりに薬を準備したり、混合したりするだけでなく、患者さんへの薬の説明も行います。薬局テクニシャンが基本的な業務を薬剤師に代わって行えるため、処方箋の受付枚数の多い薬局やドラッグストアであっても、薬剤師は一人~少数人程度しか在籍していない店舗も多いといわれています。
 
日本における薬剤師業務の多くを薬局テクニシャンが担うため、薬剤師はより専門的な知識が必要な業務を担当します。例えば、処方監査や特別な指導が必要な薬の服薬指導、散剤や液剤の調剤などは、薬剤師が行う業務です。アメリカでは、薬剤師が専門性をより発揮できる環境が整っています。
 
参考:令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)|厚生労働省

2.アメリカで薬剤師になるには?

日本の薬剤師免許を取得している人がアメリカで薬剤師になるには、アメリカの大学に入り直して薬剤師免許を取得する方法や、日本の薬剤師免許を活用してFPGEC認定を取得する方法があります。ここでは、それぞれの方法について解説します。

 

2-1.アメリカの薬剤師免許を取得する

アメリカで薬剤師免許を取得する方法には、主に二つのパターンがあり、いずれも大学院教育であるPharm.Dプログラムを修了する必要があります。
 
最短でアメリカの薬剤師免許を取得する方法として、6年制のPharm.Dプログラムを修了して薬剤師国家試験に合格する方法が挙げられます。最初の2年間は一般教育が行われ、残りの4年間はPharm.Dプログラムで薬剤師に必要な専門的な知識や技術を学びます。
 
もう一つは、主に大学の学士課程修了者(4年制)を対象にした4年制のPharm.Dプログラムを修了する方法です。大学入学から薬剤師国家試験の受験資格を得るまで8年間も必要となりますが、必須科目の単位が取得できている場合に、学士課程を卒業せずにPharm.Dプログラムへの入学を認めている大学もあります。
 
どちらの教育課程も、Pharm.Dプログラム終了後、薬剤師国家試験に合格すると薬剤師免許を取得できます。
 
参考:令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)|厚生労働省

 

2-2.FPGEC認定を取得する

日本の薬剤師がアメリカで薬剤師として働く方法として、FPGEC認定を取得する方法があります。FPGEC認定とは「Foreign Pharmacy Graduate Examination Committee」のことで、アメリカ国外の薬剤師が修了した教育が、アメリカの薬学教育と同等であることを保証するものです。
 
FPGEC認定を取得するためには、「TOEFL iBT」と「FPGEE(Foreign Pharmacy Graduate Equivalency Examination)」で合格点を取ることが必要です。その後、州ごとに定められた要件を満たすことで、薬剤師免許を得られます。
 
参考:FPGEC|Foreign Pharmacy Certification|NABP

 

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3.アメリカで専門薬剤師になるには?

アメリカにも日本と同様に専門薬剤師資格があります。臨床薬剤師としての最初のキャリアパスで、患者さんのケアに直接関わるためには必須の資格となっています。
 
専門薬剤師を取得するためには、レジデントプログラムと呼ばれる臨床研修を修了しなければなりません。薬剤師資格を取得後、1年目研修(PGY1)を修了すると薬物療法の専門薬剤師の受験資格、専門分野ごとに分かれている2年目研修(PGY2)を修了すると各分野の専門薬剤師の受験資格が得られます。施設によっては、PGY1とPGY2が一体となったプログラムもあります。
 
レジデントプログラムは、臨床現場で働くための準備期間となることに加え、就職時に有利になりやすく、将来のキャリアプランが明確になるといったメリットがあり、アメリカでは薬学部卒業生の多くがレジデントプログラムを希望しています。
 
参考:令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)|厚生労働省

4.アメリカの薬剤師の年収はいくら?

米国労働統計局のデータによると、アメリカにおける薬剤師の年収の中央値は137,480ドルです(2024年5月時点)。1ドル160円で換算すると、日本円では約2,200万円になります。
 
また、薬剤師が働く主な職場ごとの年収の中央値は以下のとおりです。

 

職場 年収(USD) 日本円換算
(1ドル160円)
外来医療サービス
(Ambulatory healthcare services)
152,980ドル 2,447万6,800円
病院
(Hospitals)
149,240ドル 2,387万8,400円
総合スーパー
(General merchandise retailers)
145,210ドル 2,323万3,600円
薬局・医薬品販売店
(Pharmacies and drug retailers)
131,640ドル 2,106万2,400円

参考:Pharmacists : Occupational Outlook Handbook|U.S. Bureau of Labor Statistics

 

アメリカの場合、新卒薬剤師も平均年収は100,000ドルを超えるとされています。また、5,000~20,000ドルの契約金を受け取る学生も多いとされ、日本と比較して年収の水準が高いことが分かります。
 
参考:令和6年度薬剤師臨床研修の効果的な実施のための調査検討事業報告書(株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所)|厚生労働省

 

5.アメリカで薬剤師になるには入念な準備が不可欠

アメリカで薬剤師になるには、現地で薬学教育課程を修了する、日本の薬剤師資格を生かしてFPGEC認定を取得するといった方法があります。それぞれの制度の違いを理解して、自身に合ったルートを選ぶことで、アメリカで薬剤師としてのキャリアを築けるでしょう。アメリカで薬剤師として働きたい場合は、英語力を高めるとともに、日本の薬剤師との役割の違いも踏まえてスキルを身に付ける必要があるため、計画的に準備することが大切です。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。