薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.06.27 薬剤師のスキルアップ

プライマリ・ケア認定薬剤師とは?資格の取得・更新方法や試験について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

プライマリ・ケア認定薬剤師になるには、集合研修や見学実習を受講して研修単位を取得した上で、認定試験に合格する必要があります。本記事では、プライマリ・ケア認定薬剤師の概要や仕事内容をお伝えするとともに、申請要件や研修、見学実習などについて解説します。加えて、資格の更新方法についてもお伝えします。

1.プライマリ・ケア認定薬剤師とは?

プライマリ・ケア認定薬剤師とは、日本プライマリ・ケア連合学会が実施する認定制度です。地域を基盤とするプライマリ・ケアについて、一定以上の知識や技能、態度を修得した薬剤師を認定します。
 
プライマリ・ケア認定薬剤師の認定者は、日本プライマリ・ケア連合学会のホームページで地域ごとに検索できます。
 
参考:家庭医療従事者を探す|日本プライマリ・ケア連合学会

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2.プライマリ・ケア認定薬剤師の仕事内容

プライマリ・ケア認定薬剤師の主な仕事のひとつは、多職種と連携・協働して地域医療に貢献することです。プライマリ・ケアとは、地域住民の健康福祉に関するあらゆる問題を総合的に解決するための活動を指しています。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師制度について|日本プライマリ・ケア連合学会
 
日本の地域医療は、高齢社会や労働人口の減少によって、限られた医療資源を有効活用することが求められており、薬剤師は医療機関や薬局、介護施設などのスタッフと連携して、地域医療の担い手として活躍することが期待されています。

3.プライマリ・ケア認定薬剤師になるには

プライマリ・ケア認定薬剤師になるには、研修や講義の受講などの申請要件を満たした上で、試験に合格しなければなりません。ここでは、プライマリ・ケア認定薬剤師になるための申請要件や研修のほか、認定試験の合格率や難易度に関する情報についてお伝えします。

 

3-1.申請要件

プライマリ・ケア認定薬剤師の申請要件は以下のとおりです。

 

資格 日本国の薬剤師資格を有すること
研修 最初の研修を受けてから4年以内に50単位以上を修得すること
● 日本プライマリ・ケア連合学会主催の研修会と、日本プライマリ・ケア連合学会関連の指定講座の単位が合計30単位以上
● 薬剤師認定制度認証機構の認証を受けた薬剤師認定制度の研修のうち、日本プライマリ・ケア連合学会が指定した講演、講義、シンポジウム、ワークショップ、e-ラーニングなどの研修受講で得た単位は20単位まで
● 日本プライマリ・ケア連合学会主催のe-ラーニングと本会が指定したe-ラーニングは合計15単位まで

参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱|日本プライマリ・ケア連合学会

 

プライマリ・ケア認定薬剤師の申請要件は、薬剤師資格と研修単位のみとなっています。学会発表や論文投稿、その他の認定薬剤師資格取得などの要件は含まれていないため、比較的取得を目指しやすい認定資格といえるでしょう。
 
ただし、受講する研修には細かな規定があり、しっかりと把握しておく必要があります。研修については、次項で詳しく見ていきましょう。

 

3-2.研修

プライマリ・ケア認定薬剤師の申請において、研修として認められるものは以下の6つです。

 

1. 日本プライマリ・ケア連合学会が主催する認定薬剤師研修講座
2. 日本プライマリ・ケア連合学会の学術学会での指定された講演、シンポジウム、ワークショップなど
3. 日本プライマリ・ケア連合学会が主催する医療研修セミナー、e-ラーニングなど
4. 日本プライマリ・ケア連合学会の地方会、支部会、関連研究会などの講演・研修で、日本プライマリ・ケア連合学会が指定したもの
5. 日本プライマリ・ケア連合学会の認定医、専門医、指導医による外来診療および訪問診療の見学実習など
6. 薬剤師認定制度認証機構の認証を受けた生涯研修認定制度、特定領域認定制度および専門薬剤師認定制度の研修のうち、日本プライマリ・ケア連合学会が指定した講演、講義、シンポジウム、ワークショップ、e-ラーニングなど

参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱|日本プライマリ・ケア連合学会

 

前述のとおり、e-ラーニングは合計15単位、「6」は20単位が取得上限です。また、「5.日本プライマリ・ケア連合学会の認定医、専門医、指導医による外来診療および訪問診療の見学実習など」は、原則半日1単位として計8単位が必須とされています。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱 細則|日本プライマリ・ケア連合学会

 
さらに、研修には以下の必須領域があります。

 

A プライマリ・ケアに関する知識とプライマリ・ケア認定薬剤師の役割
B コミュニケーションスキル
C 服薬指導・支援
D プライマリ・ケアにおける薬物治療(EBM、ガイドライン、緩和ケアなどを含む)
E 生活習慣指導
F メンタルケア(自殺予防も含む)
G 在宅ケア
H セルフメディケーションに必要なOTC・健康食品・漢方薬などの知識と活用
I 地域活動(薬物乱用防止、学校薬剤師、健康教育などを含む)
J 地域連携・チーム医療

参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱 細則|日本プライマリ・ケア連合学会

 

新規申請の場合は各2単位、計20単位を取得しなければなりません。

 

3-3.見学実習

前述のとおり、プライマリ・ケア認定薬剤師の新規申請では、見学実習で8単位を取得する必要があります。見学実習は、臨床現場での実習によって集合研修やe‐ラーニングでは得られない知識や経験を身に付け、特定領域の認定制度として専門性を高めることを目的としています。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 Q&A(2021年6月15日版)|日本プライマリ・ケア連合学会

 
見学実習を行うための主な要件は、以下のとおりです。

 

● 申し込みの時点で研修単位を30単位取得済みであること
● 期日までに必須領域20単位を含む50単位以上を取得見込みであること
● 認定試験を受験予定の薬剤師であること

 

見学実習を受けるためには、要件を満たした上で、申込書と取得単位記入表を日本プライマリ・ケア連合学会が指定するメールアドレスへ提出しなければなりません。指定のメールアドレス以外は受け付けされないため注意しましょう。また、要件を満たしていない場合は、申し込みが無効となります。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 2025年度見学実習受入先の情報提供申込書|日本プライマリ・ケア連合学会

 

3-4.申請の手続き

研修単位の要件を満たしたら、認定試験を受験するための手続きを行います。申請には以下の書類が必要です。

 

1. 新規認定審査申請書
2. 研修認定単位台帳
3. 必須領域受講報告書
4. 必須見学実習修了(見込み)報告書
5. 認定試験用履歴書
6. 薬剤師免許証コピー
7. 審査料の払込金受領証の写し
8. 認定申請チェックリスト

 

審査料は15,000円です。登録料10,000円は、認定試験に合格後に振り込みます。ただし、日本プライマリ・ケア連合学会に入会している場合(年会費:10,000円)は、審査料が10,000円となります。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 2025年度の新規申請手引き|日本プライマリ・ケア連合学会

 

3-5.合格率と難易度

日本プライマリ・ケア連合学会のホームページで、プライマリ・ケア認定薬剤師の認定試験の合格率や受験者数は公表されていませんが、2012年から2019年までの合格者数は「プライマリ・ケア認定薬剤師 Q&A(2021年6月15日版)」に記載されています。

 

合格者数
2012年 16人
2013年 56人
2014年 36人
2015年 36人
2016年 42人
2017年 23人
2018年 29人
2019年 36人

 

上記のデータから、毎年おおむね30人前後の薬剤師が合格していたことが分かります
 
認定試験については、これまで記述式問題3題、選択式問題10題が出題されています。試験問題の例題が日本プライマリ・ケア連合学会のホームページで公表されており、「同等かそれ以上の難易度の出題」があると考えて受験準備をするよう推奨されているため、認定試験の受験前に確認しましょう。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 2025年度の新規申請手引き|日本プライマリ・ケア連合学会
参考:認定試験事前提示例題|日本プライマリ・ケア連合学会

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4.プライマリ・ケア認定薬剤師の更新方法

プライマリ・ケア認定薬剤師は3年ごとに更新する必要があります。更新要件や事例報告、更新申請の手続きについて解説します。

 

4-1.更新要件

プライマリ・ケア認定薬剤師の更新要件は、以下のとおりです。

 

研修 認定もしくは前回更新から更新申請までの3年間で毎年5単位以上、合計30単位以上
● 日本プライマリ・ケア連合学会主催の研修会と日本プライマリ・ケア連合学会関連の指定講座の単位が合計20単位以上
● 薬剤師認定制度認証機構の認証を受けた薬剤師認定制度の研修のうち、日本プライマリ・ケア連合学会が指定した講演、講義、シンポジウム、ワークショップ、e-ラーニングなどの研修受講で得た単位は10単位まで
● 日本プライマリ・ケア連合学会主催のe-ラーニングと本会が指定したe-ラーニングは合計15単位まで
事例報告 5事例
● 同一患者の事例は避けること
● 同一事例を複数の薬剤師で受け持った場合、他の薬剤師の事例報告をそのまま用いないこと
● 指定の書式で提出すること
● すでに印刷されている事例の印刷物は事例報告として認められない

参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱|日本プライマリ・ケア連合学会
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師要綱 細則|日本プライマリ・ケア連合学会

 

4-2.事例報告

事例報告は、珍しい事例である必要はなく、日常的な事例を提出することが推奨されています。記述量はA4用紙2ページが基準となり、1ページ半以上の記述量が必要です。事例を選んだ理由や実践した具体的な内容、プライマリ・ケアに関する考察を記載します。
 
記載する領域にも指定があり、研修における必須領域に準ずるものを選択しなければなりません。

 

A プライマリ・ケアに関する知識とプライマリ・ケア認定薬剤師の役割
B コミュニケーションスキル
C 服薬指導・支援
D プライマリ・ケアにおける薬物治療(EBM、ガイドライン、緩和ケアなどを含む)
E 生活習慣指導
F メンタルケア(自殺予防も含む)
G 在宅ケア
H セルフメディケーションに必要なOTC・健康食品・漢方薬などの知識と活用
I 地域活動(薬物乱用防止、学校薬剤師、健康教育などを含む)
J 地域連携・チーム医療

 

上記のうち、D、E、G、Jの4領域の中から2領域を選択します。残り3事例については、AからJの中から3つを選び、合わせて5事例について報告書を作成します。事例報告書に不備などがある場合は、修正・再提出を求められることがあります。
 
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 2025年度の更新申請手引き|日本プライマリ・ケア連合学会
参考:プライマリ・ケア認定薬剤師更新時の事例報告(活動報告を含む)に関する説明(2022年12月19日改訂版)|日本プライマリ・ケア連合学会

 

4-3.更新申請の手続き

更新申請では、以下の書類を準備します。

 

1. 認定更新審査申請書
2. 研修認定単位台帳
3. 更新必須領域受講報告書
4. 詳細事例報告書
5. 薬剤師免許証コピー
6. 審査料の払込金受領証の写し
7. 認定更新申請チェックリスト

参考:プライマリ・ケア認定薬剤師 2025年度の更新申請手引き|日本プライマリ・ケア連合学会

 

審査料は、日本プライマリ・ケア連合学会の非会員が15,000円、本会員が10,000円です。

5.プライマリ・ケア認定薬剤師を目指そう

これからの薬剤師には、高齢社会における地域医療に貢献するために、多職種と連携・協働して高い専門性を発揮することが求められます。プライマリ・ケア認定薬剤師の資格取得によって得られた知識や経験は、臨床現場で役立つでしょう。
 
今後、プライマリ・ケアの知識やスキルを持つ薬剤師が活躍する場は、さらに広がることが予想されます。地域医療に携わる機会の多い薬剤師は、資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

患者さんへの対応から
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。