患者サポート体制充実加算は、患者さんや家族と医療従事者の対話を促進するための体制整備を評価したものです。本記事では、患者サポート体制充実加算の算定要件や点数、施設基準について解説するとともに、疑義解釈に基づく算定時の注意点についてお伝えします。
1.患者サポート体制充実加算とは?
患者サポート体制充実加算とは、医科診療報酬の入院基本料等加算のひとつで、医療従事者と患者さんとの対話を促進するため、患者さんや家族への支援体制を評価しています。
患者サポート体制充実加算を算定するためには、相談窓口の設置や医療系資格を有する専任担当者の配置などが求められます。
2.患者サポート体制充実加算の算定要件と点数
患者サポート体制加算の算定要件と点数は、以下のとおりです。
点数 | 70点 |
---|---|
対象患者 | 施設基準の届出を行っている医療機関に入院している患者さん |
算定タイミング | 入院期間中1回限り、入院初日に算定 |
設備等の体制 | ● 相談支援窓口の設置 ● 医療従事者と患者さんや家族が良好な関係を築くための支援体制の整備 |
支援内容 | 患者さんや家族などからの以下のような質問や相談について、懇切丁寧に対応すること ● 疾病に関する医学的な質問 ● 生活上および入院上の不安などに関する相談 |
参考:医科診療報酬点数表|厚生労働省
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
3.患者サポート体制充実加算の施設基準
患者サポート体制充実加算の施設基準には、さまざまなものがあります。詳しくお伝えします。

3-1.相談窓口の設置
患者サポート体制充実加算を算定する医療機関は、患者さんや家族などの相談に対応するための窓口を設置しなければなりません。
また、公益財団法人日本医療機能評価機構など、第三者からの評価を受けていることが望ましいとされています。
参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-2.相談窓口への人員配置
相談窓口には、常時1名以上、以下のような専任の医療有資格者などを医療機関の標榜時間内に配置しなければなりません。
● 看護師
● 薬剤師
● 社会福祉士 など
患者さんや家族などからの相談内容に応じて、適切な職種が対応できる体制を取っている必要があります。
また、配置される担当者は、医療関係団体などが行う医療対話推進者の養成を目的とした研修を修了していることが望ましいとされています。
なお、相談窓口は、A234「医療安全対策加算」に規定する窓口と兼用であっても差し支えありません。
参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-3.支援体制
患者さんや家族などへの支援体制とは、以下のような体制を指しています。
(イ)各部門で患者さんの支援体制に係る担当者を配置していること
(ウ)患者さんの支援に係る取り組みについて、評価などを行うカンファレンスを週1回程度開催しており、必要に応じて各部門の担当者などが参加していること
(エ)各部門で、患者さんや家族などから相談を受けた場合について、対応体制や報告体制をマニュアル化し、職員に遵守させていること
(オ)相談窓口や各部門で対応した患者さんや家族などについて、以下に関する実績を記録していること(A234「医療安全対策加算」を算定している場合は、医療安全管理対策委員会と十分に連携し、その状況を記録していること)
● 相談件数
● 相談内容
● 相談後の取り扱い
● その他、患者さんを支援した実績
(カ)定期的に患者支援体制に関する取り組みについて見直していること
参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
3-4.掲示
施設内の見やすい場所に、以下について掲示していることとされています。
● 患者さんや家族などに対する支援のため実施している取り組み
また、患者さんの入院時には、文書などを活用して相談窓口の説明を行っている必要があります。
参考:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4.患者サポート体制充実加算を算定するときの注意点
患者サポート体制充実加算に関する疑義解釈には、算定できないケースや算定するための詳細な要件が記載されています。ここでは、疑義解釈をもとに、患者サポート体制充実加算を算定するときの注意点についてお伝えします。

4-1.算定できないケース
患者サポート体制充実加算が算定できないケースとして、以下が挙げられます。
● 相談窓口に医師や看護師等の専任の職員を配置せずに、単に事務員などが担当者へ取り次いでいる場合
参考:医科診療報酬点数表に関する事項 |厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その14)平成25年6月14日|厚生労働省
患者サポート体制充実加算を算定する場合は、担当者へ取り次ぐための窓口とならないよう専任の担当者を配置しなければなりません。
4-2.専任担当者の要件
「疑義解釈資料の送付について(その2)平成24年4月20日」によると、専任の担当者については「患者などからの疾病に関する医学的な質問ならびに生活上および入院上の不安などに関する相談について、適切に対応できる職種」が対象であり、必ずしも医療有資格者である必要はなく、雇用形態についても問わないとされています。ただし、医療資格を取得していない人については、以下のすべてを満たす必要があります。
● 患者さんの相談を受けた件数が20件以上
● 患者サポートに関する院内外での活動 (研修会への参加や研修会での講師の経験など)
● 要件を満たす研修の修了
なお、現職以外の経験であっても所定の要件を満たす場合は、患者サポート体制充実加算の届出が可能です。また、非常勤職員が担当となる場合、指揮命令権が当該医療機関にない請負方式などは、施設基準を満たしません。
参考:疑義解釈資料の送付について(その7)平成28年9月15日|厚生労働省
4-3.具体的な相談に対応できる体制
相談窓口では、さまざまな相談や質問に対応しなければなりません。治療方針や薬物治療、自宅での過ごし方、転院への不安など、相談や質問の内容に応じて適切に対応できるように体制を整えておく必要があります。
そのため、専任の医師や看護師、薬剤師、社会福祉士、その他の医療有資格者などが常時配置されており、さまざまな相談に対応できる体制が必要とされています。
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)平成24年4月20日|厚生労働省
4-4.窓口担当者の兼任に関する要件
以下の加算に関する窓口担当者の兼任は、要件を満たせば認められるとされています。
● 入退院支援加算
上記に関わる担当者がそれぞれの加算について業務を行っている時間以外は、患者サポート体制充実加算の窓口担当者と兼務しても差し支えありません。ただし、患者サポート体制充実加算に係る担当者がその他の窓口業務を行っている間は、別の担当者を窓口に配置する必要があります。
参考:疑義解釈資料の送付について(その2)平成24年4月20日|厚生労働省
参考:疑義解釈資料の送付について(その8)平成24年8月9日|厚生労働省
参考:入院(その7)入退院支援・栄養管理体制|厚生労働省
また、がん診療連携拠点病院の相談支援センターにおける「国立がん研究センターによる研修を修了した専任の相談支援に携わる者」は、相談支援センターに係る業務を行っている時間以外は、患者サポート体制充実加算の窓口担当者と兼務しても差し支えないとされています。ただし、この場合も、相談支援センターの業務を行っている間は、別の担当者を窓口に配置しなければなりません。
なお、相談支援センターの以下の業務について、患者サポート体制充実加算の業務と共に行う場合に限り、「がん診療連携拠点病院の相談支援センター」と「患者サポート体制充実加算に係る相談窓口」を同一場所に設置しても差し支えないとされています。
(イ)診療機能や入院・外来の待ち時間、医療従事者の専門とする分野・経歴など、地域の医療機関や医療従事者に関する情報の収集と提供
(ウ)セカンドオピニオンが提示できる医師の紹介
(エ)がん患者さんの療養に関する相談
(オ)地域のがん医療について連携協力体制の事例に関する情報の収集と提供
(カ)アスベストによる肺がんや中皮腫に関する医療相談
(キ)HTLV-1関連疾患であるATLに関する医療相談
(ク)その他の相談支援に関すること
参考:疑義解釈資料の送付について(その8)平成24年8月9日|厚生労働省
4-5.医療資格のない担当者が修了する研修
「疑義解釈資料の送付について(その12)平成25年3月21日」によると、2013年(平成25年)4月1日以降において、医療有資格者以外の担当者が修了しなければならない研修は、 公益財団法人日本医療機能評価機構などが主催するもので、以下の要件を満たすこととされています。
(イ)研修期間は通算して20時間以上または3日程度のもの
また、患者サポート体制充実加算の届出を行う時点で1年以上の医療機関の勤務経験があり、勤務する医療機関で各診療部門の現場を見学し、診療状況などについてスタッフと情報の共有を行っていることとされています。
参考:医療対話推進者の業務指針及び養成のための研修プログラム作成指針|平成24年度厚生労働科学特別研究事業

5.患者サポート体制充実加算を算定しよう
患者サポート体制充実加算は、患者さんやその家族が安心して治療をするために体制整備を行うことを評価した加算です。施設基準を満たす場合や、医療安全対策加算2・入退院支援加算を算定している医療機関は、患者サポート体制充実加算の算定を目指してみてはいかがでしょうか。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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