薬剤師のスキルアップ 公開日:2026.06.24 薬剤師のスキルアップ

調剤物価対応料とは?算定要件・点数や物価上昇に対する薬局への支援について解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

調剤物価対応料は、物価上昇が続く社会情勢を踏まえて、薬局の経営を支えるために、2026年度調剤報酬改定で新設されました。エネルギー費や物流費、システム維持費などの固定費が上がる中、薬局が地域医療の担い手として安定的に貢献するためには、物価上昇への対応が不可欠です。本記事では、調剤物価対応料の点数・算定要件や新設された背景について解説するとともに、関連する支援制度や実務上のポイントについてもお伝えします。

1.調剤物価対応料とは?

調剤物価対応料とは、2026年度、2027年度の物価上昇に段階的に対応するために、調剤基本料などの算定にあわせて算定可能な加算として、2026年度調剤報酬改定で新設されたものです。
 
また、医科診療報酬や歯科診療報酬においても、調剤報酬と同様に「物価対応料(外来・在宅物価対応料、入院物価対応料)」「歯科外来物価対応料」「訪問看護物価対応料」が新設されています。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要 2.賃上げ・物価対応(物価対応)|厚生労働省

参考:個別改定項目について|厚生労働省

 

 

1-1.調剤物価対応料が新設された背景

調剤物価対応料が新設された背景には、物価上昇によるコストの増加によって薬局経営が圧迫され、地域医療の維持・向上が難しくなる可能性があることが挙げられるでしょう。
 
物価上昇の影響を抑えるためには、在宅対応や地域連携などの追加業務を行って売上を上げたり、固定費をなるべく抑えたりする方法がありますが、薬局で行える対策は限られていることから、地域医療を支えるために調剤物価対応料が新設されたといえます。
 
また、2025(令和7)年度の補正予算では、病院・診療所などに加えて薬局に対する支援も実施され、調剤物価対応料とあわせて物価高対策が講じられています。
 
参考:物価対応について(その1)|厚生労働省

参考:物価対応について(その2)|厚生労働省

参考:医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について|厚生労働省

 

1-2.調剤ベースアップ評価料との違い

調剤物価対応料と同じく2026年度調剤報酬改定で新設された調剤ベースアップ評価料は、薬局の薬剤師、事務職員などの賃上げを促進することを目的としています。
 
物価上昇への対応として新設された調剤物価対応料と調剤ベースアップ評価料はそれぞれ目的が異なるため、併算定が可能です。
 
ただし、調剤物価対応料はすべての薬局が対象となっているのに対して、調剤ベースアップ評価料は施設基準を満たした薬局が対象となります。調剤ベースアップ評価料を算定するには、賃金改善の取り組み状況の報告や施設基準に係る届出が必要です。

 

 

1-3.2027年6月に点数が改定

調剤物価対応料は、物価上昇への段階的な対応のため、2027年6月以降は改めて算定点数が改定される予定です。
 
なお、実際の経済・物価の動向が2026年時点の見通しから大きく変動した場合は、加減算を含めた調整を実施するとしています。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要 2.賃上げ・物価対応(物価対応)|厚生労働省

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2.調剤物価対応料の点数と算定要件

調剤物価対応料は、3カ月に1回に限り1点を算定します。2027年6月以降は、所定点数の100分の200に相当する点数を算定することになっており、2点になる予定です。
 
参考:調剤報酬点数表|厚生労働省
 
また、調剤物価対応料は、処方箋を受け付けた薬局が算定できます。施設基準は設けられておらず、届出は不要となっていることから、原則としてすべての薬局で算定可能です。
 
参考:調剤報酬点数表に関する事項|厚生労働省

3.調剤物価対応料の実務上のポイント

調剤物価対応料を算定する場合は、レセプトの「薬学管理料」欄に名称を記載することとされています。
 
参考:「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について|厚生労働省
 
続いて、調剤物価対応料の実務上のポイントについてお伝えします。

 

3-1.レセプト請求での注意点

調剤物価対応料は、3カ月に1回の算定であるため、算定月の管理が必要です。処方箋の受付ごとに、算定月であるかを確認しなければなりません。また、調剤基本料などに上乗せされるため、算定漏れにも注意しましょう。
 
さらに、2027年6月には点数改定が行われる予定です。レセコンの設定変更が必要になる可能性があるため、あらかじめ準備しておきましょう。

 

3-2.薬局経営への影響

調剤物価対応料は点数としては小さいものの、全薬局が対象となっており、届出も不要です。物価上昇に応じて点数引き上げも予定されており、薬局経営の底支えとして一定の効果が期待されます。
 
また、薬局の経営状況の調査結果で、点数の引き上げでは物価上昇に対応できないと判断される場合には、補正予算が組まれる可能性もあるでしょう。そのため、薬局の経営者は、経営状況を正確に把握しながら、経済対策の動向を定期的に確認し、変化に備えることが大切です。

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4.賃上げ・物価上昇に対する薬局への支援

2025(令和7)年度の補正予算により、医療機関や薬局に対する賃上げ・物価上昇への支援が行われています。主なポイントについて、以下で紹介します。

 

4-1.賃上げ・物価上昇に対する支援額

厚生労働省では、診療所等賃上げ支援事業と診療所等物価支援事業を実施しています。
 
参考:医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について|厚生労働省
 
薬局における1施設あたりのそれぞれの支援額は、以下のとおりです。

 

支援内容 支援額
~5店舗 6~19店舗 20店舗~
賃上げ支援 14.5万円 10.5万円 7.0万円
物価上昇支援 8.5万円 7.5万円 5.0万円
合計 23.0万円 18.0万円 12.0万円

参考:物価対応について(その2)|厚生労働省

 

1法人あたりの薬局数に応じて傾斜配分され、薬局は賃上げ支援・物価支援を最大で計23万円まで受けられます。

 

4-2.調剤物価対応料と賃上げ・物価上昇支援の違い

調剤物価対応料は、調剤報酬として継続的に支援を受けられ、2027年6月からはさらなる改定も予定されています。
 
一方、賃上げ・物価上昇支援は基本的に一時的な給付金として支給されるものです。薬局は調剤物価対応料を算定しつつ、賃上げ・物価上昇支援制度を活用することが可能です。
 
参考:医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について|厚生労働省

 

4-3.今後の見通し

今後の物価動向は予測が難しいため、2026年度の薬局の経営状況などについて調査が実施されることになっています。
 
実際の経済・物価の動向が見通しから大きく外れ、薬局の経営状況に支障が生じると判断される場合は、今後さらに必要な調整が行われる可能性があります。
 
参考:令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】|厚生労働省

5.薬局経営における主なコスト

賃上げ・物価上昇に対する薬局への支援が積極的に行われている理由としては、物価上昇や賃上げの実施によって、薬局経営が圧迫されていることが挙げられます。薬局の固定費である、エネルギー費や物流費、システム維持費、人件費などが上がると、薬局経営に大きな影響を与えます。そのため、経営者や薬剤師などが、薬局で発生するコストを把握しておくことは大切です。ここでは、薬局経営における主なコストについて紹介します。

 

5-1.エネルギー費

薬局では、調剤機器や空調、照明、薬品保管の温度管理など、日常的に多くの電力を使用します。調剤室や待合室も一定の快適性を維持しなければならないため、電気代やガス代が上がると、店舗規模に関わらず固定費が上昇します。
 
そのため、利益率の低い薬局ほど経営への影響が大きくなるでしょう。物価上昇の局面では、エネルギー費の増加が薬局経営を圧迫する要因の一つとなります。

 

5-2.物流費

医薬品には温度管理や品質保持が求められるため、一般的な物流よりもコストが高くなる傾向にあります。
 
卸業者から薬局への納品コストも、燃料費や人件費の上昇によって増加する可能性が高いため、物流費の高騰による薬局経営への影響は避けられないでしょう。

 

5-3.システム維持費

薬局では、レセコンや電子薬歴、在庫管理システム、オンライン資格確認など、複数のITシステムを運用している傾向にあります。こういったシステムの活用は、薬局運営の効率化が期待できる一方で、保守費用やクラウド利用料などが発生します。
 
こうしたシステムを構築する企業でも物価上昇によるコストの増加への対策や賃上げ対策が行われるため、料金が改定される場合があるでしょう。システム維持費は年々増加傾向にあり、薬局だけでなくさまざまな業種で固定費として経営を圧迫しやすい費用です。

 

5-4.人件費

薬局業務において薬剤師の専門性は不可欠なものであり、人件費の割合が比較的高い業種とされています。また、最低賃金の引き上げの影響もあり、事務職員の確保にもコストがかかる傾向にあります。
 
物価上昇の局面では、賃上げの必要性も高まりやすく、人件費は固定費として避けられないため、薬局経営に与えるインパクトは大きいでしょう。

6.薬局経営におけるコスト削減と必要な投資

薬局ではさまざまなコストが発生しますが、すべてを削減・節約すれば健全な経営ができるというわけではありません。物価上昇に対応するためには、コストの削減と必要な投資の両立が大切です。
 
コスト削減では、電気代の見直しや在庫管理の最適化、システム契約の整理など、固定費を抑える取り組みが求められます。一方で、在宅医療や地域連携などの業務の効率化につながる投資は、将来的な収益アップが期待できるため、積極的に行っていく必要があるでしょう。
 
短期的な節約だけに着目するのではなく、成長につながる分野へ戦略的に投資することで、物価上昇の局面であっても持続的な経営が可能になります。

7.調剤物価対応料や支援制度を正しく理解しよう

調剤物価対応料は、物価上昇によって薬局経営が圧迫される中、地域医療を安定的に維持するために導入されたものです。3カ月に1回の算定となりますが、原則として処方箋を受け付けたすべての薬局が算定できます。2027年6月に点数の引き上げが予定されているほか、今後の物価の動向によっては追加の支援が実施される可能性もあります。薬局は今一度経営状況の棚卸しを行い、固定費の削減・節約や必要な投資を行いながら、制度を適切に活用することが求められるでしょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。