血糖自己測定器OTC化を ~ 薬剤師の適切支援前提に 厚生労働科学特別研究事業研究班
厚生労働科学特別研究事業研究班(研究代表者=五十嵐中東京大学大学院薬学系研究科特任准教授)は、穿刺血を用いた血糖自己測定器(SMBG)のOTC化に関する調査研究結果を公表した。SMBGは糖尿病患者の自己管理だけでなく、糖尿病予備群の早期受診や生活習慣改善を促す可能性が示された一方、測定結果の解釈や受診勧奨のあり方が大きな課題と指摘。当面の導入対象を既診断糖尿病患者と糖尿病予備群とし、薬剤師による適切な支援や受診導線の整備を前提に制度設計を進めるべきと提言した。
穿刺血などの血液検体を用いた検査薬のOTC化をめぐっては、薬事審議会医療機器・体外診断薬部会が昨年に「現時点では時期尚早」と結論付けた経緯がある。政府は骨太方針に検査薬のスイッチOTC化に向けた方策検討を盛り込み、日本保険薬局協会(NPhA)も血糖自己測定検査薬の早期実現を求めている。
研究班は、低侵襲性の穿刺血などの血液検体を用いた検査薬のOTC化に向けた課題を整理するため、医師217人、薬剤師235人へのウェブ調査・ヒアリングと、生活者1114人を対象とした意識調査を実施した。
その結果、SMBGのOTC化について「有用」とする回答は、糖尿病患者において医師67.7%、薬剤師63.4%に達した。糖尿病予備群においても一定の意義(薬剤師59.6%、糖尿病専門医59.3%が肯定評価)が認められ、予防的介入の手段として期待される結果となった。
生活者調査では、SMBG使用経験者の使用目的として「糖尿病予防を目的とした血糖値の把握」が37.2%で最多となり、予防目的での利用ニーズが確認された。高値測定を経験した人のうち受診した割合は58.9%で、糖尿病群63.8%、糖尿病予備群58.8%、健康管理群40%だった。研究班は「SMBGが未受診者を医療機関につなぐ契機となる可能性を示した」と評価した。
一方、課題として高値を経験しながら受診しなかった人が41.1%に上り、自己判断による受診回避のリスクが定量的に確認された。医師へのヒアリングでは「問題は測定そのものではなく、結果の解釈とその後の行動判断にある」との指摘が相次いだ。薬剤師調査でも、「測定結果の解釈」が説明上の課題として挙がり、利用者への教育や情報提供の重要性が示された。
また、薬剤師から受診勧奨を受けた人のうち、実際に受診した割合は17.6%にとどまった。「どの医療機関を受診すれば良いか分からない」などの理由が多く、研究班は「明確な受診勧奨基準の整備や紹介先医療機関との連携体制の構築が不可欠」としている。
その上で、OTC化に向けた課題として、▽測定結果の理解を支援するリテラシー教育▽薬剤師による安全な運用▽受診勧奨基準と紹介ネットワーク整備▽医療機関との情報連携体制の構築▽マニュアルやチェックリストなど標準化ツールの整備▽継続利用を見据えた価格・アクセス設計――の6点を提示した。
ただ、健康管理目的の一般生活者まで対象を広げることには慎重姿勢を示した。低リスク層では誤情報や誤使用、乱用への懸念が強く、まずは既診断糖尿病患者と糖尿病予備群を中心に社会実装を進めるべきと結論付けた。
研究班は「SMBGのOTC化は単なる販売区分の変更ではなく、薬剤師、医師、メーカー、行政が連携して取り組む社会実装プロジェクトとして構築すべき」と提言している。
出典:薬事日報


薬+読 編集部からのコメント
厚生労働科学特別研究事業研究班が穿刺血を用いた血糖自己測定器のOTC化に関する調査研究結果を公表。測定結果の解釈や受診勧奨のあり方が課題と指摘しつつ、薬剤師による適切支援や受診導線の整備を前提に制度設計を進めるべきと提言しています。