訪日・在留外国人の増加に伴い、薬局でも英語で対応する機会が増えています。特に薬の使い方や副作用、アレルギーの有無などを正確に伝えることは、患者さんの健康を守る上で欠かせません。英語での服薬指導ができることは、今日の薬剤師にとって重要なスキルのひとつです。本記事では、薬局でよく使われる英単語や例文を、受付・問診・薬の説明といったシーン別に紹介します。さらに、服薬指導を英語で行うときのポイントや英語スキルを身に付ける方法について解説します。

1.服薬指導における英語スキルの重要性とは?
近年、日本を訪れる外国人観光客や、日本に住む外国人の数は増加傾向にあります。
日本政府観光局の資料によると、2024年の訪日外客数は約3,687万人であり、前年比で47.1%もの増加となりました。また、出入国在留管理庁のデータでは、2024年末時点の在留外国人数は約376万9千人で、前年より10.5%増えています。
そうした背景から、薬局の現場でも外国人患者さんと接する機会が増え、英語での対応が求められる場面が多くなっています。言語の違いは、患者さんが薬を安全に使用する上で大きなハードルとなります。だからこそ、適切な服薬指導を行い、医療の安全性を支えるために、薬剤師にとって英語力は欠かせないスキルになりつつあるといえるでしょう。
特に、アレルギーの有無や副作用歴の確認、薬の正しい使い方や注意点の説明は、患者さんの健康に直結します。英語での対応スキルを身に付けることは、より多くの患者さんに貢献することにつながります。
参考:外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル|厚生労働省
参考:年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移|日本政府観光局
参考:令和6年末現在における在留外国人数について|出入国在留管理庁
2.薬局の服薬指導で使える英語の例文
ここからは、薬局の現場で使える英単語や例文を、シーン別に紹介します。英語に自信がない方でも対応しやすいように、基本的な単語とそのまま使える短いフレーズを中心に集めました。受付での挨拶から症状の確認、薬の説明まで、実際の流れに沿って解説します。
2-1. 受付時に使う英単語・例文
まずは、患者さんを迎え入れる受付での対応です。受付時に言語の違いに気づいた場合は、患者さんがどの程度日本語を理解できるかどうか、どの言語での対応を希望されるかを確認しましょう。処方箋の受け取りや問診票の記入依頼など、受付時に使える英単語・例文は以下のとおりです。
● First visit:初診
● Medicine notebook / Medication record book:お薬手帳
● Pharmacist:薬剤師
(こんにちは、私は薬剤師です。)
● How can I help you today?
(何かご用はございますか?)
● Is this your first visit to our pharmacy?
(この薬局のご利用は初めてですか?)
● Let me take your prescription.
(処方箋をお預かりします)
● Do you have your medicine notebook?
(お薬手帳をお持ちですか?)
● Your prescription will be ready in about 15 minutes.
(お薬は15分ほどでご用意できます。)
● Please wait here until your name is called.
(お名前が呼ばれるまで、こちらでお待ちください。)
2-2. 問診票の記入や症状の確認時に使う英単語・例文
処方された薬が患者さんの状態に適しているかを確認したり、適切な服薬指導を行ったりするためには、問診による事前の情報収集が欠かせません。特に、アレルギー歴や副作用歴、妊娠・授乳の有無、現在の症状などは、薬を安全に使う上で見落とせないポイントです。
英語でのやり取りが必要な場面でも、こうした情報をきちんと聞き取れるよう、あらかじめ代表的な英単語や例文を押さえておきましょう。
● Allergies:アレルギー
● Pregnant:妊娠している
● Breastfeeding:授乳中
● Disease:病気
(現在、治療中の病気はありますか?)
● Are you taking any medicines?
(現在、飲まれている薬はありますか?)
● Are you allergic to any foods or medicines? / Do you have any food or medication allergies?
(食べ物や薬のアレルギーはありますか?)
● Are you pregnant or breastfeeding?
(現在、妊娠中または授乳中ですか?)
● What symptoms do you have?
(どのような症状がありますか?)
● Where is your pain? Please point to where it hurts.
(どこが痛みますか? 指で指してください。)
● Would you prefer generic drugs?
(ジェネリック医薬品を希望されますか?)
2-3. 薬の説明時に使う英単語・例文
服薬指導では、薬の効果や用法・用量、注意点などを正確に伝える必要があります。患者さんが安全かつ効果的に薬を使えるように、説明に役立つ基本的な英語表現を覚えておきましょう。
● Apply:塗る、貼る
● Tablet:錠剤
● Capsule:カプセル
● Ointment:軟膏
● Eye drops:目薬
● Poultice / Patch:湿布薬
● Meals:食事 (After meals:食後 / Before meals:食前)
● It lowers fever.
(熱を下げます。)
● It relieves pain.
(痛みを和らげます。)
● It relieves cough.
(咳を抑えます。)
<用法・用量>
● Please take one tablet three times a day after meals.
(1回1錠を1日3回、食後に服用してください。)
● This is an ointment. Please apply to the affected area.
(これは塗り薬です。患部に塗ってください。)
● Put 1 drop in your eye(s) three times a day.
(1日3回、1滴ずつ点眼してください。)
● Shake the bottle well before use.
(使用前に容器をよく振ってください。)
<注意点など>
● If you miss a dose, take it as soon as possible.
(飲み忘れた場合は、気が付いた時にできるだけ早く服用してください。)
● This medicine may make you sleepy. Please do not drive a car.
(この薬は眠気を引き起こすことがあります。車の運転はしないでください。)
● Store in a cool, dry place.
(湿気を避け、涼しい場所で保管してください。)
● If you have any questions, please let us know.
(ご質問があれば、遠慮なくお尋ねください。)
参考:外国人患者対応のための英語コミュニケーションマニュアル|くすりの適正使用協議会
参考:外国語応対のためのツール集について|石川県薬剤師会
3.服薬指導を英語で行うときのポイント
英語での服薬指導をスムーズに行うためには、事前の準備と伝え方の工夫が欠かせません。ここからは、服薬指導を英語で行うときのポイントを解説します。
3-1. あらかじめ対応方法を整理しておく
外国人患者さんの中には、高血圧などの慢性疾患で定期的に通う方だけでなく、風邪や怪我といった急性症状で、突然来局される方もいます。外国人患者さんがいつ来局しても対応できるよう、薬局内での対応方法をあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
具体的な準備として、受付から薬のお渡しまで、場面ごとの流れをまとめた簡単なマニュアルを作っておくのがおすすめです。例えば、アレルギー歴や妊娠の有無など、安全に関わる必須の確認事項と、それに対応する基本的なフレーズを記載しておけば、聞き漏らしを減らせます。
また「頭痛 (headache)」や「咳 (cough)」といったよくみられる症状や、副作用に関する単語リストを作成し、すぐに見える場所に貼っておくのもよい方法です。
3-2. 日本語と同様に分かりやすい言葉遣いを意識する
英語で話す際も、日本語での服薬指導と同じように、専門用語を避け、分かりやすい言葉で説明することが大切です。
特に、薬の効果などは専門用語で説明するよりも、その薬が「何をするのか」を簡単な言葉で伝える方が、患者さんには分かりやすく伝わります。例えば、「鎮痛剤です(This is an analgesic.)」と伝える代わりに、「この薬は痛みを和らげます(This medicine relieves pain.)」のように、薬の働きを直接的に説明する、といった配慮をするとよいでしょう。
また、ひとつの表現だけでなく、別の言葉で補足するのもよい方法です。用法を伝えるときに「1日3回」を 「three times a day」 と伝えた後に、「in the morning, at noon, and at night(朝、昼、晩に)」と付け加えることで、患者さんの誤解を防ぎ、より確実に情報を伝えられるでしょう。
4.服薬指導で使える英語スキルを身に付ける方法
服薬指導で使える英語スキルを身に付けることに対して、ハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、よく使う英単語や例文をあらかじめ覚えておくことで、スムーズなやり取りが可能になります。また、必要に応じてツールを活用すれば、英語に自信がない場合でも対応しやすくなるでしょう。
ここからは、英語に苦手意識のある薬剤師の方に向けて、現場で役立つ英語スキルの身に付け方を紹介します。
4-1. よく使う英単語や例文は暗記しておく
英語での服薬指導に対応するために、薬局の現場でよく使う英単語や例文をあらかじめ覚えておきましょう。いざという時に頭の中で文章を組み立てるのではなく、覚えたフレーズが自然と口から出てくるようになれば、落ち着いて対応できます。
まずは挨拶や簡単な質問など、短くて覚えやすい表現から始めましょう。慣れてきたら、薬の飲み方を説明する文など、少し長めの文章に挑戦していくのがおすすめです。
覚える際は「受付」「問診」「薬の説明」など場面ごとにフレーズを分類すると効率的です。通勤時間や休憩時間に単語カードやアプリで復習するだけでも、少しずつ身に付いていくでしょう。
大切なのは、覚えた表現を声に出して練習することです。ひとりで繰り返し口にしたり、同僚とロールプレイ形式で練習したりすることで、実践でも自信を持って話せるようになります。
4-2. 必要に応じてツールを活用する
英語でのコミュニケーションに不安がある場合は、言葉だけで対応しようとせず、ツールを積極的に活用しましょう。
例えば、患者さんの話す英語が早くて聞き取れなかったり、複雑な症状の説明を受けたりする場面では、翻訳アプリや指差しシートが役立ちます。指差しシートとは、来局理由や症状など薬局からの質問に対し、患者さんが指を差して回答できるコミュニケーションツールです。言葉がうまく通じないときでも、お互いに指を差すだけで簡単な意思疎通ができます。
さらに、薬の説明では薬の効果や使い方、用法・用量などをイラストで示すことで、理解しやすさが向上します。
こうしたツールを薬局で作成するのが難しい場合は、自治体や薬剤師会などが提供しているものを活用するとよいでしょう。
参考:外国語応対のためのツール集について|石川県薬剤師会
🔽 薬剤師の勉強方法について解説した記事はこちら
5. 外国人患者さんと円滑にコミュニケーションを取るために、英語スキルを身に付けよう
訪日・在留外国人の増加により、薬剤師が英語で服薬指導を行う場面が増えています。特に、アレルギーの有無や副作用歴の確認、薬の正しい使い方や注意点の説明は、患者さんの健康に直結するため、英語での対応スキルは重要です。
受付・問診・薬の説明など、薬局でよく使う英単語や例文をあらかじめ覚えておくことで、スムーズなやり取りが可能になります。また、事前に対応方法を整理するとともに、言翻訳アプリや指差しシート、イラストなどのツールも活用することで、安心して服薬指導が行えるでしょう。
まずは、覚えやすい英語表現から始めて、外国人患者さんにも安心して相談してもらえる環境作りを進めていきましょう。
🔽 服薬指導について解説した記事はこちら

執筆/篠原奨規
2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。
英文監修/阿部あすか
翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。『オーベン×ネーベン』医療ニュース編集部の一員として記事を執筆している。
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