薬剤師のためのお役立ちコラム 公開日:2025.12.10 薬剤師のためのお役立ちコラム

薬剤師の大変なこととは?つらいと感じたときの対処法・やりがいなども紹介

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

薬剤師の大変なことは、責任の重さや業務の忙しさ、人間関係の難しさなど多岐にわたります。日々の業務に追われる中で、仕事がつらいと感じる瞬間もあるでしょう。一方で、薬剤師の仕事は、やりがいや達成感を得られる瞬間も少なくありません。仕事が大変と感じた場合には、改めて魅力に目を向けることも重要です。本記事では、薬剤師が直面する大変なことの例、仕事がつらいと感じたときの対処法などを紹介するとともに、薬剤師のやりがいについてお伝えします。

1.薬剤師の大変なこととは?

薬剤師の仕事が大変だと感じる瞬間はさまざまです。詳しく見ていきましょう。

 

1-1.ミスが許されない仕事であり、責任が重い

薬剤師は、人の命に関わる仕事のため、わずかなミスも許されません。処方の確認や服薬指導には高度な知識と集中力が求められ、常に一定の緊張感の中で業務をこなします。
 
患者さんの安全を守る責任は非常に重く、精神的な負担も大きい職業のため、大変だと感じることが多いでしょう。

 

1-2.薬歴入力や事務作業のために残業しなければならないことがある

薬剤師は、薬歴を書くために残業しなければいけない場合があります。特に、次々に患者さんがやって来る薬局では、日中の業務をこなしながら薬歴を書くタイミングを見つけるのが難しいものです。
 
落ち着いた時間帯にまとめて書こうとして、やむを得ずに昼休みを使ったり、残業したりすることもあるでしょう。薬歴が溜まりがちな場合は、スタッフ同士で協力し、時間を確保する工夫が求められます

 

1-3.少人数の職場も多く、人間関係が悪いと働くのがつらい

薬局内の限られたスペースでは、スタッフ同士が肩を並べて調剤や鑑査を行うことがよくあります。狭い局内で長時間一緒に過ごしていれば、ちょっとしたことが目につき、不満に感じてしまうこともあるものです。
 
加えて、仕事が立て込んでくれば、指導や注意としての「仕事が遅い」「気遣いが足りない」「雑談が多すぎる」などの発言も、ついトゲのある言い方になってしまい、トラブルに発展することもあるかもしれません。
 
同じような発言でも、人間関係が良好なら「指導」だと素直に受け止められますが、そうでない場合には人間関係の悪化につながるケースもあります。日頃からコミュニケーションを密にし、お互いの信頼関係を高めながら、柔軟に対応できるスキルを身に付けることが求められます。

 

1-4.学び続けることが求められる

薬剤師は、新しい医療情報や新薬の知識を身に付ける必要があるため、学び続ける姿勢が欠かせません。法改正やガイドラインの更新も頻繁にあり、専門性を保つには継続的な勉強が必須でしょう。
 
患者さんに信頼される存在であるためにも、自己研鑽を怠らず、知識と技術を磨き続けることが求められます。

 

1-5.医師をはじめとする他職種とのコミュニケーションに苦労する

薬剤師は医師や看護師など他職種と連携する機会が多く、立場の違いから意思疎通に苦労することがあります。専門用語も飛び交うため、それぞれの職種が使用する医療用語を理解することも求められます。
 
意思疎通や情報共有が不十分だと処方提案が受け入れられにくく、業務の効率や患者ケアに影響が出てしまうこともあるでしょう。円滑な連携には、相手の視点を理解しながら丁寧な対話を重ねる姿勢が求められます

 

1-6.仕事が単調になりやすい面がある

職場にもよりますが、薬剤師の業務は調剤・鑑査・服薬指導などルーティン化された作業が多く、慣れてくると単調に感じやすい面があります。クリエイティブな仕事というよりは、ミスなく業務を行うことが求められる職種であるため、確認作業を繰り返す中でやりがいを見失ってしまうこともあり得るでしょう。
 
患者さんとの対話や学びを通じて、自身の成長や役割の幅を広げるよう意識をしたり、薬局内の掲示といった創意工夫が求められる業務を探したりするなど、やりがいや目的を持って仕事をすることが大切です。

 

 

1-7.待ち時間の長さへのクレーム対応に困る

「いつまで待たせるの? 早くして!」という患者さんからの待ち時間の長さに対するクレーム。こんな声を聞くのも薬剤師の職場ではよくあることかもしれません。
 
処方薬は1種類だけでも、受付番号が10番目ともなれば患者さんの待ち時間が長引きます。来局してから5~10分で患者さんがイライラしている様子が感じられることもありますが、だからといって優先してしまえば、その患者さんよりも先にお待ちいただいていた患者さんからの二次クレームが起きてしまう可能性があります。
 
このような待ち時間へのクレームに対しては、患者さんの話を丁寧に聞き、お待たせしてしまう理由をしっかりお話しするしかありません。よくあることとはいえ、度重なるクレーム対応に大変さを感じることもあるでしょう。

 

 

1-8.薬の説明を信じてもらえないことがある

「実はコレステロールの薬、怖くて飲んでないのよ。週刊誌に書いてあったけど、この薬飲むと身体に悪いんでしょ?」というように、テレビや週刊誌の情報を鵜呑みにして、薬剤師の言葉を信じない患者さんは意外といます。
 
薬剤師が正しい情報を伝えてもなかなか信じてもらえず、反対に「勉強不足だ」と注意を受けるなど、大変な思いをすることもあるでしょう。こうした患者さんを説得するのに、疲弊してしまった経験がある人もいるでしょう。

 

 

1-9.アドヒアランスが向上しない患者さんへの対応が難しい

どんなに説明してもアドヒアランスが向上しない患者さんへの説得はとても大変です。筆者は、糖尿病の患者さんのケースで、高血糖のリスクを何度説明しても「今のままで不自由ないし、これで目が見えなくなっても仕方ないよね」と、まったく取り合ってもらえないことがありました。
 
ときに薬剤師には、患者さんの考えを180度変えるほどの説明力や説得力が求められます。医学的知識だけでなく、相手に納得してもらえるように伝える技術を高めておくことも大切です。

 

 

1-10.相談対応に時間がかかってしまう

地域の患者さんから薬や健康に関する相談をしてもらえるのはうれしいことですが、中には時間がかかってしまう対応もあります。相談や悩みに立て続けに対応する場合、待ち時間の長さが他の患者さんからのクレームにつながってしまう可能性があるでしょう。
 
そのため、他の患者さんの様子を気にしながら丁寧に対応する必要があり、薬剤師が少ない職場では大変に感じることもあります。

 

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2.薬剤師の仕事がつらいと感じたときの対処法

続いて、薬剤師の仕事がつらいと感じたときの対処法について見ていきましょう。

 

2-1.仕事内容を見直して原因の解決を目指す

薬剤師の仕事がつらいと感じたときは、まず業務内容を振り返り、負担の原因を明確にすることが大切です。調剤・薬歴・患者対応など、どの業務を負担に感じているかを整理し、改善できる部分を探ります。
 
業務の分担や環境の見直しを通じて、働き方を調整することで、負担軽減とモチベーションの回復につなげられる可能性があるでしょう。

 

2-2.上司や同僚に相談する

仕事の悩みやストレスを感じたときは、ひとりで抱え込まずに上司や同僚に相談することも方法のひとつです。経験のある人に話すことで、具体的な解決策や新たな視点が得られることもあるでしょう。
 
信頼できる相手に気持ちを共有するだけでも、心の負担が軽くなり、前向きに業務に向き合えるきっかけになります。

 

2-3.スキルアップに励んで経験を積む

薬剤師としての成長には、日々の業務に加えてスキルアップへの意欲が欠かせません。知識不足や経験不足で仕事がつらいと感じるのであれば、研修や資格取得を通じて知識を広げてみましょう。
 
より専門的な対応ができるようになり、自信につながるかもしれません。積極的に経験を積むことで視野が広がり、職場での役割や、感じられるやりがいも深まっていくでしょう。

 

2-4.休みを取ってリフレッシュする

仕事のプレッシャーやストレスで心身の疲れを感じたときは、思い切って休みを取り、リフレッシュする時間を確保することも大切です。仕事から一時的に離れることで、ストレスが軽減され、気持ちに余裕が生まれることもあります。
 
趣味や自然に触れてリラックスできる時間を持つと、前向きな気力が回復し、再び業務に集中しやすくなるでしょう。自分を労わる時間を確保することも、働く上では欠かせません。

 

2-5.異動や転職を検討する

現在の職場での悩みが解消されない場合は、異動や転職を視野に入れるのもひとつの選択肢です。環境を変えることで、人間関係や業務内容が改善され、気持ちに余裕が生まれることもあります。
 
自分の適性や希望を見直し、より働きやすい職場を探すことで、薬剤師としてのキャリアを前向きに築いていくことができるでしょう。

3.薬剤師のやりがいとは?

薬剤師は大変なことが多く、高度な知識・能力が求められる仕事です。しかし、やりがいを感じることも少なくありません。例えば、医師以上に薬剤師を頼って相談してくれる患者さんがいると、自分の存在価値を再認識できることもあります。世間話の延長から「実は先生には言ってなかったんだけど……」と相談を受けることもあり、自身の知識やスキルが患者さんの健康に役立っていることを実感できるでしょう。
 
アドヒアランス向上につながる深い情報を得て、患者さんの健康維持・向上に貢献できる機会を得られたときは、薬剤師としてのやりがいを感じる瞬間です。薬剤師の仕事は大変な部分もありますが、患者さんとの信頼関係を築きながら、大変さを上回るやりがいも見出せます。患者さんに寄り添い、地域に貢献する実感を得られることこそが、薬剤師の魅力といえるのかもしれません。

 

4.薬剤師の仕事の現実と向き合うために

薬剤師は責任の重い専門職であり、業務の忙しさや人間関係に悩むことも少なくありません。つらさを感じたときは、業務内容の見直しや相談、スキルアップなどで改善を図ることが大切です。一方で、薬剤師は患者さんの健康を支えることへのやりがいが大きく、自身の成長を実感できる機会の多い職業です。薬剤師の仕事がつらくなったら、やりがいや達成感を得られる瞬間を思い出して、仕事の活力に変えていきましょう。

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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。病院・薬局で幅広い診療科を経験。現在は2児の子育てをしながら、Webライターとして活動中。専門的な資料や情報をわかりやすくかみ砕き、現場のリアルに寄り添う言葉で伝えることを大切にしている。同じ薬剤師として、日々の悩みやモヤモヤに共感しながら、少しでも役立つヒントや気づきを届けられるように試行錯誤中。