薬剤師のスキルアップ 公開日:2023.10.25 薬剤師のスキルアップ

感染制御認定薬剤師とは?資格取得までの条件や流れ、メリットを解説

文:秋谷侭美(薬剤師ライター)

新型コロナウイルス感染症の流行により、改めて、感染症対策の重要性が広く認知されるようになりました。薬剤師も院内感染を防止するために、感染症対策に関する正しい知識と技術を持つことが求められています。そうした中、感染制御認定薬剤師は、院内の感染対策を考える上で頼りになる存在となるでしょう。今回は、感染制御認定薬剤師の取得条件や取得までの流れについて解説するとともに、メリットや資格取得に向いている人についてお伝えします。

1.感染制御認定薬剤師ってどんな資格?

感染制御認定薬剤師とは、一般社団法人日本病院薬剤師会が運営する認定制度の一つで、感染制御について高度な知識と技術、実践力を持つ薬剤師を認定する制度です。感染制御認定薬剤師は、感染症の治療に関する薬物療法について十分な知識を持っていることに加え、院内感染症を防ぐために必要な知識や技術を習得していることが求められます。
 
感染制御認定薬剤師はPIC(Board Certified Pharmacist in Infection Control)、感染制御認定薬剤師の上位資格である感染制御専門薬剤師についてはICPS(Board Certified Infection Control Pharmacy Specialist )と呼称すると定められています。

 
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2.感染制御認定薬剤師を取得する要件・条件

感染制御認定薬剤師の資格を取得するためには、さまざまな条件をクリアする必要があります。また、新規・更新で条件が異なるため、感染制御認定薬剤師の取得を目指すのであれば事前にチェックしておきましょう。

 

2-1.資格取得の条件

まずは、新規で資格取得をする場合の条件を見ていきましょう。

 

● 日本国の薬剤師免許を有し、薬剤師として優れた見識を備えていること。

● 薬剤師としての実務経験を3年以上有し、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、日本薬剤師会または日本女性薬剤師会のいずれかの会員であればこれを満たす。

● 以下の学会のいずれかの会員であること。
 ● 日本医療薬学会
 ● 日本薬学会
 ● 日本臨床薬理学会
 ● 日本TDM学会
 ● ICD制度協議会に加盟している学会・研究会

● 日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。

● 申請時において、病院または診療所に勤務し、施設内において、感染制御活動(院内感染防止対策委員会、院内感染対策チーム、抗菌薬適正使用支援チーム(以下、委員会・チーム)の一員、委員会・チームと連携した活動、あるいは他施設の委員会・チームと連携した活動など)に3年以上、かつ、申請時に引き続いて1年以上従事していること(所属長の証明が必要)。

● 施設内において、感染制御に貢献した業務内容および薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を20例以上報告できること。

● 日本病院薬剤師会が認定する感染制御領域の講習会、および別に定める学会が主催する感染制御領域の講習会などを所定の単位(20時間、10単位)以上履修していること。ただし、日本病院薬剤師会主催の感染制御に関する講習会を1回以上受講していること。

● 病院長あるいは施設長等の推薦があること。

● 日本病院薬剤師会が行う感染制御認定薬剤師認定試験に合格していること。

 
感染制御認定薬剤師は、日本病院薬剤師会の会員や学会の会員になることに加え、実務で感染制御に関わっておく必要があります。
 
参照:感染制御専門薬剤師部門|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

2-2.資格の更新

続いて、資格更新時の条件について見ていきましょう。

 

● 認定期間中継続して、日本病院薬剤師会の会員であること。ただし、日本薬剤師会または日本女性薬剤師会のいずれかの会員であればこれを満たす。

● 更新申請時において、日病薬病院薬学認定薬剤師であること。ただし、日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であればこれを満たす。

● 更新申請時において、日本薬学会、日本医療薬学会、日本臨床薬理学会のいずれかの会員であり、かつ、日本TDM学会、ICD制度協議会に加盟している学会・研究会のいずれかの会員であること。

● 認定期間中、施設内において感染制御に関する専門的業務に従事していたことを証明できること。

● 更新申請までの5年間に、感染制御に関する講習単位50単位以上(特段の理由がない限り、毎年最低3単位以上)を取得すること。ただし、50単位のうち日本病院薬剤師会の感染制御に関する講習会あるいは厚生労働省委託の感染制御に関する講習会で12単位以上を取得すること。

● 更新申請までの5年間に、施設内において、感染制御に貢献した業務内容および薬剤師としての薬学的介入により実施した対策の内容を10例以上報告できること。

● 更新申請までの5年間に、関連する国際学会、全国レベルの学会あるいは日本病院薬剤師会ブロック学術大会において感染制御に関する学会発表が1回以上(共同発表者でも可)、または複数査読制のある国際的あるいは全国的な学会誌・学術雑誌に感染制御に関する学術論文が1編以上(共同著者でも可)あること。

 
新規と更新時の大きな違いは、学会発表または学術論文が必要である点です。継続的に感染制御に関わる業務を行っていることに加え、対外的な貢献が求められています。
 
参照:感染制御専門薬剤師部門|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

2-3.資格取得の難易度

2022年度感染制御認定薬剤師認定試験の合格者は151名でした。資格取得には感染症に関わるチームへの所属や症例報告などが求められており、条件に適した環境であることが必要です。そのため、取得難易度は高いと言えるでしょう。

 
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3.感染制御認定薬剤師を取得する方法や取得までの流れ

感染制御認定薬剤師を取得するには、認定試験に合格した上で、8つの書類を用紙する必要があります。ここからは、感染制御認定薬剤師の資格を取得するまでの流れを見ていきましょう。

 

3-1.ステップ1:認定試験の受験

認定試験は、認定申請時に条件を全て満たす人、または、前年度・前々年度に認定試験合格以外の認定申請条件を全て満たしていると認められた感染制御認定薬剤師暫定認定者が受験できます。
 
認定試験の日程や出題基準など関する事項については、日本病院薬剤師会のホームページで確認できます。2022年は10月に感染制御認定薬剤師の認定試験の受付案内が公開され、受験日時は12月11日(日)12時~14時でした。なお、2022年は受験日の約2カ月前に受付が開始されています。
 
試験の申し込みはウェブのみで、受験申し込みフォームから必要事項を入力し登録します。2022年は受験料の振込期限と受験申し込み期限が同日となっており、どちらか一方が期日内に完了していない場合、受験申し込みがキャンセルされます。受験申し込みが期限内に間に合わなかった場合、受験料の返金はされないため、余裕を持って申し込みをする必要があるでしょう。
 
また、試験問題の出題範囲や参考図書については、受験受付の案内に参照リンクが貼られているため、必ずチェックしましょう。2022年については以下より、出題基準と範囲が確認できます。
 
参照:令和 4 年度感染制御専門薬剤師試験 出題基準と範囲(PDF)|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

3-2.ステップ2:書類の準備

感染制御認定薬剤師の認定申請をするために必要な書類は以下の8点です。

 

1.オンライン申請フォームで認定申請者情報などを入力し印刷した用紙
2.感染制御活動に従事していることの証明書
3.講習会・教育セミナー等の取得単位
4.感染制御活動の記録
5.感染制御に貢献した業務内容の要約(20例)
6.所属施設長の推薦書
7.感染制御認定薬剤師 認定申請 書類チェックリスト
8.振替払込請求書兼受領証の写し貼付欄

 
上記の書類の中かには、認定試験の合格通知や薬剤師免許の写しなど、添付書類を必要とするものがあります。押印が必要な書類もあるため、漏れがないようにしっかりと確認しましょう。なお、感染制御認定薬剤師の認定申請に必要な書類については、「感染制御認定薬剤師の認定申請の受付について」からダウンロードできます。日本病院薬剤師会のお知らせにリンクが貼られているため、認定申請をする年度の通知を確認しましょう。
 
参照:令和4年度感染制御専門薬剤師の認定申請について|一般社団法人日本病院薬剤師会

 

3-3.ステップ3:書類の提出

必要書類や添付書類を用意したら、認定申請手数料を支払い、振替払込請求書兼受領証の写し貼付欄に貼ります。チェックリストを使って漏れがないかを確認し、日本病院薬剤師会事務局事業課宛てに郵送します。

4.感染制御認定薬剤師を取得するメリット

感染制御認定薬剤師は、医療現場で日々、感染症対策に携わるよう求められます。加えて、研修会や学会などに参加し、自己研鑽を継続する必要があるため、取得難易度の高い資格と言えます。そのため、感染制御認定薬剤師資格を取得することは、知識やスキルを証明するだけでなく、継続的に学び続ける姿勢があることの裏付けにもなるでしょう。
 
また、資格取得のために得た知識や技術を現場で生かせるのもメリットです。感染対策チームのメンバーとして、薬剤師の視点から感染症対策に貢献できるため、やりがいを感じることでしょう。

5.感染制御認定薬剤師の資格を活用できる場所

感染制御認定薬剤師は、主に院内の感染対策チームで活動します。感染症治療を行っている患者さんの治療計画に参画することはもちろん、院内感染の防止に努めることも重要な役割です。院内感染のリスクについては、新型コロナウイルス感染症の流行によって、改めて注目されるようになりました。
 
感染制御認定薬剤師は、感染対策チームの中心となって院内感染対策を周知する活動を行うという大切な役割があります。院内感染を防ぐためには、環境を整えることに加え、医療スタッフや患者さんが感染症の知識を十分に得ることが大切です。

 
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6.感染制御認定薬剤師取得に向いている人

感染制御認定薬剤師は、感染症対策に興味がある人や感染対策チームなどに所属している人は、資格取得に向いています。また、取得条件の中に、症例報告や学会発表などが含まれているため、感染症対策に何らかの形で関わっている必要があります。感染症に関する業務に携わっている人は、資格を取得しやすい環境にいると言えるでしょう。

7.感染制御認定薬剤師を取得するために

感染制御認定薬剤師は、さまざまな条件をクリアしなければならないため、取得難易度の高い資格です。ハードルの高い資格ではありますが、取得できれば感染症対策に関する高い知識や技術を持っている証明となるでしょう。感染症対策に興味がある人や、感染対策チームに所属する人は資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

 
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執筆/秋谷侭美(あきや・ままみ)

薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。