薬剤師のスキルアップ 公開日:2025.05.20 薬剤師のスキルアップ

生活習慣病管理料とは?(I)と(II)の違いや算定要件を分かりやすく解説

文:篠原奨規(薬剤師)

2024年度の診療報酬改定において、生活習慣病管理料には(I)と(II)の区分が設けられました。また、要件の見直しや点数の引き上げも実施されており、算定する際にはこれらの変更点を正しく理解しておく必要があるでしょう。本記事では、生活習慣病管理料について、算定要件や加算、施設基準、2024年度診療報酬改定における変更点、生活習慣病管理料(I)と(II)の違いなどを解説します。

1.生活習慣病管理料とは?

生活習慣病管理料とは、生活習慣病(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)の患者さんに対して、生活習慣の改善を含めた総合的な治療管理を行うことを評価する診療報酬です。
 
生活習慣病は、脳卒中や心筋梗塞といった循環器疾患のリスクを高める要因です。特に、心疾患は日本人の死因第2位、脳血管疾患は第4位となっており、患者さんの健康を維持するためには、生活習慣病の早期治療と生活習慣の見直しが欠かせません。
 
また、日本は超高齢社会に突入しており、医療費の増加が課題となっています。2022年の国民生活基礎調査によると、生活習慣病の3疾患(高血圧症・糖尿病・脂質異常症)が通院者数の上位を占めており、2019年から2022年にかけて通院者数が増加していることが明らかになっています。そのため、生活習慣病の重症化を防ぐことは、社会保障制度の維持にもつながるといえます。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:個別事項(その14) 生活習慣病対策|厚生労働省

 

1-1.2024年度診療報酬改定における変更点

生活習慣病管理料はこれまで1種類しかありませんでしたが、2024年度の診療報酬改定では、新たに生活習慣病管理料(II)が設けられました。これに伴い、従来の生活習慣病管理料は生活習慣病管理料(I)へと移行しています。
 
また、質の高い疾病管理を推進するために生活習慣病管理料(I)の要件が見直され、以下の変更が行われました。加えて、点数も引き上げられています。

 

● 療養計画書を簡素化するとともに、電子カルテ情報共有サービスを活用する場合、血液検査項目についての記載を不要とする。
● 診療ガイドラインなどを参考として疾病管理を行うことを要件とする。
● 少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止する。
● 歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士などの多職種と連携することを望ましい要件とする。
● 糖尿病患者に対して歯科受診を推奨することを要件とする。

参照:令和6年度診療報酬改定の概要【外来】|厚生労働省

 

1-2.生活習慣病管理料(I)と(II)の違い

生活習慣病管理料(I)と(II)は、診療報酬において包括されるものが異なります。
 
生活習慣病管理料(I)は、以下のような費用を包括する診療報酬であるため、検査などにかかる費用を別途算定することはできません

 

● 医学管理等
● 検査
● 注射
● 病理診断

 

一方で、生活習慣病管理料(II)は検査費用などを包括しない診療報酬であり、出来高算定が可能です(詳細は後述)。そのため、生活習慣病管理料(I)は生活習慣病管理料(II)よりも高い点数が設定されています。
 
参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省

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2.生活習慣病管理料の点数

生活習慣病管理料(I)は、患者さんの主病によって算定できる点数が異なります。また、生活習慣病管理料(II)は、情報通信機器を用いて医学管理を行った場合の点数が設定されています。

 

区分 患者の主病 点数 回数
生活習慣病管理料(I) 脂質異常症 610点 月1回
高血圧症 660点
糖尿病 760点
生活習慣病管理料(II) 要件なし 333点
(情報通信機器を用いて医学管理を行った場合、290点)
月1回

参照:医科診療報酬点数表|厚生労働省

 

なお、初診料を算定した月や、主病が糖尿病かつ在宅自己注射指導管理料を算定する場合は生活習慣病管理料(I)と(II)を算定できません
 
また、生活習慣病管理料(I)を算定した月から6カ月以内に生活習慣病管理料(II)を算定することはできません(同一医療機関において同時期に生活習慣病管理料(I)と(II)を別の患者さんに算定することは可能)。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

3.生活習慣病管理料の主な算定要件

生活習慣病管理料は、許可病床数が200床未満の医療機関において、生活習慣病(高血圧症・脂質異常症・糖尿病)の患者さんに対して治療計画を作成し、その内容に基づいて栄養や運動、休養、喫煙など生活習慣に関する総合的な治療管理を行うことで算定が可能です。
 
そのほか、算定にあたり以下の内容にも留意します。

 

● 同一保険医療機関において、脂質異常症、高血圧症又は糖尿病を主病とする患者について、当該管理料を算定するものと算定しないものが混在するような算定を行うことができるものとする。
● 学会等の診療ガイドライン等や診療データベース等の診療支援情報を参考にする。
● 患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示するとともに、患者から求められた場合に、患者の状態を踏まえて適切に対応を行うこと。
● 本管理料を算定する患者について、保険者から特定保健指導を行う目的で情報提供の求めがある場合には、患者の同意の有無を確認するとともに、患者の同意が得られている場合は必要な協力を行うこと。
● 糖尿病の患者については、患者の状態に応じて、年1回程度眼科の医師の診察を受けるよう指導を行うこと。また、糖尿病の患者について、歯周病の診断と治療のため、歯科を標榜する保険医療機関への受診を促すこと。
● 生活習慣病管理料(II)における、情報通信機器を用いた医学管理については、オンライン指針に沿って診療を行った場合に算定する。

参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省

 

3-1.生活習慣病管理料の療養計画書

生活習慣病管理料を算定するには、療養計画書を作成した上で、患者さんに対して生活習慣の改善や治療管理の方針を丁寧に説明し、同意を得る必要があります。
 
栄養・運動・休養・喫煙・飲酒・服薬管理など、治療に関わる具体的な項目を記載した後、患者さんから署名を受け、計画書の写しを診療録に添付して保存します。
 
生活習慣病管理料(II)における、情報通信機器を活用して医学管理を行う場合の署名に関しては、電子署名やタブレットの画面上で自署してもらうなどの方法が想定されます。
 
生活習慣病管理料を継続的に算定する場合も、毎月の診察時に療養計画書を交付する必要がありますが、内容に変更がない場合は必ずしも新しく作成する必要はありません。ただし、患者さんや家族から求めがあった場合は随時交付するとともに、少なくともおおむね4カ月に1回以上は交付しなければなりません。
 
また、2回目以降の算定において、医師が患者さんに対して療養計画書の内容を説明し、十分に理解したことを確認した上でその旨を記載した場合、患者さんの署名は省略できます。この場合において、医師による説明を行った後、薬剤師や看護職員など医師以外が追加説明を行い、診察室外で署名をもらうことも可能です。
 
療養計画書を作成するときは、新しく作成する場合「別紙様式9」、継続の場合「別紙様式9の2」もしくはこれに準じた様式を使用します。患者さんの治療管理に必要な項目のみを記載する形でも問題なく、すべての項目を網羅する必要はありません。血液検査結果を別途交付している場合、その旨を診療録に記録しておけば、血液検査項目の記載を省略することも可能です。
 
さらに、患者さんの求めに応じ、電子カルテ情報共有サービスを活用して、計画書の記載内容を電子データとして患者サマリーに登録して診療録に記録すれば、計画書を作成・交付したものとみなすことが可能です。ただし、生活習慣改善の重要性について患者さんへ十分な説明を行い、同意を得る必要があります。
 
血液検査結果についても、電子カルテ情報共有サービスを活用して患者さんに共有し、その旨を診療録に記録している場合は、計画書への血液検査項目の記載を省略できます。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

 

3-2.生活習慣病管理料に包括されるもの

先述したとおり、生活習慣病管理料(I)と(II)において包括されるものは異なります。
 
生活習慣病管理料(I)は、「再診料の外来管理加算」「第1部医学管理等」「第3部検査」「第6部注射」「第13部病理診断」にかかる費用を包括します。ただし、「第1部医学管理等」のうち、以下に挙げる管理料は除きます。

 

● 糖尿病合併症管理料
● がん性疼痛緩和指導管理料
● 外来緩和ケア管理料
● 糖尿病透析予防指導管理料
● 慢性腎臓病透析予防指導管理料

 

生活習慣病管理料(II)は、「再診料の外来管理加算」「第2章第1部第1節医学管理料等」にかかる費用のみ包括します。ただし、「第2章第1部第1節医学管理料等」のうち、以下に挙げる指導料・管理料などは除外されるため、出来高算定が可能です。

 

● 外来栄養食事指導料
● 集団栄養食事指導料
● 糖尿病合併症管理料
● がん性疼痛緩和指導管理料
● 外来緩和ケア管理料
● 糖尿病透析予防指導管理料
● 慢性腎臓病透析予防指導管理料
● ニコチン依存症管理料
● 療養・就労両立支援指導料
● プログラム医療機器等指導管理料
● 診療情報提供料(I)
● 電子的診療情報評価料
● 診療情報提供料(II)
● 診療情報連携共有料
● 連携強化診療情報提供料
● 薬剤情報提供料

 

なお、生活習慣病管理料の算定日以外なら、算定要件を満たせば外来管理加算を同月に算定することが可能です。
 
しかし、医学管理等や検査、注射、病理診断に関しては、生活習慣病管理料(I)または(II)を算定した月の別日に生活習慣病のための診察を行ったとしても、包括される費用の算定は不可とされています。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

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4.生活習慣病管理料の加算

生活習慣病管理料の加算として、「血糖自己測定指導加算」と「外来データ提出加算」が設けられています。
 
ここからは、生活習慣病管理料の加算について、算定要件や点数を解説します。

 

4-1.血糖自己測定指導加算

血糖自己測定指導加算は、糖尿病患者さんへの血糖管理を支援するための加算です。医師の指導のもと、患者さんが血糖自己測定器を用いて月20回以上の測定を行い、その結果を医療機関へ報告することが算定要件です。
 
報告されたデータをもとに、生活習慣や服薬の指導を行い、療養計画に反映することで、年1回に限り500点を算定できます。
 
血糖自己測定指導加算を生活習慣病管理料(I)または生活習慣病管理料(II)のいずれかで算定した場合、その後1年間は、どちらの管理料においても再度算定することはできません。
 
血糖自己測定指導加算は、インスリン製剤を使用していない、中等度以上の2型糖尿病の患者さんが対象です。中等度以上の糖尿病とは、加算を算定する当月または前月においてヘモグロビンA1c(HbA1c)がJDS値で8.0%以上(NGSP値で8.4%以上)の状態を指します。
 
なお、血糖自己測定指導加算は、血糖試験紙(テスト・テープ)または固定化酵素電極(バイオセンサー)を患者さんに給付し、在宅で血糖の自己測定をしてもらい、その記録に基づいて指導を行った場合に算定するものです。血糖試験紙、固定化酵素電極、穿刺器、穿刺針および測定機器を患者さんに給付または貸与した場合における費用、そのほか血糖自己測定に係るすべての費用は、血糖自己測定指導加算に含まれるため、別に算定することはできません。
 
参照:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

 

4-2.外来データ提出加算

外来データ提出加算は、診療内容や治療管理の状況を継続的に厚生労働省へ報告すると算定できる加算です。算定にあたり、厚生労働省が実施する「外来医療等調査」に準拠したデータを正確に作成し、継続して提出することが求められます。
 
算定対象となるのは生活習慣病管理料を算定する患者さんのうち、データを提出する外来診療のみで、算定できる点数は50点です。
 
外来データ提出加算の施設基準は、以下のとおりです。

 

● 厚生労働省が毎年実施する「外来医療、在宅医療、リハビリテーション医療の影響評価に係る調査」(以下「外来医療等調査」)に適切に参加できる体制を有すること。また、厚生労働省保険局医療課及び厚生労働省が外来医療等調査の一部事務を委託する外来医療等調査事務局(以下「外来医療等調査事務局」)と電子メール及び電話での連絡可能な担当者を必ず1名指定すること。
● 外来医療等調査に適切に参加し、調査に準拠したデータを提出すること。
● 診療記録(過去5年間の診療録及び過去3年間の手術記録、看護記録等)の全てが保管・管理されていること。
● 診療記録の保管・管理につき、厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」に準拠した体制であることが望ましい。
● 診療記録の保管・管理のための規定が明文化されていること。
● 患者についての疾病統計には、ICD大分類程度以上の疾病分類がされていること。
● 保管・管理された診療記録が疾病別に検索・抽出できること。

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

また、外来データ提出加算を算定する場合、以下2点の届出が必要です。

 

● 外来/在宅/リハビリテーション データ提出開始届出書(様式7の10
● 外来/在宅/リハビリテーション データ提出加算に係る届出書(様式7の11

 

まず、下記の手順で厚生労働省へデータ提出を行います。

 

1. データ提出開始届出書(様式7の10)を地方厚生(支)局医療課長に提出し、厚生労働省保険局医療課長への届出を行う(2024年5月20日、8月20日、11月20日、2025年2月20日、5月20日、8月20日、11月20日または2028年2月20日を期限とする)。
2. 届出の期限となっている月の翌月から2カ月分のデータを、厚生労働省が提供するチェックプログラムによって作成し、外来医療、在宅医療、リハビリテーション医療の影響評価に係る調査実施説明資料に定められた方法に従って、厚生労働省保険局医療課が別途通知する期日までに外来医療等調査事務局へ提出する。
3. データ提出の実績が認められた医療機関として、厚生労働省保険局医療課より電子メールで事務連絡が発出される。

 

厚生労働省保険局医療課より電子メールが届いたら、「外来/在宅/リハビリテーション データ提出加算に係る届出書」(様式7の11)を用いて、外来データ提出加算の届出を行います。
 
なお、各調査年度においてデータ提出の遅延が累積して3回認められた場合には、外来データ提出加算の算定ができなくなるため注意が必要です。
 
参照:令和7年度における外来データ提出加算等の取扱いについて|東北北陸厚生局

5.生活習慣病管理料の施設基準・届出

生活習慣病管理料の施設基準は、以下のとおりです。なお、生活習慣病管理料の算定にあたり地方厚生(支)局長への届出は必要なく、施設基準を満たしていれば算定が可能です。

 

● 生活習慣に関する総合的な治療管理ができる体制を有していること。なお、治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい。
● 患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示すること。

参照:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省

 

なお、「28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付すること」に関する掲示については、厚生労働省が作成した「長期処方・リフィル処方せんについてのポスター」を活用することも可能です。
 
また、情報通信機器を用いて医学管理を行い、生活習慣病管理料(II)(290点)を算定する場合、施設基準として情報通信機器を用いた診療の届出は必要ですが、生活習慣病管理料(II)の算定に関する届出は必要ありません。
 
参照:疑義解釈資料の送付について(その1)|厚生労働省

6.療養計画書を作成して、生活習慣病の治療を総合的にサポートしよう

生活習慣病管理料とは、生活習慣病の患者さんに対して、生活習慣の改善を含めた総合的な治療管理を行うことを評価する診療報酬です。生活習慣病管理料を算定するには、療養計画書を作成するとともに、生活習慣の改善や治療管理の方針を丁寧に説明し、同意を得る必要があります。生活習慣病管理料の算定にあたり、地方厚生(支)局長への届出は必要なく、施設基準を満たしていれば算定が可能です。ただし、生活習慣病管理料の加算である外来データ提出加算を算定する場合は届出が必要なため注意しましょう。

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執筆/篠原奨規

2児の父。調剤併設型ドラッグストアで勤務する現役薬剤師。薬剤師歴8年目。面薬局での勤務が長く、幅広い診療科の経験を積む。新入社員のOJT、若手社員への研修、社内薬剤師向けの勉強会にも携わる。音楽鑑賞が趣味で、月1でライブハウスに足を運ぶ。