二次性骨折予防継続管理料は、大腿骨近位部骨折を発症した患者さんの再骨折を防ぐために評価や治療をすることで算定できる診療報酬です。本記事では、二次性骨折予防継続管理料1・2・3の算定要件と点数、施設基準、届出について分かりやすく解説するとともに、二次骨折予防のための取り組みについてもお伝えします。
1.二次性骨折予防継続管理料とは?
二次性骨折予防継続管理料とは、医学管理料等のひとつで、骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者さんに対して、必要な治療を実施した場合について評価するものです。骨粗鬆症の治療によって、二次性骨折の予防を推進することを目的としており、2022年度の診療報酬改定で新設されました。
二次性骨折予防継続管理料には1・2・3の区分があり、1は手術治療を担う一般病棟、2はリハビリテーションなどを担う病棟、3は外来において算定できます。
2・3を算定するためには、1を算定している必要があるため、二次性骨折予防継続管理料は、骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者さんを継続的に評価・治療をすることが求められる管理料といえるでしょう。
参照:令和4年度診療報酬改定の概要 個別改定事項V(重症化予防、後発医薬品等使用推進、
療養・就労両立支援)|厚生労働省
参考:医科診療報酬点数表に関する事項|厚生労働省
2.二次性骨折予防継続管理料の点数
二次性骨折予防継続管理料には3つの区分があります。それぞれの点数は、以下のとおりです。
区分 | 点数 |
二次性骨折予防継続管理料1 | 1000点 |
二次性骨折予防継続管理料2 | 750点 |
二次性骨折予防継続管理料3 | 500点 |
二次性骨折予防継続管理料1・2は、患者さんが入院中に1回限り、二次性骨折予防継続管理料3は、入院患者さん以外の患者さんについて初回算定の月から1年を限度として月1回に限り算定できます。
算定するためには、関係する学会のガイドラインに沿って、骨粗鬆症の計画的な評価・治療などを行わなければなりません。
3.二次性骨折予防継続管理料の算定要件
二次性骨折予防継続管理料の算定要件は、以下のとおりです。
区分 | 二次性骨折予防継続管理料1 | 二次性骨折予防継続管理料2 | 二次性骨折予防継続管理料3 |
---|---|---|---|
対象患者さん | 骨粗鬆症を有する大腿骨近位部骨折患者さん | ||
ほかの医療機関で二次性骨折予防継続管理料1を算定した患者さん | |||
評価と治療 | ガイドラインなどに沿って適切な評価・治療などを実施 | ガイドラインなどに沿って適切な評価・治療効果の判定など、必要な治療を継続して実施 | |
参照するガイドライン | ● 骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード ● 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン |
||
医学管理 | 以下による必要な評価を実施 ● 骨量測定 ● 骨代謝マーカー ● 脊椎エックス線写真 など |
二次性骨折予防継続管理料1を算定した患者さんについて、以下のケースでは二次性骨折予防継続管理料2を算定できません。
● 同一の医療機関のリハビリテーション医療などを担う病棟に転棟した場合
また、二次性骨折予防継続管理料1または2を算定した入院患者さんが退院後に、以下の医療機関の外来を受診した場合、二次性骨折予防継続管理料1または2を算定した同一月に二次性骨折予防継続管理料3は算定できないことになっています。
● 入院していた医療機関と特別の関係にある医療機関
退院・転院先が関連する医療機関である場合には、二次性骨折予防継続管理料が算定できないケースがある点に留意しましょう。

4.二次性骨折予防継続管理料の施設基準
二次性骨折予防継続管理料の施設基準は、以下のとおりです。
職種との連携体制 | 医療機関内に、以下の職種が連携して診療を行う体制が整備されていること (ア)骨粗鬆症の診療を担当する専任の常勤医師 (イ)専任の常勤看護師 (ウ)専任の常勤薬剤師 |
常勤薬剤師がいない医療機関 | 地域の医療機関等と連携して診療を行う体制が整備されていることで差し支えない |
研修会の実施 | 以下を参照し、院内の職員を対象に「骨粗鬆症に対する知識の共有とFLSの意義について」の研修会を年1回以上実施すること ● 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン ● 骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード |
二次性骨折予防継続管理料1を算定する場合 | 急性期一般入院基本料、地域一般入院基本料または7対1入院基本料もしくは10対1入院基本料(特定機能病院入院基本料(一般病棟に限る)または専門病院入院基本料に限る)、有床診療所入院基本料または地域包括医療病棟入院料に係る届出を行っていること |
二次性骨折予防継続管理料2を算定する場合 | 地域包括ケア病棟入院料、地域包括ケア入院医療管理料、回復期リハビリテーション病棟入院料または回復期リハビリテーション入院医療管理料に係る届出を行っていること |
参考:特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
4-1.二次性骨折予防継続管理料の施設基準の届出
二次性骨折予防継続管理料を算定するためには、施設基準について届出なければなりません。
新規で届出を行うにあたり、届出日から起算して1年以内に研修会などを開催することが決まっている場合は、研修会実施の要件を満たしているものとみなされますが、届出時に研修会などの開催予定日が分かる書類を添付する必要があります。
4-2.二次性骨折予防継続管理料の施設基準に関する疑義解釈
二次性骨折予防継続管理料の施設基準のうち、地域の医療機関などとの連携については、地域の調剤薬局が含まれます。
また、二次性骨折予防継続管理料1の施設基準における届出入院料について、特別入院基本料を算定する病棟は対象に含まれません。
二次性骨折予防継続管理料1または2の届出を行っている医療機関が、二次性骨折予防継続管理料3を算定する場合は新たに届出が必要です。
そのほか、二次性骨折予防継続管理料2の施設基準である「骨粗鬆症の診療を担当する専任の常勤医師」については、「A308」回復期リハビリテーション病棟入院料の体制強化加算1の施設基準における「当該病棟に専従の常勤医師」と兼任することはできません。
5.二次性骨折予防継続管理料が新設された背景
2007年の研究報告によると、骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折の発生数は年間約14万8000人とされ、今後さらに増加することが見込まれています。
骨粗鬆症は骨折リスクが増大した状態であり、初回骨折から再骨折までの平均期間は4.28年(4日~24年)と、比較的短い期間で発生しています。
また、介護が必要となった原因の約1割を「骨折・転倒」が占めており、骨粗鬆症患者さんが大腿骨骨折を発症した場合、健常人や他部位の骨折患者さんと比較して、生命予後が悪いことも指摘されています。
イギリスでは、大腿骨近位部骨折後の患者さんの二次性骨折などが問題となっており、二次性骨折を予防するための取り組みが進められています。日本における2012年の調査では、骨折後に骨粗鬆症治療を必ず行うと回答した医療機関は、急性期病院で約1割、回復期病院で約2割となっており、二次骨折予防への取り組みはあまり進んでいないといえる状況でした。
骨折リエゾンサービス(FLS)の実施は、骨粗鬆症に対する治療開始率の上昇や再骨折率の低下、死亡率の低下などの有用性が報告されています。
日本における現状や治療効果などを鑑みて、骨粗鬆症を有する大腿骨頸部骨折患者さんへの二次性骨折予防を推進するために、二次性骨折予防継続管理料が新設されました。

5-1.二次骨折予防のための取り組み
二次性骨折予防を目的に取り組む際は、以下の2つのガイドラインなどを参照することとされています。
● 骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」には、骨粗鬆症の一次予防から治療までが示されています。「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」は、骨折患者さんの骨粗鬆症治療開始率を上げるといったことを目的にクリニカルスタンダードの内容が示されています。
また、「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」には骨粗鬆症の治療などにあたって「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」を参照するよう記載されており、「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では骨粗鬆症骨折患者さんに対する際二次骨折予防のための診療支援システムとして骨折リエゾンサービスが紹介されています。
5-2.「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」と「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」
「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」と「骨折リエゾンサービス(FLS)クリニカルスタンダード」の内容や目的は、それぞれ以下のとおりです。
ガイドライン名 | 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン | 骨折リエゾンサービスクリニカルスタンダード | ||
---|---|---|---|---|
編集等 | 編集 | ● 日本骨粗鬆症学会 ● 日本骨代謝学会 ● 骨粗鬆症財団 |
監修 | ● 日本骨粗鬆症学会 ● 日本脆弱性骨折ネットワーク |
支持 | ● 日本骨折治療学会 ● 日本整形外科学会等 |
|||
目的 | 医師と医療従事者のために骨粗鬆症予防に関する啓発と最新治療法を普及すること | 骨粗鬆症治療開始率および治療継続率を上げることなどにより、脆弱性骨折患者さんが二次骨折を回避し、QOLを維持すること | ||
内容 | ● 骨粗鬆症の定義 ● 疫学および成因 ● 骨粗鬆症の診断 ● 骨粗鬆症による骨折の危険因子とその評価 ● 骨粗鬆症の予防 ● 骨粗鬆症の治療 ● 続発性骨粗鬆症 ● 資料 |
● 対象患者さんの特定 ● 二次骨折リスクの評価 ● 投薬を含む治療の開始 ● 患者さんのフォローアップ ● 患者さんと医療従事者への教育と情報提供 |

6.骨粗鬆症患者さんの二次骨折予防に取り組もう
二次性骨折予防継続管理料は、骨粗鬆症の治療を早期に開始し、継続することによる脆弱性骨折患者さんの二次骨折の回避や、QOLの維持を目的に設けられたものです。医療従事者は、骨粗鬆症の予防の重要性や最新の治療に関する情報を収集し、ほかの医療機関や調剤薬局と協力して、骨粗鬆症患者さんのサポートをすることが期待されています。
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薬剤師ライター。2児の母。大学卒業後、調剤薬局→病院→調剤薬局と3度の転職を経験。循環器内科・小児科・内科・糖尿病科など幅広い診療科の経験を積む。2人目を出産後、仕事と子育ての両立が難しくなったことがきっかけで、Webライターとして活動開始。転職・ビジネス・栄養・美容など幅広いジャンルの記事を執筆。趣味は家庭菜園、裁縫、BBQ、キャンプ。
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