薬剤師会

薬のプロとしての重み考えて‐日本薬剤師会 山本 信夫会長に聞く

薬+読 編集部からのコメント

日本薬剤師会・山本信夫会長のインタビュー記事が掲載されました。
現在30万人を超えた薬剤師の使命とは? 薬を供給するプロとしてのプライドと矜持
--熱いメッセージが満載です。

分業や職能、正しい道に戻す

 

日本薬剤師会は、今年6月の役員改選で山本信夫会長の続投を正式に決め、新執行部のもとで3期目となる山本体制をスタートさせた。しかし、施行から5年が経過した医薬品医療機器法(薬機法)改正に向けた議論をはじめ、来年10月に予定される消費税率10%引き上げへの対応、依然として増え続ける敷地内薬局の問題、オンライン服薬指導など、課題は山積している。山本会長は、薬機法改正や消費税、診療報酬改定の議論が同時期に進められることになるため、「しっかり準備しておかなくてはならない」と強調。また、医薬分業や薬剤師職能を「正しい道に戻す」ためには、「地域の人が困らないよう、薬を供給する」という原点に立ち帰り、「薬のプロとしての重みを自分たちで考えないといけない」と語った。

 

薬剤師のあり方、薬機法改正で議論

 

――3期目の山本新体制で、まず、取り組むべき重要課題は。

 

施行から5年が経過した薬機法改正だ。医薬品の販売制度だけでなく、薬機法そのものの見直しが必要だという方向になってきている。場合によっては、薬剤師法の見直しにも影響が出てくることも考えられるので、かなり大きい課題だと認識している。

 

また、来年10月に消費税の引き上げが予定されているが、その頃はちょうど、2020年度診療報酬改定の議論が後半戦にさしかかるタイミングでもあり、薬価の問題も含めてしっかりと準備しておかなくてはならないと考えている。

健康サポート薬局への取り組みをどう広げていくか、25年の構築を目指している「地域包括ケアシステム」の中で薬局をどう位置づけるかなど、継続した問題もあり、重要な課題が山積している。

 

もちろん、会員を増やすための対策を講じたり、会務をより円滑に進めるような仕組みの検討、次世代を担う後進の育成など、会としての基本的なことにも取り組まなければいけない。

 

また、薬局への社会的批判のようなものがあるので、それに対して的確な答えやメッセージを出していく必要もある。

 

ただ、薬局への批判にどう対処するかというのは難しい。良くも悪くも、薬局が注目されたことで、良い部分が見えてくるようになってくると、同時に悪い部分も見えてくる。しかも、良いことは「やって当たり前」と言われるし、悪いことはセンセーショナルに取り上げられてしまう。

 

そうは言っても、自分たちの立ち位置は自分たちで変えないといけない。変わるためには、法的な規制を必要とすることも考えられる。法律ありきでいいのかという意見はあるが、自分たちが果たす役割や、業務範囲などを人に決められてしまうと、どんどん狭まってしまう。そういう状況は好ましくないと考えている。

 

――薬機法改正における重要案件は何か。その議論にどう取り組むか。

 

5年前の旧薬事法改正、医薬品販売制度の見直し議論では、医薬品をインターネットで販売するためのルール作りが大きな争点になってしまった。なぜ、旧薬事法が作られたのか、薬をどう使っていくか、などの議論はあまり行われないままに終始してしまった気がする。

 

医薬品卸や製造業も含めた幅広い範囲の中で、薬剤師が薬機法の中でどうパフォーマンスしなければならないのか、多くの薬剤師が働く薬局にどういう制限をかけていくのか、という議論を今度こそしなければならないと考えている。

 

そう考えると、今回の薬機法見直しは重要案件だし、しっかりと議論を深めて、望ましい絵姿を描き、それを現場の薬剤師・薬局がしっかり守っていく仕組みを作ることが大事ではないか。

 

薬機法で、薬局は調剤をする場所という規定があり、一人ひとりの薬剤師が一軒の薬局をコントロールすることになっている。誰でも自由に開けるようにはなっているが、薬剤師が開くから良いという法律だったはずだ。しかし、いつの間にかそうではなくなった。

 

かつての薬局は、OTC薬や化粧品、雑貨、健康食品を売って経営を成り立たせていたが、処方箋が発行されるようになると、一斉に調剤に走ってしまった。その程度の調剤で良かったのかということもあり、その点は反省しなければならない。

 

ただ、今回の薬機法改正では、そうしたことも含めて丁寧に議論しないと、うわべだけの見直しになってしまう気がする。

 

薬局の機能分化議論‐1人薬剤師の役割はある

 

――薬機法改正の議論をしている厚労省の医薬品医療機器制度部会では、薬局の機能分化が論点として上がっている。

 

様々な意見があるようだが、1人薬剤師で本当にいまの薬局に求められているような機能が果たせるのかということはある。ただ、複数の薬局が地域の中でサポートし合えるような仕組みができれば、これからも1人薬剤師の薬局が担う役割はあると思う。そういう意味での機能分化はあり得るのではないか。

 

当然、規模が大きければ、在宅医療や24時間対応などに対応しやすくなるのは間違いないが、薬剤師の役割が「どの地域においても医薬品を供給する」ということだとすれば、1人薬剤師薬局の役割も大きいはずだ。

 

いま、薬剤師は30万人を超えた。それにもかかわらず、1人薬剤師が存在するのは、薬局の多くが病院の前など、誰もが開きたいと思う場所に集まってしまうからだ。

 

薬剤師偏在の問題は、本来であれば、自分たちで分布させるなどして解決した方が良いと思うが、経営面を考慮すると、現実にはそうはうまくいかない。

 

制度面で分布させていくことを考えた時に、例えば病院の前や敷地内に開設するのであれば、社会的な義務・責任のようなものを課していくという方法もあるのではないか。

 

――薬局のガバナンスを強化すべきとの意見も出ている。

 

これだけいろいろな不正、不祥事があったのだから、そういう方向にならざるを得ないだろう。薬剤師ではない上に、現場を見ていない経営者がいたり、管理薬剤師がその店を監督するという薬機法上の基本的なことが守られていないのであれば、ガバナンスを強化すべきと言われるに決まっている。

 

ただ、問題が起きたときに先を見据えて、早いうちに策を講じていれば、これだけ不正や不祥事が起こらなかったのかもしれないという思いはある。

 

当然、1軒の薬局と100軒の薬局ではガバナンスが異なるので、たとえ100軒になっても、しっかりガバナンスが効くような仕組みにしなければ意味がない。

 

敷地内、改めて実態調査

 

――敷地内薬局を誘致する病院が依然として増えている。効果的な打開策はあるか。

 

教育行政をつかさどる文部科学省が所管する国立大学病院が敷地内薬局を容認するというのは、なかなか理解しがたい。

 

病院と薬局の間を形式的にフェンスで仕切るのはおかしいと主張し、それを取り払ったにもかかわらず、病院の外から薬局の存在を確認できるように、形式的に外から見えるよう薬局を建てる。まったくもって理解に苦しむ。

 

よく、門前と門内でどう違うのかと言われるが、全く違う。調剤報酬には、初再診料や入院基本料など、施設に対するものは存在しない。診療報酬体系が確立されている病院の敷地内に、報酬体系が異なる薬局を持ってきてしまったら、その次に来ることはおよそ見当がつく。病院の中に入ってくると言うことだ。

 

東京大学病院が敷地内薬局を公募しているが、かつて、東大病院の敷地内で薬局などを運営していた形態と変わらない。当時、第2薬局と呼ばれていて、時代になじまないという理由で病院の外に出たが、何十年も経って再び現れるというのはどういうことなのか。

 

まずは、各都道府県の協力のもと、敷地内薬局の実態について改めて調査を行うなど、薬剤師職能がきちんと守られるよう、できる限りのことをやるつもりだ。

 

健サポの機能持つ流れに

 

――7月末時点で、全国の健康サポート薬局の届け出数が1042軒に達した。現時点での数字をどう評価し、今後、どう進めていきたいか。

 

1000軒を超えるまでのスピード感としては、もう少し早くても良かったかなという印象だ。この後、どれだけドライブがかかるかは分からないが、そもそも健康サポート薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局のベースがあって、その部分がしっかりしていれば、「少し努力して伸ばせます」というものだ。保険点数に結びつくものではないということが分かったとたん、ペースが少し下がってしまったので伸び悩むかなと思ったが、1000軒に届いたことを考えれば、まあまあではないかと思っている。

 

いま、日本保険薬局協会や日本チェーンドラッグストア協会も取り組んでいるが、その中で地域に根ざせるかどうかが重要だ。健康サポート薬局にならなくても、地域で十分な機能を果たしているところもたくさんあると思う。

 

例えば24時間対応の薬局で、健康サポート薬局の基準を満たしてはいるが、手を挙げないというところもあるだろう。

 

規模や勤務する薬剤師、働き方に係ってくると思うが、いずれは黙っていても健康サポート薬局のような機能を持たざるを得なくなるのではないか。いままでのように、調剤中心、OTC薬中心ではなく、バランス良く対応することが求められるので、時間はかかると思うがその方向に移行していくのではないか。

 

要指導薬販売、法令遵守を‐遠隔服薬指導、慎重な検討が大事

 

――厚労省の「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で、薬局側の販売体制の不備が指摘され、プロトンポンプ阻害薬(PPI)のスイッチ化が否決された。今後、販売体制の充実をどう図っていくか。

 

 

厚労省の「医薬品販売制度実態把握調査」で、濫用などの恐れのある医薬品を「質問されずに複数購入できた」割合が3割を超えていたことが問題視されたわけだが、確かにPPIは、後で副作用が出てくることがあるので、しっかりと販売するというのは重要なことだと思う。

 

ただ、この話は薬剤師にすら販売させたくないのか、要指導医薬品になって原則1年経過すると、一般用医薬品に分類され、インターネットで販売されてしまうことが問題なのか、それとは別の要因があるのかという部分がはっきりしない。そもそもPPIのスイッチ化に否定的な考えの人たちもいる。

 

調査結果によると、薬剤師しか売ることができない要指導医薬品の販売に関しては、97%が情報提供を行っている。医療用から要指導医薬品にスイッチして薬剤師が販売できるような状況にしてどこに問題があるのか。

 

とはいえ、現状として良くないのは間違いないし、100%実施が求められるものなので、各都道府県薬に通知を発出して、濫用の恐れがある医薬品の販売に当たり、改めて法令順守を徹底したい。

 

――政府の規制改革会議が一定の条件下でオンライン服薬指導を実現するよう求めている。

 

まず、医薬品は対面で渡すことが法律で規定されているので、対面が原則という前提がある。それでは済まないケースも出てくるだろうが、AI(人工知能)やICT(情報通信技術)が進んでいるからといって、オンライン服薬指導を前提とした議論には違和感がある。

 

 

当然、国家戦略特区での遠隔服薬指導の実証事業の動向を踏まえて、「慎重に検討」することが大事だ。薬をドローンや宅配業者が運ぶという考えもあるようだが、自分が調剤したものを、他人が届けて何かあった場合にクレームや問い合わせが来ても、答えようがない。やはり薬は薬剤師が届けるという姿が基本であることは言うまでもない。

 

中立な立場から発表を‐薬剤師の使命は薬の供給

 

――前回の日薬学術大会から、演題を登録する際、利益相反の申告が必要になった。

 

発表する演題の中身にもよるが、調査・研究に関するものは、どうしても利益相反が生じる可能性があるので、ニュートラルな立場で発表をしますというのを確認することは必要だ。

 

お薬手帳の効果など、日々の業務を通した発表が多いと思うが、それを疫学的に調べて数字で示すことも大事だ。しっかりとしたデータはエビデンスにもなるので、日本薬学会などと連携して、よりサイエンティフィックな調査・研究を行うための方策を考えるようなことがあるかもしれない。

 

――最後に会員に向け一言メッセージを。

 

以前から言っていることだが、薬剤師はなかなか目立たなかったし、それほど大きな役割を担っているとは思われていなかった節がある。しかし、薬剤師という職能ができてから、街の薬局と病院薬剤師の違いこそあれ、少なくともしっかりと仕事をしてきものの、それがどこかで少しずつずれてきてしまったように感じる。

 

正しい道に戻すためには、もう一度、自分たちの原点に回帰する必要がある。なぜ、800年前に海外で薬剤師という職能ができて未だに機能しているのか。日本はなぜそれを明治時代になって導入したのか、といったことを一旦見つめてみる必要があるのではないか。

 

その中で、自分たちに何ができて、しっかり職能を全うできているのかを顧みた上で、いまの時代に何が求められているのかを考えると、自分たちのやるべきことは、地域の人たちが困らないように、薬を供給することにつきる。まずはそれを全うしないと、他のことはなかなかできないだろう。

 

いま一度、本当に薬剤師としてしっかりと薬を供給できているのかということを、考えてみる必要がある。それができていない状態で次に進むことはできない。

 

新たなコア・カリキュラムに基づいた実務実習が来年2月から始まるが、これから薬剤師になるであろう学生に現場の薬剤師として、恥ずかしくない背中を見せることが大事だ。

 

当然、そのための努力をしないといけない。それが薬剤師としてのプライドであり、矜持だ。世間から薬のプロフェッションと言われていることの重みを自分たちで考えないといけない。

自分自身、薬剤師になってからいままで、ずっとそれを考えてきて、未だに答えが出ていないが、最終的にどこかで共通認識のようなものを持つ必要があるのではないか。

 

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出典:薬事日報

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