薬剤師会

吸入デバイス、薬剤師が選択‐患者指導から一歩踏み出す

薬+読 編集部からのコメント

新たな薬剤師の職域の広がりです。
京都桂病院では、安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の吸入デバイスの選択を薬剤師が担当する「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を昨年4月から実施しています。
薬剤師が事前に医師と選択基準について相談し、その後外来で患者さんと面談、様々な種類のデバイスの中からその患者さんに最適なものを選ぶという仕組みです。医師が限られた診療時間の中で膨大な選択肢から選ばずに済み、患者さんは相談する時間が増えることで安心できるのではないでしょうか。

PBPMの枠組みで実現

 

京都桂病院は、新たに吸入療法を開始する安定期慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の吸入デバイスの選択を薬剤師が受け持つ「プロトコールに基づく薬物治療管理」(PBPM)を昨年4月から実施している。通常は医師が吸入デバイスを選択するが、限られた診療時間内で様々な種類の中から最適なものを選び出すのは容易ではない。薬剤師が外来でCOPD患者との面談に時間を費やし、事前に医師と合意した基準に沿って最適な吸入デバイスの選択を行うことで、治療効果が高まると期待している。その効果を検証する臨床試験を並行して進めており、来年度には結果を公表できる見込みだ。


気管支喘息やCOPDの治療には主に、エアロゾルやドライパウダーとして薬剤を直接吸い込む吸入療法が実施されている。薬剤と装置が一体化した吸入デバイスを用いるが、患者がうまく使えなければアドヒアランスは低下し治療効果が弱まってしまう。

 

うまく使えない要因には、[1]使い方を習得できていない[2]その患者に適した吸入デバイスが選択されていない――の二つがある。吸入療法における薬剤師の役割として、現在は患者への吸入指導業務が重視されているが、同院の薬剤師はそこから一歩踏み出し、吸入デバイスの選択まで担うようになった。

 

初回診察時、呼吸器外来の医師はCOPDと診断すると薬剤師に吸入療法の開始を指示し、使用予定薬効分類を指定する。その後、薬剤師は外来の一角で患者と面談。事前に医師らと合意した標準的な基準に沿って症状やライフスタイル、身体機能などを評価し、目の前の患者に最も適した吸入デバイスを選択する。その際、必要に応じて医師に薬効分類の変更を提案。吸入デバイスが決まれば、その使い方などを指導する。初回は患者1人あたり60~90分ほどの時間をかける。

 

2回目以降の外来受診時には、医師の診察前に薬剤師が15分ほど面談する。吸入デバイスを正しく使えているか、副作用は発現していないかなどを評価し、指導を行った上で医師の診察に引き継いでいる。

 

最適な吸入デバイスを選択するフローチャート形式の基準は、院内の医師や薬剤師、看護師の経験を基に作成した。▽座位で吸入薬を保持できるか▽患者の吸気速度はどのくらいか▽筋力低下はあるか▽介助者が存在するか――などの項目を評価して大分類を決める。その上でアドヒアランス向上につながる要素を考慮し、最適な吸入デバイスを選択している。

 

京都桂病院薬剤科の塩飽英二氏は「まず、患者の吸気速度が十分かどうかを見極める必要がある。吸気速度に問題がなければ、操作の障害になり得る握力、しびれ、手指障害の有無を確認し、使用できる吸入デバイスを見極める。アドヒアランスを維持するために、生活スタイルや用法・用量、価格などの希望も聞き入れながら、患者を治療プロセスに取り込んでいくことも重要になる」と語る。

 

臨床試験では主に、薬剤師が吸入デバイスの選択や管理に関わった患者群と、この取り組みを開始する前の患者群を比較し、呼吸機能の改善効果やアドヒアランス、症状、副作用発現率の違いを評価する。60症例を集めて解析する計画で、既に55症例を登録済み。来年度には臨床試験を終え、結果を開示できる見通しだ。現在は約40症例の解析を終えたところで、「いい手応えがある」(塩飽氏)としている。

 

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出典:薬事日報

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